【図解】法定相続人の範囲と相続分|相続できる人が一目で分かる
親族の中で相続人になれる範囲や優先順位、その人がもらえる相続分は民法で決まっています。「結局誰がどれくらい相続できる…[続きを読む]
被相続人が亡くなり相続が起こると、法定相続人全員が合意した遺産分割協議に基づき相続します。しかし、遺言書や、贈与、遺贈などがあると、相続人の遺留分が侵害されている可能性があります。
相続人が遺留分を侵害されていると、「遺留分侵害額請求」をすることで、遺産の追加取得が認められる可能性があります。
では、遺留分とは、どのようなものでしょうか?
目次
遺留分は、被相続人の死後、遺された相続人の生活を保障するために、一定の法定相続人に法律上認められる、最低限の遺産の取得分です。
たとえば、「相続人●●に遺産全てを相続させる」という遺言が残され、その通りに執行されれば、他の相続人は、本来貰えるはずだった遺産を貰えなくなってしまいます。
また、婚姻していた被相続人が、2人兄弟の子供の長男に財産の3分の2を生前に贈与してしまっていれば、資産の3分の1となった遺産を配偶者と長男、次男の3人で遺産分割することになり、公平性に欠けてしまいます。
そこで、このような場合に備えて規定されているのが、法律上の権利「遺留分」です。
遺留分が認められるのは、「兄弟姉妹以外の法定相続人」です。それ以外の第三者には遺留分はありません。
兄弟姉妹は、法定相続人の中でも被相続人とのつながりが他の親族に比べて薄く、遺留分が認められません。遺留分が認められる相続人を「遺留分権利者」と言います。
代襲相続は、被相続人の相続開始前に、相続人となるべき推定相続人が死亡している場合や、相続欠格や相続排除などで相続権を失っている場合に、これら推定相続人の子や孫などの直系卑属が代わりに相続することをいい、代襲相続をする子や孫を代襲相続人といいます。
ただし、相続放棄をすると、「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる」(民法939条)ため、代襲相続が発生することはありません。
代襲相続人にも、代襲される遺留分権利者と同じ割合の遺留分が認められます。
例えば、被相続人の前に被相続人の子が亡くなっており、孫が2人いる場合には、被相続人の子と同じ割合の遺留分を孫2人で頭割りすることになります。
被相続人の兄弟姉妹は遺留分権利者ではないため、実質的に代襲相続で遺留分の権利を得るのは、被相続人の子の代襲相続人のみです。
では、遺産のどのくらいの割合が遺留分として認められるのでしょうか。
民法は、次のように相続人の遺留分を保障しています。
上記条文で定められている「2分の1」や「3分の1」は、遺産全体に占める遺留分権利者すべてが有する遺留分の割合で、「総体的遺留分」と呼ばれています。
各遺留分権利者が請求できる「個別的遺留分」は、この「総体的遺留分」を遺留分権利者の法定相続分に従って分配します。
総体的遺留分について、図解を使ってご説明しましょう。
民法1042条2号が規定する遺留分が遺産全体の1/2を占めるパターンです。この1/2を遺留分を侵害された各遺留分権利者で分配します。
民法1042条1号が規定する遺留分が遺産全体の1/3を占めるパターンです。この1/3を遺留分を侵害された父母で分配します。
法定相続人が兄弟姉妹しかいない場合や、法定相続人が存在しない場合には、遺留分が発生しません。
ここまでご説明した総体的遺留分と、個別的遺留分との関係を示すと、以下の通りです。
相続人 | 総体的遺留分 | 個別的遺留分 | |
---|---|---|---|
配偶者 | その他相続人 | ||
配偶者のみ | 1/2 | 1/2 | - |
配偶者と子 | 1/2 | 1/4 | 1/4を子の人数で頭割り |
配偶者と直系尊属 | 1/2 | 2/6 | 1/6を直系尊属の人数で頭割り |
配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | 1/2 | なし |
子のみ | 1/2 | - | 1/2を子の人数で頭割り |
直系尊属のみ | 1/3 | - | 1/3を直系尊属の人数で頭割り |
兄弟姉妹のみ | なし | - | - |
より詳細な計算方法はについては、以下の記事で解説しています。ご一読ください。
兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限の遺産取得分である遺留分が認められるとは言っても、当然に遺留分の支払いを受けられるわけではありません。
遺留分権利者が実際に遺留分の返還を受けるには、遺留分の請求をする必要があります。この請求の意思表示を「遺留分侵害額請求」と言います(2019年6月30日までは「遺留分減殺請求」という名称でしたが、概要は同じです)。
ただし、遺留分侵害額請求権は、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことの両方を知った時から1年間行使しなければ、時効によって消滅し、請求できなくなってしまいます*(民法1048条)。
なお、遺留分侵害額請求の具体的な手続きについては、以下の記事で解説しています。
*遺留分侵害額請求請求の時効について:相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知らなかったとしても、相続開始から10年経過すると、時効となります。
法律上、遺留分が認められるとしても、被相続人や相続人が、特定の相続人に対して「あいつには遺産を渡したくない」と考えてもおかしくはありません。
そんなときでも、必ず遺留分は認められるのでしょうか?
結論から言うと、民法で認められた「欠格」(民法891条)や、「廃除」(民法892条)により相続人としての地位を失わせることが出来ることがあります。ただし、欠格や廃除に該当したとしても、相続権を失った者の子や孫などの直系卑属が遺留分を代襲相続することになります。
もっとも、相続欠格には、被相続人への殺人や殺人未遂で刑に処せられるなどの「欠格事由」が必要となり、廃除には、虐待や重大な侮辱などの「廃除原因」を認めてもらうために家庭裁判所で厳しい審判を受けなければならず、あまり現実的ではありません。
しかし、息子に事業を継がせたい、配偶者の老後のためにできるだけ多くの遺産を遺したいなど、遺留分を侵害しても、公平性を欠く相続をさせたいこともあるかと思います。
そんなとき手段として考えられるのが、「遺留分の放棄」です。
遺留分の放棄が認められると、遺留分を侵害する内容の遺言書を残したとしても、遺留分侵害額請求が認められなくなります。
ただし、遺留分の放棄は遺留分権利者自身が「家庭裁判所に審判の申立て」をしなければらず、協力が不可欠です。
弁護士など、相続の専門家を交えて事前に協議をし、十分な生前贈与をするなどして、遺留分権利者自身から遺留分の放棄について家庭裁判所の許可をもらう必要があります。
遺留分は、相続がトラブルになる原因になります。
遺留分がもとで親族間の感情的な不和が大きくなれば、話し合いでは解決できず、調停や裁判に持ち込まなければなりません。
問題が大きくならないうちに、相続問題に精通する弁護士にアドバイスを求めるようにしましょう。