遺産分割調停申立ての必要書類|一覧で入手先まで確認できる!
遺産分割協議をしても上手くいかなければ、遺産分割調停に移行することになります。しかし、遺産分割調停の申立てをするには…[続きを読む]
相続が発生したら、まず故人の遺言書の有無を確認し、遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行います。
このとき、相続人全員が合意に至らなければ遺産を分割することができません。もし遺産分割協議で合意ができずに自分たちで遺産を分割できなければ、遺産分割調停や遺産分割審判といった方法によって遺産を分轄することになります。
そこで今回は、遺産分割調停や審判の手続きの流れ、有利に進めるポイントなどについて解説します。
目次
遺産分割協議から遺産分割審判、即時抗告までの流れを簡単にまとめると以下のチャートの通りとなります。
遺産分割には調停を経なければ審判などが利用できない「調停前置主義」という制度は適用されないため、いきなり審判を申し立てることも、調停から始めることも可能です。
ただし、いきなり遺産分割審判を申し立てたとしても、裁判所にまずは調停で話し合いをすべきと判断されて、調停に付されることが多いのが実情です。そのため、遺産分割審判の前にまず遺産分割調停を申し立てるのが一般的です。
最初に、遺産分割調停の流れからご説明しましょう。
以下いずれかの家庭裁判所に遺産分割調停の申立書と必要書類を提出し、申し立てを行います。
例えば、申立人が東京に居住しており、兄が横浜市、姉が大阪市、弟は名古屋市に居住している場合には、管轄は、横浜、大阪、名古屋の3か所に存在することになります。申立人にとっては、横浜が一番近いので、横浜の家庭裁判所に申し立てることになるでしょう。
一方、相続人4人全員が合意できれば、東京家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
遺産分割調停の申立費用や申し立てに必要な書類については、以下の記事を参考にしてください。
遺産分割調停の申し立て後1ヶ月~2ヶ月すると、第一回期日の呼出状がすべての相続人に届きます。
第一回期日では、申立人と申立てを受けた他の共同相続人がそれぞれ別の部屋で待機することとなります。
申立人も他の相続人も順番に調停委員のいる部屋に呼び出され、希望する遺産分割方法など遺産分割についての考えを聞かれ、自分の意見を伝えると、調停委員が相手方にその内容を伝えてくれます。このように、調停では、調停委員が話し合いを仲介して手続きが進みます。
一回の調停は数時間で終わるので、その日に合意ができなければ次回期日に持ち越され、月1回程度の期日を重ねて遺産分割の話し合いを進めていくことになります。
調停期日の回数や期間に制限はなく、合意が成立する見込みがある限り何度でも調停が開かれます。遺産分割調停はかなり期間が長くかかることも多く、1年や2年以上も調停を続けているケースもあります。
司法統計によれば、2021年の遺産分割調停の審理期間は、2年以内のものが31.6%と最も多く、次いで1年以内が29.1%となっています。
2021年の遺産分割調停の審理期間
1ヶ月以内 | 3ヶ月以内 | 6ヶ月以内 | 1年以内 | 2年以内 | 3年以内 | 3年超 | 総数 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 41 | 478 | 1,136 | 2,036 | 2,211 | 751 | 343 | 6,996 |
割合 | 0.59% | 6.83% | 16.24% | 29.10% | 31.60% | 10.74% | 4.90% | 100.00% |
【出典】「第53表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数―審理期間別代理人弁護士の関与の有無及び遺産の価額別―全家庭裁判所」令和3年司法統計年報3家事編より|裁判所
遺産分割調停の期日を重ねて相続人全員の意見が一致したら、その時点で調停が成立します。遺産分割調停が成立したら、裁判所内の1つの部屋に相続人全員が集められて、裁判官により、調停による合意内容が読み上げられます。間違いがなければ、その合意内容に従って調停調書が作成され、後日自宅に送られてきます。
調停調書があれば、相手が代償金の支払をしない場合の強制執行や預貯金の払い戻し、登記手続きなど、必要な相続手続きをすることができるようになります。
調停では、申立人以外の相続人を強制的に出席させることはできません。相続人は調停を欠席したとしても、原則として不利になることはなく、調停が不成立となり、審判に移行します。
しかし、調停に相続人が欠席していることが原因で調停の取下げを勧められる場合もあります。
調停を取下げてしまうと、それまでの調停はなかったことになってしまい、改めて遺産分協議を行うか、遺産分割調停を再度申し立てなければなりません。
また、当事者の事情を考慮して、裁判所の職権で「調停に代わる審判」による解決がなされることもあります。
遺産分割調停が不成立になった場合は、後日、家庭裁判所から審判へ移行したことの連絡と、遺産分割審判事件の担当部、審判の期日の呼出状が送られてきます。
調停が不成立になった場合は、当然に審判手続きに移行するので、別途、遺産分割審判の申立をする必要はないのです。
指定された審判期日に家庭裁判所に出頭して、遺産分割審判の手続きが進められます。
