遺産分割協議書とは?何に使うのか?活用方法を解説

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「遺産分割協議書なんて面倒くさい…書かなくてもいいんじゃない?」と思われる方も多いかもしれません。苦労して遺産分割をまとめて、この先まだ書類作成をするのはたしかに大変です。

しかし、遺産分割協議書の作成はとても大切なことです。
遺産分割協議書がないと、不動産や車などの相続財産の名義変更、預貯金の払い戻しなど、必要な相続手続きが何もできないままとなります。

この記事では「遺産分割協議書とは何か、何のために必要なのか」をわかりやすく解説していきます。

1.遺産分割協議書とは?

そもそも、遺産分割協議書とはどんな書類なのでしょうか?
遺産分割協議書は、法定相続人が遺産の分け方について話し合い、合意した結果をまとめた書面です。
法定相続人全員が当事者となって合意した「契約書」としての意味と、対外的に「遺産分割協議が成立した」という「証明書」(証拠)としての意味があります。

契約書なので、相続人が後から遺産分割協議書の内容と異なる主張をすることは許されません。紛争の蒸し返しを防ぐ効果があります。
また、証明書として遺産分割協議書を法務局や銀行などに提示することで、不動産の登記や預貯金の払い戻しなどができます

2.遺産分割協議書はどんなときに使う?

次に、遺産分割協議書をどのような場面で使うのか、見てみましょう。

2-1.銀行での預貯金払い戻し

相続財産に預貯金が含まれていたら、相続人が払い戻しをしたり名義変更をしたりしなければなりません。そのためには遺産分割協議書が必要です。

遺産分割協議書がなかったら、金融機関は原則として預金の払い戻しには応じません(2019年7月1日から、法改正により、葬儀費用や生活費のため一定額までは払い戻しを受けられます)。

2-2.車の名義変更

相続財産に車があったら、車の名義変更も必要です。そのとき陸運局に遺産分割協議書を提出する必要があります。

2-3.株式の名義変更

遺産の中に株式があったら、相続人への名義変更が必要です。その際にも証券会社(上場株式の場合)や株式発行会社(非上場株式の場合)へ遺産分割協議書を提示しなければなりません。

2-4.不動産の登記

相続財産の中に不動産が含まれていたら、相続人名義に変更する(登記する)必要があります。
その際には、法務局に遺産分割協議書を提出しなければなりません。遺産分割協議書がなかったら、法定相続人全員の共有登記しかできません。

2-5.相続税申告

相続税を申告する場合にも遺産分割協議書が必要です。
なかったら法定相続分に従った申告しかできませんし、配偶者控除や小規模宅地の特例なども適用できません。

ただし、相続税の申告の際に、申告書とともに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておき、実際に3年以内に遺産分割を行えば、特例の適用を受けることができます。

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2-6.紛争の蒸し返しを防止

遺産分割協議にはトラブル防止効果もあります。
きちんと遺産分割協議書を作成していたら、後に一部の相続人が「やっぱり納得できない」などと言って紛争を蒸し返すのを防ぐことが可能となります。

2-7.遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書を作成する際には、どのような紙を使っても構いませんしパソコンを使っても構いません。「遺産分割協議書」というタイトルを書いて、合意した遺産分割の方法を1つ1つ記載していきましょう。
本文を全部書けたら最後に相続人全員が署名押印をします。複数ページに及ぶ場合には、割印も必要です。印鑑は「実印」を使いましょう。

「遺産分割協議書の書き方」についてはこちらのページで解説しています。

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3.遺産分割協議書を作らないとどうなる?

遺産分割協議書を作成しないと、どのような問題があるのでしょうか?
遺産分割協議は法律によって作成を義務づけられているものではないので、作成しなくても罰則はありません。

しかし遺産分割協議書がないと、不動産や車、株式などの相続手続きを進められないので、色々な財産の活用ができません
特に不動産の場合、登記せずに放置していると、一部の相続人が勝手に法定相続人全員の共有登記にしたり、第三者に売却されたりしてしまいます。
また、登記をせずに放置していて相続人が死亡して「再度の相続」が起こると、共有者が次の世代にまで及ぶので人数が増えて大変な混乱状態になってしまいます。

そこで相続が起こったらすぐに遺産分割協議を行い、合意ができたら速やかに遺産分割協議書を作って各種の相続手続きを終えておく必要があるのです。

4.遺産分割証明書

遺産分割協議書と似た書類に「遺産分割証明書」があります(遺産分割協議証明書とも呼ばれます)。
遺産分割証明書も、遺産分割協議書と同様に、不動産や車、株式などの名義変更や預貯金の払い戻しなどのために利用できる書類です。
遺産分割証明書とはどのようなものなのか、遺産分割協議書とは違うのか、見てみましょう。

