成年後見制度とは?申立て手続きの流れと費用
家族や親族が認知症になったり、高齢や障がいによって判断が衰えてきた場合、成年後見制度を利用して適切なサポートをしても…[続きを読む]
「平成29年度版高齢者白書」に記載された「2012年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、2025年には約5人に1人になるとの推計もある」(※1)という記述は、どこかでお聞きになったことがある方も多いと思います。
認知症になってしまい物事を判断できなくなってしまった場合には、その方の財産を管理するために、成年後見人を立てることになります。成年後見人には、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門家がなることが多く、2020年に成年後見人等となった配偶者・親・子・兄弟姉妹などの親族の割合は19.7%と、減少傾向にあります(※2)。
そこで、成年後見人はどんな仕事をするのか、どんなことに気をつければ良いのか、実例を交えながら詳しく解説していきます。
※1【出典】「平成29年度版高齢者白書」|内閣府
※2【出典】「成年後見事件の概況「令和2年1月から12月まで」|裁判所
目次
成年後見人の就任から仕事の終了までの流れは、大概に次のチャートの通りとなります。
家庭裁判所の審判 | |
▼ | (約2週間) |
審判確定 | ・審判書受領 ・成年後見人の職務に関する内容等受領 |
▼ | (成年後見登記に約2週間) |
最初の仕事(就任時) | ・登記事項証明書の取得 ・財産の調査 ・金融機関・各官庁への届け出 ・収入支出の把握 ・裁判所への報告 |
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通常の仕事 | (1)財産管理事務 ・預貯金の入出金チェックと必要な費用の支払い ・不動産の管理 ・株式、有価証券の管理 ・税金の申告・納税 ・居住用不動産の処分等 (2) 身上監護事務 ・医療・介護サービスの契約 ・住居の確保 ・施設の入退所・処遇の監視 (3) 家庭裁判所への報告 |
▼ | |
最後の仕事(終了時) | ・財産目録の作成 ・成年後見終了登記 ・財産の引き渡し ・家庭裁判所への終了報告 |
成年後見人の仕事内容は大きく分けて次の3つです。
成年後見制度では、「財産管理」と「身上監護」の2つの軸で被後見人を保護することが、成年後見人の役割となります。
成年後見人は、これらを適切に行っているかを監督する家庭裁判所への報告義務を負います。
成年被後見人は、自分で財産を管理・処分する能力を失っています。そこで、成年後見人が被後見人本人の代わりに財産の管理・処分を行います。
成年後見制度は、物事を判断する能力を失ってしまった被後見人「本人のため」にある制度です。財産の管理・処分行為は、本人の利益になる必要があります。
成年後見人は、本人の利益になる範囲であれば、本人の財産を支出することが可能です。
たとえば、本人が住んでいる家の修理が必要であれば、被後見人の財産から費用を捻出して修理することは正当な範囲です。あるいは、長らく空き家で無駄なコストばかりかかっている家・土地を売却することも妥当です。
自分の利益のためではなく、本人の利益のために財産管理を行う心構えと行動が必要です。
成年後見人は、被後見人の財産を管理するために、本人の財産と自分の財産を明確に区別する必要があります。
後で返せばいいやと、本人の銀行口座からちょっと引き出して自分の買い物に使うというようなことがあってはなりません。成年後見人はボランティアではなく、家庭裁判所の許可を受けて選任され、希望すれば報酬をもらって仕事を行います。プロ意識が必要です。
悪気がなくても誤って本人の財産を自分のために使ってしまったりすると、最悪の場合、業務上横領罪で刑事告訴され懲役刑となる場合もあります。最近は運用が厳しくなっており、実際、刑務所に収監された後見人もいます。
成年後見人には、被後見人が所有する家屋の取り壊しや財産の売却といった処分行為が可能です(成年被後見人の居住用不動産の処分には、事前に家庭裁判所の許可が必要になります)。ただし、処分行為も、必ず本人の利益にならなければなりません。
被後見人が、不当な契約により損害を受けるのを防止するためにあるのが、成年後見人の取消権です。取消権とは、日常生活に関する行為(通常の買い物など)を除いて、本人が判断能力がないため行ってしまった法律行為を取り消す権限です。取り消した行為は、最初からなかったものとになります。
