遺産分割調停は欠席できる?欠席するとどうなるの?

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遺産分割協議がまとまらないときは、遺産分割調停を申し立てなくてはなりません。

しかし、調停は平日の昼間、月1回ほどのペースで行われます。それがおよそ半年から1年(事案によっては数年間)も続くため、仕事は休まねばなりませんし、遠方であれば交通費もかさんでしまいます。

申し立てた側はともかく、申し立てを受けた側なら欠席したくなることも多いでしょう。
そんなときどうすればいいのでしょうか。欠席したときのペナルティはあるのでしょうか。

この記事では、遺産分割調停に欠席した場合にどうなるか、弁護士に代理を頼むことはできるのかなど、調停を欠席したいときの疑問について解説していきます。

1.遺産分割調停は欠席できる?

遺産分割調停を欠席することは可能です。しかも、遺産分割調停に欠席してもそれだけで不利益を被ることはありません。

この点、次のふたつの場合に分けて説明しましょう。

(A)遺産分割調停に参加する意欲があるが、今回は都合が悪い場合
(B)そもそも遺産分割調停に最初から参加する意欲がない場合
(A)今回だけ欠席したい場合

遺産分割調停に参加する意欲はあるけれど、裁判所から指定された調停期日は都合が悪く出席することができないという場合

この場合は、家庭裁判所に電話連絡をして期日の変更をお願いすれば良いだけです。変更して欲しい理由をきちんと説明したうえで、次回の日程を調整してもらうことになります。

書記官から複数の次回候補日が提示されますから、出席可能な日程を伝えます。書記官が他の関係者等に連絡をして日程を調整し、確定した次回期日を連絡してくれます。
次回日時が確定すると、書記官から「期日変更申請書」と「期日請書」の提出(郵送又はFAX)を求められます。

なお、すでに何度か調停に出席したが、前回の調停で指定された次回調停期日にどうしても欠席せざるを得ないという場合も上記と同じです。

(B)そもそも遺産分割調停に参加したくない場合

最初から遺産分割調停に参加する意欲がない場合は、全く出席しないことも可能です。

実は、遺産分割調停に正当な理由なく出頭しないときは5万円以下の過料に処するという罰則規定があり(家事事件手続法第258条1項、第51条1項、同3項)、調停といえども出頭する義務はあるのです。

しかし、そもそも調停は話し合いの場に過ぎず、意欲がない者に罰則で参加を強制することは不適当ですから、実務上、罰則が適用されることはまずありません
したがって、呼び出しを全く無視して無断欠席することも事実上は可能です。

ですが、無断で欠席をすると次回期日の出欠の意向を確認するため裁判所に余計な負担をかけさせることになります。全く参加しないなら、呼出状が来た段階で裁判所に電話をして出席するつもりが一切ないことを伝えましょう
何度か出席したが、途中から参加する意欲がなくなった場合も同じです。次回期日以後はもう出席しないと伝えておくべきでしょう。

遺産分割調停を欠席したあとはどうなる?

遺産分割調停の当事者が調停に不参加であることが明らかになれば、調停は不成立となります(家事事件手続法272条1項)。

調停が不成立になると手続は自動的に遺産分割審判に移ります(家事事件手続法272条4項)。

2.遺産分割調停に行けないけど欠席したくないときは?

遺産分割調停にどうしても行けないけれど、欠席はしたくない時にはどうするべきでしょうか?

2-1.弁護士に代理人として出席してもらう

自分が出席できない場合には、弁護士に依頼して代理人として出席してもらうのが、もっとも一般的な方法でしょう。弁護士は遺産分割調停、審判の代理人となることができる唯一の法律専門家ですから、安心して任せることができます。

共同相続人が多い場合などは、当事者の一人が都合で欠席でも、他の当事者の意見を聴くために、裁判所の判断で日程を変更せずに予定どおり調停が開催されるケースは珍しくありません。

もちろん、裁判所は欠席した当事者に欠席当日の内容を伝えてくれますが、概要の報告になってしまうので、当日のやりとりの細かいニュアンスまで知ることはできません。
これは話合いを続けるうえでは、事実上のデメリットと言えます。