4-1.遺産分割証明書とは

遺産分割証明書とは、1人1人の相続人が遺産分割協議で成立した内容を証明する書類です。
どのような内容で遺産分割協議が成立したのかが具体的に書いてある書類に、個々の相続人が「確かにこの内容で間違いありません」として署名押印するのです。
これを相続人全員分集めると、遺産分割協議書を1通作ったのと同じ効果が得られます。

4-2.遺産分割協議書と遺産分割証明書の違い

遺産分割証明書と遺産分割協議書の何が違うのかがわかりにくい方が多いので、ご説明します。

遺産分割協議書 遺産分割証明書
①1通の紙に遺産分割の内容を記載して、共同相続人全員が署名押印。どれか1通で効力がある。
共同相続人の人数分の紙に遺産分割の内容を記載して、共同相続人それぞれが1通につき一人署名押印。全員分集めると効力がある。

署名押印する人

遺産分割協議書と遺産分割証明書とでは、署名押印する人が違います。
遺産分割協議書には、法定相続人が全員署名押印する必要があり、一人でも欠けていると無効です。
一方、遺産分割証明書では、署名押印するのは基本的に1枚につき一人の相続人です。他の相続人には他のその人専用の遺産分割証明書に署名押印してもらうので、1枚の遺産分割証明書に複数の人の署名押印を集める必要はありません。

通数

遺産分割協議書は、1通ですべての手続きに対応できます。

一方、遺産分割証明書は、それぞれの相続人が持っている証明書が全員分揃うことが必要です。一人の遺産分割証明書ではその相続人の認識しかわからないので、他の相続人がその内容に合意しているかどうかわからないからです。

ただ、書類を分散させることにより、個々の相続人の署名押印を集めやすいメリットがあります。複数の書類となるので、1通を紛失しても、その1通だけ作り直せば良く、全員の署名押印のある遺産分割協議書を紛失した場合よりも作り直しの手間がかかりません。

4-3.遺産分割証明書のほうが便利な場合

遺産分割協議も遺産分割証明書も、用途は同じですが、遺産分割証明書は以下のようなケースで特に使い勝手が良いものです。

相続人の人数が多い、遠方に居住している

相続人が遠方に居住している場合、郵送によるやり取りが必要ですが、遺産分割協議書を郵送すると紛失する可能性があります。また、1通の遺産分割協議書を郵送で順番にやり取りすると時間もかかります。
遺産分割証明書なら、1人につき1通送るだけで済むので、スピーディですし紛失したときの作り直しの手間も少なくて済みます。
全員揃って署名押印するとしても、全員分の協議書に全員が署名するのは大変ですが、各自の証明書に署名するだけならすぐに終わりますし、誤記や押印ミスのリスクも減ります。

連絡を取りにくい相続人がいる

相続人の中に連絡を取りにくい人がいる場合、遺産分割協議書を送ったら紛失されたり返してもらえなくなったりする危険性があります。
遺産分割証明書であれば、返送してもらえなかったり紛失されたりしてもダメージを最小限に抑えられます。

上記のようなケースでは、遺産分割協議書ではなく遺産分割証明書を利用するのが良いでしょう。

5.遺産分割協議書を作らなくていい場合

遺産相続が起こっても、遺産分割協議書を作成しなくて良い場合があります。それは以下のようなケースです。

5-1.遺言で全ての遺産相続方法について指定があるとき

遺言により、全ての遺産の相続方法が定められているときには、遺言書を使って不動産の名義変更などの各種の遺産相続手続きを進められるので遺産分割協議書は不要です。

5-2.法定相続分通りに相続するとき

すべての相続財産を法定相続分に応じて分けてもかまわない場合には、遺産分割協議書は不要です。

例えば、相続財産を売却し、その代金を法定相続分どおりに分配するケースです。不動産や車を売却する場合には、わざわざ遺産分割協議をせずに法定相続人が共同して売却することが可能です。
(ただし、売却代金の分配が法定相続分と異なる場合は、贈与税が発生する場合がありますので、遺産分割協議書を作成したほうが無難です。)

しかし相続財産を持ち続けるなら、共有にすると不都合です。
例えば、不動産と車と株式がある場合には、すべての財産を法定相続分で共有することになってしまうので煩雑きわまりなく、トラブルの種になります。

遺産を売却しないなら遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成しましょう。

5-3.相続人が一人だけのとき

相続人が1人の場合には、遺産分割協議はしません(できません)し遺産分割協議書も不要です。
もともと複数の相続人がいたけれども、他の相続人全員が相続放棄して1人になったときにも、遺産分割協議書は不要です。

まとめ

遺産分割協議書は、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどの相続手続きを進める際に、必要になることの多い重要書類です。また、相続人間における将来のトラブル防止にも役立ちます

作成しなくても罰則はありませんが、遺言書がなく複数の相続人がいるケースでは、必ず早期に遺産分割協議を終えて作成しましょう。
自分たちで遺産分割協議書を作成するのが難しいと思ったら、弁護士に相談して作成してもらうことをお勧めします。

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