たとえば、悪質な業者が本人に安物のの基金属を高価な貴金属として買わせてしまった場合には、成年後見人はそれに気づいた時点で、売買行為を取り消すことができます。具体的には、その業社に連絡して、「成年後見人である○○は被成年後見人△△が行った購入の行為を取り消すので、至急、代金を返還のうえ商品を回収してください」といった内容を伝えます。話が通じなければ内容証明にて送付することになります。最初は無視されたり拒否されたりするかもしれませんが、徹底的に戦う覚悟で臨めばたいてい相手は折れるでしょう。
成年後見人の仕事には、本人の療養看護、生活の身守りもあります。
民法第858条に定められた「生活、療養看護に関する事務」を指して身上監護と呼ばれています。身上監護とは、「ご本人の生活を維持するための仕事や療養看護に関する契約 等(※)」を指し、具体的には、「ご本人の住居の確保及び生活環境の整備,介護契約,施設等の入退所の契約,治療や入院等の手続(※)」があります。
【出典】成年後見人Q&A 17頁|旭川家庭裁判所2015.10
第858条
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
しかし、成年後見人は、直接、本人の介護をしなければならないわけではありません。本人の介護が必要な場合は、介護してくれる人や適切な介護施設を探して依頼するところまでは義務を負いますが、実際に介護をするのは別の人や介護施設になります。これは、成年後見人に選任されることがある弁護士や司法書士が、介護のスペシャリストでないことから見てもおわかりでしょう。
また、成年後見人は、「善管注意義務(民法644条、869条)」を負っていることから、身上配慮義務も負っていると解されています。身上配慮義務とは、財産管理や身上監護をするうえで本人の心身の状況や生活状況に配慮する義務です。
被後見人に物事を判断する能力がないとはいっても、すべての能力を失ってしまったわけではありません。日常生活についての判断は可能なことがほとんどです。
成年後見人は、本人に残っている能力を最大限に引き出し、本人の考え方や想いをくみ取り、本人の意思を最大限に尊重する必要があります。本人が安心して生活していくために「不足する部分を補ってあげる」という意識が大切です。
ですから、成年後見人が本人の代わりに判断する際には、自分の考えで行うではなく、本人の意思や性格や以前の行動パターンから総合的に判断し、もし本人に判断能力があればきっとこうするだろうという推測のもとで判断します。また、それが難しければ、社会的な慣習、良識をもとに判断することになります。
決して後見人の考えで判断するのではなく、本人の意思を尊重して判断します。
成年後見人は、本人の財産をしっかり管理して毎年家庭裁判所に報告をしなければなりません。電気・ガス・水道などの領収書も保管しておき年間の収支を間違いなく報告します。
つまり、後見人になると、後見人には被後見人のための負担が増加します。この点をよく理解したうえで、後見制度を利用する必要があります。
成年後見の申し立てから選任までの流れについては、以下の記事に詳しく解説していますので、ここでは、成年後見人になる人の視点で概要のみ記します。
成年後見を家庭裁判所に申し立て、審判がなされて後見人が選任された後、告知と呼ばれる2週間の期間があります。この間に、本人や本人の配偶者、四親等内の親族といった申立権者が、選任について不服を申し立てることができ、後見人は対外的にはまだ何の業務もできません。
不服申し立てがなければ成年後見の審判が確定し、家庭裁判所から成年後見人に、審判書と、成年後見人の職務に関する内容および財産目録記入用紙等が送られてきます。
審判確定後は、家庭裁判所から法務局に審判の内容が通知され、登記ファイル(コンピュータシステム)に審判の内容が記録されます(成年後見登記)。審判確定から登記までには、だいたい2週間かかります。審判開始からは、およそ1ヶ月と考えれば良いでしょう。
成年後見登記が完了すれば、晴れて成年後見業務ができるようになります。
成年後見登記の完了後、成年後見人は、登記事項証明書を取得します。これは後見人の仕事をするための身分証明書のようなものです。
金融機関等に届出をするのに必要となるため、必要な枚数を取得しておきます。1通当たり550円の収入印紙が必要です。
窓口で申請する場合には、東京法務局後見登録課または全国の法務局・地方法務局の戸籍課の窓口に提出します。