しかし、弁護士に代理人として出席してもらえば、弁護士が直接他の当事者、裁判官とやりとりできますし、法律専門家としての意見も述べてもらえますから、自分が欠席しても何ら問題ありません。

2-2.電話会議システムを利用する

当事者が遠隔地に住んでいる場合などでは、裁判所が相当と認めれば、電話会議の方法で遺産分割調停に加わることが認められます(家事事件手続法258条1項、同54条、家事事件手続規則42条)。
電話会議システムは、電話を通じて裁判官や他の相続人らとやりとりをすることができ、その内容を全員が聴くことができるシステムです。

この場合、裁判所は、電話参加者が本当に調停の当事者であるかどうかを慎重に確認しなければなりません。部外者を調停に参加させることは許されないからです。

そのため、実施方法は次のとおりになります。

(ア)最寄りの家庭裁判所に出頭してもらい、そこから電話で参加してもらう方法。こちらが原則です。

(イ)上記の方法がとれず、自宅などでおこなう場合は、その場所(住所)とそこの固定電話の電話番号を事前に届出ておき、裁判所側からかかってきた電話を受けて参加します。

電話会議を希望する場合には、「電話会議システム利用希望申出書」などの申請書による事前の申請が必要です。

【裁判所HP】PDFファイル:旭川家庭裁判所「電話会議システム利用希望申出書」

実際に電話会議システムの利用が認められるかどうかは、個別の事情に基づき、関係当事者の意見を聴取したうえで裁判所が判断することですので、利用を希望する場合は、できるだけ早い段階で裁判所に相談することがおすすめです。

2-3.調停案に不満がなければ、合意書面の提出で調停が成立

次回の調停期日に出席することができないが、これまでに出席した調停での話合いで、事実上、遺産分割案はまとまっており異論もないという場合には、合意書面(受諾書面)の提出という方法で、出席しての合意に代えることができます(家事事件手続法270条1項、家事事件手続規則131条)。

この方法は、次の手順となります。

  1. 異論のない内容を、調停条項案として裁判所に書面化してもらいます。
  2. その書面(調停条項案)を郵送してもらいます。
  3. 調停条項案の内容を確認し、間違いがなければ、これを受諾する旨の受諾書面を裁判所に提出します(裁判所は、通常、調停条項案に受諾書面の書式を「回答書」の形式で同封してくれますので、それに書き込んで返送するだけです)。
  4. 受諾書面を受け取った裁判所は、念のために電話で本人の意志を確認します。
  5. 調停期日の当日、他の当事者が出席して、調停条項案に同意すれば、合意が成立したものとみなされます。

2-4.相続分を放棄、譲渡し、裁判所に調停から排除してもらう

遺産に興味がなく、遺産分割調停や面倒な相続人同士のやり取りを早く解消してしまいたいと思う方もいると思います。
そんなときは、相続分の放棄や譲渡という方法もあります。

また、この方法は、調停などで、相手方となる人数を減らすために弁護士が使う手法でもあります。

相続分の放棄、譲渡とは

複数の相続人がいる場合、遺産分割が決まる前は、各相続人は相続する権利を遺産に対する割合として持っています。これを「相続分」と言います。

「相続分の放棄」、「相続分の譲渡」とは、この権利をまるごと放棄または譲渡してしまうことです。
相続分を「放棄」した場合は、放棄した相続人の権利は残りの共同相続人の相続分の割合にしたがって引き継がれます。「譲渡」をした場合は、譲受人が取得します。

遺産分割調停からの排除

この「相続分の放棄」、「相続分の譲渡」をした場合は、遺産分割手続の当事者となる資格を失うとされています(大阪高裁昭和54年7月6日決定)。

そして、家庭裁判所は、当事者の資格を喪失した者を遺産分割調停手続から排除しなければなりません(家事事件手続法258条1項、同43条1項)。この排除決定をしてもらうことで遺産分割調停から離脱できるわけです。

