相続登記のケース別必要書類一覧|法務局に何を提出する?
自分で相続登記をする際の必要書類一覧です。法務局で相続登記申請するときに、どんな書類を提出しなければならないのか、ま…[続きを読む]
ハンコといっても、認印、銀行印、実印のように種類があります。
今回は、そのうち「実印」について相続で必要になる場面とあわせて解説します。
日常生活でよく利用するハンコはもっぱら認印で、宅配便などで押すときはサインでも代用可であり、比較的簡易なものといえますが、実印の場合は違います。
この記事では、実印とは何か、なぜ必要か、どんな時に押すか、また実印とセットで使われる印鑑登録証明書についても解説していきます。
目次
実印とは、役所で印鑑登録されている印鑑のことです。
「実印」という名前の判子があるわけではないのでご注意ください。
実印かどうかの判断基準は印鑑登録されているか否かだけで、印鑑の形・材質・金額は何ら関係ありません。木製の数千円の印鑑でも、象牙製の何十万もする印鑑でも、印鑑登録されていれば実印です(※)。
※ただしゴム製のものは登録不可能など、一定の制限はあります。2.で詳述します。
印鑑登録がなぜ必要かというと、その判子が本人のものであることを公的に証明することで、第三者による不正やトラブルの防止に繋げるためです。
ゆえに、原則として一人あたり一つの印鑑しか実印として登録できません。
印鑑登録すると、「印鑑登録証明書」という書類を発行してもらうことができます。
手続きでは、実印と印鑑登録証明書はセットで利用されることが多いです。
印鑑登録証明書の提出が求められるのは主に法務局・金融機関・税務署の3ヶ所ですが(後述)、このうち法務局や金融機関に提出するときには、予め伝えておけばほとんどの場合原本還付が可能です。
つまり、手続きが終わった後に原本を返却してもらえるのです。
原本還付を利用すれば、1通だけでも複数の相続手続きを済ませることが可能ですが、いちいち返却を待っていては、全ての手続きを完了させるのに時間がかかってしまいます。
そのため、相続手続きでは、印鑑登録証明書は一人あたり3通あると便利でしょう。
遺産分割協議後、協議内容をまとめる「遺産分割協議書」を作成する際には、相続人全員分の署名押印が必要です。この押印は実印によるものでなくてはなりません。
ちなみに、複数の遺産分割協議書を作成するときは、それぞれの協議書をまたぐように割印をします。
なお、相続人が一人である場合や遺言書の指定内容通りに相続する場合など、遺産分割協議が不要のときは、実印も必要ありません。
遺産分割協議書はあらゆる相続手続きで提出が求められますが、その際、セットで印鑑登録証明書の添付が必要になることがほとんどです。
遺産分割協議が完了したら、被相続人の銀行口座の名義を変更し、預金を引き出すことになると思いますが、そのときも相続人全員の実印が必要なケースが多いです。
銀行としては、間違って不正な引き出しに応じてしまい、後で責任を追及されることを防ぎたいからです。
セットとなる印鑑登録証明書の提出については、一般的に以下の通りです。
銀行の名義変更手続きの必要書類については以下の記事をお読みください。
不動産を相続する場合、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する「相続登記」を行わなくてはなりません。
不動産を誰が取得するかについて、遺産分割協議で話し合った結果決まったものであれば、相続人全員の実印および印鑑登録証明書が必要になります(※)。
※遺産分割協議ではなく遺言書で相続人が決まった場合や、相続人がそもそも1人しかいない場合、または家庭裁判所による調停調書や審判書がある場合は、実印・印鑑証明書は不要です。
不動産の相続登記の必要書類については以下の記事をお読みください。
相続人が複数いて、かつ遺産分割協議によって相続分を決めた場合には、相続税申告時に押印と印鑑登録証明書の提出が求められます。
相続税申告については必ずしも実印である必要はなく、認印(届出をしていない印鑑)でも構いませんが、本人が間違いなく押印したということを証明するため、特別な理由がない限りは実印がよいでしょう。
ちなみに、相続税申告には10ヶ月という期限があるため、ご注意ください。
また、税務署に提出する印鑑登録証明書は法務局に提出する場合と異なり、原本還付が不可となっています。
親族や弁護士・司法書士など、他の人に手続きを代行してもらう場合に必要な委任状は、認印でも可能な場合が多いものの、重要な手続きに関しては実印を求められることもあります。
では、実印を持っていない人はどうすればよいでしょうか。
これまでみてきた上記の手続きでは実印が必要になるため、押さないと相続の手続きは完了せず、遺産相続をすることができません。
