自動車の相続手続きで必要な遺産分割協議書の書き方や必要書類を解説

被相続人の所有していた自動車も立派な相続財産です。したがって、被相続人の遺言書がない場合などには、自動車にも遺産分割協議が必要になります。

さらに、自動車には登録制度があるため、自動車を遺産分割によって取得した相続人は、被相続人からの名義変更も必要です。

そこで、本記事では、名義変更で必要となる遺産分割協議書や、遺産分割協議で自動車を取得した場合の遺産分割協議書の書き方などについて解説します。

1.自動車の相続で遺産分割協議書が必要な場合・不要な場合

最初に被相続人の自動車の名義変更手続きをする際に、遺産分割協議書が必要なケース・不要なケースについてまとめておきます。

1-1.査定額100万円超の普通自動車の相続

被相続人の所有していた自動車が普通自動車で、査定額が100万円を超える自動車を相続する際には、遺産分割協議書が必要となります。

しかし、運輸支局には、簡易版の遺産分割協議書の雛形が存在するので、自動車の相続手続きだけのために、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

【関連外部サイト】「自動車」|国土交通省

簡易版の遺産分割協議書は、各運輸支局でもらうことができるほか、運輸支局のサイトでダウンロードすることができます。

【関連外部サイト】「地方運輸局」|国土交通省

1-2.査定額が100万円以下の普通自動車の相続

被相続人の所有していた自動車が普通自動車で、査定額が100万円以下の場合には、相続手続きに遺産分割協議書を提出することも可能です。

一方で、後述する「遺産分割協議成立申立書を提出することもできます。ただし、「遺産分割協議成立申立書」を使用できるのは、遺産分割協議成立申立書の申請人が、相続する自動車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証書又は、査定価格を確認できる資料の写し等を添付した場合に限られます。

「査定額が100万円以下」であることを証明する査定書は、JAAI(日本自動車査定協会)で作成してもらうことができます。

【関連外部サイト】一般社団法人 日本自動車査定協会

1-3.軽自動車の相続

軽自動車の相続手続きには、遺産分割協議書も遺産分割協議成立申立書も必要ありません

ここまでを、下表にまとめておきましょう。

相続する自動車 必要書類
査定額が100万円超の普通自動車 遺産分割協議書
査定額が100万円以下の普通自動車 遺産分割協議書又は
遺産分割協議成立申立書(※)
軽自動車 どちらも不要

※ ただし、遺産分割協議成立申立書を提出するには、相続する自動車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証書又は、査定価格を確認できる資料の写し等が必要です。

2.自動車を含む遺産分割協議書の書き方

次に、遺産に自動車が含まれる場合の運輸支局の簡易版遺産分割協議書と、自動車の相続手続き以外にも使用できる遺産分割協議書の書き方についてご紹介します。

2-1.運輸支局の簡易版遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書を作成するためには、被相続人が所有していた自動車の車検証を準備しなければなりません。また、遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印の押印が必要となります。

例えば、以下の車検証があったとします。

被相続人の自動車を、次の相続人全員で遺産分割協議により長男が取得することを決めた場合の遺産分割協議書は、次のように記載します。

  • 被相続人:相続太郎
  • 相続人
    被相続人の配偶者:相続花子
    被相続人の子:相続一郎(長男)
    被相続人の子:相続花江(長女)

  • ➀ 被相続人の戸籍(除籍)謄本に記載されている死亡日を記入します。
  • ② 被相続人(亡くなった方)の氏名を記入します。
  • ③ 遺産分割協議で自動車を取得した相続人の氏名を記入します。
  • ④ 車検証から、「自動車登録番号」を記入します。
  • ⑤ 車検証から、「車台番号」を記入します。
  • ⑥ 遺産分割協議が成立した日付を記入します。
  • 各相続人が押印する印鑑は、実印を使用します。

