特別受益とは?受益が認められるケースと計算方法を解説!
被相続人の生前に、一部の相続人だけが財産をもらっていたというケースはよくあります。この場合に公平な相続とするため「特…[続きを読む]
相続人だけの協議で遺産の分け方を決められないときは、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行い、裁判官の仲介で話し合いを進めることになります。
遺産分割調停を申立てるには、申立書その他の関係書類を家庭裁判所に提出しなければなりません。
この記事では、遺産分割調停申立書など書類の記載ポイント、提出しなければならない必要書類等について解説します。
目次
申立書は、遺産分割の基本的情報を記載して裁判所に提出するものです(被相続人・相続人・申立人・相手方・連絡先・申立ての理由など)。
書式は、裁判所のサイトからダウンロードでき(各家庭裁判所にも備えてあります)、各欄に必要事項を記載します。
その記載方法のポイントは後述します。
【裁判所HP】遺産分割調停の申立書
申立書の通数は、次のとおりです。
例えば、申立人以外の相続人3人が相手方となるときは、1(原本)+3(コピー)=合計4通を提出することになります。
遺産の内容を一覧表で明らかにするものです。遺産目録の書式も、先ほどの裁判所のサイトで入手できます。通数も申立書と同じです。
記載方法のポイントは後述します。
遺産の内容は遺産目録に記載して提出しますが、その内容が事実であることを確認する資料等も提出しなくてはなりません。
主な資料の例は以下のとおりです。
遺産 | 必要書類 |
---|---|
不動産 | 登記簿謄本(登記事項証明書)、固定資産評価証明書、土地の公図、建物所在地のわかる住宅地図 |
預貯金 | 残高証明書または通帳コピー |
株式・有価証券など | 株券コピーや取引口座の残高証明書など |
自動車 | 登録事項証明書(車検証のコピーも可) |
この他にも、事案によって、裁判所から追加の資料を求められる場合があります。
申立書や目録、証明書の他に、相続関係を確認するために、戸籍関係の書類を取り寄せて提出する必要があります。
基本的に、誰が相続人となっても、以下の書類が必要です。
1の書類が分かりにくいと思いますので、次で概要と注意点をご説明します。
なお、2と3は、申立人と相手方が相続人であることや所在を確認するための書類です。
被相続人の「すべての戸籍謄本」が必要な理由は、申立人と相手方の他に相続人がいないかを確認するためです。
相続人が一人でも参加していない遺産分割協議は無効となってしまいます。
そこで、被相続人が生まれた時から、亡くなるまでの間の戸籍を全部提出させて、隠れた相続人の有無を確認するのです。
身分関係を確認するには全ての戸籍が必要です。
例えば、本籍地を移したり婚姻したりで戸籍がA→B→Cと移っている場合には、AとCの戸籍だけはで足りず、Bの戸籍も必要とされるわけです。
取り寄せた戸籍がそれで全てかどうかは、戸籍が連続していることを確認しましょう。戸籍には、いつどこの戸籍から来たかが書いてありますので、それが連続していなければ、どこかに別の戸籍があるということです。
転籍などによって戸籍を移転した場合や死亡した場合、もとの戸籍から「除籍」されたと言います。
つまり、相続での除籍謄本とは、亡くなった人が除籍された戸籍謄本のことです。
なお、「除籍謄本」には、その戸籍に属していた全員が戸籍から抜けてしまい、閉鎖された戸籍という、別の意味もありますので、注意が必要です。
法令で戸籍の書式が変わった場合、変わる前の戸籍を「改製原戸籍」(「かいせいげんこせき」、「かいせいはらこせき」とも読む)と言います。
出生時の戸籍が戦災や災害で失われている場合は、生殖可能年齢になる前(10歳程度)からの戸籍で足りる扱いです。それ以前に子がいた可能性はまずないからです。
相続人が誰であるかによって、先順位の相続人がいないことや代襲相続の発生を確認する必要が生じるので、さらに必要な書類が増える場合があります。
これらは場合によって複雑に変わりますので、申し立てる裁判所に確認するようにしましょう。
