遺産分割審判で不動産競売を命じられることがある!

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遺産分割協議が上手くまとまらない場合、家庭裁判所に持ち込こまれ遺産分割調停へ、それでも上手くいかないときは遺産分割審判へと移行します。

遺産分割審判では、遺産の現物を分割するのではなく、不動産を換価してその代金を各相続人に分配するために競売が選択される場合があります。では、どんな場合に競売が命じられることになるのでしょうか。

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1.遺産分割審判で不動産の換価を命じられる場合

遺産分割審判においては、客観的に平等原則に従って遺産分割方法を決めます。この場合、代償分割でなければ換価分割の方法が採られるわけですが、代償分割については、不動産を取得した者が持ち分放棄をした者に支払うべき代償金を経済的に支払えないという申立てをする人が少なくありません。そうなると、換価分割しか選択肢がありません。

また、遺産である不動産の維持管理に多大な費用がかさんだりする事情がある場合には、換価分割が選択されることがあります。

1-1.競売と任意売却

換価分割をする必要性がある場合には、まずは任意売却を試みて、それが困難であれば、競売により換価するという態度をとっています。任意売却と競売であれば、競売は任意売却の7割程度でしか換価できないと言われており、任意売却の方が相続人に有利であるからです。任意売却には相続人全員の同意が必要になります。

しかし、相続争いが審判まで縺れ込んだ場合、相続人全員の同意に基づく任意売却というのは無理な話でしょう。

では、実際にどのような手続きを経て競売がなされることになるのでしょうか。

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1-2.家事事件手続法194条

家事事件手続法194条1項(以下家事事件手続法を「法」と呼ぶことにします)において、家庭裁判所は、遺産の分割の審判をするため必要があると認めるときは、相続人に対し、遺産の全部又は一部を競売して換価することを命ずることができると規定されています。

そして、同条2項では、家庭裁判所は、遺産分割の審判をするため必要があり、かつ、相当と認めるときは、相続人の意見を聴き、相続人に対し、遺産の全部又は一部について任意に売却して換価することを命ずることができると規定され、同項ただし書において、共同相続人中に競売によるべき旨の意思を表示した者があるときは、この限りでないと規定されています。

2.競売手続

2-1.形式的競売

遺産分割の競売の方法は、いわゆる形式的競売とよばれる方法でなされ、抵当権などの担保権の実行としての競売と同様の手続きでなされます、通常の競売との違いは、債務名義(判決など)が必要とされていないことが挙げられます。

2-3.換価を命じる審判に基づく競売の手続

2-3-1.任意売却が可能であるかの相続人に対する意見聴取

相続人のうち一人でも競売による売却を希望した場合には、任意売却はできません(法194条2項但し書き)。全員の同意がある場合には任意売却による換価を行います。

2-3-2.財産管理人の選任(法194条6項)

審判の効力が発生するまでの間、財産の管理が必要なので財産管理人を選任し、遺産を管理させる必要があります。

なお、当該財産管理人は、管理行為(民法103条)の範囲の財産産管理行為を行うことができ、また財産目録を作成する義務を負います(法194条8項の準用する民法27条)。

2-3-3.審判の発令

審判において裁判所から換価の実行を命じられた相続人が指定される場合があります(法194条1項)。

なお、当該相続人は裁判所から遺産の中から報酬を取ることが許可されることがあります。

2-3-4.審判の確定

審判は、相当と認める方法により告知されますが(法74条1項)、審判書が作成され、これが相続人に送達される方法により告知されます(法76条1項)。そして、告知された審判は、告知から2週間で確定します(法74条4項、86条1項)。

期間内に、審判に不服のある相続人は即時抗告をすることができます(法194条5項)。

この「換価を命じる審判」が確定したときは、選任された財産管理人に通知がされます。

2-3-5.競売の申し立て

審判の発令により裁判所から換価の実行を命じられた相続人は、不動産の所在地を管轄する裁判所(執行裁判所)に対し、換価すべき不動産の競売を申し立てることになります(家事事件手続法規則103条2項、民事執行法195条、188条、44条。なお、以下では、特別の記載がない限り、民事執行法195条及び188条の引用は省略されていても適用されているものとする)。

