相続登記のケース別必要書類一覧|法務局に何を提出する?
自分で相続登記をする際の必要書類一覧です。法務局で相続登記申請するときに、どんな書類を提出しなければならないのか、ま…[続きを読む]
相続財産に不動産があれば、一般に「相続登記」と呼ばれる、相続を原因とする登記名義の変更を行わなければなりません。
相続登記は、義務化されており、「身内の話だから後でもいいや」などと考えていると、その不動産を売却・賃貸したいときや、新たな相続が発生した際に問題が生じてしまいます。
この記事では、相続登記とは何か、相続登記の必要性や放置するリスク、申請手続の流れ、費用、自分で申請する際の注意点などについて分かりやすく解説します。
目次
相続の対象となる財産には、所有権について登記を行うことができるものがあります。
その代表例が、土地や建物といった不動産です。
不動産は、登記することで自分に所有権があることを対外的に公示すことができ、それが最終的には自分の権利を守ることに繋がります。
相続登記とは、相続を原因として不動産の所有権が被相続人から相続人に移転したことを、一般に公開された登記簿に記載して公示することをいいます。
相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。相続人は、「自分のために相続があったことと、所有権の取得を知った日から3年以内」に相続登記の申請をしなければならず(不動産登記法76条の2第1項)、遺産分割協議で不動産を取得すれば、遺産分割協議の成立から3年以内に登記申請をしなければなりません。
また、この義務は遡及するため過去の相続にも及び、不動産の相続人は、義務化の施行日または不動産の所有権を取得したことを知った日のいずれか遅い日から3年以内に申請する義務を負います。
もし、「正当な理由なく」登記を怠れば、10万円以下の過料の対象になってしまいます。
相続登記が義務化された背景には、相続後未登記のまま放置された空き家問題があります。
遺産分割協議終了前には、法定相続分に基づいた各相続人全員分の相続登記を、相続人1人から単独で申請することが可能です。
その後、遺産分割協議で不動産の所有者が決まれば、「遺産分割」を原因に、所有者が単独で相続登記の更正の登記をします。
しかし、この方法は、他の相続人の関与が不要な一方で、申請に関与しなかった他の相続人には、登記識別情報が交付されません。
前述の通り、相続登記の申請期限は3年以内です。
しかし、不動産を相続した場合には、すぐに相続登記を行って、権利の実態と登記表示を合致させておくことが望ましいといえます。
なぜ相続登記をすぐに行う必要があるのか、登記を行わなかった場合に生じ得るリスクなどについて以下で解説します。
相続登記が義務化されたとはいえ、登記がなくても相続人が不動産を自分で活用している分には支障はありません。
しかし、相続した不動産を売却したければ、買主に対して自分に自分に不動産を売却・賃貸する権限「所有権」があることを示す必要があります。法律上、登記をしていなくても売買契約はできますが、実務上、登記名義が所有者と異なる不動産を購入する買主は皆無です。
また、相続した不動産を賃貸したくても、相続登記がない限り、扱ってくれる不動産業者はいないでしょう。
したがって、不動産を売却や賃貸する際には、事前に相続登記をすることが必須となります。
また、不動産を売却や賃貸する予定がなくても、相続登記をせずに権利の実態と登記が合致しない状態を放置することには、大きなリスクが伴います。
仮に相続人が配偶者Aと子B・Cの計3人だった場合、それぞれの法定相続分は以下の通りです。
このケースで不動産を相続すると、前述の通り、遺産分割協議前に、相続人の1人から、各人の法定相続分に基づいた相続人全員の相続登記を単独で申請することができます。
もしA・B・Cの遺産分割協議により、不動産をAが単独で相続するということになっていたとしても、登記を管轄する法務局としてはその事実を知る術がありません。
仮に、遺産分割協議前にBが単独で法定相続分に基づいた相続登記を申請し、自分の共有持ち分4分の1を第三者に売却して持ち分移転登記を行ったら、どうなるのでしょうか?
