親子が共同相続人となり、利益相反が生じた。どうする?
「利益相反行為」とは、一方にとって利益となり、同時に他方にとっては不利益となる行為を指します。相続においては、親権者…[続きを読む]
遺産分割協議は相続人全員が参加しなければ、無効になってしまいます。
では、遺産分割協議に相続人以外が参加することはあるのでしょうか?
ここでは、相続人以外に遺産分割協議に参加することができる人について解説します。
目次
相続人以外に遺産分割協議に参加できるのは、以下の人達です。
相続人の代理人は、遺産分割協議に参加することができます。
相続人の代理人とは、次のような人達です。
未成年者は、権利義務が発生する法律行為を一人ですることができません。そのため、遺産分割協議のような法律行為をする場合には、未成年の相続人の親権者が代理人として遺産分割協議に参加することになります。
ただし、片親が亡くなって、その配偶者と子供が同じ被相続人の相続人になる場合には、親子が利益相反の関係となるため、特別代理人を選任する必要があります。
認知症などで判断能力を失った相続人が遺産分割協議に参加しても、有効な遺産分割協議とはなりません。
判断能力を失った相続人の代理人として、成年後見人が代わりに遺産分割協議に参加します。
また、判断能力が低下している相続人の保佐人や補助人が、家庭裁判所から代理権を付与されていれば、相続人の代わりに遺産分割協議に参加することになります。
ただし、被後見人と後見人が同じ被相続人の相続人となる場合には、親子のケースと同様に利益相反の関係となるため、特別代理人の選任が必要です。
親子や成年被後見人と成年後見人とが同じ被相続人の相続人となる場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任申立てを行って、子や成年被後見人の代わりに遺産分割協議に参加することになります。
行方不明の相続人がいる場合には、不在者財産管理人選任申立てを行って、行方不明の相続人の代わりに不在者財産管理人が遺産分割協議に参加します。
行方不明であっても、相続人であることに変わりはなく、代理人が遺産分割協議に参加しなければ、無効になってしまうからです。
ただし、行方不明が7年以上継続している場合には、失踪宣告をしてもらうことで、死亡したものとみなされます(民法30条1項、同法31条)。したがって、失踪宣告を受けた人に相続人がいれば、その相続人と遺産分割協議を進めることが可能です。
相続人が自己破産をすると、タイミングによっては破産管財人が遺産分割協議に参加することになります。
破産手続き開始前に相続が開始し、破産手続開始決定時に遺産分割協議がまだまとまっていなければ、破産管財人が遺産分割協議に参加して、取得した遺産は自己破産した相続人の債権者に配当されることになります。
破産手続開始決定前の遺産分割協議には、自己破産をする相続人が参加することになりますが、取得した遺産は債権者に配当されます。相続開始が破産手続き申立てのタイミングに近く、破産者の取得した遺産が少なければ、遺産分割を否認される可能性もあります。
一方で、破産手続き開始決定後に相続が開始すると、すべての破産手続きは終了しているため、自己破産をした相続人であっても遺産分割協議参加して遺産を取得することができます。
相続人は弁護士などの専門家に依頼することで、任意代理人として代わりに遺産分割協議に参加してもらうことができます。
「他の相続人とは疎遠で参加したくない」、「顔も見たくない相続人がいる」、「話しても埒が明かない」など当事者間での話し合いが難しい場合には、弁護士などに依頼するのも遺産分割を前に進める一つの方法です。
被相続人は遺言で指定することで、遺産をご自分の好きな方に残す「遺贈」が可能です。
遺産の割合のみを指定する包括遺贈を相続人以外に行っても、包括遺贈を受けた受遺者が相続人と同じ権利義務を有するために、遺産分割協議に参加することができます。
遺言書によって指定されたのが遺産の割合だけであれば、遺産分割協議に参加して自分が取得する遺産を決めなければならないからです。
相続人は自分の相続分を有償や無償で譲渡することができます。
そこで、相続分の譲受人は相続人としての地位を取得するため、第三者であっても遺産分割協議に参加することができます。
ただし、譲渡人以外の相続人には、民法上対価を支払って、相続分を取り戻すことが認められています。
遺産分割協議にまったく関係のない人が混じっていたとしても、相続人全員が参加しているのであれば、原則として遺産分割協議に関係のない人が取得した遺産の部分のみが無効になり、遺産分割協議全部が無効になってしまうことはありません。
ただし、相続人でない人が主だった遺産を取得し、この人が遺産分割協議に参加しなければ、まったく違う結果になったことが予測される場合には、遺産分割協議自体が無効になると考えられます。
遺産分割協議に参加しないのは、以下の相続人となります。
包括遺贈を受けた第三者であっても、取得した遺産は相続税の課税対象となります。
さらに、包括受遺者が第三者の場合には、相続税の2割加算の対象となることも忘れてはなりません。
相続分を譲渡した相続人も、いったん相続した相続分を譲渡したものと考えられるため、相続税の課税対象となります。
一方、譲渡が無償だった場合には、相続分の譲受人が贈与税の課税対象となります。
ここまでご説明した通り、遺産分割協議に相続人以外が参加することはあり得ます。
遺産分割協議に参加すべき人を間違えてしまうと、せっかく行った遺産分割協議が無効になってしまいます。
また、遺産分割協議は、相続の中でも争いになりやすい手続きです。
こうした場合に、弁護士に相談すれば、遺産分割協議に参加すべき人を調査するところから、遺産分割協議書の作成まで依頼することができます。
遺産分割協議について、お悩みの方は、一度相続に強い弁護士に相談することをお勧めします。