遺産分割調停の申立方法は?申立書の書き方とポイントを解説

相続人だけの協議では遺産を分割できないときは、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行い、裁判官の仲介で話し合いを進めることになります。
遺産分割調停を申立てるには、申立書その他の関係書類を家庭裁判所に提出しなければなりません。

この記事では、遺産分割調停申立書など遺産分割調停に必要となる書類の記載ポイントについて解説します。

なお、遺産分割調停における必要書類については、次の記事で詳述しています。是非、ご一読ください。

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1.遺産分割調停と遺産分割調停申立書

1-1.遺産分割調停申立書とは

遺産分割調停の申立書は、遺産分割の基本的情報を記載して裁判所に提出するものです(被相続人・相続人・申立人・相手方・連絡先・申立ての理由など)。

1-2.申立書関連の必要書類

遺産分割調停を申し立てる際には、次の書類も作成して申立書と一緒に提出しなければなりません。本記事では、これらの書類の書き方についても、一緒にまとめて解説します。

  • 当事者目録
  • 遺産目録
  • 相続関係図
  • 申立の実情
  • 特別受益目録(必要に応じて提出)

2.遺産分割調停申立書の書き方

最初に、遺産分割調停の申立書の見本を参考にしながら、申立書の書き方を解説していきましょう。

2-1.基本的な書き方

申立書の書式には各事項の記載欄があり、これを埋めていくだけで難しいことはありません。
全体的なポイントとしては、住所・氏名などは戸籍や住民票通り正確に記載するということです。

なお、以下のボタンをクリックすると、word形式の申立書の書式をダウンロードすることができます。

申立書のword形式の書式をダウンロード

2-2.迷いやすいポイントの記載例

主なポイントとなる箇所や一般の方が迷いやすい箇所についてご説明します。

申立書の日付欄

申立書の日付は、以下のいずれかを記載するのが一般的です。

  1. 家庭裁判所に書類を持参して申立てをする場合:持参する当日
  2. 書類を郵送して申立てをする場合:発送日

被相続人の欄の「最後の住所」

被相続人が亡くなられた時点での住民票上の住所です。

なお、本籍地や最後の住所は、一字一句、戸籍や住民票のとおりに記載してください(表記が違うと書記官から訂正を求められ、手間がかかってしまいます)。

「申立ての趣旨」欄

「申立ての趣旨」欄は、「遺産全部の分割」か「遺産目録記載の遺産の一部の分割」かの調停申立てで上下段に分かれており、いずれかを選択して✓を入れ、同時に「調停」にも✓します。さらに、「遺産目録記載の遺産の一部の分割」を選択した場合には、遺産目録所に記載した分割したい遺産を記入します。

「申立ての理由」欄

チェックボックス方式となっています。
調停の進行を円滑にするために、あらかじめ裁判所に問題の状況を知らせておくためのものですから、正直にチェックしましょう。

「申立ての動機」欄

申立の動機欄はあてはまるもの全部に複数チェックを入れても構いません
それぞれの動機の項目について簡単にご説明します。

「相続人の資格に争いがある」ケースとは?

遺産分割に相続人でない者が紛れ込んでいるとの主張により紛争となっているケースで✓を入れます。隠し子がいた場合などが典型です。

「遺産の範囲に争いがある」ケースとは?

何が遺産かについて争いがある場合に✓します。
例えば、被相続人の不動産について相続人の一人が「その不動産は自分の金で買ったもので、名義を被相続人にしていただけだから、遺産ではなく自分の所有物だ」と言い出したようなケースです。

3.当事者目録の書き方

当事者目録とは、当事者の一覧表です。

こちらも本籍と住所を戸籍などに記載されたとおりに正確に記載しましょう。

当事者目録も、下のボタンからword形式の書式をダウンロードすることができます。当事者目録のword形式の書式をダウンロード

4.遺産目録の書き方

次に遺産目録の書き方についてです。

4-1.遺産目録とは

遺産目録は、遺産の一覧表です。
重要なポイントは、分かっている遺産はすべて記載するという点です。

調停が進んでから新たな遺産が追加されると、話が振り出しに戻ってしまい、それまでの調停が無駄になってしまいます。
申し立て時点で判明していなかった遺産であればやむを得ませんが、判明している遺産は書き漏らしのないよう十分注意しましょう。

4-2.遺産目録の品目

遺産目録は、不動産、現金、貯金、株式等、遺産の品目ごとにまとめて記載する書式となっています。
その内容を証明する資料に記載されているとおりに記入すれば良いだけです。
それぞれの品目ごとに簡単に書き方をご説明します。

不動産(土地、建物)

法務局またはオンラインの登記情報提供サービスで、登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)を入手して、そのとおりにすべての土地・建物を記載します。

