ハイリスクな空き家の相続放棄|管理責任や賠償からは逃れられない?

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空き家相続放棄

「両親が他界し、田舎の古い実家が空き家になった。
まあ、自分が相続するつもりもないし、相続放棄すればいいか…。」

そう思っている方もいるのではないでしょうか。
空き家の相続放棄は、そんなに簡単なものではありません。

今回は「空き家の相続放棄」について徹底解説します。

1.相続放棄しても空き家を放棄しきれない!?

1-1.【基礎知識】相続放棄とは

相続放棄とは「被相続人のすべての遺産について、相続しない」ということです。
相続放棄をすると、他の相続人に相続権がうつります。

なお、相続放棄は、①被相続人が亡くなったことと、②自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内にしなければなりません(民法915条1項)。

もし、相続人となりうる親族が全員相続放棄をした場合には、財産は国庫に帰属します(民法239条2項)。

「なーんだ、みんなで放棄してしまえば、国が引き取ってくれるのか…。」
そう思った方、ちょっと待ってください。

実は、相続放棄をしても財産を管理する責任はついてくるのです。

1-2.相続放棄した後も管理責任はある!

民法940条では以下のように定められています。

民法940条1項
「相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」

かみ砕いていうと、「相続放棄をした後も、遺産の引き取り手がきちんと見つかるまでは、その遺産は自分の財産のつもりでしっかり管理してね」ということです。

空き家と空家対策法

さらに、平成27年に施行された空家対策特別措置法では、以下に該当するような空き家を「特定空家」と指定しています。

  • 倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
  • 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
  • 適切な管理が行なわれないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

「特定空家」になってしまうと?

立入調査のもと「特定空家」に指定されてしまったら、各自治体から管理方法について改善の指導・勧告・命令を受ける可能性があります。

指導にも勧告にも応じなかった場合に命令が出ますが、命令に背いた場合は、最大で50万円の罰金が課されます。

さらにその命令にも応じないと、最終手段として行政代執行されます。
行政代執行とは、たとえば空き家に生えている木枝が道路通行を著しく妨げているような場合に、行政機関が強制で木枝を切断するようなことです。

この行政代執行の費用は空き家の所有者が全額負担することになります。

相続放棄をしたからといって、空き家を放置していいわけではなく、近隣に迷惑をかけないように管理する責任を負うのです。

※補足情報:空き家は通常、「住宅用地の特例」として課税評価額が固定資産税は1/6、都市計画税1/3まで減額されています。しかし、「特定空家」に指定されると、住宅用地の特例がなくなり、固定資産税が6倍に、地域によっては都市計画税も3倍になります。相続放棄すると固定資産税等の支払い義務はなくなりますが、いずれにせよ特定空家に指定されるのは危険なことです。

2.重い空き家の管理責任|損害賠償の可能性も

空き家を放置した場合に怖いのは、税金や行政からの指導だけではありません。

最もおそろしいのが、放置した空き家の倒壊や水漏れなどが生じて近隣住民に被害を及ぼしてしまうことで、損害賠償請求を受けることにもなります。

誰かにけがをさせた場合には治療費入院費を支払う責任がありますし、いわずもがな、最悪死亡事故にまで至った場合には、億単位の賠償金を請求されるおそれがあります。

たとえば、近年、雪によって空き家が倒壊するケースが相次いでいます。
「雪はしかたないでしょう」と思われるかもしれませんが、自然災害だからといって責任を免れることはできません。適切な管理をしていなかったことが明らかになれば、損害賠償を受けることは大いにありえるのです。

降雪地帯ではなくても、老朽化による家屋の倒壊や、庭を所有している場合の倒木など、どの家にもリスクは十分にあります

3.相続放棄したい+管理もしたくないとき:相続財産管理人を選ぼう

そうはいっても、遠方に空き家があったり、はたまた多忙で空き家の管理をする暇がなかったりする方もいらっしゃると思います。

「空き家の相続もしたくないし、かといって管理もどうしてもしたくない!」という方は、相続放棄の後に相続財産管理人を選出しなくてはなりません。

相続財産管理人とは、その名の通り、本来相続人となるべき人の代わりに相続財産を管理してくれる人のことです。
家庭裁判所に申し立てれば、相続財産管理人を選出してもらえます。

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相続財産管理人は空き家の管理をしながら、空き家を売却するなどして不動産をお金に換えてくれます。
売却で得たお金から、相続財産管理にかかった費用が差し引かれ、最終的に残った金銭は国庫に帰属します。

