遺産分割協議中に相続人が亡くなった場合の対処法

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日本人の平均寿命は伸びているようですが、自分の親族が亡くなってしまうと、ショックからか落胆からか、後を追うように亡くなってしまう方もいます。遺産分割協議中に亡くなることだってあり得るでしょう。

では、そんな場合、遺産分割協議及びその相続はどのように処理されることになるでしょうか。遺産分割協議中に相続人が死亡してしまった場合を以下で詳説します(なお、以下において、死亡した相続人を「死亡相続人」、「被相続人」とは死亡相続人が相続する最初に発生した相続の被相続人、相続人とは、特段の断りがない限り「被相続人」を相続した者のことを指すこととします)。

1.死亡した相続人に配偶者・子がいる場合

1-1.死亡した相続人の相続分

死亡相続人に、配偶者がいる場合には配偶者は常に相続人となります。配偶者と子がいる場合は配偶者と子が、配偶者がおらず、子のみがいる場合には、子が全て相続します。

死亡相続人に、子のいない配偶者と直系尊属がいるときは、配偶者と直系尊属が、直系尊属がおらず、死亡相続人に兄弟姉妹がいる場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続します。

死亡相続人に、配偶者及び子がいない場合には、直系尊属が全て相続します。死亡相続人に、配偶者、子及び直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹が全て相続します。

各相続分をまとめると以下の通りです。

配偶者と子がいる場合には、配偶者:子=1:1となります。
配偶者と被相続人の直系尊属の場合には、配偶者:直系尊属=2:1となります。
配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合には、配偶者:兄弟姉妹=3:1となります。

1-2.被相続人の相続分はどのように承継されるのか

死亡相続人に配偶者・子がいる場合には、死亡相続人が承継した相続分を、配偶者と子が各相続分に従って承継することになります。

具体的に、被相続人Aに死亡相続人Bを含めた3人の子がおり、死亡相続人Bに配偶者Cと子Dがいる場合で考えてみましょう。

最初に、被相続人Aから死亡相続人B達兄弟に相続が発生するので、被相続人Aから死亡相続人Bへの相続分は、兄弟3人が同じ割合で承継し3分の1となります。

その後、死亡相続人Bから配偶者Cと子Dに対して相続が発生します。

被相続人Aから死亡相続人Bの配偶者Cと子Dに承継される相続分は以下の通りです。

配偶者CについてはBの相続分である3分の1 × 配偶者の相続分2分の1 =6分の1
子についても同様に、3分の1 × 2分の1 = 6分の1となります。

もちろん、同時に前述した死亡相続人B本人の相続も開始します。

2.死亡相続人に配偶者・子がいない場合(直系尊属、孫もいないこととします。)

2-1.その結果、一部の相続人が欠けた場合

この場合には、他の相続人が死亡相続人の相続分を相続するケースがほとんどです。したがって、死亡相続人の相続分をその他の相続人で分け合う形になります。

例えば、被相続人Aの子であるE、F、G(Aの相続人はこれ以外にいないものとする)が遺産分割協議をしている最中に子Eが死亡し、EにA以外に直系尊属がおらず配偶者も子もいない場合は、Eの相続人は、F、Gとなります。

Eは、いったん他の兄弟と同様に3分の1の割合でAを相続しますが、死亡したために、Eの相続分は、F、Gに6分の1ずつの割合で承継されます。結局、F、Gは、Aを6分の3ずつ相続することになります。

このときに、死亡相続人を相続した他の相続人が遺産分割協議をする場合、「亡E相続人 F」・「Eの相続人 F」の名義で、亡くなった相続人の相続人の相続人として参加することになります。

2‐1‐1.相続人がいない場合

相続人がいない場合とは、

  • 相続人が全て死亡している場合
  • 相続人資格を持つ者が出生すらしていない場合
  • 相続人の所在・生死が不明な場合

のいずれかに該当する場合を含みます。

2‐1‐2.相続財産法人と相続財産管理人の選任

民法951条は、相続人のあることが明らかではないときは、相続財産は法人とすると規定し、相続人の存在が不明であるときは相続財産法人が設立されることを規定しています。この場合において、相続財産法人を管理する相続財産管理人が家庭裁判所により選任されます。

【相続財産管理人の申立書】

相続財産管理人選任申立書

平成○年○月○日

○○家庭裁判所 御中

申立人○○○○

被相続人○○○○

第1 申立ての趣旨

被相続人の相続財産管理人を選任するとの審判を求めます。

第2 申立ての理由

1 申立人は,被相続人の妻の弟にあたる者ですが,被相続人は平成○○年ころから,配偶者に先立たれ、一人暮らしとしなりました。また平成●●年ころから被相続人は認知証を発症させ、この間、身の回りの世話も申立人が行ってきました。また、申立人は、被相続人所有の別添遺産目録中の不動産を事実上管理してきました。