2-3-6.競売の実行

競売開始決定

執行裁判所は、競売が開始されたことを宣言する競売開始決定を相続人に送達します(民事執行法45条1項、2項)。

競売の開始決定があったときは、当該不動産に差押登記がなされます(民事執行法48条1項)。

執行官による現況調査等

まず、執行官により差押不動産の現況が調査され(民事執行法57条)、現況調査報告書が提出されます。そして、裁判所が選任した評価人により当該不動産の評価書が提出されます(民事執行法58条)。

これらをもとにして執行裁判所は、適切な売却条件を設定します。

また執行裁判所は、これらの資料を基にして物件明細書という報告書を作成します(民事執行法62条1項)。

執行裁判所による売却基準額の設定

執行裁判所は、評価人の評価に基づき不動産の売却の基準となる価額(売却基準額)を決定します(民事執行法60条)。

なお、買受希望者が不動産を買い受ける申し出をする場合には、当該売却基準額の8割以上の金額でなければならないとされています(民事執行法60条3項)。これは平成16年の民事執行法改正前は、最低売却価格の制度があり、当該制度が売却の円滑な実行を阻害しているとの見地から、改められたものです。

そして、売却基準額については、そもそも競売が市場での不動産取引とは異なり代金納付と引渡しの同時履行が完全に保障されておらず(民事執行法79条、83条参照)、競売一般についていえば所有者の意思による売却とはいえないことから、売却基準額は、エンドユーザーとの直接の取引に価額というよりも、卸売り価額に近いものという位置づけがなされていました。このような理由から、不動産の実勢価額と比べて、競売による売却価額は低くなるといわれています。

売却の方法

売却の方法としては、ほとんどの場合、期間入札がなされています(民事執行法64条)。入札期間内に、買受希望者に価格を入札させ、高位の者を決定する手続です。この入札が買い受けの申出とされ、実体上の売買契約の申込みに該当します。

なお、この入札をする際には、原則として売却基準額の20%を買受申出の保証として提供しなければなりません(民事執行規則39条)。

売却許可決定

入札の結果、最も高い価格に入札した者(最高価買受申出人)に対し、執行裁判所は、売却決定期日において売却許可決定を行います(民事執行法69条)。

売却許可決定は、実体上の売買契約の申込み対する承諾に該当し、売却許可決定がなされない限り、売買は成立しないことになります。

売買の成立とともに、当該不動産に付着している担保権は消滅します(民事執行法59条1項:消除主義)。

ただし、競売に対抗できる抵当権等については、先順位の担保権の効果として競売申立人に先んじて配当を受けることができます。

なお、売却許可決定に不服がある場合には、売却許可決定の告知から1週間に限り、執行抗告が可能となります(民事執行法74条1項、10条2項)。

代金の納付

売却許可決定から1週間が経過しても執行抗告がなされない場合には売却許可決定が確定します。その確定後から1ヶ月以内の裁判所書記官が定める日までに代金を納付しなければなりません。

なお、当該日までに代金を納付しない場合には、最高価買受申出人は保証金の返還をもとめることができません(民事執行法80条1項)。

当該日までに代金が納付された場合には、当該不動産の所有権を取得することになります(民事執行法79条)。

配当

執行裁判所は、買受人から納付された代金を各相続人に対し審判に従って分配します。これを配当といいます。具体的には執行裁判所は配当表を作成し、異議がない限り、配当を実施し、各相続人はこれを受けることになります。これにより、競売による換価が終了します。

3.まとめ

相続関係でもめた挙句に遺産である不動産が安価で競売されることになってしまわないように、遺産分割協議がまとまらないと思ったら、できるだけ早めに専門家に相談したほうがよさそうですね。

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