【図説】遺留分とは?遺留分の仕組みと割合を分かりやすく解説!
この記事では、遺留分について解説します。遺留分とは何か、だれにどのように認められる権利か、割合はどの程度かなどを図表…[続きを読む]
よくある相続トラブルと解決事例シリーズの第3回目は「遺言書で遺留分を侵害されている」ケースです。これは被相続人も相続人も関係する相続トラブルです。
目次
被相続人は遺言書を作成して亡くなりましたが、遺留分に留意していませんでした。その結果、相続人同士で「遺留分」についての相続トラブルが発生したケースです。最終的には相続弁護士が介入し、裁判まで至ることはありませんでした。
被相続人には配偶者がなく、長男、次男、長女の3人が相続人でした。次男と長女は親元を離れて、長男だけが被相続人の老後の面倒を見ています。
最期まで面倒を見てくれた長男に対して、被相続人は遺言書にて「その遺産の全てを長男に相続する」旨を遺しました。その後、長男は被相続人が残した遺産、約7,000万円を遺言書通りに相続することを次男と長女に知らせます。
しかし、その事実を知った次男と長女が、遺留分を主張しました。もちろん、次男も長女も相続放棄したわけではありません。その結果、相続人同士で遺留分をめぐって相続トラブルが発生したのです。
相続開始時点で長男は、「遺言書に遺産の全てを長男に相続させる」旨が書いてあることを主張します。もちろん、遺言書としての効力は、公証によって正式に認められています。したがって、長男は「遺言書の通りに長男だけが相続すべきだ」と主張し続けています。
次男と長女は遺言書内容に不服があり、「遺留分に触れていない遺言書は無効だ」と主張します。ただし、遺言書の内容自体は被相続人が書いてあると認めています。しかし、それでも相続放棄したわけでもないのに、全く遺産を相続できない点には異議を唱えました。その結果、話し合いがまとまらなくなり相続トラブルへと発展しました。
相続こそしたいものの、争いごとをしたくないと考えた長女が、相続弁護士にどのようにすべきなのかを相談しました。相続弁護士は、まず「遺留分に触れていないからと言って、遺言書が無効にならない」ことを次男と長女に説明しました。
しかし、一方で遺留分に留意していない遺言書に対して、「遺留分減殺請求」ができることを伝えます。
この遺留分減殺請求とは、遺留分が犯されている遺言書に対して、遺留分の主張をする手続きのことです(現在は法改正により「遺留分侵害額請求」)。
したがって、この場合は次男と長女にそれぞれ遺産の6分の1ずつを相続できる権利があることを説明します。
そして、この話を受けたうえで相続弁護士も交えて再度、協議をしました。その結果、感情的になっていた相続人たちは冷静さを取り戻し、長男が遺留分を認めた上で相続することを約束してくれました。
また、老後に被相続人の面倒を見たのは長男だけだったと次男、長女も認め、遺留分以上の相続はしないと話し合いがまとめる事ができたのです。
今回は相続弁護士が介入したことで、長男が遺留分の内容に理解を示してくれたために話し合いがまとまりました。全てのケースで上手くいくわけではなく、場合によっては裁判所で争うケースも珍しくありません。
ただし、相続弁護士が説明をすることで、感情的になっていた相続人も冷静に話が聞けるようになります。その結果、上手く話がまとまるケースも多いです。
遺留分とは何か、また遺言書で遺留分を犯された相続人が権利を主張するためにはどうすればいいかを見ていきます。
遺留分とは、民法で保証された「法定相続人が最低限相続できる相続財産」のことを言います。遺言書では遺産の全てを特定の人物に相続させることもできます。しかし、それでは本来相続できるはずの相続人は、不利益を講じられることになってしまいます。こうした事態を防ぐために遺留分制度が整えられています。
なお、この最低限相続できる遺留分率は被相続人との関係により次の通りに決まっています(民法1042条)。
したがって、法定相続人が配偶者だけなら「2分の1」、配偶者と子供なら各々「4分の1」と言った具合です。また、配偶者と子供2人なら、配偶者は「4分の1」、子供は各々「8分の1」を遺留分として持っています。このように法定相続人は、民法によって最低限の相続分である「遺留分」が保証されています。
もし遺留分が犯されている場合には、その犯された相続人は「遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)」をすることが可能です。これは遺産を相続した人に対して、遺留分を主張する手続きのことです。
なお、口頭でも遺留分減殺請求はできます。しかし、口頭では「言った」「言わなかった」とトラブルになりかねません。したがって、遺留分減殺請求を書面にし、内容証明郵便にて相手先に送りましょう。これによって後から裁判になっても、遺留分の主張を認めさせることができる可能性が高まります。
また、相続人によっては、遺留分として返還する額に納得がいかないために、訴訟を起こすケースも少なくありません。したがって、場合によっては遺留分減殺請求によって相続トラブルが長引く可能性があることも知っておきましょう。
せっかく遺言書を作成しても、遺留分に配慮していないケースも多くあります。その結果、遺留分を巡って相続トラブルが起きてしまうこともありえます。そのため、被相続人の遺志を残すためにも、まずは遺言書を作成する時点で遺留分に注意しておきたいものです。不安な方は弁護士に相談して作成されることをお勧めします。
また、もし相続人の方で遺留分が犯されている事態に遭ってしまった場合には、まずは落ち着いて相続弁護士に相談するといいでしょう。弁護士であれば、正しいアドバイスをして、相続トラブルを収めてくれます。