相続放棄の手続きを自分でやる方法|流れ・必要書類と注意点

相続放棄の手続きは、家庭裁判所で行います。というと、難しいそうに思われるかもしれませんが、実は、相続放棄は、意外と簡単にできる手続きです。ただし、注意点もあります。

そこで、

  • 相続放棄の手続きを自分でやっても問題ないケース
  • 相続放棄の流れ・必要書類
  • 注意事項

について解説します。

1.相続放棄を自分でやっても大丈夫な場合とは

相続放棄は自分でもできる手続きです。ただ、一部の場合は、難易度があがり、弁護士に依頼した良いケースもあります。
まずはじめに、どんなときなら、自分でやっても問題ないかを解説します。

相続財産の調査が可能な場合

相続放棄をするからには、被相続人に借金などの負債があり、他の財産を充当しても返済できないことが明確になっている必要があります。

そのためには、相続財産の綿密な調査が必要です。調査がいい加減で、相続放棄した後になって、財産が見つかっても、時はすでに遅しです。やはり相続放棄を取り消したいと思っても、原則、取り消すことはできません

被相続人と同居していたり、日常的に訪ねていたりして、財産状況をある程度把握していれば、相続財産の調査は問題なくできるでしょう。しかし、被相続人と疎遠であったりして、財産状況がまったくわからないようだと、調査が難航するおそれがあります。

近年では、株式はデジタル化され紙の証券がありませんし、誰も聞かされていない生命保険に加入している場合もあります。自宅をひととおり調べただけでは、わからない資産も多くあります。

相続財産の調査が滞りなく進めば、自分で相続放棄をして大丈夫ですが、もし調査が難しい場合には、相続放棄をする前に、弁護士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。

相続人同士でもめていない場合

相続人同士でもめていなければ、相続放棄を自分でやっても問題ないでしょう。

逆に、相続トラブルでもめている場合は、相続財産を意図的に隠している相続人がいる可能性があり注意が必要です。「被相続人の財産は借金ばかりだった」と聞かされ、相続放棄をした後に、「実は、こんな財産も見つかった」と言われる可能性もあります。

もちろん、詐欺や強迫による相続放棄については、家庭裁判所に取り消しの申立をして取り消すことができますが、かなり大変なことになってしまいます。「騙すつもりはなく、自分も財産があることを知らなかった」と言われれば難しいかもしれません。

相続人同士でもめている場合には、相続放棄をする前に、弁護士に相談して、トラブルを早急に解決したほうが良いでしょう。

相続放棄の期限3ヶ月以内の場合

相続放棄には期限があり、「自分のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内です。この期間内であれば大丈夫です。

しかし、期限3ヶ月を過ぎてしまうと、原則的に、相続放棄することはできません。特別な事情があれば、相続放棄の申立の際に、その理由を記述することで、相続放棄が認められることもありますが、記述方法には注意が必要です。

期限後の場合は、弁護士に相談するなどして、早急に専門家に対応してもらったほうが良いでしょう。

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2.自分でする相続放棄手続きの流れ

自分で相続放棄手続きをする流れは次の通りです。

  1. 相続財産を調査する
  2. 管轄の家庭裁判所を確認する
  3. 必要書類を集める
  4. 「相続放棄申述書」を作成する
  5. 家庭裁判所に申述書と必要書類を提出する
  6. 家庭裁判所から届く「相続放棄回答書」に必要事項を記入し返送する
  7. 相続放棄が認められると、相続放棄申述書受理通知書が届く