土地と建物では、記載内容に違いがありますので慣れないと戸惑いますが、書類をよく見て書き写せば間違いありません。

記載項目 記載内容
土地 所在、地番、地目、地積
建物 所在、家屋番号、種類、構造、床面積
備考欄 不動産の共有関係(持ち分)や利用状態を記入

現金・預貯金・株式など

現金

金額、保管者を記載します。
なお、相続開始後に預貯金から払い戻した現金などについては、「現金(◯◯銀行預金払戻金)」のように品目を書きます。

預貯金

金融機関名、支店名、預金種類、口座番号(記号番号)、残高を記入します。備考欄に通帳の保管者を記入します。

株式

会社名、株式の種類、単位あたりの金額(いつの時点の金額かも記入)、株式数を記入します。上場株式の場合は備考欄に取扱い証券会社を記入します。
また、株券を保管している相続人がいる場合は、それも備考欄に記入しましょう。

その他の有価証券

例えば債券の名称、取扱会社名(銀行、証券会社など)、金額、証券の保管者などを記載します。

遺産目録は、次のボタンからエクセル形式の書式をダウンロードすることができます。
遺産目録のエクセル形式の書式をダウンロード

5.相続関係図の書き方

相続関係図とは、遺産を残した被相続人と相続人との関係を図解した家系図のようなものです。

相続関係図には、少なくとも次の記載が必要になります。そして、被相続人と相続人の関係を直線で結びます。遺産分割調停では、わかりやすければ良いので手書きでも十分です。

  • 被相続人:生年月日、死亡年月日
  • 相続人:生年月日(既に死亡している場合は、死亡年月日)、被相続人との続柄

しかし、次の項目を入れて法務局に提出すると、相続情報一覧図として交付を受けることができ、相続登記などの相続手続きに利用することができます。

  • 被相続人:最後の住所・最後の本籍
  • 相続人:住所

以下の相続関係図のサンプルでは、被相続人の次男が被相続人より先に死亡していることになります。

相続関係図の書き方について詳しくお知りになりたい方は、次の記事を参考にしてください。

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6.その他の作成すべき必要書類について

その他にも、遺産分割調停の申立てには、以下の書類を作成しなければなりません。

特別受益目録(特別受益の主張をする場合)

調停の相手方となる相続人の中に特別受益を受けていた者がいると主張する場合には、「特別受益目録」を作ります。

受益者(生前贈与を受けた者)、主張者(特別受益だと主張する者)、生前贈与の時期、生前贈与時の金額(評価額)、相続開始時点の金額(評価額)を記入します。

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事情説明書(「申立ての実情」)

申立ての実情」という書類名で、相続紛争の状況をチェックボックス式で報告するものです。申立書の「申立ての動機」をさらに詳しくしたものです。

事前に争いのポイントを裁判所が把握することで、調停をスムーズに進行するために記載するので、できるだけ詳しく記載しておきましょう。

この書類は、裁判所によって書式が異なるため、管轄となる裁判所にご確認ください。

進行に関する照会回答書

これも裁判所が事前に事件内容を把握するためのアンケートです。

相続人の中に判断力に問題のある者がいないかどうか、調停に出席しないと思われる者がいないかどうか、弁護士に依頼をする意向の者はいるか、裁判所で暴力を振るうおそれのある者はいるか等が質問されます。

アンケートですから返答するかどうかは任意ですが、円滑な進行のためにできるだけ正確に答えておいたほうが良いでしょう。

現住所及び送達場所等の届出書

住民票上の住所と実際に住んでいる場所が違う場合や、裁判所からの書類を別の場所で受け取りたい場合に、その届出をするものです。

遺産分割調停についてよくある質問(FAQ)

遺産分割調停は弁護士に依頼するほうがいい?

遺産分割調停は弁護士に依頼すべき理由には、次のものが挙げられます。

  • 相続人が必要書類の作成・収集するのは大変
  • 8割近くが遺産分割調停を弁護士に依頼している
  • 法的に有効な主張をしなければ調停で認めてもらえない
  • 申立書の作成・提出から解決までを代理してもらえる
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遺産分割調停の流れは?

申立てが済むと、調停期日が設定されます。期日では、申立人・相続人双方が順番に調停委員のいる部屋に呼び出されて、調停委員に希望する遺産分割方法など、遺産分割についての考え方を聞かれ、自分の意見を伝えると、調停委員が相手方にその内容を伝えてくれます。

このように、調停では、申立人と相手方が顔を会わせて対立することがありません。

期日には、回数制限がなく調停が何年にもわたることがかります。

遺産分割について相続人全員の意見が一致すると、裁判官により、調停による合意内容が読み上げられます。間違いがなければ、その合意内容に従って調停調書が作成され、それを基に具体的に遺産分割が可能になります。

一方で、相手方が裁判所に出頭しない場合や、これ以上話し合っても合意の見込みがないと判断された場合などには、調停は不成立となり遺産分割審判へ進むことになります。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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