相続登記とは|登記の必要性や未登記リスク、手続をわかりやすく解説
相続登記とは、相続により不動産の所有権が移転した場合に、その不動産の所有権移転登記を行うことです。不動産は、登記する…[続きを読む]
法務局での相続登記申請を行う場合、どんな必要書類があるのでしょうか。
本記事では、相続登記の際に提出する必要のある書類をケース別に一覧形式でまとめていきます。
また、各書類の有効期限があるのかどうかや、記事最後では、相続登記に使った書類を他の遺産の名義変更等にも使いたい場合にどんな方法があるのかについてもご説明します。
なお、そもそも相続登記とは何なのかおさらいしておきたい方はこちらの記事を先にお読みください。
目次
相続登記の申請は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
そこでの必要書類は、相続の決め方によって若干異なります。
「相続の決め方」は、大きく分けて下記の3つに大別できます。
本記事では、この3つのケース別に解説していきますが、その前に必要書類の有効期限について説明しておきます。
これからご紹介する必要書類に、基本的に有効期限はありません。
しかし、固定資産評価証明書(登録免許税の計算に必要)など、不動産に関する書類は基本的に最新版(相続登記申請当時の年度のもの)が求められます。
また、相続人の戸籍謄本等の書類は、被相続人が死亡した日以降に発行したものに限られるのでご注意ください。
それでは、いよいよ不動産登記の必要書類についてです。
まず、前述した①遺言書/②遺産分割協議/③法定相続分のケースで、どの場合の相続登記でも必ず必要となる書類は、以下の通りです。
必要書類 | 取得場所 | 備考 |
---|---|---|
被相続人の出生~死亡の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍・原戸籍 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 | 遺言書による相続登記の場合は、「被相続人の死亡時の戸籍謄本」のみでよい |
被相続人の住民票(または戸籍の附票)の除票 | 被相続人の住所地または本籍地の市区町村役場 | |
相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | 被相続人の死亡日以降に発行。遺言書による相続登記の場合は「不動産取得者の戸籍謄本」でよい |
不動産取得者の住民票 | 不動産取得者の住所地の市区町村役場 | 被相続人の死亡日以降に発行 |
不動産の固定資産評価証明書 | 不動産所在地が… 東京都:都税事務所 それ以外の地域:市区町村役場 |
最新年度のもの。自治体によって、郵送での取得が可能な場合あり |
登記申請書 | 自分で作成 | 作成例:法務局(※) |
※ 「不動産登記の申請書様式について」(法務局)から、「17)所有権移転登記申請書(相続・公正証書遺言)」、「18)所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言)」、「19)所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」、「20)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」、「21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」のうち該当するののを選択ください。
第三者に委任して手続きを行う場合は、「委任状」の提出も必要になります。
相続登記の必要書類である「登記申請書」を記入する際には、登記事項証明書(登記簿謄本)で確認し、正確に行わなくてはなりません。
その意味では、提出こそしないものの、登記事項証明書の用意も必須といえるでしょう。
戸籍謄本をはじめとする戸籍関連書類の取得方法などについては、以下で詳述しています。
以上の書類は必ず必要ですが、続いて、これらにプラスして、各ケースごとに必要になってくる書類をご紹介します(クリックでジャンプします)。
①遺言書の通りに相続登記する場合
②遺産分割協議による相続登記をする場合
③法定相続分に従って相続登記をする場合
被相続人の遺言書がのこされていた場合で、その通りに相続登記するときは、遺言書が必要です。
自筆証書遺言や秘密証書遺言は検認しておく必要があります。
検認とは、遺言書の偽造等を防止するため、家庭裁判所で遺言書を開封することです。
被相続人の遺言書はのこされておらず、相続人同士の遺産分割協議によって、法定相続分とは異なる相続を行う場合は、必須書類に加えて以下の書類が必要です。