STEP1 相続財産を調査する

まずはじめに一番重要なのは、相続財産を調査することです。被相続人の財産よりも、借金などの負債のほうが多く、返済できそうにないことを明確にします。

現金や預貯金は、自宅の金庫やタンスなど、紙幣や通帳を保管しそうな場所を探します。銀行の貸金庫があれば、その中身も調査します。

株式などの有価証券や生命保険は、契約書や郵便物などで確認します。不動産は、固定資産税通知書や名寄帳で確認します。

被相続人のパソコンやスマホの中身を確認できるのであれば、パソコン内のファイルや、スマホのアプリから、利用している金融機関や証券会社がわかることもあります。

借金やカードローンなどの負債は、通帳から定期的な支払いがあるかどうか確認します。

STEP2 管轄の家庭裁判所を確認する

相続放棄の手続きは、家庭裁判所に申し立てをしますが、どこの家庭裁判所でも良いわけではなく、するべき裁判所が決まっています。

相続が開始した土地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄の申述を申し立てることができます(家事事件手続法201条1項)。相続が開始した土地とは、主として被相続人の住所のことです。

「家庭裁判所 〇〇」(〇〇:地名)とインターネットで検索すれば、該当する裁判所が表示されます。都道府県によっては何箇所かに分かれていますので、不安な場合には、家庭裁判所に電話して管轄かどうかを確認すると良いでしょう。

【外部サイト】裁判所:各地の裁判所を探す

次のSTEPで解説しますが、家庭裁判所によって、必要書類が微妙に異なることがあります。

相続放棄できる期間

家庭裁判所に相続放棄の申述(申し立て)をする前に、いまいちど、相続放棄できる期間をご確認ください。

相続人が、相続が開始したことを知ったときから3か月以内に上記の家庭裁判所に相続放棄の申述を申し立てなければなりません(民法915条1項)。ただし、相続人等の利害関係人・検察官の請求により、家庭裁判所の判断で当該期間を伸張することができます。

例えば、相続開始後3か月を経過したものの、思わぬ被相続人の借金が発見されたような事例等では伸長が認められます。

STEP3 必要書類を集める

家庭裁判所での相続放棄の手続き自体は、それほど時間がかかるものではありませんが、戸籍謄本などの必要書類を集めるのに一番時間がかかりますので、相続放棄をすると決めたら、すぐに必要書類を集め始めたほうがよいでしょう。

必要書類には、「相続放棄に共通で必要な書類」に加えて、被相続人との関係により異なる書類があります。
下記には、一般的な内容を記載していますが、家庭裁判所によってやや異なることもありますので、管轄の家庭裁判所にご確認ください。

相続放棄に共通で必要な書類

  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 申述人(放棄する方)の戸籍謄本

被相続人との関係により異なる書類

被相続人の配偶者
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
被相続人の子供
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
代襲相続人(孫など)の場合

被相続人の子供を代襲相続した孫などの直系卑属には、上記に加えて次の書類が必要です。

  • 代襲する相続人の子供など本来の相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
被相続人の直系尊属(父母など)
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子又は孫が死亡している場合:子・孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の祖父母が申請する場合:被相続人の両親の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
被相続人の兄弟姉妹
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子又は孫が死亡している場合:子・孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 父母・祖父母の死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
代襲相続人である甥姪の場合

被相続人の兄弟姉妹を代襲相続した甥姪には、上記に加えて以下の書類が必要になります。

  • 代襲する被相続人の兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

手数料等

  • 収入印紙800円
  • 家庭裁判所からの連絡費用として郵便切手数百円分(裁判所へ確認)

相続放棄 書類

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STEP4 「相続放棄申述書」を作成する

「相続放棄申述書」を作成します。相続放棄を申請する書類です。
相続放棄の申述の申立書の書き方は以下のとおりです。裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

申立書は2ページから成っており、それぞれ必要な箇所に記入する必要があります(主な注意点は赤字で記載しています)。

相続放棄申述書の書き方の詳細は、下の記事をご覧ください。

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STEP5 家庭裁判所に申述書と必要書類を提出する

相続放棄申述書と必要書類一式を管轄の家庭裁判所に、郵送するか持参して提出します。インターネットでの提出は認められていません。

郵送で提出する場合は、確実に届くようにするために、簡易書留やレターパックを利用することをお勧めします。

STEP6 「相続放棄回答書」に必要事項を記入し返送する

相続放棄の申し立て後、しばらくして家庭裁判所から「相続放棄照会書」と「相続放棄回答書」が届きます。

「相続放棄照会書」には、相続放棄に関しての質問事項が記載されています。その質問に対する回答を「相続放棄回答書」に記入して、期限内に家庭裁判所に返送します。こちらも、簡易書留かレターパックなどを利用したほうがよいでしょう。

