離婚した母が財産分与を貰う前に死亡、財産分与請求権は相続できる?

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zaisanbunyomae

「父と母が熟年離婚し、財産分与の問題がこじれているうちに、母が突然亡くなってしまった…。」

このような場合、残された子としては、悲しみに暮れる暇もなく、相続問題で一挙にてんやわんやとなってしまうでしょう。

特に、離婚した父と母の間の財産分与の問題が宙ぶらりんになってしまっていますが、どのように処理したらいいのでしょうか。

相続人である子としては、母の財産分与を父に対して主張したいところですが、財産分与請求権の相続は認められるのでしょうか?

この記事では、財産分与請求権の相続の可否、財産分与請求権の消滅時効、および財産分与請求権を行使するための手続きなどについて解説します。
離婚と相続が絡み合った、複雑な法律関係を整理するための手助けとしてください。

なお、離婚した両親の片方が亡くなって相続する子を例にご説明しますが、離婚した子供が亡くなって相続した親や、離婚した兄弟姉妹が亡くなって相続した場合でも同様に考えることができます。

1.財産分与請求権とは?

そもそも、財産分与請求権とはどのような請求権なのでしょうか。
これを理解していないと、相続と実際の請求についてが難しいので、最初にご説明します。

法律上の根拠や、財産分与請求権の性質について確認いきましょう。

1-1.財産分与請求権の法律上の根拠

民法768条1項によれば、離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるとされています。
この規定が財産分与請求権の法律上の根拠となります。

なお、民法768条1項は協議離婚(調停含む)の場合の規定ですが、裁判上の離婚の場合であっても、民法771条により同様に財産分与が認められます。

1-2.財産分与の3つの要素

一般に、財産分与は3つの異なる要素が合わさったものであると解されています。

①清算的財産分与

清算的財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で作った財産を公平に分けるということを意味します。

離婚の時点で、夫婦が共同で作った財産がどちらか一方の所有に偏っている場合には、精算的財産分与の考え方により、多い方から少ない方へと財産の移転がなされます。

②慰謝料的財産分与

慰謝料的財産分与とは、離婚の原因を作った側が相手に対して慰謝料を支払うということを意味します。

離婚の慰謝料は必ずしも発生するわけではありません。
しかし、たとえば不貞行為やDVがあった場合など、どちらか一方が明らかに悪いというケースであれば、慰謝料的財産分与の考え方により、財産分与の金額が増額または減額される可能性が高いといえます。

③扶養的財産分与

扶養的財産分与とは、離婚後の生活保障を意味します。

本来は、夫婦の相互扶助義務(扶養義務)は婚姻中のみ有効です。

しかし、たとえば妻が専業主婦である場合など、夫婦間の収入に格差がある場合は、離婚すると収入の低い方が途端に経済的に苦しくなってしまうことがあります。
このような場合には、夫婦の相互扶助義務に準じて、離婚後の一定の期間、収入の高い方が低い方に対して生活保障を行うべきという考え方が、裁判実務上採用されています。

財産分与請求権には、以上の①から③の3つの要素が含まれていると考えられており、財産分与の金額を算定する際も、上記の3つの観点が考慮されることになります。

2.財産分与請求権は相続の対象になる?

冒頭の設例に戻りましょう。

父親と母親が離婚し、財産分与が済まないままに母が亡くなってしまった場合、子は財産分与請求権を相続することができるのでしょうか?

2-1.相続の可否は財産分与請求権の性質により異なる

前の項目で解説したように、財産分与の金額は、財産分与の3つの要素を総合考慮して決定されます。

この3つの要素には、相続される要素と相続されない要素があると考えられています。

では、どの要素が相続され、どの要素が相続されないのでしょうか?