遺産分割協議書は、遺言書がなく、法定相続分とは異なる割合で相続する場合に、相続人同士で協議した結果を書き記す書類です。
法定相続人全員の署名と押印が必要になります。
遺産分割協議書の書き方については以下の記事をお読みください。
印鑑証明書は、印鑑が本物であるということを証明するための書類です。
各相続人の住民票がある市町村役場の窓口で取得しますが、他にも、住民基本台帳カードをお持ちの方は、マルチコピー機のあるコンビニエンスストアでも発行できます(24時間営業のコンビニでも、印鑑証明書の発行時間帯は限られている場合があります)。
被相続人の遺言書がのこされておらず、民法で決まっている法定相続分通りに相続する場合、追加で以下の書類が必要です。
相続関係図は、被相続人と相続人全員の関係を図式化してまとめたもので、自分で作成できます。
相続関係説明図については、以下のPDF最後のページに記載例が載っています。
法定相続人の中で相続放棄をした人がいる場合には、家庭裁判所からその人に届いた相続放棄申述受理通知書も必要です。
もし相続放棄した人が通知書を紛失していた場合、別途「相続放棄申述受理証明書」を裁判所に発行してもらう必要があります。
以上のように、相続登記の際に必要となる書類は、どのように相続を決めたかによって少しずつ異なります。
いずれにせよ、たくさんの書類を収集しなければならないように思えます。
ご自身で必要書類を集めるのが困難な場合には、弁護士などの専門家に依頼してみることもおすすめです。
当サイトでは、全国の選りすぐりの事務所をご紹介していますので、ぜひご自分にあった事務所・弁護士探してみてください。
ここから先は、以下のことを補足説明します。
不動産の相続登記の申請時には多くの書類を提出しなければなりませんが、預貯金など、その他の遺産相続時にも同じ書類が必要になることがあります。
対応策として、①書類の原本還付を受けるか、②法定相続情報証明制度を利用することが挙げられます。
予め提出書類のコピーを取り、そのコピーをホチキスなどでとじて、コピー版の余白に「右は原本に相違ありません」と記入して、申請人が署名・押印します。
この署名押印したコピーと、登記申請書、原本を一緒に窓口に提出すれば、後日原本還付を受けることができます。
ただし、原本が還付されるのは相続登記が完了した後になります。
また、戸籍謄本・戸籍抄本、除籍謄本、改製原戸籍については、原本還付を請求せずとも、相続関係説明図を提出すれば返却してもらえます。
法定相続情報証明制度は、2017年から発足した比較的新しい制度で、名義変更の手続き先が2ヶ所以上ある人におすすめです。
戸籍関連書類の提出先が複数ある場合(銀行、登記所など)、従来は提出先ごとの書類収集が必要でした。
しかし、法定相続情報証明制度の開始で、一度集めた書類をもとに法定相続情報一覧図(※)を作成すれば、それを複数の提出先に使い回すことができるようになったのです。
詳しくは以下の記事をお読みください。
※「法定相続情報一覧図」は法務局の認証が必要なので、それが不要な「相続関係説明図」とは異なります。
「権利証」とは、不動産の所有権を取得する際に法務局から交付される書類のことです。
現在、正式には「登記識別情報」といいます。
不動産の売買は大きな契約なので、売買の際には、売主が法務局に権利証を出すことで不動産売却の意思を証明しなくてはなりません。
これに対して、相続登記の場合、相続は被相続人の死亡と同時に自然的に発生するものなので、「権利証」による証明は不要になるのです。
ただし、保存期間が切れて被相続人の住民票が発行されない場合など、被相続人の最後の住所と登記記録上の住所が繋がっていないときや、遺贈によって不動産の所有権を第三者に譲るときなどは必要になります。
被相続人が外国人であるというケースも少なくはありません。
こうした国際相続の場合については、以下の記事をお読みください。
本記事では、相続登記の必要書類についてご説明しました。
相続登記では、必ず必要となる書類(被相続人や相続人の戸籍謄本等、被相続人や相続人の住民票の除票、固定資産評価証明書、登記申請書や登記事項証明書)に加えて、〔遺言書/遺産分割協議/法定相続分〕のうち、どれで相続分を決めるかによって、適宜他の書類の提出も求められます。
名義変更をしなければならない遺産が多い場合など、同じ書類がたくさん必要になるときには、コピーを利用した原本還付や、法定相続情報証明制度などの利用を賢く使っていくことがおすすめです。
とはいえ、これだけ多くの書類を漏れなく収集することには不安も残るでしょうから、ぜひ弁護士へのご相談も検討してみてはいかがでしょうか。