2-2.遺産に自動車が含まれる場合の遺産分割協議書の書き方

被相続人と相続人が前述の通りで、同様に相続一郎が自動車を取得した場合に、自動車を含むすべての遺産について遺産分割協議書を作成する場合の雛形は、次の通りです。

この場合にも、自動車の車検証から自動車を特定するために、「自動車登録番号」と「車台番号」を記載します。

なお、この雛形は、word・PDF形式でダウンロードが可能です。

遺産分割協議書

被相続人      相続太郎
本籍地        鹿児島県○○市○○
死亡時の住所     東京都○○区○○
生年月日      昭和○○年〇月〇日
死亡年月日      令和〇年〇月〇日

被相続人相続太郎の遺産について、被相続人の妻相続花子、被相続人の長男相続一郎、被相続人の長女相続花江によって遺産分割協議を行った結果、次のとおり合意が成立した。

1.相続人相続花子は、以下の遺産を取得する。

(1)土地
所在 東京都○○区△△町□□丁目
地番 ○○番〇
土地の種類 宅地
地積 ○○平方メートル

(2)建物
所在 東京都○○区△△町□□丁目○○番地
地番 ○○番
種類 居宅
構造 木造スレート葺2階建
床面積 1階○○平方メートル、2階○○平方メートル

2.相続人相続一郎は、以下の遺産を取得する。

(1)預貯金
〇〇銀行〇〇支店
口座名義人 〇〇〇〇
普通預金 口座番号******
残高〇〇円および相続開始後に生じた利息とその他の果実

(2)自動車
自動車登録番号 品川○○さ○○○○
車台番号 L-123456789

3.相続人相続花江は、以下の遺産を取得する。

(1)有価証券
○○証券□□支店
口座番号 △△△ー△△△△
銘柄 ○○(銘柄コード○○〇)
株式数 ○○株

(2)建物
一棟の建物の表示
所在      東京都渋谷区恵比寿3丁目31番地12
建物の名称   ○○マンション

専有部分の建物の表示
家屋番号    渋谷区恵比寿3丁目31番地12の301
建物の名称   301
種   類   居宅
構   造   鉄筋コンクリート造15階建
床 面 積   10階部分  〇〇.〇〇㎡

敷地権の目的たる土地の表示
符    号  1
所在及び地番  東京都渋谷区恵比寿3丁目31番地12
地    目  宅地
地    積  〇〇〇.〇〇㎡
敷地権の種類  所有権
敷地権の割合  〇〇〇〇〇〇分の〇〇〇〇

4.相続人相続花子、同相続一郎及び同相続花江は、被相続人の株式会社○○銀行対する
平成〇年〇月〇日付借入金〇〇〇万円を各3分の1の割合で負担する。

上記協議の成立を証するために本書面3通を作成し、各署名捺印して各自1通を保管する。

 

令和〇年〇月〇日

住所    東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人             相続花子 ㊞

住所    東京都△△区△△丁△△番△△号
相続人                   相続一郎 ㊞

住所    東京都□□区□□丁□□番□□号
相続花江 ㊞

 

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3.遺産分割協議成立申立書の書き方

遺産分割協議書成立申立書とは、遺産分割協議書の提出の代わりに、自動車を相続した申請者が1人作成できる書類です。

ここでは、遺産分割協議成立申立書の書き方を解説します。

  • 自動車の表示
    遺産分割協議書と同様に、車検証から「自動車登録番号」と「車台番号」を記入します。
  • 遺産分割協議成立年月日
    遺産分割協議がい成立した日付を記記入します。
  • 申立書による申請の同意年月日
    相続人が申請に同意した日付を記入します。遺産分割協議と同時に、申請の同意を得ておくといいでしょう。
    遺産分割協議より後に、申請への同意をもらった場合は、その日付を記入します。
  • 最後の年月日のところには、書類を作成した日付、住所と氏名は、遺産分割協議によって自動車を取得した相続人の住所・氏名を記入し、実印を押印します。

