成年後見制度とは?申立て手続きの流れと費用

介護 認知症

家族や親族が認知症になったり、高齢や障がいによって判断が衰えてきた場合、成年後見制度を利用して適切なサポートをしてもらうことが考えられます。

では、実際に成年後見制度を利用するにはどうすれいばいいのでしょうか。

この記事ではこの成年後見を実際に申立てする際の手続きの流れや費用について解説します。

1.成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や後遺症、知的障害などの理由で判断能力が欠けたり不十分になった人たちを保護し、サポートする制度です。

大きく以下の二つに分けることができます。

法定後見

裁判所に申し立てることで後見人等を選び、サポートを受ける制度です。
この中には、後見・保佐・補助という種類があります。

任意後見

元気なうちに後見人になってもらう人に頼んでおき、判断能力が衰えてきたらサポートしてもらう契約です。

本記事では、特に前者の法定後見について、流れや費用をみていきます。

2.法定成年後見の手続き方法(申立て等)・流れ

法定成年後見を利用するには、以下のような流れになります。
概ね、一連の流れを2ヶ月程度で行いますが、本人の状態によってはもっと長くかかる場合があります。

成年後見制度

それぞれのステップについて詳しく解説していきます。

①成年後見の申立て

まず、家庭裁判所に対して後見開始の審判の申し立てを行います。
この際の管轄裁判所は、認知症や痴呆である本人の住所地の家庭裁判所となります。
申し立ては本人のほか、配偶者、四親等以内の親族、検察官などが申立人となれます。

その際に以下のような書類の提出が必要となります。
ただし、裁判所によって細部が異なる場合もあるので、詳細はご自身が該当する家庭裁判所にお問い合わせください

申立書類

申立書、申立事情説明書、本人の財産目録や収支状況報告書とその資料、後見人等候補者事情説明書、親族の同意書がこれにあたります。
すべて家庭裁判所で取得することができます。

たとえば、東京には「東京家庭裁判所後見センター」があり、申立書類等をダウンロードできます。

戸籍謄本・住民票

本人のものと、後見人候補者のものそれぞれ1通が必要となります。

ただし、戸籍謄本は、本人と後見人候補者が同一戸籍の場合には、2人あわせて1通で足ります。
同様に、住民票も、双方が同一世帯に住んでいる場合は、1通で構いません。

本人の成年後見などに関する登記がされていないことの証明書

法務局に申請して取得できます。
各地の法務局の窓口で申請する他、東京法務局では郵送での申請にも対応しています。

※「本人の成年後見などに関する登記がされていないことの証明書」は、成年被後見人本人か、本人の四親等内の親族及びそれらの方から委任を受けた代理人等、請求できる人が限られていますので、ご注意ください。

診断書

主治医などに予め作成してもらう必要があります。

そして、申立ての際に必要となる費用、すなわち上記の書類等を集めるのにかかる費用は、以下の通りになります。

名目 金額
申立手数料(印紙代) 800円
郵送切手代 後見の場合は3,200円
(保佐・補助の場合は4,100円)
登記手数料(印紙代) 2,600円
戸籍謄本の交付手数料 1通につき450円
附票(住民票)の交付手数料 1通につき300円
診断書作成手数料 1万円程度(医療機関によって異なる)
「本人の成年後見などに関する登記がされていないことの証明書」の交付手数料 300円

また、申立ての際には、書類を提出するだけではなく、面接日を予約します。

予約した面接日の3日前まで(土日祝日は休みなのでご注意ください)には書類を提出していなくてはなりません。

②家庭裁判所による本人への事情聴取

事実調査や確認のために、本人、申立人、成年後見人候補者として記載した人を家庭裁判所に呼んで調査官から細かな事情を聴かれます。

本人がどうしても家庭裁判所に行けないやむをえない事情がある場合には、入院先等に家庭裁判所の担当者が向かいます。

本人の精神鑑定が行われる可能性

なお、この際に必要と認められる場合は精神鑑定が行われる場合もあります。
成年後見は本人の精神状態や判断能力を慎重に確認する必要があるため、全体のおよそ1割程度は鑑定が必要となるのです。
鑑定にかかる費用はおよそ5~10万円程度です。

通常、精神鑑定を行う医師は本人の主治医なので、申立ての前に、鑑定を引き受けてもらえるか主治医に確認しておくのがよいでしょう。

③審判

事情聴取の後、家庭裁判所が成年後見の審判をします。

基本的には成年後見人候補者の中から後見人が選任されますが、家庭裁判所の判断でこれら以外の弁護士などを選任することもあります。

④成年後見の登記

家庭裁判所から審判書謄本を受け取ります。

成年後見の申し立てが認められるとその旨が法務局で登記されて手続きは完了します。
こちらで登記を行う必要はありません。

ただし、登記事項証明書を交付してもらうには、550円がかかります。

3.成年後見制度を開始するのにかかる費用

改めて費用について考えてみると、書類の取得に細かいお金がかかるイメージです。

しかし、鑑定が必要になったら一気に10万円ほどかかる可能性もあるので、予め精神状態や判断能力を正確に証明できる、信頼性の高い診断書を用意できることが望ましいですね。

確実に手続きを進めるためには、主治医等ともよく話し合いながら、弁護士に相談するとよいでしょう。

なお、弁護士に申立てを代行してもらうのにかかる費用は、法律事務所によって異なりますので、当サイトでご自身にあう弁護士をお探しください。

「初回相談は30分無料」等としている事務所も多いので、ぜひ一度お気軽にご相談してみてはいかがでしょうか。

手続き費用を支援してもらえることもある

ちなみに、80%以上の自治体で、成年後見利用支援事業による助成金制度を用意しています。

経済的に費用を負担することが困難な方に対して、審判の申立てにかかる費用を援助したり、弁護士などが後見人になった場合に、後見人に支払わなければならない報酬を助成してくれたりするのです。

費用が心配な方は、ご自身の自治体にこういった制度が設けられていないか、ご確認ください。

4.成年後見の申請は簡単そうに見えて大変…

本記事で見たような4ステップだと、一見、手続き自体は簡単そうに見えるかもしれませんが、実際の成年後見の申し立て手続きは非常に煩雑化しています。

必要書類についても、個別の事情に応じて、様々な資料の提供を要求されるので、初めて手続きをする人にとっては大変です。なかなか先が見えず、そのため今後の予定が立てられないなどの支障も出てきます。

成年後見の手続き段階から弁護士に手伝ってもらうことで、信頼できる弁護士に後見人についてもらいやすくなることもあります。
まずは一度専門家の意見を仰ぐのがおすすめといえるでしょう。

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執筆
服部 貞昭(はっとり さだあき)
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を1000本以上、執筆・監修。
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