郵送で申請する場合には、法務省HPで申請用紙を取得して記入し、返信用封筒と本人確認書類、収入印紙を同封して、東京法務局へ提出します。
家庭裁判所へ提出する財産目録の作成に当たって、本人の財産を調査します。後見監督人が選任されているときは、監督人の立会いのもとに調査を行います。
法務局で不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)を取得し、登記済証(土地の権利証)または登記識別情報の内容と照合します。
2006年(平成18年)からは、オンライン登記制度が整い登記済証に代わって登記識別情報が発行されるようになっています。登記済証または登記識別情報は非常に大切な書類ですので、銀行の貸し金庫等に保管すると良いでしょう。
金融機関等に成年後見人となったことを届出し、成年後見人就任の日を基準日とした残高証明書を取得します。残高証明書と預貯金通帳を確認し、紛失している通帳があれば再発行の手続きをします。
借入金があれば、その借入先、借入日、金額、利息、返済方法、返済状況、担保、保証人等を把握し、返済の対応をします。
証券会社に成年後見人になったことを届け出ます。取引照会を行って株式等の内容を確認します。
車があれば自動車検査証を確認します。書画骨董品など高価な動産があれば確認します。
保険契約をしていれば、保険証書を確認し、保険会社、保険の種類、詳細内容、被保険者・受取人等を把握します。
成年後見人になったことを、銀行、証券会社、年金事務所、税務署等に届け出ます。その際、今後、書類を後見人の住所に送るように依頼しておきます。本人が誤って書類を破棄してしまったり、重要な通知を見逃してしまうことを防止できます。
年間・月間の収入・支出を把握して本人の生活プランを立てます。
収入は、年金、不動産収入、株式配当、預貯金利息等で預金通帳の収入欄等で把握が可能です。
支出である、税金、家賃、公共料金等その他生活費等は、預金通帳の支出欄や領収証等で把握します。近年は、クレジットカード決済も増えているため、クレジットカード契約があればその内容や明細も確認します。
財産調査が終わったら、財産目録と年間収支報告書を作成し、証拠となる通帳や取引残高報告書などのコピーを添付して、家庭裁判所に提出します。提出期限は、審判からおおむね2ヶ月以内ですが、間に合わない時は必ず家庭裁判所に連絡するようにします。
財産目録等の書式は、以下の裁判所HPに掲載されています。
【参考】裁判所:後見人等のための書式集
財産目録には、「平成○年○月○日現在」といった内容で記載しますが、ここは実際に提出する日付ではなく、前月末など切りのよい日時にしまって構いません。たとえば、7月27日に報告するのであれば、6月30日現在とすればよいでしょう。
現金がない場合でも、現金0円と記入します。
成年後見人が、報酬を受け取るためには、家庭裁判所に対して報酬付与の申立てを行う必要があります。
親族が成年後見人となった場合には、家庭裁判所が報酬が付与するかどうかを様々な事情を総合的に斟酌して判断します。
決して、親族だから無報酬ではありません。親族でも成年後見人の報酬を受けたいときは、申立てをしてみましょう。
さて、ここからいよいよ成年後見人の本格的な仕事内容です。
本人の財産管理は、成年後見人の主な仕事です。
基本的には成年後見人が進めていきますが、判断に迷う場合には、家庭裁判所に相談をしてください。
財産管理で最も基本となるのが、通帳記入による預貯金の入出金チェックです。
預貯金を管理する際には、本人名義とするか、「相続太郎(被後見人の氏名)成年後見人 相続次郎(後見人の氏名)」のように、本人と自分の財産とを区別できるようにします。
年金が振り込まれていなければ、年金事務所に確認します。
電気・ガス・水道などの月ごとに支払っていた費用や、その他発生するたびに現金で支払っていた費用があれば、口座引き落としに変更するほうが良いでしょう。都度払う必要がなく、通帳で一括して管理できるからです。
口座引き落としができず現金で支払う場合は、金銭出納帳に記録します。領収書やスーパーのレシートなどは、日付順にノートなどに貼りつけて保管するのが一般的ですが、紛失しなければどんな管理方法でもかまいません。月毎に分けてクリアポケットに入れるのも、楽な保管方法です。
成年後見人が本人のために支出した費用(交通費など)は、本人の小口現金から支出し、金銭出納帳に記録します。ただし、本人のために支出する費用と、成年後見人自身のために支出する費用は明確に区別してください。たとえばスーパーに行って本人の生活必需品と自分のものを一緒に購入する場合には、本人のものと自分のものでレシートを分けてもらうようにしましょう。
