相続するなら知っておきたい換価分割と代償分割
相続が発生したとき、実家の土地・建物のような不動産が含まれていたら、どのように遺産分割すればいいのでしょうか?今回は…[続きを読む]
ご両親の死後、ご両親名義の家を相続したいとき、何から手をつければよいのでしょうか。
それまでも一緒に住んでいたのであれば、何もせずただ住み続けてもよいのでしょうか。
本記事では、家の相続に関する手順をご紹介するとともに、税金等についても解説していきます。
目次
家の相続は、以下の2ステップです。
①誰がどのように相続するか決める⇒②家の名義を変更する
それぞれ詳しくみていきましょう。
まずは、そもそも親の遺言書があるかないか(遺言で「家は〇〇に相続する」と指定されていないかどうか)確認してみてください。
遺言書がある場合は、遺言内容(個人の意思)が何よりも優先されます。
あらかじめ相続人が指定されているのですから、遺言書の通りに従ってください。
この場合は、次のステップ1-2.に進んでください。
親の遺言書がなく、かつ民法で定められている相続人が複数いる場合、まず相続人全員で家をどうするのかを十分に話し合う(=遺産分割協議)必要があります。
話し合うにあたっては、家の価値を把握する必要があります。最終的な遺産分割方法の判断にも影響しますので、しっかり評価してもらうようにしてください。
この遺産分割協議が特に揉めやすく、相続の第一関門といえます。
弁護士に依頼する方も大変多いです。
遺産分割協議における遺産分割方法は、家をそのまま相続する「現物相続」だけではなく、家を売却してお金に換えて相続する「換価相続」、誰かが家を単独で相続して、代わりに自分の資金で他の相続人に返却する「代償相続」の3つの方法があります。
また協議について、事務的なことをいえば、「遺産分割協議書」という細かい財産目録のような書類や、書類で使う実印が本人であることを証明する「印鑑証明」が必要です。
なお、遺産分割協議書については下記の記事をご覧ください。
▼「遺産分割協議書とは何か」の記事はこちら
▼遺産分割協議書の「書き方」はこちら
相続人が確定したら、家の名義を新しい相続人の名義に変更しましょう。
こうした家の名義変更のことを「登記」と言い、特に相続による登記のことを「相続登記」と言います。
名義変更(相続登記)をしなくてはならないのは、名義を変更しなければ、対外的には家の所有者が親のままなので、家についての権利を公に主張することができなくなるためです。
具体的には、親名義の家の売却・賃貸・融資などの諸契約は結べません。
また、以下の理由から、特に早めの名義変更をおすすめします。
名義変更を行ったら、晴れて家は正式に相続人のものになります。
住むもよし、売るもよし。自由に家を使用する権限があります。
名義変更(相続登記)の手続きは、自分でやるか、専門家に任せるかのどちらかです。
ただし、自分でやる場合、非常に煩雑な作業となりますので、手間と時間がかかることを覚悟しておいた方が良いかもしれません。
次の章では、名義変更の具体的な手順について説明します。
名義変更では、様々な必要書類を集めなくてはなりません。
代表的なのが戸籍謄本です。
遺言書によって家の相続人が明確に示されている場合には、親(被相続人)の最後の戸籍謄本だけ用意すれば足ります。
厄介なのは遺言書がない場合です。
相続人と被相続人の関係性を証明するために、親が生まれてから死ぬまでの戸籍を揃えないといけません。
さらに、戸籍には種類があります。どんなものがあるか、また戸籍の集め方については下記の記事で詳しく説明されています。
戸籍以外にも、家を名義変更するためにはたくさん書類が必要です。
さらに、役所は平日9時~17時ですので役所に出向けない方は郵送手続も可能ですが、不備の無いよう1回で行うのはなかなか困難です。
以上の書類を全てるのはとても大変そうですね。
必要書類がやっと全部揃ったら、法務局に出向いて申請書類を記入し、提出します。
申請フォーマットは相続の仕方によって異なり、法務局のホームページなどでダウンロードできます。
なお、手続きには、登録免許税(相続した不動産の固定資産評価額の0.4%)や各種書類の申請手続き料金(印紙税)もかかります。
不明な点は、お近くの法務局に問い合わせて、法務局の担当者に相談することもできます。
ただ、登記申請は非常に細かく規定されており、不備があれば修正して出直すように言われてしまいます。
大量の必要書類の収集から申請書類の記入・提出まで、ミスなく行うのは難しそうですよね。
いっぽう、司法書士・弁護士は職権により、委任状無しに役所に住民票や戸籍等の申請手続きが可能です。
しかも、日々の業務で慣れているので、スムーズに手続きを完了させてくれます。
用意する必要があるのは印鑑証明だけです。
専門家の指示に従って、作成された遺産分割協議書を確認し、確認したら署名押印(実印)して、あとは専門家にお任せできます。
所有権移転登記済証と名義変更が終わった不動産登記の写しを製本して持ってきてくれるのを待っていればいいのです。
ご両親が亡くなって悲しみが癒えないうちに、煩雑な手続きに時間と手間をかけるよりも、専門家にお任せしてしまった方が落ち着いた日々を送れるでしょう。
※ちなみに専門家の手数料は、一般的に10~20万円くらいといわれています。
具体的な事案によっても金額は変動しますので、まずは問い合わせてみてください。
ここからは、名義変更についてよくある疑問点や、税金のことについて解説していきます。
遺産分割の際、割れない遺産を共同で相続することがあります。
家の名義変更についても、実は、共有名義にすることが可能です。
となると、家を残す場合、誰の名義にするのか揉めたときは「とりあえず、共有名義にしよう」と決めてしまいたくなるかもしれません。
しかし、ちょっと待ってください!
