不在者財産管理人とは?選任が必要なケースと選任方法のまとめ

不在者財産管理人とは?選任が必要なケースと選任方法のまとめ

法定相続人の中に「行方不明者(不在者)」や「生存不明者」がいた場合、どのように相続手続きをすれば良いでしょうか。
実は、「不在者財産管理人(ふざいしゃ-ざいさん-かんりにん)」という、特別の財産管理人を別途選任する必要があります。

この記事では、不在者財産管理人について解説します。選任が必要な場面と条件、選任の手続き、報酬や費用なども解説するので、参考にしてください。

1.不在者財産管理人とは?

不在者財産管理人とは、相続時における不在者の代理人を言います(民法25条以下)。
ここで言う「不在者」とは相続権を有する人で、1年以上に渡り行方不明が続いている人を指しています。

このような行方不明者がいる相続の場面では、家族や他の相続人などの利害関係人、検察官からの請求により、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に対して申立てるという制度があります。

2.不在者財産管理人を選任する理由

不在者財産管理人を選任する理由ですが、遺産分割協議をしても「相続人全員そろわない限り、その話し合いが無効にされる」からです。

遺産分割協議の原則は、全員参加の元に話し合いをすることです。
したがって、行方不明・音信不通だからと言って、その相続人を除いて話し合いを進めることはできません。
そのため、代理人となる不在者財産管理人を立てて、遺産分割協議を始められるようにします。

3.不在者財産管理人の役割

もっとも、遺産分割協議への参加などは、本来、不在者財産管理人の権限ではありません。

不在者財産管理人は、その名の通り、主として財産の管理を役割としています。

具体的には次の2つの行為が、権限として認められています。

  • 財産を現状のまま維持する行為(保存行為)
  • 財産を利用・改良する行為

ではなぜ遺産分割協議に出てくるのかというと、「家庭裁判所の許可」を得ることで遺産分割協議などに参加できるようになるからです。
具体的には「権限外行為許可」と言う手続きにより、家庭裁判所から遺産分割手続きの許可が下りれば、不在者財産管理人も遺産分割協議に参加できます。
遺産分割協議書への押印も認められており、不在者の代理人として手続きが可能です。

4.不在者財産管理人の職務終了のタイミング

不在者財産管理人の職務が終了するタイミングは、次の3つがあります。

  • 不在者が現れる
  • 不在者の死亡が判明する
  • 不在者の失踪宣言がされる

以上の3つの場合に、不在者財産管理人は職務を終了することができます。なお、不在者が現れた場合には、相続財産は不在者に帰属されます。また、死亡の判明もしくは疾走宣言がされた場合には、その不在者の相続人に財産が相続されることになっています。

ちなみに、不在者財産管理人は本人が生きて帰ってくるか、失踪宣告がされるか死亡が判明するまでその職務を継続することになります。そのため、遺産分割協議が終わればそれで職務期間は終了!さっさと辞任だ!とはいきませんのでご注意ください。

不在者財産管理人の制度を利用すれば、相続人の中に所在不明の人がいたとしても、その帰りをいつまでも待つことなく遺産分割協議を進めることが可能になります。

5.不在者財産管理人の選任方法

候補者

不在者財産管理人になれる人は、次の人たちです。

  • 相続に利害関係を生まない被相続人の親族
  • 弁護士や司法書士などの専門家

一般的には「被相続人の親族」から、不在者財産管理人は選出されます。ただし、相続に利害関係を生まないことが条件です。利害関係を生む人が代理人となると、不在者や他の相続人の利益を害する恐れがあるからです。

また、もし適当な親族がいない場合には、家庭裁判所が弁護士や司法書士などの専門家を選任します。この適当な親族がいない場合とは、そもそも親族がいない場合や、親族はいるけれども利害関係を生む場合などが考えられます。

選任の要件

不在者財産管理人の選任請求をするには、次の要件を満たす必要があります。

  • 不在者が1年以上行方不明であること
  • 利害関係者、検察が選任請求をすること

基本的に「不在者が1年以上、行方不明である」場合で、相続が進まない場合に選任請求をすればいいでしょう。逆に言うと不在者がいても、その期間が1年未満の時には選任することができないので注意が必要です。

選任するまでの流れ

不在者財産管理人を選任するには、次のステップを踏む必要があります。

(1)申立書などの必要書類を準備する
(2)家庭裁判所に書類を提出し、申立する
(3)家庭裁判所による審理を受け、審判が下される

まず申立人となる利害関係者、または検察は不在者財産管理人の申立書を作成します。また不在者自身の戸籍謄本、戸籍の附票、候補者の住民票、利害関係を証明する書類などを用意します。

そして、これらの必要書類が準備できたら、不在者の居住地を管轄する家庭裁判所に申立てします。もし、居住地がない場合は最後の住所地を管轄する家庭裁判所、最期の住所地もない場合には財産所在地の家庭裁判所に申立てましょう。

申立を受けた家庭裁判所は、その資料に基づき不在者財産管理人の審理をします。その結果、必要と判断されれば、不在者財産管理人の審判が下されます。また、不要と判断されれば、棄却されます。これが選任までの流れです。

選任後の流れ

不在者財産管理人を選任した後には、その代理人に対して家庭裁判所から権限外行為の許可を受ける必要があります。この申立の手順は、不在者財産管理人の選任手順と変わりません。

ただし、権限外行為許可の申立書を作成する必要があります。この申立も無事に許可されてはじめて、不在者財産管理人は不在者の代理人として、遺産分割協議に参加することができるようになります。

6.不在者財産管理人の報酬&費用

不在者財産管理人の申立て自体を自分で行えば、かかる費用としては収入印紙代の800円と郵送切手代数千円程度だけです。

ただし、これらの手続きをまとめて弁護士に依頼した場合は数万円程度の弁護士報酬が発生します。

また、不在者財産管理人候補者として弁護士などを記載した場合は、家庭裁判所の判断により不在者の財産からその報酬が支払われることになります。

まとめ

相続人の行方不明と不在者財産管理人について解説しました。

相続人が音信不通や、行方不明などになると、遺産分割協議が進められません。この場合には不在者財産管理人が代理人となり、話し合いに参加することができます。

ただし、権限には限りがあるため、別途「権限外行為許可」の申立をしましょう。

また、もし分からないことがあれば相続弁護士に相談しても良いでしょう。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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