人口約133万9千人の山口県(令和3年1月1日現在、*1)。
県の三方が日本海や瀬戸内海に囲まれており、水産業が盛んで、中でも下関市のふぐは人気です。
そんな山口県ですが、県内の相続問題はどうなっているのでしょうか。
*1 山口県 人口移動統計調査
データでみる山口県の相続
平成27年度以降、相続税が身近な問題に
令和元年度、山口家庭裁判所に申し立てられた遺産分割事件数は153件でした(*2)。
これは、例えば東京家庭裁判所の1,522件と比較すると少なく見えますが、山口県の人口は東京都の10分の1よりやや少ないため、人口比で見れば、東京都とほぼ同じように遺産分割について争われていると考えることができます。
*2 令和元年度 司法統計「第44表 遺産分割事件数―終局区分別―家庭裁判所別」PDF
また、山口県の相続税の課税割合(全ての被相続人数に対して、相続税が課税された被相続人数の割合)は令和元年分が6.1%で、全国平均である8.3%を下回っています(*2)。
相続税は、遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかりますので、最低でも3,600万円以上の課税遺産がなければ発生しません。
したがって、課税割合から見れば、山口県では遺産額が3,600万円を超える被相続人は比較的少ないということになります。
しかし、だからといって相続で揉めにくいかというと、そんなことはありません。
冒頭のとおり、人口比では遺産分割事件数は東京と変わりませんし、統計的には遺産が少ないほど揉めやすい傾向にあるからです。
令和元年度の全家庭裁判所の認容・調停成立件数について、遺産価額別で見ると、実は「遺産価額が1,000万円以下」が2,448件で、全体の3割以上を占めています(総数は7,224件)。さらに、「5,000万円以下」まで範囲を広げると、約77%にものぼります。
つまり、相続トラブルは決してお金持ちの家庭だけの問題ではなく、むしろ一般的な家庭においてこそ起こりやすいのです。
*3 広島国税局「令和元年分 相続税の申告事績の概要」PDF
山口県の相続財産で多いのは預貯金、不動産
相続税額のある申告書のデータを基に作成された「相続財産の金額の構成比」をみてみると、相続財産のうち47.4%を占めるのが預貯金です(令和元年度分、前掲*2)。
また、この預貯金の比率は上昇傾向にあります。
預貯金は1円単位で分けることができるため比較的公平に分割できそうですが、「生前、一部の人が被相続人から受けた利益(特別受益)」などから、相続人間で争いにおそれもあります。
また、土地や家屋といった不動産が占める割合の大きさも無視できません。土地は19.9%、家屋は5.0%、合わせると約25%を占めています。
この10年でやや減少傾向にありますが、依然として相続財産の主要な構成の1つが不動産なのです。
不動産は分割するのが難しく、特に揉めやすい問題です。
相続人が上京していたり遠方にいたりすると、相続放棄するか、不動産についてだけ相続を拒否する可能性もあります。
とはいえ、買い手が見つからなくても放置しておくわけにもいかないので、実質、管理の押し付け合いになるかもしれないのです。
もちろん、その不動産が実家である場合、そのように押し付け合ったり人に売ったりするのも心苦しいでしょう。
被相続人が全く目途を立てないまま不動産を遺してしまうと、相続人にとって重荷になるおそれがあるのです。
山口県の地価
不動産の相続について考えるときに重要なのが、地価です。
山口県内で比較的地価が高いのは、下関市・山口市・岩国市などです。1㎡あたり10~20万円ほどの地域もあります(*3)。
観光地としての需要だけではなく、隣県・広島とのアクセスのよさなども地価の高さに起因します。
所有面積にもよりますが、これらの高額な地域に不動産を有していると、遺産評価額が跳ね上がる可能性があります。
また、逆にいえば、あまり地価の高くない地域に不動産を所有していると、売却がしにくいという難点があります。
いずれにせよ、不動産の所有者には、早いうちからそれがいくらくらいに相当するのか評価額を知り、相続対策をしておくことが求められるのです。
なお、評価額も年によって変動することには注意しなければなりません。
*4 山口県 令和2年地価公示(山口県分)の結果について「02公示価格一覧(山口県)」
山口県の弁護士事情
今回は、山口県の相続問題の中で、相続税・預貯金の相続・不動産の相続といった懸念点を挙げました。
しかし、実際にどんなことで揉めるのかは、つまるところ、具体的なケースによって異なります。
とはいえ、被相続人が健康なうちから遺言書等で相続対策をすることや、すでに相続が発生した後であってもできるだけ早いうちから弁護士に相談することがトラブル予防や早期解決に繋がります。
山口県には、現在、177人の弁護士が在籍しています(2020年2月1日現在、*4)。
東京都には20,000人を超える弁護士がいることを考えれば、やはり少なめといわざるをえません。
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同じ山口県内といっても、地域によっては、私たちがご紹介する法律事務所がお住まいから離れていることもあるかもしれません。しかし弁護士にもそれぞれ得意分野があります。
多少距離があっても、相続問題については、相続に強い弁護士に相談するのが一番安心です。
ぜひ弁護士探しのご参考にしてください。
*5 日弁連「弁護士会別 弁護士数」PDF