しかし、この相続財産管理制度には大きなデメリットが2個あります。

3-1.高額な予納金とかさむ報酬額

相続財産管理人制度を利用するには、多額の費用がかかります。

まず、家庭裁判所に納める予納金として50~100万円が必要です。場合によっては、100万円以上かかることもあります。
予納金は、相続財産管理人が空き家を処分するためにかかる諸手続きの費用や、報酬のためのお金として使われます。最終的に相続財産管理が終了したときに、余りがあれば返ってきますが、なければ返ってこないお金です。

さらに、通常、弁護士や司法書士に相続財産管理を依頼する場合には、報酬額として月1~5万円がかかります。

空き家の買い手が見つかるまでずっと、相続財産管理人に空き家の管理をお願いすることになりますから、トータルでかなりのお金がかかってしまいますよね。

3-2.「国庫に帰属」は簡単でないのが現実

前述した通り、所有者のない不動産は、国庫に帰属します(民法239条2項)。

条文だけ見ると、国が簡単に引き取ってくれそうな気もしますが、今の時代、国にとっても不動産は不要です。基本的に、一部の例外を除き、不動産のまま国が引き取ってくれることはありません

ここでいう「国庫に帰属する」というのは、相続財産管理人が空き家を売却することで得たお金から管理費用・売却費用などが差し引かれて、最終的に残った金銭を国が引き取るだけだと思ってください。

4.「もはや相続してしまったほうが楽」説

そう簡単に空き家から解放されないということがお分かりいただけたでしょうか。

こうなってくると、空き家がどうしてもいらないという場合には、もはや相続してしまい、自分で誰かに売ってしまうほうが良い場合もあります。

4-1.空き家は「売れそう」なら売ろう

もちろん、すぐに売れそうな好物件なのであれば、相続財産管理人に依頼するまでもなく、親族で共有名義で相続して、売ってしまうのが一番コストがかからないでしょう。

共有名義で相続するのをおすすめしたのは、売れるまでにかかる空き家の維持費負担を分担できるためです。

しかし、空き家は、築年数がかなり経過しているものが多いですよね。
家を売るときの査定では、築年数は非常に重視されるポイントです。
特に築30年以上経過しているような家は、土地価格のみの価額で売却されるのが通常です。

とはいえ、「それなら余計な建物付きより、ただの土地として売ってしまったほうが売れるか」といって安易に家を解体して更地として売りにだすのは、以下の理由からおすすめしません。

  • 家の解体には数十万円~数百万円かかる
  • 一度解体したらもう家を建てられない土地になる「再建築不可物件」も存在する
  • ボロボロの空き家でもリノベーション次第で住めるようになる可能性がある(ゆえにニーズがないとは限らない)
  • 空き家は「住宅用地の特例」によって固定資産税や都市計画税が減額されるが更地は減額がないため、売れるまでの期間を考えれば、更地よりも税金がかからない

空き家を売る場合には、まずは「古家付き土地」として売りに出すのがおすすめです。

4-2.田舎の空き家は売るのが困難

上で売り方についてご説明しましたが、忘れないでいてほしいのが、都会の土地ならまだしも、田舎だったらまず売れないということです。

売れない空き家を相続してしまったら、結局買い手が現れるまでずっと管理をしなくてはならないことになります。

空き家を相続する際には、物件として売れる可能性があるかどうか、専門家の意見をよくききましょう。

5.結局、相続で空き家をどうすればいいか

相続放棄→相続財産管理人選出がおすすめなのはこんな方

・高額な費用がかかってもなお、どうしても管理したくない方(遠方にいて管理不可能等)
・土地柄などに鑑みて、売れる見込みが全くない空き家をお持ちの方

相続承認→売却がおすすめなのはこんな方

・相続財産管理人に依頼するようなお金がどうしてもないという方
・都会の好立地にあるなど、売れる見込みのある空き家をお持ちの方

しかし、結局は地理的条件・家屋の状況・周辺地域の状態・経済的状況など、個別のケースに応じて諸要素を考慮して決めるのが一番です。

6.まとめ

相続放棄するには3ヶ月という期限があることに加え、老朽化した空き家の倒壊等によって第三者に被害を及ぼし、莫大な損害賠償を請求されるおそれもありますから、空き家問題は一刻も早く対処しなくてはなりません。

空き家の処分は、法律的な知識だけではなく、市場で売却可能かどうかという不動産の知識も必要になってきます。タイミングや判断を誤れば、金銭的に大きく損をしてしまう可能性もあります。

管理責任を問われるような不測の事態に陥る前に、まずはご自身の抱えている空き家について、専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。

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