相続放棄の期限はいつまで?期間を延長(伸長)も可能
相続放棄には期限があり、過ぎてしまうと、原則として、相続放棄ができなくなります。しかし、例外的に相続放棄の期間を延長…[続きを読む]
相続放棄をする際には、「相続放棄申述書」を作成し、必要書類とともに家庭裁判所に提出します。
相続放棄申述書の書式と記入例は、裁判所のホームページからダウンロードすることができ、記入例を見ながら書式に記入することができます。
しかし、相続放棄をするのは初めてという方がほとんどです。
そこで、相続放棄申述書の書き方や、提出先や必要書類、提出後の流れについて説明します。
目次
相続放棄は、「相続放棄申述書」と必要書類を家庭裁判所に提出して行います。
相続放棄申述書を適法に提出できる家庭裁判所は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所、すなわち被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
以下の裁判所のサイトでご自分の管轄裁判所を検索してください。
【参考外部サイト】「裁判所の管轄区域」|裁判所
相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります(民法第915条第1項)。この3か月は「熟慮期間」と呼ばれています。
「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、基本的には相続人が相続開始の原因(被相続人の死亡など)を知り、かつ、自分が相続人になったことを知ったとき、とされています。
相続放棄の期限と、カウントダウンの起算点については、下記の記事で詳しく解説しています。
次に、相続放棄申述書の書式と記入例(サンプル)は、どこでもらえるのかについてご紹介します。
書式と記入例は下記、裁判所のホームページからダウンロードできます。ご自宅で書式を印刷できない場合は、家庭裁判所の窓口で貰うこともできます。
いずれの場合も書式は同じですが、成人(18歳以上)か未成年(18歳未満)かで、書き方が変わります。
記入例は、クリックすると拡大します。
本籍地欄は、戸籍謄本に記載されている情報をそのまま記入します。
住所欄についても同様に、住民票欄に記載されているままをご記入ください。
電話番号は、裁判所から日中連絡がつながる携帯電話の番号や、自宅の固定電話番号などを記入します。
職業欄には、会社員や自営業、アルバイト、無職などを記入します。
家事事件手続法施行規則第1条第1項は、「申立書その他の当事者、利害関係参加人又は代理人が裁判所に提出すべき書類には(中略)、当事者、利害関係参加人又は代理人が記名押印するものとする。」と規定しており、記名押印は自署によらずとも有効であるとされています。
なお、押印する印鑑は、実印(印鑑登録している印鑑)である必要はなく、認印でかまいません。ただし、シャチハタは使用できません。
また、弁護士に依頼して申述書を提出してもらう場合には、委任状も必要になります。
「本籍地」欄も、戸籍謄本に記載されているままを記載してください。
「最後の住所地」欄と「死亡日」欄も同様に、住民票の「除票」の記載のまま記入してください。
裁判所の相続放棄申述書には、「相続の放棄をする。」と印字されており、改めて記入する必要はありません。
この欄は、「申立てが熟慮期間内になされているか」を確認するために必要になります。「相続の開始を知った日」とは、被相続人が亡くなったことを知った日です。
したがって、多くの方は、被相続人の死亡日を記載し、「1 被相続人死亡の当日」を選択することになるでしょう。遠方にいる等の理由で、死亡の連絡を受けるのが遅れた場合などは、連絡を受けた日付を記入し、「2 死亡の通知を受けた日」を選択します。
被相続人の子供などが全員相続放棄をしたために、相続人となった被相続人の父母や兄弟姉妹などは、「3 先順位者の相続放棄を知った日」を選択し、相続放棄を知った日付を記載します。
その他の理由で、被相続人の死亡の日付と「相続開始を知った日」が異なる場合には、「4 その他」を選択し、その理由と日付を記入します。
被相続人の死亡から長時間経過している場合には、一度弁護士に相談するとよいでしょう。
「なぜ放棄をしようと思ったか」を、1~5の選択肢の中から選びます。相続放棄の理由は、相続放棄の可否には影響しません。ご自分が最も当てはまると思う選択肢をお選びください。
「相続財産の概略」欄は、不動産の登記簿や、金融機関の通帳や取引報告書、金銭貸借契約書などを参照し、債務を含め記入します。
正確には分からない箇所については、多少不正確であっても相続放棄は認められます。ただし、相続財産を隠して記載せず、個人のために使ってしまうと、相続放棄は認められません。
未成年者や障がい者が相続人となり、相続放棄をする際は、本人が直接申述することができません。
相続人が未成年者等の制限能力者である場合には、法定代理人が制限行為能力者である相続人に代わって、相続放棄申述書を提出します(家事事件手続法第17条、民事訴訟法第28条、民法第5条参照)。
この場合、相続放棄申述書の「法定代理人」欄に住所氏名を記載します。
相続人が未成年者である場合には、親権者等の法定代理人が相続放棄の申述を行います。しかし、その親権者等も同じ被相続人の相続人である場合に、当該親権者等が未成年者の相続放棄の申述を法定代理人として行うのは、利益相反となります。
そうなると、この申述は無権代理となり無効となります。そこで、この場合には、特別代理人の選任を裁判所に申し立て、この特別代理人が相続放棄の申述を行うことになります。
最後に、相続放棄申述書の必要書類について解説します。
なお、被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))がいらっしゃる場合には、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が必要です。
なお、被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合には、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が必要です。
また、申述人が代襲相続人(甥、姪)の場合には、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が必要です。
必要書類について、詳しくは、次の記事を参考にしてください。
相続放棄申述書には、収入印紙800円分を貼付します。
これに加えて、連絡用の切手も家庭裁判所に提出します。切手の額については、申立てをする家庭裁判所によって異なるため、直接ご確認ください(一般的に350~500円程度です)。
相続放棄は、原則として撤回することができません。したがて、相続放棄をするかどうかは、慎重に検討しなければなりません。
弁護士には相続財産の調査から依頼することができ、相続放棄がベストな選択か相談することもできます。
また、熟慮期間を経過しても、相続放棄が認められるケースもあります。相続放棄についても、ぜひ一度、相続に強い弁護士にご相談ください。