例えば、兄弟姉妹が相続人の場合は次のようになります。
申立書の書式には各事項の記載欄があり、これを埋めていくだけですので、難しいことはありません。
全体的なポイントとしては、住所・氏名などは戸籍や住民票通り正確に記載するということです。
主なポイントとなる箇所や一般の方が迷いやすい箇所をご説明します。
①家庭裁判所に書類を持参して申立てをする場合は持参する当日
②書類を郵送して申立てをする場合は発送日
を記載するのが一般的です。
亡くなられた時点での住民票上の住所です。
なお、本籍地や最後の住所は、一字一句、戸籍や住民票のとおりに記載してください(表記が違うと書記官から訂正を求められ、手間がかかります)。
チェックボックス方式となっています。
調停の進行を円滑にするために、あらかじめ裁判所に問題の状況を知らせておくためのものですから、正直にチェックしましょう。
申立の動機欄はあてはまるもの全部に複数チェックを入れて構いません。
それぞれの動機の項目について簡単にご説明します。
相続人でない者が紛れ込んでいると主張する者がいて紛争となっているケースです。隠し子がいた場合などが多いです。
何が遺産かについて争いがある場合です。
例えば、被相続人が不動産を残したけれど、相続人の一人が「それは俺の金で買ったもので、名義を被相続人にしていただけだから、遺産ではなく俺の所有物だ」と言い出したようなケースです。
当事者の一覧表です。
ここも本籍と住所を書類に記載されたとおりに正確に記載しましょう。
遺産目録は、遺産の一覧表です。
大切なことは、分かっている遺産はすべて記載するという点です。
調停が進んでから新たな遺産が追加されると、話が振り出しに戻って、それまでの調停が無駄になってしまうことも多いです。
申し立て時点で判明していなかった遺産であればやむを得ませんが、判明している遺産は書き漏らしのないよう十分注意しましょう。
遺産目録は、不動産、現金、貯金、株式等、遺産の品目ごとにまとめて記載する書式となっています。
その内容を証明する資料に記載されているとおりに記入すれば良いだけです。
それぞれの品目ごとに簡単に書き方をご説明します。
法務局またはオンラインの登記情報提供サービスで、登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)を入手して、そのとおりに記載します。
土地と建物では、記載内容に違いがありますので慣れないと戸惑いますが、書類をよく見て書き写せば大丈夫です。
記載項目 | 記載内容 |
---|---|
土地 | 所在、地番、地目、地積 |
建物 | 所在、家屋番号、種類、構造、床面積 |
備考欄 | 不動産の共有関係(持ち分)や利用状態を記入 |
金額、保管者を記載します。
なお、相続開始後に預貯金から払い戻した現金などについては、「現金(◯◯銀行預金払戻金)」のように品目を書きます。
金融機関名、支店名、預金種類、口座番号(記号番号)、残高を記入します。備考欄に通帳の保管者を記入します。
会社名、株式の種類、単位あたりの金額(いつの時点の金額かも記入)、株式数を記入します。上場株式の場合は備考欄に取扱い証券会社を記入します。
また、株券を保管している相続人がいる場合は、それも備考欄に記入しましょう。
例えば債券の名称、取扱会社名(銀行、証券会社など)、金額、証券の保管者などを記載します。
これまでご説明してきた書類の他に、事案や担当する家庭裁判所によって追加書類の提出を求められる場合がありますので、主要なものをご紹介しておきます。
相手方の中に特別受益を受けていた者がいると主張する場合は、特別受益目録というものを作ります。
受益者(生前贈与を受けた者)、主張者(特別受益だと主張する者)、生前贈与の時期、生前贈与時の金額(評価額)、相続開始時点の金額(評価額)を記入します。
相続関係が一目でわかるように樹形図の形で説明する図表です。わかりやすければ良いので手書きでも十分です。
「申立ての実情」という書類名で、相続紛争の状況をチェックボックス式で報告するものです。申立書の「申立ての動機」をさらに詳しくしたようなものです。
