相続放棄の手続きを自分でやる方法|流れ・必要書類と注意点
相続放棄の手続きは、家庭裁判所で行います。というと、難しいそうに思われるかもしれませんが、実は、相続放棄は、意外と簡…[続きを読む]
親が亡くなったら、親に多額の借金があることが発覚した! 親の相続財産ではまったく足りない!
そんなときは、「相続放棄」という方法で、返済不要になります。
ただし、いくつかの注意点があります。これを知らないと、予期せぬトラブルになることもあります。
目次
親が亡くなると、配偶者や子供が、その親の財産を引き継ぎます。現金・預貯金や株式・保険などプラスの財産なら嬉しいですが、借金・ローンなどのマイナスの財産も同時に引き継ぎます。
相続では、被相続人のすべての財産・権利・義務を引き継ぎますので、借金まで引き継いでしまうのです。
※ただし、被相続人にしか帰属しない一身上の権利・義務は除きます。たとえば、著作権、年金、弁護士などの資格などです。
プラスの財産のほうがマイナスの財産よりも多ければ、借金を返済してもお釣りがきますので大丈夫ですが、逆に、マイナスの財産のほうがプラスの財産より多ければ、大変なことになります。引き継いでしまったら、一生、借金の返済地獄に陥ってしまうかもしれません。
そんなことにならないようにする方法があります。
「相続放棄」という方法により、親の借金は返済不要になります。
「相続放棄」とは、初めから相続人でなかったことにする、法律的な手続きのことです。相続人でない、つまり、相続とは関係ない第三者になるのですから、借金を背負う必要はありません。
ただし、現金・預貯金などのプラスの財産もすべて相続する権利を失います。すべての権利を失うということは、相続放棄したら、親の財産に一切手をつけられなくなります。親の通帳も勝手に使うことも、古くなった家具を処分することもNGです。
まさに、財産上は親と縁を切るような内容ですね。
「親の財産を相続する権利を完全に失うのはちょっと・・・」という場合は、「限定承認」という方法もあります。
「限定承認」とは、プラスの財産の範囲内で借金を背負うというものです。もし後から財産が見つかって借金を返済できそうだったら、借金を返済して、財産ももらうという都合の良いことができます。
ただし、相続人全員で手続きが必要です。一人でも参加しなかったり、連絡がとれない人がいると、できません。限定承認はいろいろと複雑ですので、今回は、相続放棄に絞って説明していきます。
相続放棄するには絶対に必須な条件があります。これを守らないと、相続放棄できませんので、ご注意ください。
相続放棄は、家庭裁判所に「相続放棄申述書」(相続放棄するための申請書)を提出することで行います。そして、審査のうえ、許可がおりて、ようやく相続放棄したことになります。
口頭で「親の借金を背負いたくないので相続は放棄するよ!」と言っても、法的には相続放棄したことになりません。これは単なる「財産放棄」です。他の相続人にはこれで通用しますが、借金の債権者などの第三者にはまったく通用しないのです。
これは非常に重要な条件ですが、相続放棄の期限は3ヶ月以内であり、絶対に守らないといけません。
「3ヶ月以内」というのは、簡単にいうと、「自分が相続することを知ってから3ヶ月以内」です。
通常は、親が亡くなるのと、その事実を知るのはほぼ同日になりますが、親が疎遠であったとかの理由で、後日に親の死亡を知るケースもありますので、期限はあくまでも、「自分が親の死亡を知ったときから3ヶ月以内」です。
この3ヶ月以内という期限を過ぎてしまうと、基本的には、特別な事情がない限り、相続放棄ができなくなることを念頭に入れておいてください。
これもついうっかりミスをしやすい条件です。
相続放棄をする前に、親の財産に手をつけてしまうと、「単純承認」といって、親の財産を相続したことになってしまいます。そうすると、親の借金も背負わないといけなくなります。
どんな場合に単純承認になるか、一例をあげると、次のような場合です。
生前に親と同居していた場合、要注意です。親から生活費の管理を任されていて、親の預貯金を自由に使っていたとかあるかもしれませんが、親の死後にこれをやってしまうと、単純承認になってしまう可能性もあります。
もちろん、葬儀費用を親の預貯金から出したり、危険な建物や塀を修繕したりするのはOKですが、その限度を超えて、明らかに自分のために使うことは避けるべきです。
相続放棄は法的な手続きですので、家庭裁判所で行います。被相続人が住んでいた場所を管轄する家庭裁判所で行います。
