不動産相続時に抵当権がついていたらどうする?

不動産

 

不動産を相続する場合には注意が必要です。一見問題がない不動産であっても抵当権が設定されていることがあるからです。
この記事では抵当権の概要と、抵当権が設定された不動産を相続するときの注意点をご紹介していきます。

1.そもそも抵当権とは?

抵当権とは、借金の担保として不動産に設定されるものです。
例えばAさんがBさんからお金を借りる場合、BさんはAさんからの返済を確実に得るために、Aさんの不動産に抵当権を設定することができます。このとき、BさんはAさんの不動産の「抵当権者」である、と表現します。
もしAさんが債務の返済をできない状態になったら、BさんはAさんの不動産を競売にかけて、その売却代金を借金の返済に充当できるのです。

抵当権の特徴として、債務者(上の例ではAさん)が不動産を占有して使用できる点が挙げられます。質権などでは担保に供した物品は債権者(上の例ではBさん)が占有しますが、抵当権では債務者が占有権を得ます。
そのため、住宅ローンなどで日常的に抵当権が利用されています。ローンで買った不動産を債務者が占有して使用し、債権者である金融機関等がその不動産に抵当権を設定するのです。

もう1つの特徴は、1つの不動産に複数の抵当権を設定できる点です。
Aさんが保有する不動産にBさんが2,000万の抵当権を設定した後、さらにCさんが1,000万の抵当権を設定することも可能です。
これは、ある不動産について債務が返済されて1つの抵当権が抹消されても、他の抵当権が設定されている可能性があることを意味します。残存する抵当権が行使された場合、やはり抵当不動産は競売にかけられてしまいます。

抵当権には何らかの債務が紐付いているケースが多いため、抵当権が設定された不動産をそのまま相続すると、その不動産に付随する債務も相続することになってしまいます。
不動産を相続する場合には、抵当権が設定されていないかをしっかりと確認しましょう。

2.抵当権の確認方法

不動産を外から眺めても、抵当権が設定されているかどうかはわかりません。
不動産に抵当権が設定されているのかを確認したい場合は、法務局で不動産登記簿の交付を請求しましょう。

備え付けの登記事項証明書交付請求書に必要事項を記入し、手数料とともに窓口に出すだけで交付してもらえます。
申請者が誰であっても、どの不動産の情報であっても問題なく交付してもらえるので安心してください。

不動産登記簿を交付してもらったら、「表題部」と「権利部」に分かれているのが見て取れると思います。
権利部はさらに「甲区」と「乙区」に分かれています。甲区には所有権に関する事項が記載されており、乙区には所有権以外の権利に関する事項が記載されています。
その不動産に抵当権が設定されているかどうかを確認するには、乙区を見てください。
「登記の目的」の部分に「抵当権設定」と書いてあれば、それが抵当権設定の事実を示しています。右側の欄に抵当権が設定された原因や債権の額、債務者や抵当権者の情報も記載されています。

登記簿 抵当権

ただ、これだけではその土地に抵当権が設定されたままであるのかはわかりません。同じく乙区に「抵当権抹消」の登記があるかどうかを確認してください。対応する番号の抵当権抹消登記があれば、その抵当権は既に消えています。逆に言えば、抹消登記の記載がない不動産には抵当権が設定されて残ったままということです。

3.抵当権が設定された不動産を相続するときの注意点

相続する予定の不動産に抵当権が設定されている場合、相続にあたって多くの注意点があります。
順に見ていきましょう。

3-1.不動産自体の評価額は変わらない

抵当権が付いているからと言って、不動産自体の評価額が落ちることはありません。そのため、相続税が減額されるということもありません。にも関わらず、抵当権という負債を抱えた不動産を相続することになってしまいます。
万が一その不動産についての抵当権が実行されてしまうと、不動産が競売にかけられてしまうため、かなりのリスクを抱えた相続になります。

3-2.相続不動産に紐付いた債務の負担は?

抵当不動産に関して債務が残っている場合、その債務も相続することになります。
この債務は原則的に法定相続人全員が等分に負担して返済します。
ただし、不動産を相続していない人まで返済の義務を負うのは公平を欠くということで、不動産を相続した者のみが返済義務を負うように協議して決めることも可能です。この場合、相続人同士での協議の他に抵当権者との協議も必要です。
協議はときに紛糾し、相続トラブルに発展することもあります。早い段階で専門家である弁護士に相談することで、未然にトラブルを防ぐといいでしょう。

3-3.抵当権不動産に関する債務が第三者によるものである場合は?

抵当権が担保している債務が、被相続人(故人)以外の第三者のものであるケースもあります。
この場合、債務自体は被相続人自身のものではないので、債務を相続をする必要はありません。
しかし、その第三者が弁済不能に陥った場合、やはり抵当権が実行されて相続した不動産が競売にかけられてしまうリスクがあります。

4.どのような対策を取ればいい?

ここまで見てきたように、抵当権が設定された不動産を相続する場合には様々なリスクが付きまといます。
ここからは、そういったリスクに対してどのようにし対応すればいいかを考えていきましょう。

4-1.債務を弁済する

相続する遺産の額が債務のよりも大きいのであれば、遺産で債務を弁済し、その後に不動産に設定された抵当権を抹消することができます。
あるいは、相続する不動産自体を売却し、売却益で債務を弁済することで同様に抵当権を抹消することも可能です。ただし、不動産が抵当権で担保された債務額よりも高額で売れなければ、他の財産で埋め合わせをしなければなりません。

4-2.相続放棄をする

遺産全体を計算したときにマイナスの方が大きい場合は、相続放棄するのも一案です。
相続放棄をすればプラスの遺産を相続することもできませんが、マイナスの遺産も相続しなくて済むのです。
ただし、相続放棄は相続財産全体に対して行わなければなりません。財産Aを相続して財産Bを相続するようなことはできないのです。
また、一度した相続放棄は取り消すことができません。素人考えで相続放棄を行うと取り返しのつかない結果になることもあるので、事前に弁護士に相談することを強くお勧めします。

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5.弁護士に相談して相続トラブルの回避を

財産を相続する機会は、人生でそう多くはありません。相続については誰もが初心者なのです。
初心者が集められる情報には限界がありますし、初心者の判断で相続を行うとトラブルの原因になります。
専門知識を持った弁護士は、様々な相続事案を経験し、解決に導いています。
抵当不動産を相続するときだけに限らず、相続をすることになったら是非弁護士に相談をしましょう。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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