たいていの場合、届いてからの期限が1週間程度しかありませんので、届き次第、速やかに記入して返送するようにしてください。

STEP7 相続放棄が認められると、相続放棄申述書受理通知書が届く

「相続放棄回答書」を家庭裁判所に返送して10日間程度で、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

この書類が郵送されてくれば、相続放棄が認められたことになり、相続放棄手続きは終了です。

3.未成年者、被後見人等の相続放棄手続き

相続人が未成年者の子供や、成年被後見人などである場合、本人だけでは手続きができず代理人が必要になることがあります。

法定代理人が相続放棄をする場合

相続放棄をするのが未成年者の場合は、未成年の子供に代わって、法定代理人である親が相続放棄の手続きを行います。

この場合も、通常の相続放棄と同様で、本人が相続できることを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ「相続放棄」の手続きを行います。
これによって相続放棄が可能です。

また、相続放棄をするのが、成年被後見人、被保佐人、被補助人の場合には、次の通りとなります。

  • 成年被後見人:成年後見人が代理で手続きをする
  • 被保佐人:本人が申述し、保佐人の同意を要する
  • 被補助人:被補助人単独でも申述ができる

「利益相反」の場合は特別代理人を選定

法定代理人と相続放棄をする者との関係が「利益相反行為」に該当する場合には、家庭裁判所により「特別代理人」を選定して相続放棄をする必要があります。

例えば未成年の子供と子供の法定代理人である親権者が共に相続人であり、親権者が子供の相続のみを代理して放棄すると、親権者には利益となり、子供には不利益が生じます。この代理人が被代理人の代わりに相続放棄をすることで、代理人には利益が、被代理人には不利益が発生する関係を「利益相反」といいます。利益相反が生じる場合には、特別代理人を選定する必要があります。

なお、特別代理人になるためには、特別な資格は必要ありません。家庭裁判所より適格者が選ばれ、審判にて決められた代理権を行使することになります。

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4.相続放棄をする際の注意点

最後に、自分で相続放棄する際の注意点を紹介します。

相続放棄の手続きに不備があると却下されることも

相続放棄申述書に不備があったり、必要書類が足りなかったりすると、家庭裁判所から連絡がきます。そこで対応すれば問題ありませんが、忙しかったりして何もせずに放置しておくと、最悪、相続放棄が却下されることもあります。

相続放棄が却下されてしまうと、再度、相続放棄の申述を行う際には、それなりの理由が必要になります。

相続債権者には通知されない

相続放棄をしても、家庭裁判所から相続債権者(被相続人に対して債権を持っていた人)に対し何らかの通知がされることはありません。したがって、相続債権者には相続放棄の事実を知る術がないため、返済の請求があった場合には、上記の相続放棄申述書受理通知書を提示する必要があります。

さらに、相続放棄が裁判所に受理されたとしても、債権者が相続放棄させまいとして、相続人が相続について知った時期について争う訴訟を提起する可能性は残されています。

次の順位の相続人には通知されない

相続放棄して、その順位で誰も相続人がいなくなると、次の順位の相続人が相続することになります。たとえば、被相続人の子供が全員、相続放棄をすると、次の順位の親が相続人となります。親がいなければ、さらに次の順位の兄弟姉妹が相続人となります。

ここで注意点は、家庭裁判所から次の順位の相続人に対して通知されることはありません

したがって、相続放棄によって相続人となった次順位の相続人に対して相続債権者から返済の請求がなされることになり、事情を知らない次順位の相続人とトラブルになる可能性があります。

