相続財産管理人とは?選任が必要なケースと選任方法のまとめ

★ お気に入りに追加
相続財産管理人とは?選任が必要なケースと選任方法のまとめ

被相続人に身寄りになる家族・相続人がそもそもいなかったり、相続人全員が相続放棄をした場合などに、その相続財産はどのように処分されるのでしょうか。もし、こうした事態になった場合には「相続財産管理人」を選出して遺産を処分します。

ここでは「相続財産管理人」の基本と、相続財産管理人が必要になるケース、選任方法について解説します。

1.相続財産管理人とは?

1-1.相続財産管理人は「相続人の不存在時に財産管理する人」

相続財産管理人とはある被相続人の相続人があることが明らかでない際に、その被相続人の相続財産を管理・処分する人のことです。

ここで言う「相続人があることが明らかでない」とは、戸籍上に相続人がいないように見える状態などを指しています。決して、相続人の生死不明・行方不明を指している訳ではありません(相続人が行方不明の場合は、「不在者財産管理人」が選任されます)。

関連記事
不在者財産管理人とは?選任が必要なケースと選任方法のまとめ
不在者財産管理人とは?選任が必要なケースと選任方法のまとめ
この記事では、不在者財産管理人について解説します。選任が必要な場面と条件、選任の手続き、報酬や費用なども解説するので…

相続財産管理人は家庭裁判所によって選任されます。一般的には、その地域に在住する弁護士や司法書士などが選ばれることが多いです。

1-2.相続財産管理人の役割は財産の管理・処分など

相続財産管理人に選出されると、相続財産を管理・処分します。この管理・処分とは具体的にいうと、債権者に対して債務の支払いし、精算をして、残った相続財産を国庫に帰属させることです。

また、相続財産管理人は管理・処分に必要となる手続きもしなければなりません。そのため、相続財産の調査なども行う必要があります。

2.相続財産管理人が必要になるケース

2-1.相続財産管理人は「相続人の不存在」時に必要

相続財産管理人が必要になるケースは「相続人が不存在」である場合です。具体的に例を挙げると次のような状況で選出が必要になります。

  • 相続人となる人がいないケース
  • 相続人が全員、相続放棄をするケース

このように相続人がいない事態に陥った際に、相続財産管理人が必要になります。

2-2.相続財産管理人が必要な理由

相続財産管理人が必要になる理由は、相続人がいないことで相続財産が管理・処分されずに不利益を被る人がいるからです。

例えば、被相続人にお金を貸しており、相続財産から返済をしてもらえるはずの債権者がいたとします。しかし、相続人がいなければ財産は処分されず、債権者はお金を返してもらうことができないのです。
こうした不利益が生じるために、相続財産管理人を選出し、正しく財産を管理・処分する必要があります。

2-3.相続財産管理人を選出すべき人

相続財産管理人の選出をすべき人としては、下記のような例があります。

  • 相続人にお金を貸している人
  • 被相続人から特定遺贈を受けた人
  • 被相続人と生前に特別な縁故があった人

これらに該当する人は、被相続人からお金をもらう権利を持っていますが、勝手に被相続人の財産に手をつけてはいけません。相続財産管理人の申立人となることができますので、正しい手順を経て相続財産管理人を選出することで、自己の利益を守ることができるようになります。

3.相続財産管理人の選任方法

3-1.まずは家庭裁判所に選任申立をする

相続財産管理人選任申立の手続きは、家庭裁判所に対して「相続財産管理人選任申立」をすることによって始まります。このときの申し立て先の家庭裁判所(管轄裁判所)は、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所です。

申立ができる人は、利害関係人と検察官です。
申立をするときには、「相続財産管理人選任申立書」という書類に必要事項を記入して、収入印紙800円と予納郵便切手を添えて、家庭裁判所に提出します。

3-2.相続財産管理人選任申立の必要書類

次に、相続財産管理人選任申立のための必要書類を見てみましょう。
これについては、以下の通りのものが必要です。

・相続財産管理人選任申立書
・被相続人の住民票の除票か、戸籍の附票
・被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
・被相続人の父母が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
・被相続人の祖父母などの直系尊属の死亡の事実が記載されている戸籍謄本
・被相続人の子どもや代襲者で死亡しているものがいる場合には、その子どもや代襲者が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
・被相続人の兄弟姉妹で死亡しているものがいる場合には、その兄弟姉妹の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
・代襲者(甥姪)ですでに死亡している人がいる場合には、その甥姪の死亡の事実が記載されている戸籍謄本
・相続財産の資料(不動産の登記事項証明書や預貯金通帳など)
・申立人と被相続人の間の利害関係についての資料(戸籍謄本や賃貸借契約書の写しなど)
・相続財産管理人に候補者がいる場合には、その候補者の住民票か戸籍の付票

戸籍謄本類を集めるのはかなり大変な作業ですが、手続きを進めるためには確実に集めきる必要があります。

3-3.相続財産管理人選任にかかる費用

相続財産管理人の選任に際しては、家庭裁判所に対して収入印紙800円を支払う必要があります。同時に予納郵便切手が数百円分必要ですが、その金額と内訳については各地の家庭裁判所によって異なるので、個別に確認しましょう。
また官報公告費用として3,775円必要です。これについては、申立後家庭裁判所から納付の指示があるので、それに従って納付することになります。