Aの法定相続分は、2分の1です。Bが勝手に登記申請した不動産の共有持分4分の1は、Aの法定相続分を超えています。
不動産の場合、法定相続分を超える相続については、登記といった対抗要件を備えなければ第三者に対して主張することはできません(民法899条の2第1項)。
したがって、Aは第三者が取得した共有持分4分の1について、自分に権利があることを主張できません。遺産分割協議でAが得られるはずだった不動産すべてのうち、4分の1が第三者の所有になってしまうのです。
Aは不動産の権利の一部を失ってしまったのみならず、不動産の管理を赤の他人と共同で行わなければならなくなってしまいます。
このような事態を避けるためにも、相続登記は早めに行っておくべきでしょう。
遺産分割が行われ不動産の所有者が決まった後に、未登記のまま不動産所有者が死亡してさらに二次相続が発生し、遺産分割協議書も相続登記もなければ、未登記の不動産が相続争いの原因になりかねません。
さらに未登記のまま相続が続けば、相続関係が複雑になり、誰が不動産の所有者なのか分からなくなってしまいます。
後の相続における紛争を防止するためにも、相続登記は早めに行うことをお勧めします。
相続登記手続きの流れについて簡単に解説します。
相続登記を申請するには、まず申請書と一緒に提出する必要書類を収集する必要があります。
基本的な相続登記の必要書類は以下の通りです。
遺言や遺産分割協議により、法定相続分と異なる相続をする場合には、その内容を証明するために、上記に加えて遺言書または遺産分割協議書を提出する必要があり、自筆証書遺言は、法務局で保管したものを除き、家庭裁判所の検認が必要です。
また、遺産分割協議による相続では、遺産分割協議書に押印された相続人全員分の印鑑証明書の提出も必要です。
必要書類について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
次に相続登記の申請書を作成します。以下は相続登記の申請書の記載例です。
申請書には、A4サイズの用紙を使用し、パソコンか黒インクを使いはっきりと記載します。鉛筆は使用できません。
申請書を一番上に置き、他の必要書類と共に左側を綴じます。
各法務局では、事前に予約すれば、相続登記の申請書の作成などについての相談に乗ってくれます。
【参考外部サイト】「不動産登記の申請書様式について」「登記相談の事前予約制のお知らせ」|法務局
相続登記の申請先は、不動産の所在地を管轄する法務局となります。
現地の窓口での申請のほか、郵送やオンライン申請も可能です。
ただし、オンライン登記申請は会員登録が必要で、操作もやや難しいため、ご自分で申請される場合は窓口か郵送での手続きをおすすめします。
法務局の管轄については、以下のHPで検索することができます。
【参考外部サイト】「管轄のご案内」|法務局
相続登記にかかる費用を大きく分けると、①登録免許税、②必要書類を揃えるための費用、専門家に依頼する場合には③弁護士・司法書士への依頼報酬の3つです。
登録免許税は、相続登記を行う際にかかる手数料のようなもので、法務局に提出する登記申請書に収入印紙を貼付することにより納付します。
相続登記の登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の1000分の4(0.4%)です。
ただし、法定相続人でない人が不動産を承継する場合には、登録免許税は不動産の固定資産税評価額の1000分の20(2%)で計算します。
また、以下2つのケースでは、2025年3月31日までに登記申請をすれば登録免許税が免除されます。
【参考外部サイト】「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」|国税庁
大きな金額にはなりませんが、登記事項証明書、戸籍謄本、住民票、印鑑証明書などを発行してもらうための費用がかかることになります。
これらの費用は自治体や発行方法によって異なる場合があるので、各自治体にご確認ください。
相続登記の手続きは、弁護士や司法書士に依頼すると手間と時間の節約になります。
しかし、弁護士・司法書士に報酬を支払う必要があります。
報酬がいくらかは弁護士事務所・司法書士事務所によって異なります。
また、たとえば弁護士に相続を全体的にサポートしてもらうという場合から、単純に相続登記のみを依頼する場合まで、依頼業務の範囲はさまざまです。
そのため、依頼業務の範囲によっても依頼報酬は異なります。
仮に相続登記の定型的な手続きだけを依頼するという場合には、10万円以下の費用で代行してくれることもあります。
相続登記の費用について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
相続登記が義務化されたことからもお分かりの通り、相続登記は手間がかかるものの、決して難しいものではありません。
そこで、ご自分で相続登記を申請する際の注意点をご説明します。
法務局も役所の1つであり、土日祝日はお休みです。少なくとも申請をする1日は、平日に時間を確保しておかなければなりません。
法務局への相談や、申請書類の補正などを考えると、登記申請に慣れない方は、4日から5日程度が必要になり、申請書の訂正についての法務局からの連絡は、平日電話で行われます。
登記申請では、添付した必要書類の中に、住民票や戸籍謄本、遺産分割協議書など返却してもらえるものがあります。
原本を還付してもらうには、まず、返却を希望する書類をコピーし、余白に「原本と相違ありません」と記載して申請人が署名捺印します。
登記申請書に原本還付してほしい旨を記載し、コピーと原本を申請書とともに提出すると、登記完了後に原本を返却してもらえます。
郵送での返却も可能ですが、返信用封筒もあわせて提出する必要があります。
詳しくは、法務局または司法書士などの専門家にご確認ください。
相続登記が義務化されたとは言え、遺産分割協議の完了から3年の猶予があります。
しかし、不動産は、相続争いの原因となる財産の1つです。各種のトラブルを避けるためにも、相続登記は遺産分割協議がまとまったら速やかに行いましょう。
相続に強い弁護士に依頼すれば、司法書士との連携で相続登記の手配も行ってくれる事務所も多くなっています。不安がある方は、最初から相続全体を弁護士にサポートしてもらうこともできます。
ぜひご自分にあった事務所を探してみてください。