相続分譲渡などの手続は、本人の重大な利害に関わるので、相続分譲渡証書などの書面を裁判所に提出することが要求されます。

【裁判所HP】PDFファイル:京都家庭裁判所「相続分譲渡について(説明書)」

相続分の放棄、譲渡の注意点

相続分の放棄と間違えやすい制度に「相続放棄」がありますが、全く違うものです。「相続放棄」は、最初から相続人ではなかったことになる制度なので、プラスの財産だけでなく、借金などの負債も相続することはありません。

しかし、「相続分の放棄」や「相続分の譲渡」は、いったんは相続した権利を放棄したり、譲渡したりすることなので、相続人でなくなるものではありません。
このため、放棄・譲渡しても、借金などの負債は負担したままで責任を逃れることはできないとされています。

そのため、安易な利用は禁物です。
もし早く調停から離脱したい、相続の手続から解放されたいと思い、相続分の放棄・譲渡を検討する場合は、弁護士に相談しましょう。
また、相手方弁護士から相続分の放棄や譲渡の交渉があり、判断がつかない場合も弁護士に相談するとよいでしょう。

3.欠席で遺産分割調停が不成立になったあとは?

自動的に遺産分割審判になる

調停が不成立になると手続は自動的に遺産分割審判に移りますが、遺産分割審判も欠席できるのでしょうか?

遺産分割審判も不参加、欠席は可能であり、それ故に不利な扱いをされるということはありません。この点は、遺産分割調停と同じです。
ただし、遺産分割審判は、調停のような話合いではなく、当事者の主張とそれを裏付ける証拠をもとに、裁判官が適切な遺産分割方法を決定する手続です。

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調停の段階から一度も出席することなく、最後まで何も主張せず、何の証拠も提出しないまま審判がなされてしまえば、相手方の主張がそのまま認められて不利益を被る危険性は否定できません
自分の利益を主張しないばかりか、相手の主張に反論する機会を自ら放棄しているのですから、不利益はやむを得ません。

例えば、次のような裁判例があります。

共同相続人の大部分が遺産分割調停案を受諾したものの、残る2名だけが期日に出頭せず調停不成立となった事案で、その後の遺産分割審判において、先の調停案を相当として、これに従った審判がなされた(東京家裁平成4年12月10日審判)。

主張したいことがあれば遺産分割調停から出席する

故人が財産を作ることに格別の貢献があったという寄与分を主張したいとか、他の相続人は遺産の前渡し分を受け取っているという特別受益など、自分の主張したいことがあるなら、遺産分割手続に参加して、その事実を主張する必要があるのです。

その場合、遺産分割調停の最初の段階から最後まで、しっかりと手続に出席しておくことがおすすめです。理由は次のとおりです。

  • 遺産分割調停を担当した裁判官が、そのまま遺産分割審判を担当して審判を下すことが通常
  • したがって、自己の主張があるなら、調停の段階から裁判官に十分聞いておいてもらうことが得策
  • 調停に出席していれば、早くから相手方の主張を聞き、証拠を吟味し、反撃の方法を検討・準備する時間をとることができる

自分の利益は、自分でしっかりと守らなくてはならないのです。

4.遺産分割調停は弁護士に

遺産分割問題は、弁護士に依頼をするのが最もお勧めです。
弁護士であれば、本人の代理人として遺産分割協議の話し合いを進めてくれます。

遺産分割調停や遺産分割審判の代理人として調停、審判の場にも出席してくれます。本人が出席できない時は、弁護士だけで出席することも可能ですし、本人と一緒に出席してもらうことも可能です。
家庭裁判所の遠隔地にお住まいの場合でも、ご自宅の近くの弁護士に依頼をすることができます。

弁護士に家庭裁判所への出張を依頼することも可能ですし、電話会議システムを利用して弁護士に参加してもらうことも可能です。
この場合は、弁護士事務所において電話会議に参加することになりますが、弁護士事務所を利用した電話会議は、裁判所も弁護士も慣れているので、非常にスムーズに進みます。

弁護士は、遺産相続を含めた法律の専門家ですので、相続をめぐるあらゆる問題について相談することができ、サポートを受けることができます。

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