遺産分割調停の申立方法は?申立書の書き方とポイントを解説
遺産分割調停を申立てるには、申立書その他の必要書類を家庭裁判所に提出しなければなりません。遺産分割調停申立書など書類…[続きを読む]
遺産分割協議をしても上手くいかなければ、遺産分割調停に移行することになります。しかし、遺産分割調停の申立てをするには、様々な必要書類の作成・収集が必要になります。
本記事では、遺産分割調停の申立ての必要書類についてご紹介します。
目次
遺産分割調停の申立てには申立書と一緒に、以下の書類の作成が必要です。
以上の書類についてはすべて、家庭裁判所に書式が備えられており、裁判所のHPからもダウンロードが可能になっています。
【参考外部サイト】「家事調停の申立て」|裁判所
これら必要書類の書き方については、次の記事に詳述しており、書式のダウンロードも可能です。是非、ご一読ください。
申立書の通数は、次のとおりです。
例えば、申立人以外の相続人3人が相手方となるときは、1(原本)+3(コピー)=合計4通を提出することになります。
次に、申立書と一緒に作成する書類の他に役所の窓口などで入手すべき必要書類があります。
※1 発行から3か月以内の原本に限ります。
※2 廃棄済の場合は戸籍の附票でも可。
なお、これらの必要書類は、法定相続情報一覧図で代用できる裁判所もあります。管轄裁判所にお問い合わせください。
被相続人の「すべての戸籍謄本」が必要な理由は、申立人と相手方の他に相続人がいないかを確認するためです。
相続人が一人でも参加していない遺産分割協議は無効となってしまいます。
そこで、被相続人が生まれた時から、亡くなるまでの間の戸籍を全部提出させて、隠れた相続人の有無を確認するのです。
身分関係を確認するには全ての戸籍が必要です。
例えば、本籍地を移したり婚姻したりで戸籍がA→B→Cと移っている場合には、AとCの戸籍だけはで足りず、Bの戸籍も必要とされるわけです。
取り寄せた戸籍が全て揃っているかは、戸籍が連続していることを調べることで確認できます。戸籍には、いつどこの戸籍から来たかが書いてあり、それが連続していなければ、欠けている戸籍があるということです。
転籍などによって戸籍を移転した場合や死亡した場合には、もとの戸籍から「除籍」されます。
つまり、相続での除籍謄本とは、亡くなった人が除籍された戸籍謄本のことです。
なお、「除籍謄本」には、その戸籍に属していた全員が戸籍から抜けてしまい、閉鎖された戸籍という別の意味もあります。
法令で戸籍の書式が変わった場合には、変わる前の戸籍を「改製原戸籍」(「かいせいげんこせき」、「かいせいはらこせき」とも読む)と言います。
出生時の戸籍が戦災や災害で失われている場合は、生殖可能年齢になる前(10歳程度)からの戸籍で足りる扱いになっています。それ以前に子がいた可能性はまずないからです。
相続人が誰かによって、先順位の相続人がいないことや代襲相続の発生を確認する必要が生じるため、さらに必要な書類が増えることがあり、ケースによって複雑に変わります。申し立てる裁判所に確認するようにしましょう。
例えば、兄弟姉妹が相続人の場合は次のようになります。
遺産の内容は遺産目録に記載して提出しますが、その内容が事実であることを確認する資料等も提出しなくてはなりません。
主な必要書類は以下のとおりです。
遺産の種類 | 必要書類 |
---|---|
不動産 |
|
預貯金 | 残高証明書または通帳コピー |
株式・有価証券など | 株券コピーや取引口座の残高証明書など |
自動車 | 登録事項証明書(車検証のコピーも可) |
相続税申告書 | 申告書のコピー(既に申告している場合) |
※ 発行から3か月以内の原本に限ります。
これら以外に、被相続人の遺言書がある場合には遺言書のコピーの添付が求められます(自筆証書遺言の場合には、検認済み証書のコピーも添付します)。また、もし遺産分割協議が成立していなくても、遺産分割協議書を作成している場合には、添付が求められています。
