1.山梨県の特徴
山梨県は、海洋国家である日本では珍しく内陸部に位置しており、日本列島のほぼ中心にあます。甲府市を中心とする国中地方と、富士北麓の東部富士五湖地方に分けられます。
面積は全国32位ですが、その80%を山岳地が占めているため、人が住める面積としては全国45位となっています。
人口は令和3年7月1日現在806,446人で、全国42位、関東・甲信地方の中では、最も少なくなっています。平成29年は82万人台であり、年々ゆるやかな減少傾向にあります。
何といっても豊かな自然が魅力の県であり、北東部を秩父山地、西部を南アルプス、南部を富士山、北部を八ヶ岳と、四方を標高2,000m級の山に囲まれているため盆地が多くなっています。そのため、清々しいイメージとは違って意外にも夏は暑く、冬は寒い地域になります。特に夏は、日本一の暑さを過去に何度も叩き出しているほどです。
果樹農業が盛んであり、葡萄、桃、すももの収穫量は全国都道府県別で第1位、サクランボも全国有数の産地となっています。それに伴って、葡萄を使ったワインづくりも発達しており、国際的に高い評価を受けています。生産量も全国1位です。
また、大きな山々を流れる天然水は日本名水百選に選定されており、サントリーの「南アルプスの天然水」、アサヒ飲料の「富士山のバナジウム天然水」などミネラルウォーターの生産量も断トツの全国1位で、全国出荷量の約3割を占める主要産業となっています。
観光地は富士山をはじめとして、富士急ハイランド、富士五湖、武田神社などが全国的に有名です。特に富士山は平成25年に世界文化遺産に登録され、その人気はより一層加速しています。
2.山梨県の弁護士情報
山梨県の弁護士が所属している山梨県弁護士会には、令和3年4月1日現在で126名の弁護士が所属しています。
県内の遺産部活事件数が73件であったことから、1件あたり1.7人の弁護士がいることになりますが、専門分野があることを考慮すると、決して充足している人数ではありません。
平成30年6月時点では122名だったので、直近での大きな増減はないと思われますが、年々人口が減少している山梨県の現状を考慮すると、10年単位での将来では減少していくことが予想でき、弁護士探しが厳しい県になっていくでしょう。
弁護士の分布状況は、126名のうち9割以上が県の中心である甲府市に事務所を構えています。そのため、甲府市以外の市町村で近所の弁護士を探そうとすると困難に近いでしょう。
必然的に甲府市の弁護士に依頼せざるをないと考えられますが、幸い、甲府市は県の中央に位置しているため、各地から車で1時間程で行くことができ、大きな負担にはならないでしょう。また、上野原市や大月市のように東京都に近い場合には、都内の弁護士も選択肢になります。
さらに、山梨県弁護士会はより窓口を広げるため、県内各地で定期的に無料の法律相談会を設けています。山梨県弁護士会は小規模ではありますが、県民の法的トラブルに関して手厚い対応をしてくれる弁護士が揃っているので、積極的に利用すると良いでしょう。
ただし、新型コロナウイルスの影響によって中止せざるを得ない相談会もあるため、利用の際には前もって確認しておくことをおすすめします。
相続問題は一度始まってしまうと、こじれる一方となる可能性が高く、解決までに時間と労力を要します。最悪の場合、解決しないまま絶縁ということもあります。
山梨県は自然豊かで暮らしやすい田舎であることから、先祖代々その地に住まれている人も多い県です。親族をはじめとしてご近所との繋がりも強い傾向にあるため、相続問題が起これば一瞬で噂が回るでしょう。
現状、相続問題は少ない県ではありますが、都心にはない人間同士の問題も起こりやすいため、相続問題を感じたら、なるべく早い段階で相続問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
3.山梨県の相続の状況
山梨県の令和元年の相続税課税割合は6.43%で、全国平均の8.35%を下回りはしますが、人口が全国42位であることを考えると高めの割合となっています。
さらに推移を見てみると、平成26年は3.28%(平成27年相続税法大改正前であるため、低くなっています。)、平成28年は6.72%で年々上昇していることが分かり、今後の動向には注意が必要です。
