代襲相続とは?範囲や発生原因、法定相続分を分かりやすく解説!
相続が開始して、本来相続するはずの相続人が先に亡くなっていると、孫や甥姪が相続人になる「代襲相続」が発生することがあ…[続きを読む]
お孫さんへの贈与を相続対策のためにすることは一般的です。純粋に孫がかわいいからという動機で学費などを贈与することもあるでしょう。
ただし、孫への贈与が「特別受益」となり、争いの火種となって相続人の負担となってしまう可能性もあるのです。
本記事では、孫への贈与が特別受益に該当するケースや、特別受益の持ち戻しをした場合の相続分の計算方法、特別受益の持ち戻しを回避する方法を詳しく説明します。
目次
特別受益を規定する民法903条1項によれば、特別受益となる贈与の受贈者は、相続人のみです。
孫が相続人となることは、代襲相続するか、養子とならない限りありません。したがって孫への贈与は、特別受益とならないことが原則です。
ただし、孫への贈与でも特別受益にあたる可能性がある、次の3つの例外があります。
被相続人が死亡して相続が発生するよりも前に、被相続人の子が死亡していいると、孫が子に代わって被相続人を代襲相続します。(887条、889条)。
代襲相続が発生する原因を「代襲原因」と言いますが、代襲原因には、被代襲者である子の死亡の他に、被代襲者の欠格・廃除があります*。
孫が代襲相続する場合に、贈与が特別受益となるか否かは、孫への贈与が代襲原因が発生する前か後かによって異なります。
*欠格:被相続人や他の相続人の殺害、遺言の偽造など、不正行為を行った者につき、当然にその相続資格を失わせる制度(891条)
廃除:虐待や非行行為者につき、被相続人の意思で相続資格を失わせる制度(892条)。
子の死亡などの代襲原因が発生すれば、孫は将来的に代襲相続人となる推定相続人の地位を取得します。
したがって、推定相続人となった以降に贈与を受ければ、当然に特別受益となります。
一方、孫への贈与を代襲原因の前にした場合には、特別受益制度の趣旨である「贈与を相続分の前渡しと評価すること」と「共同相続人間の公平を図ること」のどちらを重視するかによって、結論が異なるため、見解が分かれているのが現状です。
例えば、推定相続人である子が死亡する前に孫に贈与したケースです。
しかし、最近の裁判例では、孫が推定相続人となる前になされた贈与は、実質的に「相続分の前渡し」と評価できる特段の事情がある場合を除いて、原則として特別受益とはならないとしました(福岡高裁平成29年5月18日判決・判例時報2346号81頁)。
どのような場合が、「実質的に相続分の前渡しと評価できる特段の事情」にあたるかについては、この裁判例では明らかにされていません。しかし、例えば被相続人が親不孝な子の廃除を考えており、孫に贈与した直後に、家庭裁判所に対して子を廃除する申立て(892条)を行った場合などが考えられるでしょう。
厳密には「孫への贈与」ではありませんが、被相続人が自分の子に財産を生前贈与していたところ、その子が死亡し、孫が代襲相続人となった場合に、孫は特別受益を受けているかという問題があります。
これについてもやはり議論があり、最高裁の判例はありません。しかし、学説上の通説は、特別受益にあたるとしています。
そもそも代襲相続は、例えば親の死亡という偶然の事情によって、本来なら承継できたはずの祖父母の遺産を孫が取得できないという不公平を解消するための制度であり、孫は、親が祖父母を相続していれば承継できたはずの利益以上のものを受けるべきではないからです。
先の福岡高裁平成29年5月18日判決は、この点についても判断しており、同様の理由などから通説の考え方を支持しています。
祖父母が孫と養子縁組をすると、孫は祖父母の子としての地位を取得し(809条)、推定相続人となります(887条1項)。
そのため、この場合も孫への贈与が養子縁組の前か後かが問題となります。
養子縁組成立により孫は推定相続人となります。したがって、養子縁組後の贈与は当然に特別受益となります。
孫への贈与が行われた後に、養子縁組がなされた場合については同様に議論があり、今のところ最高裁の判例はありません。
この問題も、「養子縁組前の孫は推定相続人ではなく遺産の前渡しとは言えない」という点を重視すれば特別受益ではないという考えになり、共同相続人間の公平を重視すれば特別受益と認めることになります。
