相続関係説明図とは?書き方と使う場面、法定相続情報一覧図との違い

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相続の手続きにあたって、相続関係説明図の作成を検討している方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、主に以下の内容を解説します。

  • 相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違い
  • 相続関係説明図を作成したほうがいい場合とその理由
  • 相続関係説明図の書き方
  • 無料でダウンロードできるテンプレートや作成ソフトについて

1.相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違い

1-1.相続関係説明図とは:相続手続きで必要な家系図

相続関係説明図とは、被相続人が誰か、また相続人との関係(続柄)はどんなものかを図で説明した、家系図のようなものです。

相続関係説明図はいつ必要になるか?

不動産の相続登記をはじめとする相続手続きでは、被相続人や相続人の戸籍謄本等の書類提出が求められます。
しかし、遺産の種類が多いときなど、提出先機関が複数ある場合、書類をその機関分集めなくてはならず、大変です。書類の束ができてしまうことが予想されます。
ここで役に立つのが相続関係説明図です。

相続関係説明図を提出すると、提出先から、戸籍謄本等の書類の原本を還付してもらうことができるようになります。

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相続関係説明図と混同されやすいのが、法定相続情報一覧図です。
法定相続情報一覧図も、一言でいうと、被相続人と相続人の関係を証明する家系図のようなものです。
これだけでは相続関係説明図と同じに聞こえてしまいますが、大きな違いがあります。

1-2.法定相続情報一覧図との違い

相続関係説明図と法定相続情報一覧図を比較したときの大きな違いは、法定相続情報一覧図を作成する際には、法務局の協力が必要であるという点です。

法務局の後ろ盾がある分信頼性が高いので、法定相続情報一覧図を提出すれば、相続手続き全般で相続関係を証明することができます(※)。
一方、相続関係説明図は、相続関係説明図の提出では足りず、戸籍謄本等もセットで提出する必要があります。

※ただし、法定相続情報一覧図を利用する場合であっても、いちばん初めの作成時には、戸籍謄本等の必要書類を一度自力で集める必要があります。

このように言うと、相続関係説明図より法定相続情報一覧図を利用したほうがよいのではないか、と思われるかもしれませんが、必ずしもそうとはいいきれません。

2.法定相続情報一覧図より相続関係説明図を作ったほうがいいとき

法定相続情報一覧図より、相続関係説明図を選択したほうが望ましい場合もあります。

提出先が少ないとき

まずは、相続財産が被相続人の自宅のみであるなど、そもそも相続の手続きをする必要がある機関の数が少ないときです。

相続関係説明図の詳しい書き方は本記事の後半でご説明しますが、自力で作ることもできるため、言ってしまえばすぐに手元に用意することができます。
それに対して、法定相続情報一覧図は、法務局の窓口に申請書類を提出してから発行されるまで1週間以上はかかります。
とすれば、発行を待つのがかえって時間の無駄になる可能性があるのです。

提出先が少ないときは、相続関係説明図を作成し、機関ごとに提出していったほうが早いでしょう。

特殊な相続(数次相続や代襲相続)が発生しているとき

また、数次相続や代襲相続など、やや複雑な相続関係になっているときも相続関係説明図を使いましょう。

  • 数次相続とは、被相続人の相続が済んでいない間に相続人も亡くなってしまい、相続が複数回重なっている状態を指します。
  • 代襲相続とは、被相続人の死亡時に、本来相続するべき法定相続人がすでに亡くなっている場合、その相続人の子供が代わって相続することです。

法定相続情報一覧図はこのような特殊な相続には不向きです。
特に数次相続では、全ての相続を1枚の図にまとめることはできず、被相続人ごとに複数枚作成することになります。

さらに、実際の手続きにおいても、法定相続情報一覧図の提出だけでは足りず、別途戸籍謄本の提出を求められる可能性があります。それならば、最初から相続関係説明図を選択したほうがよいでしょう。

もし、提出先が多く、かつ特殊な相続も発生していないという場合には、法定相続情報一覧図も検討してみることをおすすめします。
以下の記事では、法定相続情報証明制度の制度概要から、実際にどのように利用するか、どんな人におすすめかというところまで詳説しています。

