遺産分割協議で不動産の評価額はどうなる?

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不動産の評価額は、時間とともに変わっていくものです。遺産分割の対象に不動産が含まれている場合、不動産を分割するには、いつを基準としていくらで評価して分割するかを決めなければなりません。
しかし、「いつ」や「いくら」が一部の相続人の都合で決定されたのでは、他の相続人との公平を保つことができません。

今回は、不動産の評価をする際の「いつ」(基準時)や「いくら」(評価方法)の決定をどのようにするのかを以下で解説します。

1.不動産はいつの時点で評価される?

1-1.遺産分割における不動産評価の基準時

遺産分割での不動産はいつの時点の価格で評価されるのでしょうか。
これは、基本的に不動産の評価は遺産分割時の価格とされています。

被相続人が亡くなってから遺産分割時までは長期間にわたることが多く、その間に財産価格が変わってしまうため、公平になるよう遺産分割時とされているのです。

それでは、遺産分割時の価格をどのように評価するのでしょうか。

2.一般的な不動産の評価方法

実際の評価・査定は専門家に依頼することが多いですが、まずは色々ある不動産の評価方法を簡単にご紹介します。

2-1.相続税路線価

相続税路線価とは、相続税算定の基準として用いられている不動産の評価です。
路線価というのは、市街地の道路に面した宅地の1平方メートルあたりの価格のことです。
そのため、相続税路線価で計算できるのは土地の評価額のみです。
相続税路線価は毎年改定されるので、これで土地を評価する場合には、相続が起きた年の相続税路線価を利用する必要があります。
また、相続税路線価は、土地の形状や面する道路による補正があります。

相続税路線価の評価額は実際に土地の取引をした場合の実勢価格や公示地価より低くなることが普通であり、具体的には実勢価格や公示地価の8割程度の価格になります。
【相続税理士サイト】土地の評価方法:路線価方式と倍率方式

2-2.固定資産税路線価・固定資産税評価額

固定資産税路線価とは、不動産の固定資産税を課税する際の基準となる路線価のことです。
市町村が発表しており、3年ごとに改定されるので、相続が起こった年の該当年度のものを利用する必要があります。
また、3年の間に土地価格の下落や上昇が起こることがあるので、各年度において時点補正率による補正が行われます。
土地に対する評価なので土地の評価にしか利用する事ができません。

これに対し、固定資産税評価額は、不動産に固定資産税を課税する場合の評価額そのものです。
不動産の評価額自体なので土地にも建物にもあります。
固定資産税評価額を知りたい場合には、その不動産が所在する市町村役場で固定資産税評価額証明書を取得することによって確認することができます。

固定資産税路線価や固定資産税評価額は、公示地価や実勢価格の7割程度になることが多いです。

2-3.公示価格

公示価格とは、全国の標準地について定められる地価であり、国が適正であると認めた土地の評価額のことです。
国土交通省が定めており、毎年改定され、3月下旬頃に公表されます。公示地価の決定の際には、不動産鑑定士が2人関与して、鑑定結果などをもとに評価しています。

2-4.実勢価格

実勢価格とは、実際に不動産が市場で取引される場合の評価額のことです。
ただ、実際にその不動産が取引される価格を決めるのは難しいです。
どうしても欲しい人がいれば高額で取引されますし、良い不動産とされるものでも、ほしい人がなかなか見つからなかったり売り急いだりする場合には値段が下がることもあります。
不動産の査定を行う業者によっても、大きく査定金額が変わり、同じ不動産でも数百万円以上もの金額の差が発生することもあります。

ただ、それでも、不動産は実勢価格がもっとも高額になることが多いです。

2-5.不動産の評価方法一覧

評価方法 土地 建物 主な利用目的 備考
相続税路線価 × 相続税の計算 実勢価格の8割程度
固定資産税路線価 (○) (×) 固定資産税の計算 実勢価格の7割程度
固定資産税評価額
公示地価 × 参考値
実勢価格 遺産分割・売買など 不動産業者により差あり

相続税路線価は実勢価格の8割程度、固定資産税評価額(固定資産税路線価)は実勢価格の7割程度になります。
このように、不動産の評価方法は極めて多彩であり、状況に応じて使い分けることになります。
遺産の中に不動産が含まれている場合には、その不動産をどの基準で評価するかで大きく遺産の価値が変わることになってしまいます。

3.遺産分割協議における不動産の評価

不動産には上記のようにたくさんの評価方法がありますが、遺産分割協議の際にはどのような評価方法で不動産を評価することになるのでしょうか?

3-1.実勢価格が基準

この場合、通常は実勢価格を基準にします。不動産を実際に処分する場合には実勢価格によることになるので、実勢価格で評価することが現実に即しているからです。

ただし、相続人全員が別の評価方法(たとえば相続税路線価など)によることに合意している場合には、その評価方法を使うこともできます。
遺産分割協議では、基本的に相続人らの自由な意思によって各種の決定をすることができるからです。

3-2.不動産業者に査定を依頼

不動産の実勢価格を調べたい場合、簡単な方法は、不動産屋に不動産の簡易査定をしてもらう方法です。
近くの不動産屋でもインターネット上の一括見積もりでもかまわないので、不動産の簡易査定を依頼したら、数日で査定書を発行してくれます。

査定書には、売り出し価格と評価額の2つの価格が記載されていることがありますが、売り出し価格は不動産を売り出す場合の当初につける金額であり、実際の評価額より高くなっていることが普通です。

ただし、依頼する不動産屋によって、査定額に差が出るのはよくあることです。
不動産を相続する人はなるべく低い査定書を出してきますし、不動産を相続しない人はなるべく高額な査定書を出してきます。そこで、このような場合には間をとって計算するなどしてバランスをとることが多いです。
遺産分割協議をする場合には参考にしてください。

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4.相続税における不動産評価方法

参考までに、相続税を計算するときの不動産評価方法についてご説明します。

相続したら、相続税の申告と納税をする必要がありますが、相続税の計算の際に利用するのは、相続税路線価と固定資産税評価額です。
土地の場合には相続税路線価で評価しますし、建物の場合には固定資産税評価額を利用します。
そのため、不動産を相続すると、相続税の計算は実勢価格を基準とした場合よりも安くなるので、現金や預貯金の形で相続するよりも節税になると言われます。

まとめ

このように、遺産分割での不動産の評価は専門性の高いものです。
専門家以外の人がこれを実際に行うのは難しく、遺産分割協議でもかえって混乱を招いてしまうため、実際に不動産の相続、遺産分割のときには弁護士などの専門家のアドバイスを受けるようにすることを強くお勧めします。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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