手続きの流れは、簡単に書くと次のようになります。
「相続放棄申述書」というのは、相続放棄を申請するための書類です。裁判所のホームページからダウンロードすることができます。記入例もあります。
記入したら、必要書類と一緒に家庭裁判所に、窓口か郵送で提出します。
提出後、10日間程度で、家庭裁判所から相続放棄に関する質問が送られてきます。「相続放棄回答書」が同封されていますので、そこに回答を記入して返送します。
問題なければ、10日間程度で、相続放棄が認められ、家庭裁判所から「相続放棄申述書受理通知書」が届きます。
上記の「相続放棄申述書」を書くのは、そんなに大変ではありません。一番大変なのは、戸籍謄本などの必要書類を集めることです。
場合によっては、何箇所もの自治体から書類を取り寄せる必要もあります。一番時間がかかるところですので、早めに取り掛かりましょう。
相続放棄に必要な書類を一覧にまとめました。
全員に共通な書類はこちらです。
費用は、800円分の収入印紙です。あと、郵送用の切手数百円分です。
申述人(申請する人)が、配偶者、子供、親、兄弟姉妹のどれかによって書類が異なります。
親の借金を相続放棄したい子供の場合は、こちらの書類です。
他の人のケースは、こちらの記事で解説しています。
相続放棄をした後では、親の財産に絶対に手をつけないようにしましょう。
もし、親の預貯金の一部を使ったり、財産を名義変更したりしてしまうと、たとえ相続放棄をしても、単純承認をしたことになり、親の借金を背負うはめになります。
相続放棄をした以上、「親の財産とは完全に縁を切った」「赤の他人の財産だ」くらいに考えておけばよいでしょう。
1人だけの子供が相続放棄したり、子供全員が相続放棄したりした場合には、次の順位(順番)の相続人に、相続する権利が移ります。ということは、借金を返済する義務も同時に移るのです。借金を返済したくなければ、その人たちも相続放棄が必要になります。
子供は第1順位ですので、次の第2順位は、両親や祖父母です。
通常、両親や祖父母はすでに亡くなっていることが多いですので、次の第3順位である、兄弟姉妹に移ります。子供の立場からすると、伯父(叔父)・伯母(叔母)に当たる人です。
ここで、家庭裁判所は、次の順位の人に、「子供が相続放棄をしたので、相続する権利が移りました」と伝えてくれるわけではありません。次の順位の人がいる場合は、相続放棄をした人が、自分で伝える必要があります。
この際に、借金を背負いたくなければ相続放棄が必要であることも伝えましょう。そうしないと、その人が知らずに、相続する権利を得てから3ヶ月を過ぎてしまったら、相続放棄できなくなってしまいます。突然、借金を背負わされたら、大変な親族トラブルになるでしょう。
できれば、相続放棄をする前に、「自分が相続放棄をすると、あなたが相続人になります。親には借金があったので、借金を背負いたくなければ、あなたも相続放棄する必要があります。」ということを伝えておくのがよいでしょう。
上記と同じく、家庭裁判所は、借金の債権者に、相続放棄の事実を伝えてくれるわけではありませんので、相続放棄をした人が、債権者に自分で伝える必要があります。そうしないと、借金返済の督促がきてしまいます。
「相続放棄申述書受理通知書」のコピーを提示すれば良いこともありますが、金融機関などでは、「相続放棄申述書受理証明書」を求めてくるでしょう。「相続放棄申述書受理証明書」とは、相続放棄したことを証明する書類です。
こちらの書類は、家庭裁判所に下記の内容を揃えて申請すれば、もらえます。
相続放棄の手続きは、自分でも簡単にできますが、万が一、書類の不備などで相続放棄が認められないと、親の借金を背負わないといけなくなってしまいます。
もちろん、書類の不備があれば家庭裁判所が修正するように指示してくれますので、通常はそれに従えば大丈夫ですが、もし、相続放棄が許可されなかったら、どうしようという不安があるかもしれません。
相続放棄の手続きの期限は3ヶ月ですが、葬儀や財産の調査などで忙しかったりすると、あっという間に期限がきてしまいます。忙しかったので期限に間に合わなかったという言い訳は、通用しません。
もし、確実に相続放棄をしたいなら弁護士などの専門家に相談することをオススメします。
亡くなった親に借金がある場合、相続放棄をすれば、親の借金を背負う必要はなくなります。
親の借金を免れるために相続放棄するには、次の条件があります。
相続放棄した後は、次のことに注意してください。