単独名義と共有名義にはメリットとデメリットがそれぞれあります。
メリット | デメリット | |
単独名義 | ・あらゆる法的行為をするときに自分の意志だけで決められる | ・家の相続人を誰にするか決定するまで揉める可能性がある ・相続登記にかかる費用を一人で負担する必要がある |
共有名義 | ・遺産相続協議が簡単になる ・一人あたりの相続登記にかかる費用が安くなる |
・あらゆる法的行為をするときに名義人全員の意見を一致させなければならない ・固定資産税の納付は代表者のところに送付されえるため固定資産税の払い方で揉める可能性がある |
以上をじっくり検討して、慌てて結論を出さないようにしましょう。
一般論としては、家を残す場合は単独名義がお勧めです。
今住むぶんには良くても、後々売ったり貸したりすることになる可能性はありますし、家を処分する権限をできるだけ自由に持たせるためにも、名義人は可能なかぎり一人に絞りましょう。
名義変更の必要性はすでに述べた通りですが、
「やっぱり面倒くさいし、名義変更しなくても住めているし…そのままでいいんじゃないの?」
という方もいらっしゃるかもしれません。
現行法では不動産の名義変更について義務とはしておらず、あくまで任意に行うものとされています。
したがって、亡くなったご両親(被相続人)の名義のまま住み続けることは可能です。
ただ、できるだけ早く名義変更をしたほうが後々のためになるのは間違いないです。
さらに、実は名義変更を義務化しようとする動きもあるのです。
2020年秋の臨時国会で、民法と不動産登記法の改正案として「相続登記の義務化」「罰則規定」が提出される予定です(※)。
この法案が通ると、罰則規定(過料5~10万円)ができる代わりに、相続後一定期間に名義変更を行った場合は手続きが簡略化され、費用も軽減され、相続登記が簡素化されます。
相続登記の法改正については、以下記事で詳しく解説していますのでご参照下さい。
ちなみに、相続登記が義務化されてもすぐに罰則が適用されるわけではなく、手続きのための猶予期間も設定される予定です。焦って行動せず、落ち着いて専門家に相談することをおすすめします。
※ただし、現在相続登記の義務化が検討されているのは土地についてのみです。
親名義の家を相続したら、相続税が発生します。
戸建てかマンションか、家の規模や誰にどのように住まわれているかなどによって計算式が異なるので、専門家に頼んで算出してもらいましょう。
親名義の家についての相続税について詳しく解説した以下の記事も参考にしてください。
家を相続したら(家の所有権を取得したら)、新しく名義人になった相続人に固定資産税がかかるようになります。
毎年元旦の所有者(家の名義人)に、その年の固定資産税が請求されます。請求月は、市町村によって異なりますが、4~6月に元旦の名義人に固定資産税納付書が届きます。
今まで親が支払っていた金額とさほど変わりませんが、相続したタイミングで、市区町村の課税標準額が見直される可能性もあるので、多少金額の変更がある可能性もあります。
いかがでしたか。
家の相続をする際の所有権移転手続き等について解説してきました。
多くの書類が必要で、ものすごい手間と時間がかかりそうです。
親御さんが亡くなって49日や初盆、一周忌と、生きている人の悲しみを癒すために行われるともいわれる慌ただしい法要の最中に行わなければならない相続手続きです。
悲しみから立ち直り、心を癒すためにも、繁雑な作業は専門家に頼るのがおすすめです。