では、次に遺産分割審判の流れについてご説明します。
遺産分割審判は、遺産分割協議や調停のような話し合いの手続きではなく、訴訟と同様に相続人らがそれぞれ自分の主張を戦わせる争いの手続きです。
遺産分割審判の期日では、自分の主張を法律的にまとめた書面と、その内容を証明するための証拠を提出して、主張と立証を展開し、相手の主張に反論がある場合には、反論の書面とその内容を証明するための証拠を提出します。
このようにお互いがそれぞれの主張と立証を展開していくことにより、遺産分割審判の手続きが進められます。
しかし、審判中であっても、いつでも話し合いをすることはできます。
審判中に話し合いによって合意が整った場合には、審判の途中であっても調停が成立して調停調書が作成され、遺産分割事件は終結します。
遺産分割審判の期日の回数や期間についても特に制限はなく、それぞれの相続人の主張内容や争点が整理できるまで何度でも期日が開かれます。争点が多岐に及ぶケースなどでは、審判の期間だけでも1年以上かかるケースもあります。
遺産分割調停が長期間続いた後、審判に移行して、さらに遺産分割審判も長引いたケースでは、調停と審判の期間を全部合わせると3年以上の長期に及んでしまうことなどもあります。
遺産分割審判では、相続人らによる主張と立証が尽くされた後に、審判官(裁判官)が審判を下します。
審判では法律に従った分割方法が採用されるため、事案に応じた柔軟な解決方法を実現することは難しくなります。長期間争いを繰り広げたにもかかわらず、どの相続人も満足することができない結果になってしまうこともあります。
審判では不動産の競売を命じられることも
例えば、不動産を競売しての分割方法を指定されることもあります。基本的に審判においては、法定相続分によって遺産が分割されるため、不動産を売却しなければ分割できなければこのような審判がなされます。
競売では、一般的に売買するよりもかなり低い価格で落札されてしまう可能性があります。不動産業者に依頼して広告も出して宣伝すれば高い価格で売れるであろう物件も、審判で競売を命じられたら従うしかありません。
審判にはせずに、なるべく早期に自分達で話し合いによって解決する方が良い結果になる事のほうが多いのです。
審判が行われると、後日、家庭裁判所から審判書が送られてきます。
審判書の送達後2週間で審判内容が確定します。
審判が確定したら、審判書と確定証明書をもって、相続不動産の登記など各種の相続手続きを進めることができます。確定証明書は、家庭裁判所に申請すれば、発行してもらうことができます。
また、審判書には判決書と同様に執行力もあり、差し押さえなど強制執行も可能になります。
遺産分割審判の決定内容に不服がある場合には、決められた期間内であれば即時抗告という不服申立をすることができます。
即時抗告をする場合には、高等裁判所宛の即時抗告申立書を作成して、家庭裁判所に提出します。このとき、原審の審判書を受け取ってから14日以内に抗告申立をしないといけません(家庭裁判所必着)。
高等裁判所が抗告に理由があると認めた場合、自ら判断するか家庭裁判所に差し戻し、理由がないと判断した場合は、は棄却されることになりますが、即時抗告審で和解することも可能です。
遺産分割調停や遺産分割審判が思うように進まないと、最終的に自分が得られる相続財産が減ってしまう可能性があります。
遺産分割調停を少しでも有利に進めるためには以下のようなポイントに注意しておきましょう。
自分の主張をハッキリと訴えることが自分の相続遺産を確保するのと同時に遺産分割調停を成立させるカギとなります。当事者が自分の主張を明確に伝えることによって、調停委員は初めて各相続人の妥協点を探ることができるようになります。
お金が絡むからと明確な主張をせずにもやもやした感情を残してしまうと、その後の家族や親族間の信頼関係をかえって損ねてしまう結果になりかねません。
しかし、遺産分割調停では、すべての当事者が「自分の主張を100%通す」ことはできません。少しでも自分の利益が大きくなるように議論を進めていくためには、譲れる点と譲れない点を明確にすることが大切です。
調停委員は、誰がどの相続財産を欲しがっているのか把握するよう努力するので、希望を調停委員に伝えた上で交渉のあっせんをしてもらいましょう。
調停委員といえども人の子です。与える心証が良いに越したことはありません。
必要以上に遜る必要はありませんが、最低限の礼を尽くして嘘や隠し事をせずに誠実に対応しましょう。調停委員から受けた質問に対してその場しのぎの受け答えをするよりは、いったん持ち帰って後日回答するといいでしょう。
また、主張の重要な内容について訂正や取り消しを連発してしまうと、あなたの主張そのものの信頼性が低いとみなされてしまう可能性もあります。
遺産分割調停や審判手続きを利用する場合には、弁護士に依頼することをお勧めします。
遺産分割調停では、弁護士が適切にアドバイスをしてくれるので、判断を誤ったり、話し合いが不利な方向に進んでしまったりすることを避けられます。
遺産分割審判は、訴訟に類似した手続きなので素人が自分で対処することは難しいと言わざるを得ません。しかし、弁護士に依頼すれば、必要な証拠を提出し、適切にこちらの主張を展開くれるので、自分の主張が通りやすくなります。特に、対立する他の相続人を弁護士が代理している場合、自分には弁護士が就いていないと状況は明らかに不利になります。
遺産分割調停や審判を検討しているなら、まずは一度、相続問題に強い弁護士に相談してみましょう。