このようなリスクを回避するために、相続放棄をする際には、自分の相続放棄により相続人となる次順位の相続人に事前に通知するのが望ましいです。

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相続放棄しても遺産の管理義務が残る

相続放棄が認められたとしても、相続放棄により新たな相続人となった者が遺産の管理を始められるまでは、相続放棄をした者に遺産の管理義務があります(民法940条)。

また、相続放棄をすることで他に相続人がいなくなってしまう場合であっても、債権者や特別縁故者といった利害関係人、検察官が家庭裁判所に遺産を管理する財産管理人選任の申立てを行うため、この財産管理人が選任され管理できるようになるまでは、遺産の管理義務が生じます。

相続放棄は生命保険などの受け取りに影響しない

相続放棄をすると遺産は相続することはできません。

しかし、生命保険金(死亡保険金)などは相続財産とはならず、受取人の個別の財産となり、相続放棄をしても、受領する権利に影響が生じません。したがって、生命保険金の受取りや遺族年金の受取りが可能です。これらは申請をしないともらえませんので、忘れずに、受け取りの申請をするようにしましょう。

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5.弁護士に依頼するメリット

以上、必要な手順をおさえれば、相続放棄は一般の方でも問題なく出来ます。
しかし、弁護士など専門家に相談する方が多いのも事実です。なぜでしょうか?

上記で解説した通り、相続放棄には一定の書類が必要です。書類の不備などがあれば何回も裁判所に通わなければなりません。さらに、書類の収集や裁判所からの照会の記入についてよくわからない場合など、誰も答えてくれません。その上、相続放棄できる期間も、3ヶ月以内と制限があります。
ハッキリ言って、「自分でやるのは面倒です」。

そんな時に頼りになるのが弁護士などの専門家です。アドバイスに従って書類を収集し、申述書や裁判所からの照会の記入をすれば手間と時間の大きな節約となります。また、相続放棄をすべきかどうか遺産の内容が明確でない場合に、財産調査についても任せることができます。

加えて、以下のような場合にも、適切なアドバイスを受けることができます。

  • 相続人間に争いがある
  • 被相続人の債権者から請求を受けている
  • 相続放棄をしたほうがいいのか迷っている

ちなみに、相続放棄の弁護士費用の相場は、5万~10万円程度です(弁護士事務所により異なります)。

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相続放棄を自分でやる場合のFAQ

相続放棄を自分でやっても問題ないのは、どんな場合ですか?

以下のようなケースでは、相続放棄を自分でやっても大きな問題はないでしょう。

  • 相続人間でもめていない場合
  • 相続財産の調査が可能な場合
  • 相続放棄の期限3ヶ月以内の場合

相続放棄を自分でやる場合の流れは?

相続放棄の手続きを自分でやる場合、次の流れでやると良いでしょう。

  1. 相続財産を調査する
  2. 管轄の家庭裁判所を確認する
  3. 必要書類を集める
  4. 「相続放棄申述書」を作成する
  5. 家庭裁判所に申述書と必要書類を提出する
  6. 家庭裁判所から届く「相続放棄回答書」に必要事項を記入し返送する
  7. 相続放棄が認められると、相続放棄申述書受理証明書が届く

相続放棄を自分でやるときの注意点は?

相続放棄を自分でやるときの注意点は以下のとおりです。

  • 相続放棄の手続きに不備があると却下されることも
  • 相続債権者には通知されない
  • 次の順位の相続人には通知されない
  • 相続放棄しても遺産の管理義務が残る
  • 相続放棄は生命保険などの受け取りに影響しない

相続放棄を専門とする弁護士がいます

相続放棄手続は自分でも出来ます。しかし、手続きを確実かつスムーズに進め、更に後のトラブルを防止する上では、弁護士に相談して手続するのがオススメです。

弁護士であれば、以下のような相続の悩みも的確にサポートしてくれます。

  • 相続放棄すべきか否か、判断が難しい
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  • どんな書類を用意すればいいか分からない
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