さらに、相続財産管理人を選任する際には、相続財産管理人の報酬が必要になることがあります。被相続人の親族などが相続財産管理人になる場合には報酬は不要ですが、弁護士などが相続財産管理人に就任する場合には、月額数万円程度の報酬が必要になるからです。
これについては、基本的には相続財産の中から支払われることになりますが、財産が不十分なケースでは、当初に報酬に充てるための予納金が必要になります。

予納金の額は、事案によっても異なりますが、100万円程度になることも多いので、かなりの負担がかかります。
手続きが終わったときに、相続財産から相続財産管理人への報酬を支払うことができれば予納金は返ってきますが、そうでない場合には返ってきません。
相続財産管理人を選任する場合には、予納金の負担のことと、それが返ってこない可能性があることはしっかり認識してから申立に及ぶ必要があります。

4.相続財産管理人選任後の流れ

次に、相続財産管理人を選任した後の手続きの流れを確認します。

家庭裁判所に
相続財産管理人選任申立
 利害関係人または検察官
相続財産管理人を選任
(官報公告)
家庭裁判所
相続財産の調査
財産目録の作成
相続財産管理人
▼(2ヶ月)
債権者・受遺者への債権申出の公告 相続財産管理人
▼(2ヶ月以上)
債権者への支払
受遺者への支払
相続財産管理人
(相続財産がなくなれば終了)
相続人捜索の公告 家庭裁判所
▼(6ヶ月以上)
(相続人が現れれば終了)
相続不存在の確定 家庭裁判所
▼(3ヶ月以内)
家庭裁判所へ
特別縁故者に対する財産分与の審判申立
特別縁故者
特別縁故者への財産分与の審判
家庭裁判所
審判で決定された分を特別縁故者へ引き渡し 相続財産管理人
残余財産は国庫に帰属
(共有不動産は共有者に帰属)
残余財産を国に引き渡し
報告書を作成して提出
業務終了
相続財産管理人

4-1.相続債権者と受遺者に対する公告をする

相続財産管理人の選任申立をして、裁判所がその必要があると判断したら、相続財産管理人が選任されます(民法第952条1項)。
このとき、申立時に適当な候補者を立てていればその人が相続財産管理人になることが多いですし、候補者を立てていなければ裁判所が弁護士などの中から選任します。

【参考】裁判所:相続財産管理人の選任

相続財産管理人が選任されると、相続財産管理人が選任されたことが官報公告されます(民法第952条2項)。そして、相続財産管理人は、2ヶ月間、相続財産の調査や財産目録を作成して財産の保存管理を行います。
選任後2ヶ月が経っても相続人が現れない場合には、相続財産管理人は、債権者や受遺者に対し、債権届けを行うように公告します。このとき、届出のために2ヶ月以上の期間が定められます(民法第957条)。

公告によって相続債権者や受遺者が現れたら、相続財産管理人は、期間の終了後にそれらの債権者や受遺者に対し、必要な支払をします。このとき、最初に債権者に対する支払をして、その後に受遺者に支払をする、という順番になります。
支払のために相続財産を競売にかけることもあります。
この時点で相続財産がなくなったら手続きは終了します。

4-2.相続人捜索の公告をする

債権者や受遺者が現れない場合や、それらの人に支払をしてもなお相続財産に余りがある場合には、家庭裁判所は相続人を捜索ための公告をします。
この場合、6か月以上の期間を定めます(民法第958条)。期間内に相続人が現れたら、相続財産はその相続人に対して引き渡されるので相続財産管理の手続きは終了します。

4-3.特別縁故者に対する財産分与の審判

相続人捜索の公告を出しても相続人が現れない場合には、特別縁故者は、家庭裁判所に対し、「特別縁故者に対する財産分与の審判申立」ができるようになります。これができる期間は、相続人が不存在であることが確定したときから3ヶ月の間です(民法第958条の3)。

特別縁故者として認められるのは、以下のような人です。

  1. 相続人と同一の生計であった人(内縁関係の夫婦や事実上の養子養親、実息子の妻など)
  2. 相続人の看護や介護をしてきた人
  3. その他被相続人との間で特別の関係があった人(公益法人や地方公共団体、福祉関係施設など)

特別縁故者への財産分与申立をする裁判所は、相続財産管理人が選任されたのと同じ、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
特別縁故者への財産分与申立をする際には、申立書を作成する必要がありますが、ここには自分が特別縁故者であることを具体的に示す事情や、それを証明するための証拠資料などをつけて提出します。

申立があると、家庭裁判所はその内容を調査して、特別縁故者として認めるかどうかを判断します。特別縁故者として認める場合には、その具体的な事情に応じて相続財産からの分与の額を決定します。
特別縁故者への財産分与の審判が確定したら、相続財産管理人はその内容に従って、特別縁故者に対して相続財産の引き渡しをします。

4-4.不動産は共有者のものになる

相続人不存在が確定してから3ヶ月経っても特別縁故者による財産分与の審判申立がない場合や、審判申立があっても却下された場合、相続財産の中に不動産があってそれが他者と共有関係となっている場合、その不動産は共有者のものになります。

4-5.国庫に帰属して手続きが終了する

そして、これらのすべての手続きが終了した後、残っている相続財産については、最終的に国庫に帰属します(民法第959条)。
相続財産管理人の業務がすべて終了したら、相続財産管理人は、報告書を作成して選任された家庭裁判所に提出して、手続きが終了します。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

デフォルトpr下ボタン

この記事が役に立ったらシェアしてください!