本人に自宅がある場合は、自宅の管理や修繕なども成年後見人の仕事になります。一人暮らしの本人が介護施設に入所してしまったときは、定期的な自宅の見回りや、庭の手入れ・草取りなどが必要になるでしょう。
本人が賃貸アパートやマンションといった物件を所有していれば、定期的にそれらの物件も確認します。賃借人が家賃の支払を滞納していれば催促するなど交渉も行うことになります。慣れていなければ、不動産会社などの専門家に管理をお願いすると良いでしょう。
成年後見人が、本人の財産を処分することは基本的にありません。しかし、本人の入院費や施設入所費に充てるため、本人所有の不動産の売却が必要になる可能性はあります。
そのようなケースで、居住用不動産を処分するには、事前に家庭裁判所の許可が必要になります。
居住用不動産の処分の許可の申立てをする際には、売買契約書などを提出し、家庭裁判所は、売買価格やその他の条件などを考慮したうえで許可をします。売買契約から決済まで、通常の取引よりも時間がかかると考えておいたほうがよいでしょう。
許可を得ずにした処分は無効となってしまいます。
居住用不動産だけでなく、将来住む可能性がある家や土地だけでも居住用不動産とみなされる可能性があり、注意が必要です。
申立ての用紙は、以下の裁判所のサイトからダウンロードすることができます。
【参考外部サイト】「成年被後見人(被保佐人,被補助人)の居住用不動産処分許可の申立書」|裁判所
株式などの有価証券は、管理するとはいっても、毎年残高証明書を発行してもらうだけです。成年後見人の仕事は、本人の財産管理であり、特別な事情がない限り財産の処分は含まれないからです。
ただし、価格変動には注意しておく必要があり、管理する株価の急落が明らかであれば、例外的に売却することはできます。ただし、新規購入は認められないでしょう。
対応は、ケースに応じて異なります。困ったときは、家庭裁判所に相談されることをお勧めします。
本人に所得があれば所得税・住民税が発生し、不動産を所有していれば固定資産税・都市計画税が発生します。これらを、それぞれ管轄の官庁で申告・納税します。
税金の扱いは各種の特例があり内容も頻繁に変更されるため複雑です。素人判断で行うよりも、税理士などの専門家に依頼した方がよい場合もあるでしょう。
成年後見人と本人との間で利害が対立する場合には、特別代理人や後見監督人の選任が必要となります(民法第860条)。
利益相反とは、成年後見人と本人のどちらも相続人である場合や、本人所有の不動産を成年後見人に売却する場合などです。
民法第826条
- 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
- 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
民法第860条
第826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
次に、身上監護の仕事内容について具体的にご説明しましょう。
訪問して本人の状況に変わりがないか「身守り」をすることが基本になりますが、それに付随して次のような仕事があります。
治療、入院等に関して病院との間で諸手続きをします。また、健康診断などの受診手続きをします。
本人の持ち家がない場合には、借りる家を探して賃貸借契約を行い、家賃の支払い・契約更新等をします。
本人の持ち家があれば、家の修繕、税金の支払い等をします。
本人を施設に入れることが適切と判断される場合、施設を探して施設の入退所の手続きをします。また、施設入所中は、施設での本人への対応の様子を監視し、本人に不利益があれば改善を求めます。
施設の入所には多額の費用がかかることが多く、また本人との相性もあるため、状況や性格を踏まえながら十分な検討が必要になります。
まずは施設を見学することは必須となってきます。できれば昼時に行って入居者や事務員の様子を観察すると良いでしょう。施設での食事が美味しいかどうかも非常に重要なポイントです。なんといっても人間にとって食事は楽しみの一つです。毎日食事が美味しくなかったら生きる気力も失せてしまいます。可能であればお金を払って食事を試食してみると良いかもしれません。
また、高齢者は持病の薬を飲むことも多く、適切に薬を飲ませてもらえるのかなども確認しましょう。職員の定着率(辞める人が少なく長く働いているか)もポイントです。