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3.相続関係説明図の書き方と作成の流れ

相続関係説明図を作成する大まかな流れは、以下の通りです。

  • ①必要書類を収集する
  • ②相続関係説明図を作成する

①必要書類の収集

相続関係説明図の作成の前に、以下の書類を集めます。

  • 被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本・除籍謄本など
  • 被相続人の戸籍の附票または住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本 ※被相続人が亡くなった日以降に発行相続人全員の住民票

また、相続人の戸籍謄本を集める理由は、あくまで被相続人の相続人であることを証明するためなので、被相続人と関係のない部分は不要です。
たとえば、被相続人の配偶者であれば、結婚する前の部分まで集める必要はありません。
被相続人の子供なら、生まれたときから現在まで、すべての戸籍謄本が必要になります。

②相続関係説明図を作成する|書き方

相続関係説明図の作成方法や書き方は法律で定められているわけではなく、基本的に自由です。

ボールペンなど消えないペンを使用すれば手書きでもよいですが、手間も考えると、パソコンでの作成をおすすめします。
用紙のサイズにも指定はありませんが、A3やA4が使われやすいです。

書き方は自由といっても、婚姻関係は=線で表し、離婚したらそこに×印を書き、それぞれ年月日も記入するなど、ある程度の慣例はあります。

記入事項についても、通常は下記のことは最低限記入します。

  • タイトル(「〇〇(被相続人の氏名)の相続関係説明図」など)
  • 被相続人の住所、死亡年月日、氏名
  • 相続人の住所、生年月日、被相続人との続柄、氏名

法務省のHPに掲載されている記載例にはありませんが、もしも相続人が相続放棄を選択した場合には氏名の前に【相続放棄】と肩書きを添えたり、相続登記の手続きで相続関係説明図を使用する場合に、不動産を相続しないことになった人には【分割】と添えたりすることも一般的に行われています。

加えて、戸籍謄本等の原本還付をしたことを登記官が証明するための押印スペースをあけておくのがよいでしょう。

共同相続の場合:持分の記載は必須ではない

不動産を共同相続した場合に、各相続人の持分まで相続関係説明図に記載しなくてはならないのか、という疑問が生じるかもしれません。
この点については、持分の記載は必須ではないものの、書くことが推奨されています(※)

※『登記研究』テイハン 468号95頁
「遺産分割の協議により共同相続登記を申請する場合に当該協議書及び戸(除)籍の謄(抄)本の原本還付をする場合に提出する相続関係説明図には、各々の持分を記載すべきである。」

4.相続関係説明図のWordテンプレート

最後に、相続関係説明図のテンプレートをWordファイルでご紹介します。
クリックで無料ダウンロードできます。
【Word】相続関係説明図の作成例

ただし、ご自身のケースにぴったり合う形ではないでしょうから、あくまで参考程度にしてください。

ソフトで作成できるがパソコン初心者には不向き

「そうぞく工房3」など、相続関係説明図専用の作成ソフトもあります。
【外部サイト】そうぞく工房3

しかし、ソフトでの作成はパソコンに詳しくないと難しいと感じられる方もいるかもしれません。
また、上記のソフトは無料ですが、中には有料のソフトもあるので、注意しなくてはなりません

ミスなく確実に作成するなら弁護士がおすすめ

「多少お金を払ってもよいから、迅速に、正確に相続関係説明図を作成したい!」という場合は、弁護士に依頼するのもおすすめです。
専門家ですから、ソフトなどを使って自力でやるよりも、よっぽど安心できると思います。

また、弁護士であれば、相続関係説明図の作成だけではなく、その前段階である相続人調査や遺産分割協議など、付随する他の問題まであわせて相談することができます。

5.まとめ

最後に、本記事でのポイントをまとめます。

相続関係説明図は、複数の機関に戸籍謄本等を提出する必要がある際に、原本還付してもらうために作成します。

似て非なるものに法定相続情報一覧図がありますが、法定相続情報一覧図では作成に法務局が介入するのが大きな違いです。
法定相続情報一覧図も便利ではありますが、提出先が比較的少ない場合や、数次相続・代襲相続など相続関係が複雑なときには、すぐに作れる相続関係説明図のほうがよいと考えられます。

相続関係説明図の書き方は明確に定められてはいませんが、ある程度通例になっている形式はあります。
無料の作成ソフトの利用等も良いですが、自力で作るのは少し心配…という方は、ぜひ弁護士に相談して作成してもらいましょう。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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