相続登記とは|不動産名義変更手続の必要性や未登記のリスクを解説
相続登記が義務化されました。ここでは、相続登記とは何か、相続登記の必要性や放置するリスク、手続の流れ、費用、自分で申…[続きを読む]
相続登記を申請する際に提出すべき必要書類には、相続の方法にかかわらず共通するものと、相続の方法によって異なるものとがあります。
本記事では、相続登記の際に提出する必要のある書類をわかりやすく一覧形式でまとめています。
目次
不動産の相続方法にかかわらず、すべての相続登記申請に共通した必要書類は以下の通りです。
必要書類 | 取得場所 | 有効期限 | 備考 |
---|---|---|---|
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍・原戸籍 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 | なし | 遺言書による相続登記の場合は、「被相続人の死亡時の戸籍謄本」のみで可 |
被相続人の住民票(または戸籍の附票)の除票 | 被相続人の住所地または本籍地の市区町村役場 | なし | ー |
相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | なし | 被相続人の死亡日以降に発行されたもの。遺言書による相続登記の場合は「不動産取得者の戸籍謄本」で可 |
不動産取得者の住民票 | 不動産取得者の住所地の市区町村役場 | なし | 被相続人の死亡日以降に発行 |
不動産の固定資産評価証明書 | 不動産の所在地 東京都:都税事務所 それ以外の地域:市区町村役場 |
なし | 最新年度のもの。郵送での取得が可能な自治体あり |
登記申請書 | 申請者が作成 | なし | 作成例は法務局*のHPからダウンロード可能 |
委任状 | 申請者と代理人が作成 | なし | 代理人により申請する場合に必要 |
*法務局の「不動産登記の申請書様式について」の「2-1 相続」から、該当するものを選択ください。
戸籍謄本をはじめとする戸籍関連書類の取得方法などについては、以下で詳述しています。
登記申請書は、「不動産の表示」の部分を申請する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を参照して正確に記載しなければ、法務局で受理してもらえません。
そのため、登記事項証明書は、提出こそしないものの、相続登記申請書を作成する際の必要書類といえるでしょう。
続いて、これらにプラスして、各ケースごとの必要書類をご紹介します。
上記の一覧からお分かりの通り、相続登記の申請で提出する必要書類には基本的に有効期限はありません。
ただし、相続人の戸籍謄本等の書類は、被相続人が死亡した日以降に発行したものに限ります。
また、2019年の住民基本台帳法の改正により、住民票の除票の保存期間が5年から150年に延長されていますが、相続登記を長期間放置していると、発行されない可能性があります。
固定資産評価証明書は、基本的に相続登記申請年度のものが求められます。
一般に「権利証」として知られる「登記済権利証」は、不動産の所有権を取得する際に法務局から交付される書類のことで、現在は登記簿がデジタル管理されているため、12桁の数字である「登記識別情報」になっています。
相続登記には、登記済権利証や登記識別情報は必要ありません。
ただし、保存期間が切れており被相続人の住民票の除票が発行されないなど、被相続人の最後の住所と登記記録上の住所が繋がっていない場合や、遺贈によって不動産の所有権を第三者に譲る場合などには必要になります。
次に、相続の方法によって、上記の書類に追加すべき必要書類を解説します。
遺産を相続する方法には、以下3つの方法に大別できます。
被相続人の遺言書の通りに相続する場合には、以下の書類を上記のものに追加して申請します。
被相続人の遺言書通りに相続登記をするには、上記の必要書類に加えて遺言書が必要です。
自筆証書遺言(法務局で保管したものを除く)と秘密証書遺言は、開封前に検認しておく必要があります。
相続人同士の遺産分割協議によって、法定相続分とは異なる相続を行う場合は、共通する必要書類に加えて以下の書類が必要です。
遺産分割協議書は、遺言書がなく、法定相続分とは異なる割合で相続する場合に、相続人同士で協議した結果を書き記す書類です。
法定相続人全員の署名と実印での押印が必要になります。
印鑑証明書は、印鑑が本物であるということを証明するための書類で、遺産分割協議書が相続人全員の合意のもとで作成されたことを証するために添付します。
各相続人の住民票がある市町村役場の窓口以外でも、マイナンバーカードや住民基本台帳カードをお持ちの方は、マルチコピー機のあるコンビニエンスストアでも発行できます(24時間営業のコンビニでも、印鑑証明書の発行時間帯は限られている場合があります)。
被相続人が遺言書を遺しておらず、民法で決まっている法定相続分通りに相続する場合には、追加で以下の書類が必要です。
共同相続人に相続放棄をした人がいれば、家庭裁判所からその人に届いた相続放棄申述受理通知書も必要です。
もし相続放棄した人が通知書を紛失していた場合、別途「相続放棄申述受理証明書」を裁判所に発行してもらう必要があります。
相続関係説明図は、被相続人と相続人全員の関係を図式化してまとめたもので、自分で作成できます。
相続関係説明図は、相続登記の申請に必須の書類ではありません。しかし、添付すると戸籍謄本の還付請求が簡単になります。
預貯金など他の遺産相続手続きにも、相続登記と同じ書類が必要になることがあります。
相続登記では、以下2つの方法を採ることができます。
原本還付制度を利用すると、登記完了後に、原本を返却してもらうことができます。
まず、予め提出書類のコピーを取り、そのコピーをホチキスなどでとじて、コピー版の余白に「右は原本に相違ありません」と記入して、申請人が署名・押印します。
この署名押印したコピーと、登記申請書、原本を一緒に窓口に提出すれば、後日、相続登記の完了後に、原本の返却を受けることができます。
ただし、戸籍謄本・戸籍抄本、除籍謄本、改製原戸籍については、原本還付を請求せずとも、相続関係説明図を提出すれば返却してもらえます。
法定相続情報証明制度は、相続による名義変更手続きが多い場合には利用すると便利です。
従前は、戸籍関連書類の提出先が複数あると、従来は提出先ごとに書類収集が必要でした。
しかし、一度集めた書類をもとに法定相続情報一覧図(※)を作成し、法務局に認証してもらうことで、写しを複数の提出先に使い回すことができます。
詳しくは以下の記事をお読みください。
※「法定相続情報一覧図」は法務局の認証が必要なので、それが不要な「相続関係説明図」とは異なります。
ここまで、相続登記の必要書類についてご説明しました。
相続登記では、共通する書類に加えて、相続の方法によって提出すべき書類が異なります。
名義変更をしなければならない遺産が多く同じ書類がたくさん必要になるときは、コピーを利用した原本還付や、法定相続情報証明制度などの利用を賢く使うと手間や費用を省けます。
とはいえ、これだけ多くの書類を漏れなく収集するのは手間も時間もかかります。
登記は司法書士の専門領域ですが、最近では司法書士との連携で、相続登記にも対応する弁護士事務所も増えています。
相続した不動産は、相続人間の争いの原因になることが多くなります。相続不動産が原因でお悩みの方は、登記も含めて相続に強い弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。