現時点においては、全国平均よりは相続問題が起きにくい県ではありますが、徐々に増加傾向にあり、相続問題が身近になってきているといえるでしょう。
また、課税割合はその年に死亡した人数のうち、相続税がかかった人の割合になります。
課税割合が低いということは、相続税がかかるほどの高額の遺産相続が少ないということを表しており、相続の数ではないことに注意しなければなりません。相続自体は死亡した人の数ほど起こります。
相続問題は、遺産が億を超える富裕層よりも数千万円の一般的な相続の方が起こりやすいといわれています。課税割合に関わらず、相続問題は起きるということを忘れないようにしましょう。
それでは、山梨県の遺産分割事件数や地価などから弁護士の需要について解説します。
3-1.遺産分割事件数から見る山梨県の相続
令和元年度の司法統計によると、山梨県(「甲府」欄)の遺産分割事件数は73件で全国総数12,785件のわずか0.6%となっています。東京高裁管内の4,874件に対しても1.4%程度と、全国から見ても、裁判所が絡むほどの遺産分割事件はごく少数であることが分かります。
また、山梨県の令和元年の死亡者数が9,916人なので、相続全体の0.7%で遺産分割事件が起こったことになり、全国の死亡者数約86万人、1.4%と比較すると、山梨県はその半分程度であることが分かります。
家庭裁判所 | 総数 | 全国に対する割合 |
---|---|---|
全国総数 | 12,785 | 100.0% |
東京高裁管内総数 | 4,874 | 38.1% |
東京 | 1,522 | 11.9% |
横浜 | 789 | 6.2% |
さいたま | 586 | 4.6% |
千葉 | 455 | 3.6% |
水戸 | 244 | 1.9% |
宇都宮 | 205 | 1.6% |
前橋 | 242 | 1.9% |
静岡 | 415 | 3.2% |
甲府 | 73 | 0.6% |
長野 | 179 | 1.4% |
新潟 | 164 | 1.3% |
【参考サイト】司法統計情報 年報 詳細検索条件指定画面 | 裁判所 – Courts in Japan
3-2.地価と富裕層から見る山梨県の相続
相続の発生は地価と富裕層によって左右されます。
山梨県の主要な市町村ごとに、その特徴を解説します。
甲府市
甲府市は山梨県のほぼ中央に位置しており、南北に長くて東西に短い形をしています。
山梨県の県庁所在地となっており、人口も約19万人と県人口の20%以上が甲府市に居住しています。
甲府市の地価は県内3位と、上野原市や大月市よりも低くなっており、人口に比べて圧倒的に高いわけではありません。
甲府市は交通網が発達していないことから車社会であり、わざわざ地価の高い駅前に住む必要がなく、郊外に優良住宅地が形成されています。甲府駅北西部の山宮町には古くからの優良住宅地が見られ、県内の富裕層が居住していると考えられます。
上野原市
山梨県の東に位置しており、東京都西多摩群と神奈川県相模原市に隣接する東の玄関口です。中央自動車道やJR中央線で都心まで1時間程度と、簡単にアクセスすることができます。
その立地から都心へ通勤する人も多く、八王子市への通勤率は10.77%で、JR中央本線の駅に近い程、地価が高くなる傾向があります。地価は山梨県内1位で、平均坪単価は唯一20万円を超えています。
人口は約24,000人で県内では最も少ない市ではありますが、東京へ通勤している人が多いことから高所得者も多いと考えられます。
大月市
大月市は上野原市の西側に位置しており、人口も約25,000人と上野原市と同程度です。
発展している理由も東京へのアクサスの良さであり、JR中央本線の駅に近い大月1丁目が、市内では地価が最も高くなります。
その他の市町村
山梨県は、全体的に地価は高くありません。比較的高い上記3市を除く市町村では、地価に特別注意する必要はないでしょう。
しかし、前述の通り相続税の課税割合が上がっていること、相続は富裕層にだけ起こる問題ではないことをしっかり認識し、注意しておくことが重要です。