遺産分割協議書の書き方と記載例(サンプル)
遺産分割協議書は書き方のポイントを押さえれば、決して難しいものではありません。この記事では、遺産分割協議書の記載例と…[続きを読む]
不動産は現金のように簡単に分割できず、評価額について意見が割れることがあり、遺産分割では紛争の火種になりやすい財産です。
そこで遺産分割方法における不動産の評価方法や分割方法、相続登記までを解説します。
目次
被相続人の遺言書がなければ、原則として遺産の分割は相続人全員の参加による遺産分割協議によることになります。
遺産分割の流れは、以下の通りです。
基本的に不動産の評価方法や評価額についても他の財産と同じように、遺産分割協議で相続人が検討し、合意することになります。
相続人全員が合意に至れば、遺産分割協議書としてまとめ、相続登記の申請などに利用します。
そこで、遺産分割における一般的な不動産の評価方法について取り上げます。
ちなみに、遺産分割協議では、不動産の評価額について相続人全員が合意できれば、どのような評価方法でもかまいません。
遺産分割では、基本的に不動産の評価は遺産分割時の価格とされています。
被相続人が亡くなってから遺産分割時までは長期間にわたることが多く、その間に財産価格が変わってしまうため、公平になるよう遺産分割時とされているのです。
それでは、遺産分割時の価格をどのように評価するのでしょうか。
次に、一般的な不動産の評価方法を簡単にご紹介します。
相続税路線価は、市街地の道路に面した宅地の1平方メートルあたりの価格で、土地の評価額のみに利用できる基準です。
相続税路線価は、相続税算定の際の基準となる宅地の価格で毎年改定されているため、相続が起きた年の相続税路線価を利用する必要があり、実勢価格や公示地価の8割程度の価格になります。
公示価格は、全国の標準地について定められる地価であり、国が適正であると認めた土地の評価額です。
国土交通省が定めており、毎年改定され、3月下旬頃に公表されます。公示地価の決定の際には、不動産鑑定士が2人関与して、鑑定結果などをもとに評価しています。
固定資産税評価額は、土地や建物などの不動産に固定資産税を課税する際の評価額です。
固定資産税評価額を知りたい場合には、その不動産が所在する市町村役場で固定資産税評価額証明書を取得することによって確認することができます。
固定資産税評価額は、公示地価や実勢価格の7割程度になることが多いです。
実勢価格は、実際に不動産を市場で取引し、売買が成立した額です。
遺産分割協議では、一般にこの実勢価格を基準にします。不動産を実際に処分する場合には実勢価格によることになるので、実勢価格で評価することが現実に即しているからです。
前述の通り、相続税路線価は実勢価格の8割程度、固定資産税評価額は実勢価格の7割程度になるため、これらの数値を使って実勢価格を算出して評価する方法もあります。
ただし、相続人全員が別の評価方法に合意していれば、その評価方法を使うこともできます。
遺産分割協議では、基本的に相続人らの自由な意思によって各種の決定をすることができるからです。
評価方法 | 土地 | 建物 | 主な利用目的 | 備考 |
---|---|---|---|---|
相続税路線価 | ○ | × | 相続税の計算 | 実勢価格の8割程度 |
固定資産税評価額 | ○ | ○ | 固定資産税の計算 | 実勢価格の7割程度 |
公示地価 | ○ | × | 参考値 | |
実勢価格 | ○ | ○ | 遺産分割・売買など | 不動産業者により差あり |
ちなみに、2024年4月から国土交通省が不動産についての情報を収集・提供を始め、以下の価格を調べることができるようになりました。
【参考外部サイト】「不動産情報ライブラリ」|国土交通省
しかし、素人が不動産の評価をするには限界があります。そんなときには、専門家である不動産業者に簡易査定を依頼する方法があります。ネット上では、複数の不動産業者に一括で査定の申し込みも可能です。
直接不動産屋に依頼しても、インターネット上の一括査定でも、不動産の簡易査定を依頼したら、数日で査定書を発行してくれます。
遺産に不動産が含まれている場合に、遺産分割には以下4つの方法があります。
各分割方法のメリット・デメリットなど詳細については、以下の記事をご一読ください。
遺産分割協議での話し合いが上手くいかず、合意に至らなければ、遺産分割調停や審判へと手続きを移します。
遺産分割では、「調停前置主義」が採用されておらず、調停を経ずに審判を申し立てることができますが、実務上は、遺産分割審判を直接申し立てても、家庭裁判所に理由を確認され、調停に付されてしまうのが一般的です。
不動産の評価が争いになっている場合にも、各相続人が主張を提示したうえで合意形成を目指します。しかし、どうしても合意に至らない場合には、不動産鑑定士による鑑定が行われることもあります。
調停でも合意に至らなければ、遺産分割審判へと手続きが進み、裁判所が遺産分割方法や不動産の評価について判断を下します。
2024年4月1日から相続登記が義務化されています。
したがって、遺産分割協議や裁判手続きによって不動産を取得した相続人は、「不動産を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記をしなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。
登記申請は、以下3つの方法から選択することができます。
登記申請書の作成自体は、それほど難しいものではありませんが、司法書士に依頼することもできます。
また、登記申請の際には、固定資産税評価額の0.4%を登録免許税として納めなければなりません。ただし、価額が100万円の不動産には登録免許税がかからないなどの免税措置が2025年3月31日まで延長されています。
【参考外部サイト】「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」|法務局
ここまでご説明した通り、不動産の評価は専門性が高く、相続人自身が実際に行うのは困難なことが想定されます。
遺産分割協議でもかえって混乱を招いてしまうため、実際に不動産の相続、遺産分割のときには弁護士などの専門家のアドバイスを受けるようにすることを強くお勧めします。