USJやグリコの看板で同じのなんばなど、観光地としても人気の「大阪府」。
人口は約882万人と、全国3位の多さを誇ります(*1)。
そんな大阪府ですが、出生数は年々減少傾向にある一方、死亡数は増加傾向にあるようです(*2)。今回は大阪府の相続事情について特集します。
*1 統計で見る都道府県のすがた2020(10頁) PDF
*2 平成30年人口動態統計(確定数)の概要(大阪府分) PDF
相続が発生しやすい大阪の特徴
大阪府は、東京都ほどではありませんが、歴史的に商業地域として栄えてきた地域であり、人口も多いです。
人が多い分亡くなる方の数も多く、相続の件数も全国の中で多い方です。
たとえば、大阪家庭裁判所での令和元年における遺産分割調停の件数は、927件です(*3)。全国では12,785件ですので、全国の遺産分割調停の7%以上が大阪で起こっていることになります。
大阪府より40万人近く人口の多い神奈川県(横浜家庭裁判所)が789件で、それを上回る多さです。
当事者間の話し合いだけでスムーズに遺産分割できるのであれば調停には進みませんから、遺産分割調停が多いということは、それだけ揉めるケースが多いといえるでしょう。
また、大阪では相続税の申告数も多いと考えられます。
具体的な指標としては、平成30年度の相続税申告にかかった被相続人の人数が7,748人で、全国4位の数になっています。
遺産分割調停の数や相続税の申告数の数からしても、大阪は相続発生件数の多い府といえます。
以下より、大阪府での相続問題の特徴を見ていきましょう。
大阪府近辺の相続財産には金融資産が多い
令和元年の大阪国税局管内の相続税申告状況によると、相続財産の構成比は現金・預貯金等と有価証券を合わせて53.2%で、過半を占めています(*4)。
全国平均は50%未満ですから、大阪府及びその近辺相続では、金融資産が多いことがわかります。
他県では土地や家屋が大きな割合を占めているところも多いので、一つの特徴です。
不動産は処分に困ることもあるのでむしろ敬遠し合う場合もありますが、金融資産は欲しがる相続人がほとんどでしょうから、争いごとの種になりやすいです。
現金や預貯金ならまだ分けやすいかもしれませんが、有価証券は銘柄も金額も違うので、均等に分けることが大変です。
また、有価証券の相続が多いということは、会社のオーナーが多いことも予想されます。
多数の労働者の人生をも左右する会社の相続となると、ますます話がこじれやすいでしょう。
*4 大阪国税局「令和元年分の相続税の申告状況について」4頁 PDF
不動産相続|大阪府は地価が高い
とはいえ、もちろん不動産の相続についても、揉める発端となります。
大阪府は、全国的に見ても、地価の高い地域です。
平均地価は、商業地や工業地では東京に次いで2位、住宅地でも3位になっています(*5)。
ただ、大阪府の中でも地価が高い地域は、都心や都心に近いエリアに集中しています。
大阪市内では、地価が高いことによって遺産の総額が高額になり、相続税の申告件数が多くなることにつながっていると考えられます。
大阪府で地価が高いエリアとしては、大阪市の中でも中央区と北区です。
地価平均は中央区は約346万円/㎡、北区は約342万円/㎡で、大阪市全体の地価平均約96万円/㎡ですから、この2区の高さが際立ちます。
特に中央区には、平成30年度の基準地価格が1680万円/㎡で全国10位の地点もあります。
さらに死亡者に対する相続税課税件数の割合である課税割合や相続1件における納付税額も飛び抜けて高く、東京都よりも高い数値となっています。
このように、大阪府では、特に大阪市内の都心エリアにおいて地価が高くなっているので、これらの地域に不動産を所有している場合には、将来相続問題が起こる可能性が高いと言っても良いでしょう。
*5 令和2年都道府県地価調査「都道府県別・用途別平均価格」 PDF
大阪府は富裕層が多い
さらに、大阪府は全体的に富裕層が多いことが予想されます。
大阪は、歴史のある商人の町であり、昔から地元に住んでいる地主も多いですし、大阪での商売で成功を収めて多額の資産を築いた人などもいます。
SUNTORYやPanasonicをはじめとして、本社を大阪に置いている大企業も少なくありません。
さらに、大阪は日本全国へのアクセスが良く便利なので、他県出身で成功を収めた人でも大阪に居住しているケースもあります。
大阪府には、大阪市の中心部にアクセスの良い近郊地域の住宅地も多いです。
茨城市や枚方市、豊中市や箕面市などにも大阪市に通勤する家庭を中心とした住宅地が広がっていますし、昔からの地主の家系もたくさんあります。
たとえば、大阪府内の八尾市などにも地主がいますが、これらの地主は、1つ1つの土地価格がさほど高くなくても、所有する不動産の数が多いので、遺産総額がかなり高額になってくるケースが見られます。
このようなことからして、大阪府は、全国的にも比較的富裕層が多い地域であると考えられます。
特に、現在は地価が非常に高くなっている大阪市内に昔から土地をたくさん所有している家族などでは、将来の相続トラブルが予想されるので注意が必要です。
早いうちから弁護士に相談して遺言を残すなどして、相続が争続にならないように備えておく必要があるでしょうし、生前贈与を活用するなどして、相続税の節税対策もしておくべきです。
弁護士の数が多い大阪府
相続トラブルに備えるためには、信頼できる弁護士を探す必要があります。
弁護士であれば、そもそも被相続人がどんな財産を所有しているのか調べてくれたり、トラブル予防に効果的な遺言書作成を手伝ってくれたり、遺言執行者に就任して遺言書の内容を確実に実現してくれたりするので、相談しておくと安心です。
仮に遺産分割トラブルが起こってしまった後でも、遺産分割協議の代理人や遺産分割調停の代理人となって、プロとして紛争相手と話し合ってくれるので心強いです。
さらに、弁護士を探そうとしている方にとって朗報です。
実は、大阪府は全国的に見ても弁護士が多い地域です。
日本の弁護士の全体数は41,118人ですが、東京に一極集中しており、東京には約19,577人います。大阪府はこれに次いで弁護士の多い地域であり、4,651人の弁護士が大阪府で開業しています(2019年度3月31日調査*6)。
どの弁護士に相談するべきか吟味しよう
弁護士の数が多いということは、それだけ依頼先の選択肢が多いということでもあります。
弁護士探しに困ることはないというメリットがある反面、逆に、「どの弁護士が相続に強いか」ということで悩んだり迷ったりする可能性は十分考えられます。
報酬、実績、事務所の場所など、依頼するときに重視するポイントは人それぞれでしょう。
当サイトでは大阪府の相続に強い弁護士を厳選してご紹介しています。
ぜひ各弁護士事務所のページを比較して、ご自身の理想の先生を見つけてください。
弁護士選びの際のアドバイスをさせていただくとすれば、相続問題を依頼する場合、相続税や不動産登記などの問題が発生するので、税理士や司法書士と提携関係のある弁護士に依頼すると、ワンストップサービスを受けられるので便利です。
また、大阪には、市内・市外を問わず、地主が多い特徴がありますが、大阪市内や近郊の市街地、農地など、たくさんの土地や高額な土地を所有している家庭では、土地(不動産)関係に強い弁護士を探すのも1つの方法です。
今はまだ具体的に相続問題が起こっていない場合でも、遺産の中に不動産が含まれている場合には将来遺産トラブルが起こる可能性が高いので、遺言書作成を含めて一度相続問題に強い弁護士に相談に行ってみるとよいでしょう。