事前に争いのポイントを裁判所が把握することで、調停をスムーズに進行するためですので、できるだけ詳しく記載しておきましょう。
これも裁判所が事前に事件内容を把握するためのアンケートです。
相続人の中に判断力に問題のある者がいないかどうか、調停に出席しないと思われる者がいないかどうか、弁護士に依頼をする意向の者はいるか、裁判所で暴力を振るうおそれのある者はいるか等が質問されます。
アンケートですから返答するかどうかは任意ですが、円滑な進行のためにできるだけ正確に答えておいたほうが良いでしょう。
住民票上の住所と実際に住んでいる場所が違う場合や、裁判所からの書類を別の場所で受け取りたい場合に、その届出をするものです。
戸籍謄本等を全部集めるのは一般の方には大変な作業です。連続した戸籍を集めるために、様々な地方自治体の戸籍係と手紙や電話のやりとりをしなくてはならず、集めるのに数ヶ月かかることは珍しくありません。
「法定相続情報証明制度」を利用する場合であっても、最初に戸籍書類を集めなくてはならない点は同じです。
そのため、弁護士や司法書士に相談したり、自分で集める場合もできるだけ早めに始めるようにしましょう。
法定相続情報証明制度とは
相続関係を説明する図表(法定相続情報一覧図)と、その内容を証明する戸籍謄本等を登記所(法務局)に提出し、登記官にその内容を確認してもらいます。
法務局は、図表に、この内容は戸籍謄本等と一致していますとの認証を記載した「認証文付き法定相続情報一覧図」を発行してくれます(提出した戸籍謄本等は返却されます)。この「認証文付き法定相続情報一覧図」は、相続による不動産登記の際に、戸籍謄本等の代わりとして認められます。これまでは相続関係の手続をするたびに、いちいち大量の戸籍謄本等の提出を繰り返す必要がありましたが、その労力を不要とする制度です。
この「認証文付き法定相続情報一覧図」を、遺産分割調停の申立てにも利用できるかどうかは各家庭裁判所によって異なりますが、徐々にその利用を認める動きが広まっています。
例えば、東京家庭裁判所では、遺産分割調停申立てにあたって認証文付き法定相続情報一覧図の利用を認めています。
【裁判所HP】PDF:遺産分割調停(審判)を申し立てる方へ
申立書などを作成して申立てが受理されても、それで書類の提出が終わるとは限りません。
もともと当事者の話合いがまとまらなかったから調停となったのです。調停が進むと、様々な争点が浮かび上がり、その都度、裁判所から新たな資料の提出を求められることが通常です。
相続人となってから、一番最初に苦労するのは戸籍謄本等の収集でしょう。
一般の方が人の戸籍謄本を目にする機会は多くないですし、自分の戸籍であっても、その記載されている内容の意味をすぐに全部理解することは困難です。
まして、相続の場合は、会ったこともない曾祖父母や、聞いたこともない親戚の名前が書類に登場して驚くことも珍しくありません。
血縁関係を把握するだけでも時間がかかります。
不動産の登記簿謄本も同じです。不動産関係のお仕事をされていなければ、日頃目にすることはありませんから、その読み方もわからないでしょう。
遺産である不動産が多ければ、どの登記簿がどの不動産なのかを理解するだけでも一般の方には困難です。
遺産分割調停は話し合いとはいえ、裁判所の手続である以上、様々な資料の提出を要求され、そのための時間や労力は馬鹿になりません。
先ほども述べたように、戸籍や登記の関連書類を集めるだけでも大変なことです。
これらにエネルギーを費やすより、法的手続は弁護士などの専門家に任せ、ご自分の本来の仕事や家庭生活に集中する方が得策です。
弁護士は、遺産分割を含む相続問題のエキスパートです。
遺産分割調停について依頼すれば、申立に必要な書類の作成、戸籍謄本等の必要書類の収集と提出も、全てを弁護士に任せることができます。
しかも、特別受益・寄与分・遺留分など相続特有の法律問題が生じても、弁護士であればこれに即応することができます。
遺産分割調停の申立をしたいときは、弁護士に相談し、依頼することがおすすめです。