遺言書の作成を弁護士に依頼するメリットや費用、作成までの流れ
遺言の作成や執行について弁護士に依頼した場合に、依頼者に代わってどんなことをしてくれるのか、どのくらいの費用がかかる…[続きを読む]
相続問題を弁護士に依頼すると費用(報酬)の相場はいくらくらいになるのかは気になるところだと思います。
実は平成16年3月31日まで、弁護士会が定めた「旧報酬基準」という一律の基準が設定されていましたが、現在では、事務所ごとに自由な弁護士報酬の金額設定が許されています。
しかし今でも、この旧報酬基準に従って弁護士費用を定めているところが多いのが現状です。
本記事では、具体的な相続問題を挙げながら、それぞれの弁護士の役割や弁護士費用の相場をご紹介します。
「(旧)日本弁護士連合会報酬基準」|宮崎県弁護士会
目次
相続問題を弁護士に依頼した場合、法律相談料に加え、大きな案件では業務の対価として支払う着手金・報酬金、その他弁護士の出張が必要な場合には日当、手続きで発生する手数料や実費がかかります。
まずは、これらの費用相場をまとめておきましょう。
経済的利益とは:交渉や調停・審判・訴訟など弁護士が介入したことで獲得できた利益の合計額を指します。
ただし、弁護士報酬は依頼内容によって変わるため、本記事では業務内容ごとに解説することにします。
弁護士の主な対応分野には、下記のものがあります。
クリックすると記事内の該当箇所にジャンプします。
以下から早速、各相続業務で弁護士が果たしてくれる役割と、依頼した場合の費用相場について解説します。
遺言書作成で弁護士が担うのは、主に以下の業務です。
遺言書作成の相場は、10万円~20万円程度といわれています。
ただし、遺産総額や遺言書の複雑さによって手数料の額は変わります。
遺言書には自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類があり(※)、弁護士に遺言書作成を依頼すると、一般的に公正証書遺言の作成を勧められます。
公正証書遺言を作成する際には、公証人の協力が必要となるため、その手数料が実費としてかかります。
公証人の手数料は、遺産の額によって応じて異なりますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合に加えて+3万円程度がかかると見積もっておけばよいでしょう。
※他の2種類と比較して多少値は張りますが、信頼性・安全性が最も高く、不備などにより無効になる可能性が著しく低いため、当サイトでは公正証書遺言を特におすすめしています。公正証書遺言作成の流れについてはこちらの記事をお読みください。
遺言書がない場合には、原則として遺産分割協議でどのように相続財産を分割するかを話し合って決める必要があります。しかし、法律の素人同士の話し合いではこじれてしまうことが往々にしてあります。
一方で、遺産分割協議を弁護士に依頼すると、法律に詳しい第三者として仲介しながら依頼者の利益になるように、交渉を進めることができます。そのうえ、協議で決定した内容を遺産分割協議書にまとめる作業まで遂行してくれます。
このように、遺産分割協議を依頼すると、弁護士は、「遺産分割協議自体のサポート」と、「遺産分割内容をもとにした遺産分割協議書の作成」を行います。
協議が整わない場合には、調停に、調停でも決着がつかなければ審判へと舞台は家庭裁判所に移り、引き続き弁護士に依頼することができます。
調停では、原則として当事者が出頭することになりますが、弁護士は代理人として同席し、依頼者をサポートすることができます。
審判では、弁護士が代理人として当事者の代わりに出頭することが可能になり、当事者は報告を聞くだけで、相手方と対面する必要がありません。
遺産分割協議にかかる弁護士費用は、着手金と報酬金になります。
着手金は弁護士が業務に取り掛かるときに支払う初期費用で、結果がどうあれ基本的に返還されません。最低20万円程度かかることが多くなります。さらに、もし協議で決着がつかない場合には、調停や審判に移行するごとに、追加で着手金がかかることが通常です。
旧報酬基準による着手金は、次の通りです(※)。
基本的経済利益の額 | 着手金 |
---|---|
~300万円 | 経済的利益の8.8% |
300万円超~3,000万円 | 経済的利益の5.5%+99,000万円 |
3,000万円超~3億円 | 経済的利益の3,3%+759,000万円 |
3億円超~ | 経済的利益の2.2%+4059,000万円 |
※本記事では、旧報酬基準について、税込表示をしています。
報酬金は事件が解決したときに解決内容に従って弁護士に支払うお金のことで、協議の結果依頼者が得られた金額が大きければ大きいほど報酬金も高くなります。
旧報酬基準に従うと、着手金と報酬金の金額は下記の通りとなります。
経済的利益の額 | 報酬金 |
---|---|
~300万円 | 17.6% |
300万円超~3,000万円 | 1.1%+198,000円 |
3,000万円超~3億円 | 6.6%+1,518,000万円 |
3億円超~ | 4%+8,118,000万円 |
また、着手金や報酬金とは別に、調停の場合は裁判所に申し立てるための実費として数千円や、交通費がかかるケースもあります。裁判所が遠方なら日当(弁護士の出張費)が必要になることも多いでしょう。
適宜戸籍謄本などの必要書類を取り寄せるためにも、数千円~の実費が必要になります。
詳しくは以下の記事をお読みください。
弁護士に相続放棄を依頼すると、必要な手続きを代行してもらうことができます。
相続放棄の手続きは、被相続人や相続放棄者本人の戸籍といった必要書類の収集から、相続放棄申述書の記入、家庭裁判所への提出(申立て)などがあり、煩雑です。
また、相続放棄には、自己のために相続があったときから3ヶ月以内というタイムリミットもあるため、ご自分で申し立てをするのが不安な方は、弁護士に依頼すると、期間内に間に合うようにスムーズに処理してくれます。