2 被相続人は,平成○年○月○日に死亡し,相続が開始しましたが,相続人のあることが明らかではなく,また,遺言の存否も不明なので,申立人が管理する不動産を引き継ぐことができません。このような状況にありますので,申立ての趣旨のとおり審判を求めます。

添 付 資 料

【遺 産 目 録 以下略】

2‐1‐3.公告等

相続財産管理人が選任された場合、2か月間、当該管理人が選任されたことを官報公告します。その官報公告の期間が満了してもなお、相続人がいることが明らかではない場合には、すべての相続債権者及び受遺者に対し請求の申出を行うように、さらに2か月間、官報公告を行う必要があります(民法957条1項)。

その公告期間満了時になお相続人がいることが明らかではない場合には、相続人がいるのであれば権利を主張すべきことを6か月間官報公告をします(民法958条)。

2‐1‐4.特別縁故者への分与

上記の全ての期間を満了してもなお、相続人がいることが明らかではない場合には、家庭裁判所に対し申立てをすることにより、被相続人と特別の縁故がある者に対し、遺産を分与することの許可を求めることになります(特別縁故者への分与、民法958条の3)。

【特別縁故者への相続財産の分与の申立て】

特別縁故者への相続財産の分与審判申立書

平成○年○月○日

○○家庭裁判所 御中

申立人○○○○

被相続人○○○○

第1 申立の趣旨

申立人に対し被相続人の相続財産を分与するとの審判を求める。

第2 申立の理由

1 申立人は、大正○年○月○日から被相続人の内縁の妻として同棲し、特にここ20年間は、被相続人が入退院を繰り返したため(心臓病のため)、同人の療養看護に尽力した。

2 被相続人は、平成○年○月○日死亡した。被相続人には相続人がないので、申立てにより、平成○年○月○○家庭裁判所において相続財産管理人として○○○○が選任され、同裁判所は相続財産管理人の申立てに基づき相続人捜索の公告をし、平成○年○月○日に公告期間は満了したものの、権利の申し出はなかった。

3 被相続人には、別紙目録のとおり遺産があり、この遺産は申立人の協力・寄与によって得た。なお被相続人の遺言はない。

4 よって、相続債務清算後の残余財産は、被相続人と特別縁故関係にある申立人に分与されたくこの申立てをする。

添付書類

【財産目録 以下略】

2‐1‐5.国庫帰属

上記の特別縁故者に対する財産分与の申立てが行われない場合には、その相続財産は国庫に帰属することになります(民法959条)。

3.遺産分割協議中に相続人が欠けることに備えた遺言

3-1.予備的遺言

相続人不存在の手続きは、家庭裁判所を通した手間がかかる手続きなので、法定相続人がおらず、相続人不存在となる可能性が高い場合、遺言書を書いておくべきです。

遺言者が本来相続又は遺贈しようとする者が遺言者より先に又は同時に死亡した場合に備えて、予備的に遺言をしておくその遺言を予備的遺言といいます。予備的遺言は、遺言者が本来相続又は遺贈しようとする者が遺言者より先に死亡又は遺言者と同時に死亡したことを停止条件とする停止条件付き遺言です。

したがって、条件成就に関する民法の規定が準用されることになります(民法127条ないし134条)。

【停止条件付き遺言の例】

第○条 遺言者は、上記○○○○(注:受贈者)が遺言者より先に死亡又は遺言者と同時に死亡したときは、第○条の遺産を●●●●(生年月日)に相続させる。

3-2.「相続させる遺言」と予備的遺言

「相続させる遺言」とは特定の相続人に対し特定の遺産を取得させることを目的とした遺産分割の方法の指定であるとされています(判例)。

では、特定の相続人に遺産を取得させることを目的として「相続させる遺言」をしたものの、その特定の相続人が遺言者より先に又は同時に死亡した場合、その特定の相続人の子などの代襲相続人に当然に「相続させる遺言」の効果が生じるのでしょうか。

実際上は、遺産分割の局面では、当該遺産を代襲相続人間のみで分割することができるのかという点についての判断です。

最高裁判所は、遺言者は、その相続人や遺産の個性を重視して、「相続させる遺言」を行っている以上は、その相続人そのものではない代襲相続者に当然に当該「相続させる遺言」が生じるものではない旨判示しております。

したがって、遺言者が、特定の相続人に対し特定の遺産を「相続させる遺言」をし、遺産分割の指定の効果を生じさせようとする場合において、その特定の相続人の代襲相続人にまで遺産分割の指定を生じさせたいのであれば、上記の予備的遺言が必要であることになります。

4.まとめ

以上のとおり、遺産分割協議中に相続人が亡くなった場合について解説しましたが、相続に関する事案は法律関係が複雑なことが多く、具体的な事件の処理に当たっては、法律の専門家である弁護士の助言を受けることを強くお勧めします。

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