遺産相続トラブル事例と解決方法 養子・代襲相続編

三世代家族

親子関係というのは、一般的には血のつながりのある関係を指しますが、法的に親子関係になる養子縁組もあります。第二次世界大戦さなかに親を失い孤児になった子供たちが多くいましたが、彼らを自分の養子として迎え入れて育てた親もまた多くありました。その世代の人たちの相続が発生する時期となり、実子だけでなく養子が絡むケースも増えています。さらには2015年の相続税法改正に伴って相続税の基礎控除額が引き下げられたため、節税対策として養子縁組をする人も増えています

遺産分割では兄弟間でももめることが多いですが、そこに養子が入ってくるとさらに問題が複雑になる傾向があります。特に、養子縁組をしたことを知らない子どもから見ると不信感が芽生えます。

また、高齢化に伴って子のほうが先に亡くなっていて、孫が代襲相続するケースも増えています。孫の世代になると、遠くに住んでいて疎遠であったり、兄弟同士の過去の関係もわかりませんので、遺産分割でトラブルになることもあります。

実際にどのようなトラブルが発生しているのかご紹介します。

1.妻が養子になっている長男の遺産取得分が多すぎてトラブル

1-1.養子の相続トラブルはなぜ起こるのか?

配偶者が養子になっている相続人の遺産取得分が多すぎてトラブルになる事例をご紹介します。この事例では、特定の相続人の配偶者が被相続人の養子になっているため、その相続人夫婦の遺産取得分が単純に他の相続人(兄弟)の2倍になってしまうため、不公平感が起こり、相続トラブルになります
配偶者が養子になって夫婦で遺産を取得する相続人は、それを当然のことだと考えますが、他の相続人からすると、自分達と平等にすべきだと考えるので、争いに発展してしまいます。

1-2.養子の遺産分割トラブルの具体的な事例

具体的な事例で確認してみましょう。
父親が亡くなった家族で、長男の妻が父親の養子になっているため、長男の家庭の相続分が他の兄弟たちに比べて単純に2倍になっています。そこで、他の兄弟が反発して遺産分割協議が進まず、トラブルになっています。
長男夫婦は、養子縁組をしている以上遺産の取得分が増えるのは当然だと考えていますが、他の兄弟はそのようなことは不平等で認められないと考えて、話が平行線になります。

1-3.養子の相続トラブルが起こってしまったらどうすべきか?

このように、養子縁組が原因でトラブルになってしまった場合、やはり当人同士で話し合いをしていても解決は難しいです。そこで、家庭裁判所で遺産分割調停をする必要があります。調停では、調停委員や裁判官の関与のもとに話し合いを続けるので、お互いが妥協をして解決できる可能性があります。
しかし、お互いが強硬に主張をして譲らない場合には、遺産分割審判になってしまいます。

ただ、この場合、養子縁組が有効である以上は長男夫婦の遺産取得分が他の兄弟と比べて2倍になることはやむを得ないので、最終的には他の兄弟は諦めざるを得ないでしょう。

1-4.事前の対策方法

このように、養子縁組を原因とした相続トラブルを避けるためには、被相続人が生きている間にきちんと相続人らを交えて養子縁組と遺産分割方法について話し合っておくべきです。養子縁組をすると、長男夫婦の遺産取得分が増えるという問題が当然起こるので、そもそも養子縁組をする段階で、他の兄弟にそのような説明をして理解を求めておく必要があります。

その手続きをしなかった場合でも、父親が遺言書を書いておくべきです。たとえば、長男夫婦の遺産取得分を本来の半分ずつにして、他の兄弟の遺産取得分を同じにする内容の遺言書を残しておけば、今回のような相続トラブルを避けることができたことになります。

2.代襲相続人との話し合いが困難になりトラブルになる事例

2-1.代襲相続人の相続トラブルはなぜ起こるのか?

次に、代襲相続が起こった場合に遺産相続手続きがなかなかすすまずトラブルになる事例をご紹介します。
代襲相続とは、本来の法定相続人が被相続人より先に亡くなっている場合に、本来の法定相続人の子どもなどが相続人になる制度のことです。
この場合、代襲相続者(孫など)と他の相続人との間に関わりがないので、連絡などがなかなかとれず遺産分割手続きがすすまないことが多いです。また、もともと仲が悪かった場合などにもやはり遺産分割が難しく、トラブルが起こりがちです。

2-2.代襲相続人の遺産分割トラブルの実例

具体的な実例をご紹介します。
父親が亡くなった事例において、子どもが3人(長男と次男、三男)いました。このとき、長男は父親より先に亡くなっていたので、長男の子どもが代襲相続によって相続人となりました。
ただ、長男はもともと他の兄弟と仲が悪く、疎遠であったためにお互いに連絡がつきにくく、顔を合わせたこともないような関係だったので、遺産分割の話し合いをスムーズに進めることができませんでした。

次男と三男は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましたが、長男の子どもは仕事が忙しいとか遠方であるという理由をつけて、調停にもなかなか出席しようとしません。仕方がないので、長男の子どもに自分が欠席できないのなら代理人を立てるようにお願いしたところ、長男の子どもは弁護士に依頼したので、弁護士が代理人として調停に出席し、ようやく話し合いがスムーズに進むようになりました。弁護士は法律に詳しいため、特にトラブルもなく早期に遺産分割が確定しました。

2-3.代襲相続人の相続トラブルが起こってしまったらどうすべきか?

このように、代襲相続などが原因で、お互いが疎遠で遺産分割の話し合いがすすまない場合には、遺産分割の手続きを弁護士に依頼することが効果的です。弁護士であれば、相続人の代理人としてビジネスライクに確実に遺産分割手続をすすめてくれます。代襲相続者と他の兄弟の間に、お互いに悪感情がなく単に疎遠なだけなら、双方に弁護士をつけて冷静に話し合いをすれば、すんなりと遺産分割協議が成立することが多いです。
もし感情的な対立や分割方法について意見が合わないなどの事情がある場合には、遺産分割調停や審判を利用する方法もあります。

2-4.事前の対策方法

代襲相続などが起こった場合に、お互いに疎遠なことが原因で起こる相続トラブルを裂けるためには、やはり遺言書を作成しておくことが効果的です。
遺言書を作成しておけば、その内容で相続人らに遺産が分配されるので、それぞれの相続人が互いに連絡を取り合って遺産分割協議をする必要がありません。
お互いに疎遠であっても最低限の連絡だけをすれば良いので、具体的な財産分けである遺産分割協議をする必要がなく、手続きがスムーズにすすみます。
この場合も、遺言書が偽造だなどと言われてトラブルになることを防ぐため、公正証書遺言の形をとっておくと良いでしょう。

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執筆
服部 貞昭
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を1000本以上、執筆・監修。
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