遺産分割協議書の作成は誰に頼む?相続人が作成を依頼できる士業は?
遺産相続では、被相続人の遺言者がなければ、相続人全員で遺産を分割するための話合いである遺産分割協議をしなければなりま…[続きを読む]
相続人間で、遺産分割について合意した内容を記載する遺産分割協議書。
「遺産分割協議書の作成には、どれくらいの費用がかかるんだろう?」、そんな疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、遺産分割協議書の作成を、弁護士や司法書士、税理士、行政書士といった士業に依頼した場合の費用相場についてご紹介します。
なお、どんな場合にどの士業に遺産分割協議書作成をお願いすればいいのかについては、次の記事をご参照ください。
目次
最初に各士業の遺産分割協議書作成にかかる費用相場をご紹介しておきましょう。
士業名 | 遺産分割協議書作成の費用相場 |
---|---|
司法書士 | 3万円~12万円程度(相続登記報酬を含む) |
税理士 | 相続財産額の0.5%~1.0%程度(相続税申告報酬を含む) |
行政書士 | 書面作成のみの依頼した場合:3万円~5万円程度 |
弁護士 | 依頼人が受ける経済的利益によって異なる |
では、次項から、各士業ごとに、遺産分割協議書の作成費用についてご説明していきます。
司法書士は、不動産や法人登記・信託の手続き代行を行う士業です。
したがって、相続財産に不動産が含まれている場合に、相続不動産の調査や相続登記とセットに遺産分割協議書作成を引き受けることが一般的です。司法書士の相続登記の報酬額は、相続不動産の数や額、法定相続人の数によって大きく増減します。
2018年のデータですが、日本司法書士会連合会の実施したアンケートでは、日本を8つのブロックに分割し、相続による所有権移転登記の報酬額の平均は6万円円~8万円程度となっています。最低額から低位10%の平均額では、3万円~4万円程度、最高額から高位10%の平均額で、10万円~12万円程度です。
したがって、相続登記を含めた司法書士の遺産分割協議書作成の報酬相場は、12万程度を上限として考えておけばいいでしょう。ただし、前述した通り、報酬額は、相続不動産の数・額、法定相続人の数により増減します。
ちなみに、相続登記には、司法書士報酬以外にも登録免許税として、相続不動産の固定資産税評価額の0.4%が課税されます。
【参考外部サイト】「司法書士の報酬」|日本司法書士会連合会
所得税や相続税の申告代行をしてくれるのが税理士です。税理士は、相続税申告依頼すると、添付書類として遺産分割協議書の作成を代行してくれます。
ただし、税理士について気を付けなければならないのは、行政書士として登録をしている場合を除き、遺産分割協議書作成のみを引き受けると、税理士が違法性を問われてしまうため、遺産分割協議書単体で作成をお願いすることは難しいでしょう。
相続税申告の税理士報酬は、一般に相続財産額の0.5%~1.0%程度と言われており、相続税申告が必要な場合には、通常、遺産分割協議書の作成費用も相続税申告の税理士報酬に含まれています。
ただし、相続税申告を依頼する税理士は、誰でもいいというわけにはいきません。相続税申告は、税理士であっても難しい分野であり、実績と経験が必要になるからです。
行政書士は、行政に提出する法律文章の作成・手続き代行を行う士業です。相続では、遺言書作成のサポートや、相続人関係説明図や相続人・相続財産額の調査などを依頼することができ、遺産分割協議書作成を単体で依頼することができます。
行政書士の報酬は、事務所ごとに設定することができるため、費用はピンキリですが、相場は、3万円~6万円といったところでしょう。行政書士は、他の士業に比べて報酬が相対的に安いことに依頼するメリットがあります。
そのため、相続人・相続財産調査から遺産分割協議書作成までをトータルで依頼することを検討してみてもいいでしょう。
弁護士の場合も、遺産分割協議書の作成費用は、遺産分割協議への代理人としての介入を依頼した報酬に含まれることが一般的です。「遺産分割協議書の作成のみ」という依頼は受け付けていない法律事務所も多く、事務所の紹介ページやお電話等で、予め確認が必要です。
そこで、遺産分割協議を弁護士にお願いした場合の弁報酬相場を考えてみましょう。現在、弁護士報酬は自由化されており、どのような報酬体系を取るかは事務所によって異なります。
弁護士に相続について相談する際には、相談料が発生します。相場は、5,500円(税込)/30分程度が相場ですが、初回の相談を無料にしている事務所も少なくありません。
手数料は、依頼を受けた案件に着手する際に発生するで、依頼を受けた後は、万一案件の解決が不成功に終わっても返還されることはありません。
前述した通り、弁護士費用は、自由化により事務所ごとに設定することができ、特に決まりがあるわけではありません。しかし、実際には、弁護士報酬が自由化される前の旧弁護士報酬基準をそのまま使用している事務所も少なくありません。
そこで、ここでは、旧弁護士報酬基準による着手金の相場をご紹介しておきましょう。
旧弁護士報酬基準
経済的利益 | 着手金(税込) |
---|---|
300万円以下の場合 | 8.8% |
3000万円以下の場合 | 5.5%+9万9,000円 |
3億円以下の場合 | 3.3%+75万9,000円 |
3億円を超える場合 | 2.2%+435万6,000円 |
遺産分割の場合の経済的利益とは、対象となる相続分の時価相当額です。
ただし、分割の対象となる財産の範囲又は相続分について争いのない部分については、その相続分の時価相当額の3分の1の額です。
遺産分割にかかる着手金は、20万円程度が相場だと考えられます。
報酬金とは、遺産分割事案が解決した際に発生する費用です。ここでも、報酬金の旧弁護士報酬基準を示しておきます。
旧弁護士報酬基準
経済的利益 | 報酬金(税込) |
---|---|
300万円以下の場合 | 17.6% |
3000万円以下の場合 | 11%+19万8,000円 |
3億円以下の場合 | 6.6%+151万8,000円 |
3億円を超える場合 | 4.4%+811万8,000円 |
その他の費用としては、郵便局などの通信費などの実費、さらに遺産分割協議を行う場所が事務所から遠ければ、出張した際に日当が発生します。
もちろん遺産分割協議書を相続人がご自分で作成することは可能です。
その場合には、基本的に費用はかかりません。
ただし、公正証書にすることで書類の効力を強めたい場合には、3万円~10万円がかかります(遺産額によって変わります)。
遺産分割協議書には、協議での合意を書類という形で残し、紛争の蒸し返しを防ぐ効果があります。さらに、相続登記や相続税申告など、添付が必須な相続手続きもあります。
このような遺産分割協議書の性格を考えると、書類に不備があっては意味がなありません。
後になって「書類に欠陥があるのでこの協議書は無効だ」と他の相続人から主張される可能性や、提出後、税務署や法務局に不備を理由に突き返されてしまう可能性があります。
しかし、法律の専門家であれば、ミスなく書類を作成してくれます。
遺産分割協議を確実に終え、その後争いにならない相続とするためにも、遺産分割協議書の作成は専門家である士業に依頼するといいでしょう。
遺産分割協議書の作成費用の負担について、特に法律上の定めがあるわけではありません。したがって、相続人間で合意ができれば、どのように負担してもかまいません。
ただし、弁護士費用については、弁護士を付けることで利益を受ける依頼者である相続人が負担します。