この他にも、事案によって、裁判所から追加の資料を求められることがあります。
遺産分割調停の申立て時には、手数料としての収入印紙と連絡用の郵便切手の納付も必要になります。
以上をまとめると、下表の通りとなります。
必要書類名 | 原本又はコピー | 書類の入手先 |
---|---|---|
遺産分割調停申立書 | ー | 自分で作成する 書式は管轄裁判所か裁判所HPで入手可 |
当事者目録 | ||
遺産目録 | ||
申立の実情 | ||
特別受益目録 | ||
相続関係図 | 自分で作成する | |
相続人全員の戸籍謄本 | 原本 | 本籍地の市区町村役場 |
被相続人の戸籍謄本 (除籍謄本・ 改製原戸籍謄本) |
本籍地の市区町村役場 | |
相続人全員の戸籍の附票 又は住民票 |
戸籍の附票:本籍地の市区町村役場 住民票:住所地の市区町村役場 |
|
被相続人の戸籍の附票 又は住民票除票 |
||
土地・建物の登記事項証明書 又は登記簿謄本 |
法務局 | |
土地・建物の固定資産税証明書 | 不動産所在地の都・県税事務所 又は市区町村役場 |
|
預貯金残高証明書 又は通帳等 |
コピー | 各金融機関 |
株式,社債,投資信 託,保険,出資金等の残高証明書 又は証書・証券の写し |
証券会社、保険会社、金融機関等 | |
自動車の登録事項証明書 又は車検証 |
自動車のダッシュボードや被相続人の住居内を探す | |
相続税申告書 | 既に申告している場合には申告書の写し | |
遺言書 | 自筆証書:検認した家庭裁判所 公正証書遺言:記録保管の公証役場 |
戸籍謄本等をすべて収集するのは、一般の相続人には大変な作業です。連続した戸籍を集めるために、様々な地方自治体の戸籍係と手紙や電話のやりとりをしなくてはならず、集めるのに数ヶ月かかることは珍しくありません。
「法定相続情報証明制度」を利用する場合であっても、最初に戸籍書類を集めなくてはならない点は同じです。
そのため、ご自分で集める場合には、できるだけ早めに始める必要があります。
申立書などを作成して申立てが受理されても、それで書類の提出が終わるとは限りません。
調停が進むと、様々な争点が浮かび上がり、その都度、裁判所から新たな資料の提出を求められることが一般的です。
相続人となってから、一番最初に苦労するのは戸籍謄本等の収集でしょう。
一般の相続人が戸籍謄本を目にする機会は決して多くはなく、ご自分の戸籍であっても、記載されている内容の意味をすぐに理解することは困難です。
まして、相続の場合には、会ったこともない曾祖父母や、聞いたこともない親戚の名前が書類に登場して驚くことも珍しくありません。
血縁関係を把握するだけでも時間がかかります。
不動産の登記簿謄本も同じです。不動産関係のお仕事をされていなければ、日頃目にすることはありませんから、その読み方もわからないでしょう。
遺産である不動産が多ければ、どの登記簿がどの不動産なのかを理解するだけでも一般の方には困難です。
遺産分割調停は話し合いとはいえ、裁判所の手続きである以上、様々な資料の提出を要求され、そのために要する時間や労力は馬鹿になりません。
先述した通り、戸籍や登記の関連書類を集めるだけでも大変な作業となります。
これらにエネルギーを費やすより、法的手続きは弁護士などの専門家に任せ、ご自分の本来の仕事や家庭生活に集中する方が得策です。
弁護士は、遺産分割を含む相続問題のエキスパートです。
遺産分割調停を依頼すれば、申立に必要な書類の作成、戸籍謄本等の必要書類の収集と提出も、全てを弁護士に任せることができます。
しかも、特別受益・寄与分・遺留分など相続特有の法律問題が生じても、弁護士であればこれに即応することができます。
遺産分割調停の申立をしたいときは、弁護士に依頼することをお勧めします。