遺産分割協議書とは?何に使うのか?活用方法を解説
「遺産分割協議書なんて面倒くさい…書かなくてもいいんじゃない?」と思われる方も多いかもしれません。しかし、遺産分割協…[続きを読む]
遺産分割協議が成立した後、相続手続きを行うためには、成立した協議内容について証明する書類を作成しなくてはなりません。
この証明書類には「遺産分割協議書」と「遺産分割協議証明書」があります。
本記事では、後者の「遺産分割協議証明書」とは何か、協議書とは何が違うのかというところから、証明書を作るメリットや、実際の書式についても解説します。
遺産分割協議証明書を作成しようかと考えている方や、あるいは他の相続人から突然遺産分割協議証明書が送られてきてお困りの方は、ぜひご参考にしてください。
遺産分割協議証明書は、遺産分割協議の内容について対外的に証明する書類のことです。
相続手続きの際、相続税申告や遺産の名義変更などで必要になります。
効力としては、遺産分割協議書の効力と同じです。
遺産分割協議書との違いは、主に下記の4つです。
実際の相続においては、相続人の中の取りまとめ役が、各相続人に遺産分割協議証明書のひな形のデータをメール等で送り、プリントアウトして作成→返送してもらう、等の方法をとって利用されています。
なお、遺産分割協議書については以下の記事をお読みください。
遺産分割協議書ではなく、あえて遺産分割協議証明書を作成するメリットとしては、以下が挙げられます。
相続税の申告が必要となる場合、遺産分割協議証明書(または遺産分割協議書)は、申告時の添付資料として必要になります。いっぽう、相続税の申告および納付は、相続発生から10ヶ月以内に完了しなくてはなりません。
遺産分割協議書では相続人全員分の署名押印を得るために、相続人間で回覧しなくてはならず、申告期限に間に合うかどうかが心配です。
この点、遺産分割協議証明書であれば個人が作成できるので、迅速な手続きが望めます。
また、相続人の人数が多かったり、相続人同士が離れて暮らしていたりするケースも多いのではないでしょうか。
多数の相続人、あるいは遠方にいる相続人に遺産分割協議書への署名押印を求めるのは、面倒な作業です。先述の通り、回覧中に紛失したり遅滞したりするおそれがあります。
遺産分割協議証明書であれば、各自で作成・郵送してもらって集めることができるため、便利です。
音信不通な相続人や、あるいは連絡はつくけれども対応が遅い非協力的な相続人がいる場合があります。
全員の署名押印が必要な遺産分割協議書では作業がストップしてしまうところですが、個人で作成できる遺産分割協議証明書であれば、とりあえずその相続人は後回しにして、他の人の分を回収することができます。
それでは、遺産分割協議証明書はどのように書けばよいのでしょうか。
基本的な書き方は遺産分割協議書と同じです。
下に書式サンプルを掲載します。
サンプルなので、全くこの通りに書く必要はありません。
必要な項目をイメージしやすくするため、A~Gまでのアルファベットを振っています。
前述の通り、遺産分割協議証明書の作成には、➀協議内容すべてを盛り込むか、②自分の相続分についてのみ記述するかの2パターンがあります。
画像はクリックで拡大します。
遺産分割協議証明書を個人で作成すると、日付がばらばらになってしまうかもしれません。
日付が人によって異なっていても、実務上の問題は特に発生しません。
すべての遺産分割協議証明書のうち、最も遅い日付が遺産分割協議の成立日とみなされます。
ただし、日付にばらつきがあっても問題がないとはいえ、相続人間でいつ正式に遺産分割協議が成立したのか共通認識を持っておくためにも、取りまとめ役の人が日付を合わせてもらうなどしたほうが望ましいでしょう。
署名は直筆、押印は実印でなくてはなりません。
実印とは、市町村役場で登録している公的な印鑑のことです。
上記の実印に関連して、市町村役場で印鑑登録をすると、「印鑑証明書」が発行してもらえます。
相続手続きの際、遺産分割協議証明書の提出先(後述)では、証明書とともに印鑑証明書の提出もセットで求められます。
書類に押されている印鑑が真にその人のものであることを証明するためです。
したがって、相続人の代表者が各相続人から遺産分割協議証明書を集めるときには、同時に印鑑証明書も回収することが通常です。
署名押印のほか、用紙の右上など、欄外に「捨印」を押すこともあります。
捨印は、書類の記述内容に些細な誤りがあった場合に、訂正印としての役割を果たします。
必須ではありませんが、もしもミスがあったときに郵送し直すのが面倒だという方などは、押しておいたほうがいいでしょう。
ただし、内容を第三者に書き換えられるリスクはありますし、実際に捨印によってどこまで訂正できるのか、明確な範囲基準は設けられていません。
もっとも、捨印は誤字脱字や漢字のミスなど、軽微な誤りの訂正のためにありますから、遺産分割の内容自体など、相当重大な箇所までは訂正できません。そこはご安心ください。
遺産分割協議証明書の提出先として考えられるのは、遺産分割協議書と同様です。
たとえば、以下の通りです。
本記事では、遺産分割協議証明書についてご説明してきました。
遺産分割協議証明書は遺産分割協議書と効力としては同じですが、個人で作れるという点で、相続人同士が各地に散らばっている場合などに便利です。
遺産分割協議証明書が突然送られてきたら、焦って署名押印をせずに、内容を精査して、困ったら弁護士に相談してアドバイスをもらうようにしましょう。