学説上は、常に特別受益と認める考え方が有力です。しかし、原則として特別受益にはあたらないとしつつ、「養子縁組を予定しながら孫に贈与し、贈与を受けたから養子縁組した」といえるような場合には、遺産の前渡しと評価できるので特別受益の規定を準用するべきとする考え方もあります。
こうしたケースは個別の事案によって異なるため、弁護士に相談することをお勧めします。
代襲相続人でも、養子でもない孫への贈与が、「子の特別受益」にあたることがあります。
それは、形式的にみれば孫への贈与でも、その実、子への贈与と同視できる場合です。
たとえば、祖父母が生前に孫名義の預金口座に現金を送金したとしても、実際には、子が口座の通帳・銀行印・キャッシュカードを管理して金銭を消費しているケースです。
孫の名義を形式的に利用しているだけで、実質は推定相続人である子への贈与であり、子の特別受益にあたります。
したがって、祖父母を被相続人とする相続では、共同相続人となる被相続人の子が、贈与を受けた預金を持ち戻さなくてはなりません。
また、孫への贈与が形式だけとまでは言えなくとも、それが実質的に子への贈与と異ならない特別の事情があれば、子の特別受益と判断されることがあります。
例えば、祖父A、子B、孫Cがおり、Bがその子であるCの扶養義務を怠っているため、Aが孫Cの教育費・生活費を支出していたという事案で、Aを被相続人とする相続にあたり、この支出は子Bの特別受益にあたると判断した審判例があります(神戸家裁尼崎支部昭和47年12月28日審判・家庭裁判月報25巻8号65頁)。
孫への贈与が特別受益となれば、遺産分割の際に、特別受益を相続財産に持ち戻して各相続人の相続分を計算することになります。
特別受益を含めた相続分の計算は、以下の手順で行います。
言葉だけだと理解しづらいかもしれないので、実際の例で考えてみましょう。
被相続人と相続人は以下の通りで、ケース1と2を比較します。
長男Bだけが父Aから500万円の生前贈与を受けていたとします。
次に、長男Bだけが父Aから2,000万円の生前贈与を受けていたとします。
民法では、婚姻・養子縁組のための贈与、生計の資本としての贈与を特別受益と定めています。
しかし、特別受益は共同相続人間の公平を図る制度であることから、これらは例示に過ぎず、共同相続人間の公平を害する贈与は広く特別受益に含まれると理解されています。
特別受益がある場合の具体的相続分の計算方法について、詳しくは次の記事をご参照ください。
孫に生前贈与しても、相続人になれば遺産分割協議で遺産に持ち戻されてしまう可能性があり、そうなれば孫の相続分は減ってしまいます。
そんなときに有効なのが、生前に持ち戻しの免除の意思表示をしておくことです。特別受益があっても、被相続人が特別受益の「持戻しの免除」の意思を表示していれば、相続分の計算に持ち戻されることはありません(903条3項)。
意思表示というだけあって、どのような方法であってもかまいません。しかし、後から確認できる遺言書による意思表示が一般的です。
例えば、「○年○月の孫の入学金として贈与した○○万円は、相続において子(孫の親)の持戻しを免除する」といった内容を遺言書に記しておけば良いだけです。
ただし、この持ち戻しの免除も万能ではなく、特別受益が他の相続人の遺留分を侵害していれば、持ち戻しの免除にかかわらず遺留分侵害額請求を受ける可能性はあります。遺留分を侵害するような過分の贈与は、現に慎んだほうが賢明です。
改めて、本記事の内容を簡単にまとめます。
孫は通常、推定相続人にはあたらないため、孫への贈与は特別受益にはあたらないのが原則です。
しかし、孫が代襲相続人となった場合や、孫が養子に入った場合など、結果として相続人になった場合は、特別受益になる可能性があります。そのとき、鍵になるのは時系列です。
代襲原因が発生した後や、養子縁組した後の孫への贈与は特別受益にあたります。
一方、代襲原因が発生する前や養子縁組する前の孫への贈与は、特別受益にあたるかどうか、見解が分かれています。
その他にも、孫への贈与が形式的であり、実際は子への贈与だと考えられる場合には、特別受益になる可能性もあります。
このように、孫への贈与が特別受益になるかどうかは、残念ながらケースバイケースといえます。
特別受益の問題は、相続に強い弁護士に相談することをお勧めします。