まだ自分の実印がないという人は、相続発生を機会に、印鑑登録しましょう。
・「印鑑登録用の印鑑を持っていない」という方はこのままお読みください。
・「印鑑登録はしていないが印鑑は持っている」という方は2-1.にお進みください。
印鑑登録できる印鑑の特徴に一定の制限はあるものの(後述)、価格等は関係ないので、極論をいうと100円の印鑑でも印鑑登録できなくはありません。
しかし、実印はその人本人の証明に使われる非常に大切な印鑑ですし、簡単に代用できるものでは悪用される危険があります。印鑑の意義に関して疑問が提起されることも増えてきたからこそ、大量生産されて同じものが複数存在する印鑑を登録するのは避けるべきです。
日常的に使う認印とは別の印鑑を作り、保管も金庫で行うなどセキュリティ面も考慮しましょう。
次に、印鑑登録の方法について解説します。
印鑑登録をする前に、ご自身が登録しようとしている印鑑が適当なものかどうかをご確認ください。
つまり、よく利用されているゴム製のシャチハタ印は印鑑登録できません。
どの判子が印鑑登録できるかのか不安な方は、判子屋に行って、「実印を作成したいです」と言えば、規格に合った印鑑を作成してくれます。
自分の印鑑を作ったら、いよいよ印鑑登録をします。
印鑑登録は、ご自分が住民登録している市区町村の役場で行います。
簡単な申請書を書いて300円~500円程度の手数料を払えば、その場で印鑑登録してもらえます(手数料は自治体によって異なります)。
そして、たいていの役所では印鑑登録証または印鑑登録カードが発行されます。
自動交付機に登録証(カード)と手数料を入れると、簡単に印鑑登録証明書を発行できます。
登録証(カード)さえ持っていれば第三者でも印鑑登録証明書を入手できてしまいますから、紛失や盗難にあわないように管理には気をつけましょう。
印鑑登録証を作成せず、マイナンバーカードを印鑑登録証明書の代わりにすることもできます。
この場合は、基本的に本人しか印鑑登録証明書を発行できません。
マイナンバーカードを印鑑登録証にすれば、印鑑登録証明書のコンビニ交付も可能です(対応していないコンビニもあります)。
印鑑登録証明書自体の有効期限はありません。
とはいえ、手続きはできるだけ早く進めるのがよいでしょう。
家庭裁判所での相続放棄手続きで実印や印鑑登録証明書は不要です。
また、相続放棄の手続きが正しく完了すると、最初からその人は相続人ではなかったとみなされるため、相続手続きなどに関与することは不要なのはもちろんのこと、遺産分割協議の参加や協議書へ実印を押すことも不要になります。
もし、他の人から実印や印鑑登録証明書の提出を求められても、提出の義務はありませんし、万が一悪用されてはいけないので、拒否するようにしましょう。
印鑑登録できるのは、日本在住の16歳以上の意思能力者です。
それ以外の者については、その者に代わって諸手続きを行うことになる法定代理人や特別代理人(親権者や成年被後見人など)が代わりに印鑑登録することになります。
未成年者がいる場合は、法定代理人の実印が必要となります。一般的には親権者が法定代理人となりますが、親と子のどちらも相続人の場合は利益相反で親が代理人になれませんので、家庭裁判所に申請して他の人を法定代理人とする必要があります。
前述の通り、印鑑登録できるのは日本在住者です。
しかし、日本国大使館・領事館などで「サイン証明書」を取得すれば、それが印鑑登録証明書の代わりになります。
日本国籍がある場合は大使館で印鑑登録証明書を発行してもらうことも可能です。
夫婦共用で印鑑登録することも、実務上、不可能ではありません。
ただし、原則は一人一つの実印なので、夫婦で同時に役所へ行くと断られる可能性もあります。
また、不動産を夫婦共有名義で購入する場合には別々の実印が求められるなど、後々不都合が生じるおそれもありますから、夫婦で一つずつ別に持っていたほうが無難でしょう。
最後に、本記事で解説した内容についておさらいします。
・実印について
実印とは、住民登録している市町村役場で印鑑登録している印鑑のことです。
遺産分割や相続手続きにおいて、間違いなくその印鑑が本人のものであることを証明するために印鑑登録が必要になります。
・印鑑登録証明書について
印鑑登録すると発行される印鑑登録証明書は実印の押印を求められる場面で、添付書類として必要となることが多いです。
印鑑登録証明書は、主に被相続人の銀行口座や不動産の名義変更時、相続税申告時の3場面で必要となるため、3枚発行しておくと便利でしょう。
実印をまだ持っていない人は、今後の手続きのためにも印鑑をオーダーメイドし、すみやかに印鑑登録を済ませることをおすすめします。
また、実印は法的な効果を持つ大変重大なものなので、保管には十分注意し、むやみに押さないようにしましょう。