4.名義変更のための必要書類

自動車の名義変更には、遺産分割協議書・遺産分割協議成立申立書の他にも必要書類があります。

4-1.普通自動車の名義変更手続きの必要書類

  • 自動車検査証
  • 車庫証明書(※)
  • 被相続人の戸籍謄本または除籍謄本 ※被相続人の死亡の事実を証明する書類
  • 相続人全員の記載がある戸籍謄本
  • 所有者となる相続人の印鑑登録証明書 (発行から3か月以内のもの)
  • 所有者となる相続人の実印
  • 委任状(代理人が申請する場合)

    ※自動車の置き場所が変わらない場合は不要です。

なお、相続によって管轄する運輸支局が変わる場合には、ナンバープレートも必要となります。

4-2.軽自動車の名義変更手続きの必要書類

軽自動車の名義変更には、以下の書類が必要となります。

  • 申請書(軽自動車協会で入手可能)
  • 車検証
  • 住民票又は印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 戸籍謄本(被相続と相続人との関係が分かる戸籍謄本・除籍謄本など)
  • 自動車税申告書
  • 申請依頼書(代理人が行う場合)

また、普通自動車と同様に、相続によって管轄する運輸支局が変わる場合には、ナンバープレートも必要となります。

5.自動車の相続手続きのやり方

普通自動車の名義変更手続きは、車の使用の本拠地(自宅など)を管轄する運輸支局で行います。

軽自動車の名義変更手続きは、車の使用の本拠地(自宅など)を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所・分室で行うことができます。

普通自動車 車の使用の本拠地を管轄する運輸支局
軽自動車 車の使用の本拠地を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所・分室

5-1.普通自動車の名義変更手続きの方法

必要書類が揃ったところで、管轄の運輸支局で自動車の名義変更手続きを行います。

運輸支局で以下3つの書類を作成し、手数料納付書に必要な金額の印紙を添付し、必要書類と一緒に提出します。書類が受理されたら新たな車検証が交付されます。

  • 移転登録申請書
  • 自動車税・自動車取得税申告書
  • 手数料納付書

5-2.軽自動車の名義変更手続き

相続した自動車が軽自動車の場合には、相続人が自動車を使用する場所(使用の本拠の位置)を管轄する事務所・支所・分室で名義変更手続きを行います。

自動車の遺産分割協議・相続手続きについてよくある質問(FAQ)

自動車の相続手続きをしないとどうなる?

相続の開始後、自動車の名義変更手続きをしなくても、今のところ罰則はありません。

しかし、道路運送車両法には次の定めがあります。

新規登録を受けた自動車(以下「登録自動車」という。)について所有者の変更があつたときは、新所有者は、その事由があつた日から十五日以内に、国土交通大臣の行う移転登録の申請をしなければならない。(道路運送車両法13条1項)
さらに、自動車の相続手続きをしなければ、次のデメリットが発生します。

廃車・売却ができない

自動車を廃車するには、「永久抹消登録」が必要になります。永久抹消登録は、所有者以外にすることはできず、廃車する前に、名義変更をしなければなりません。

また、売却するにも、登録が相続人となっていなければ、売却することもできません。

自動車税の納付ができず車検ができない

自動車の名義変更手をしなければ自動車税の納付通知書は、旧所有者宛てに送付されます。したがって、自動車の相続手続きを怠ると、車検をすることができません。

自動車保険についても相続手続きは必要?

自動車の名義変更手以外に、被相続人が亡くなると自動車保険の名義変更手続きも必要になります。

自動車保険の名義変更手続きを放置して事故を起こしてしまうと、補償を受けられない可能性があります。また、補償を受けられたとしても、名義変更の手続きが必要となるため、保険金を受け取るまでに時間がかかってしまう可能性もあります。

相続が発生したら、自動車も、自動車保険も相続手続きを早急にしておくことをお勧めします。

相続手続きは専門家に依頼できる?

相続手続きを自分ですると、様々な書類が必要になる煩雑なプロセスを経なければなりません。

一方で、相続手続きは、弁護士に依頼することができます。弁護士に依頼すれば、代理人として迅速で適切に相続手続きを行ってくれるでしょう。

もし、相続手続きにお悩みであれば、相続に強い弁護士に一度相談してみてはいかがでしょうか。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

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相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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