相続放棄申述の代行手数料の相場は、概算で5万円以上といわれています。
ただし、手続き前に相続財産などについての調査をすると、調査費用としてさらに5万円程度がかかることがあります。
相続放棄の専門家の依頼については、以下の記事でも解説しています。
依頼者の遺留分が不当に侵害されていた場合には、贈与や遺贈等により相続財産を過度に受け取った人に対して、遺留分侵害額請求ができます。
法律的な知識がない方であっても、請求まではできるでしょう。しかし、相手方との交渉には、法律に則って正確に遺留分の額を算出しなければならず、当事者双方が法律に明るくないと合意に至らずに、交渉が暗礁に乗り上げてしまうことが多々あります。
一方で、弁護士に遺留分侵害額請求を依頼すると、遺留分の額を正確に算出し、遺留分侵害額請求通知を内容証明郵便で相手に送り、その後侵害額に相当する金銭の返還について交渉してくれます。弁護士という専門家が出ていくことで、よりスムーズな解決が期待できます。
また交渉が決裂した場合や、交渉が長引きそうな場合には、弁護士が依頼者の了解を取った上で調停や裁判に持ち込むことも可能です。
遺留分侵害額請求でかかる費用は、次の通りです。
弁護士に依頼すると内容証明郵便作成の手数料は、3万円~5万円程度かかります。
着手金と報酬金は、次の通り旧報酬基準に従っている事務所が多くなります。
基本的経済利益の額 | 着手金 |
---|---|
~300万円 | 経済的利益の8.8% |
300万円超~3,000万円 | 経済的利益の5.5%+99,000万円 |
3,000万円超~3億円 | 経済的利益の3,3%+759,000万円 |
3億円超~ | 経済的利益の2.2%+4059,000万円 |
経済的利益の額 | 報酬金 |
---|---|
~300万円 | 17.6% |
300万円超~3,000万円 | 1.1%+198,000円 |
3,000万円超~3億円 | 6.6%+1,518,000万円 |
3億円超~ | 4%+8,118,000万円 |
協議では解決できず、調停や訴訟に進んだ場合には、さらに追加の着手金が必要となるのが通常です。ただし、継続して受任している場合(訴訟からの依頼ではなく、調停からの依頼で訴訟に進んだ場合など)は、基準よりも減額されることが多いでしょう。
その他、事務所によっては、裁判所への申立てにかかる実費や、裁判所の場所によっては弁護士の出張費(日当)がかかるなど、細かい料金が加算されていくこともあります。
弁護士を「遺言執行者」として選定すると、実際に相続が発生した際、遺言内容を実現する責任者として、依頼者が残した遺言の実現に必要なあらゆる手続きを行ってくれます。
業務の内容は、相続人の廃除や取り消し、遺言による子の認知、遺贈による不動産の所有権移転登記や金融機関の口座名義変更、有価証券の名義変更など多岐にわたり、特に平成30年の民法改正でより一層権限が拡大しました。
法的な専門知識のある弁護士が先導してくれれば、万が一相続をめぐって親族間でトラブルが発生した場合も安心です。
弁護士などの専門家を遺言執行者に選任するには、手数料がかかります。
その金額は、遺産の金額や相続人の数、事件の難易度などによっても異なりますが、旧報酬基準による金額は次の通りです。
経済的な利益の額 | 手数料 |
---|---|
~300万円 | 33万円 |
300万円超~3,000万円 | 2.2%+264,000円 |
3,000万円超~3億円 | 1.1%+594,000円 |
3億円超~ | 0.5%+2,244,000万円 |
また、遺言執行に裁判手続が必要な場合には、遺言執行手数料とは別に裁判費用がかかります。
なお、遺言執行の費用は、相続財産から差し引かれます(1021条)。
遺言執行者の選任を決めたのは被相続人であり、遺産は遺言執行者が管理することになるため、相続人が報酬を支払う必要はありません。
弁護士に相続問題を依頼した場合にかかった費用は、原則として依頼者本人が支払います。
弁護士は、依頼者の利益を第一に任務を遂行するからです。
したがって、被相続人の配偶者が遺産分割協議を弁護士に依頼したとき、話し合いがまとまり、たまたま結果的には相続人全員のためになったとしても、依頼者以外の相続人に支払う義務はありません。
費用が支払えないときはどうすればよいか、簡単に手段を挙げます。
分割払いや後払いが可能な事務所もあります。
支払い方法を変更する分、金額にも多少の変動があるかもしれませんが、お願いしてみるだけの価値はあります。
一括払いは難しいが、少しずつなら、あるいは後からなら支払えそうだという方は、まずは弁護士に事情を説明してみてください。
法テラス(日本司法支援センター)の活用を検討してみるのもおすすめです。
法テラスでは、経済的に困窮している方でも気軽に弁護士に相談できるよう、一時的な費用の立て替え業務を行っています。依頼者はその後、法テラスに分割払いで返還していけばいいのです。
収入が一定基準以下であるなど、利用するための要件はありますが、検討する価値はあります。
また、法律相談のみであれば、近隣の法テラスのほか、法テラスと契約している法律事務所であれば無料で受け付けてくれます(時間制限・回数制限あり)。
遺産相続の業務を弁護士に依頼すると、法律相談料、手続きの手数料、日当などの細々した料金がかかるほか、比較的大きな案件では着手金や報酬金が必要になります。
弁護士費用は旧報酬基準に従っている事務所が多いとはいえ、独自の基準を設定している事務所もあるので、安くてリーズナブルな事務所を探してみるのも良いでしょう。
法律相談料は近年低額化が進んでいます。依頼する前に予め費用を見積もってもらう目的でも、まずはご相談だけでもされてみてはいかがでしょうか。
相続には、弁護士を賢く利用し、スムーズに手続きを進めていくのがおすすめです。