入所後も、定期的に施設を訪問して処遇が問題ないかを確認します。入所後時間が経つと、いい加減な対応になることもあります。定期的な身守りは一番大変なことですが、本人は自分で主張することができません。まさに成年後見人に求められた重要な仕事です。
要介護認定や更新の手続きをそ。介護サービス事業者とのサービス契約をします。
介護サービスの内容が契約のとおりか確認し、異なるときは改善を求めます。
各種の福祉サービスがあります。地域包括支援センター、福祉センター、福祉事務所、市町村の高齢者福祉・障害者福祉の窓口などで相談してみると良いでしょう。
教育・リハビリに関する情報収集や契約を行います。
まず、以下の内容は成年後見人の仕事ではありません。
成年後見人が選任されると、本人の介護をしてくれると間違われることがよくあります。しかし、本人の介護は成年後見人の仕事ではありません。介護は、家族が行ったり、介護サービスや施設を利用することになります。
次に、以下の内容は成年後見人が行うことはできません。
この中でよく問題となるのは「医療行為への同意」です。本人が手術や治療を受ける場合に、それに同意できるのは本人だけであり、成年後見人は同意することはできません。「医療行為への同意」は一身専属的な権限だからです。しかし、本人に判断能力がない場合、大変困ることになります。
たとえば、本人の食道ガンの摘出手術に際して、術後は通常の食事が困難になる場合に、誰がその判断をするのでしょうか?
本人が判断できない以上、慣習的に、被後見人の家族に判断してもらうことになります。しかし、連絡がつかなかい場合や、身寄りのない被後見人の場合には、難しい状況になります。
成年後見人としては、家族・親族と連絡をとって判断してもらうしかありませんが、連絡がついても家族が無関心だったりと、複雑な想いになることもあるようです。
成年後見人の事務を監督するため、家庭裁判所はいつでも成年後見人に対して報告を求めることができます。同様に、後見監督人がいるときは、後見監督人も成年後見人に報告を求めることができます。
それに備えて成年後見人はいつでも報告できる心構えと準備をしておかなければなりません。
預貯金の入出金チェックや現金出納帳の記録はもちろんのこと、毎日後見日誌をつけて、行った仕事や本人の様子を記録しておくとトラブルがあったときに役立ちます。
特に問題がなければ、年に1回、後見等事務報告書、財産目録、収支状況報告書(現在は裁判所から求められた場合のみ提出)、通帳のコピー等の証拠資料を家庭裁判所に提出します。都道府県によって報告すべき月が決まっており、その際に提出します。
報告すべき時期が近付くと、家庭裁判所から報告書の用紙が送られて来るので、心配する必要はないでしょう。間に合わない場合は、必ず家庭裁判所に遅れる旨を伝えてください。
初回と異なるのは、まず、「後見事務報告書」が追加されていることです。記載する内容は、本人の現在の状況や、財産の変化についてです。報告書のフォーマットがありますので、それに沿って記入します。
財産目録は初回とほぼ同じフォーマットですが、財産の変化の状況と前回との差額を記入します。
収支状況報告書は以前は必須でしたが、現在は裁判所から要請があったときのみ提出するようになりました。
なお、以下のような場合には、年1回の報告とは別に、都度、家庭裁判所への報告が必要です。
その他、後見監督人がいる場合には、本人の財産を処分したり、財産管理の方針を変更したり、療養看護の方針を変更したりするときには、必ず後見監督人に相談して同意を得てください。
成年後見人の仕事は基本的には一人で進めます。未経験であれば、どうして良いかわからず困ることも多々あるでしょう。そのような時には迷わずに家庭裁判所にご相談ください。本人の財産を勝手に処分したりすると後々トラブルになります。わからなければ何でも聞くことです。
裁判所というと何やらかたいイメージを持たれるかもしれませんが、家庭裁判所は裁判だけでなく、相続・養子縁組など家庭に関する内容を扱っていますので、親切な対応をしてくれる書記官が多いです。
家庭裁判所に連絡をする時には、最初に送られた審判書または登記事項証明書の「事件の表示」に記載されている番号(例:平成**年(家)第***号)を始めに伝えてから相談して下さい。そうすると、スムーズに担当の書記官に取り次いでくれます。
家庭裁判所への連絡は、原則的にはFAXで行いますが、直接、電話連絡しても構わないでしょう。ただ、複雑な内容はFAXした方が良いです。