この点は、相続財産の範囲を決定するための一般的なルールにより判断されます。

相続は、被相続人の財産の一切を対象とするのが原則です(民法896条本文)。
しかし、被相続人の一身に専属する権利については、相続の対象外とされています(同条ただし書)。

このルールに従って、3つの要素をみていきましょう。

2-2.清算的・慰謝料的財産分与請求権は相続される

清算的財産分与請求権

まず、清算的財産分与請求権は、婚姻期間中に夫婦が共同で作った財産を公平に分けるということなので、純粋に財産の問題です。

よって、清算的財産分与請求権は問題なく相続の対象となります。

慰謝料的財産分与請求権

一方、慰謝料的財産分与請求権は、本人が感じた精神的苦痛に対しての賠償ということになるので、主に本人の問題であり、相続の対象とならない「一身専属権」と考えることもできそうです。

しかし、最高裁は慰謝料請求権を「単純な金銭債権」として、相続の対象となるものと判示しています(最判昭和42年11月1日)。

よって、判例に照らすと、慰謝料に準じた意義を持つ慰謝料的財産分与請求権も、相続の対象となるものと考えられます。

2-3.扶養的財産分与請求権は通常は相続されない

先に解説したように、扶養的財産分与請求権は、夫婦の相互扶助義務(扶養義務)の延長線上に位置づけられます。

民法上、扶養請求権は処分できない一身専属的な権利とされています(民法881条)。

したがって、扶養請求権の延長である扶養的財産分与請求権については、一身専属的な権利として相続の対象外となるというのが一般的な考え方であり、基本的には裁判所でもそのように運用されると考えていいでしょう。

ただし、扶養的財産分与「義務」の観点から、相続を認めた裁判例も一部存在します(大分地判昭和62年7月14日)。
財産分与の義務と権利は表裏一体ですから、一般的な考え方とは異なりますが、僅かながら相続される可能性もあるんだと理解しておきましょう。

3.財産分与請求権の消滅時効

財産分与を請求するとき、次の手続きでご説明する協議が整わないこともあります。

この場合、家庭裁判所に処分を請求することになりますが、請求できる期間は離婚の時から2年間とされています(民法768条2項ただし書)。
この期間は消滅時効ではなく、除斥期間と解されています。

除斥期間は消滅時効とは異なり、完成猶予や更新(中断や停止)が認められません。
つまり、相手が支払いを約束しても、こちらが内容証明等で請求しても、2年間で消滅するということです。

そのため、財産分与の協議が調わない場合、財産分与請求権を有する人は、必ず離婚の時から2年以内に家庭裁判所に対する処分を請求する必要があります。

なお、除斥期間の経過後であっても、財産分与の請求に対して相手が任意に応じてくれるという可能性はあります。

4. 財産分与を請求するための手続について

具体的に、相続人である子が父親に対して財産分与請求権を行使するには、どのような手続きを経る必要があるのでしょうか。

各パターンについて詳しく解説します。

4-1.まずは協議

どんなことでも同じですが、話し合いで問題が解決できるなら、それが一番穏便です。
まずは離婚して財産分与の義務を負う親と、子との間で、財産分与の内容について協議を行いましょう。

財産分与でどれだけの財産を分けてもらえるかは、財産の内容や、夫婦間の貢献度などに応じて決まります。
よって、これらの要素を考慮した上で、相続人側として希望する財産分与の額を提示しましょう。

当然、相続人が複数いる場合には、どのような請求をするかについて事前に相続人間で話し合っておくことが必要です。

財産分与について協議が成立したら、財産分与の内容について書面に残したうえで、父親と子全員が署名・捺印をするようにしましょう。

4-2.協議不成立なら財産分与請求調停

財産分与に関する協議が調わない場合には、当事者は家庭裁判所に対して調停を申し立てて、協議に代わる処分を請求することができます(民法768条2項)。
先に解説したとおり、財産分与請求調停は離婚の時から2年以内に申し立てる必要があります

調停では、家庭裁判所の調停委員と裁判官が間に入り、当事者双方の話し合いを仲介することになります。

そして、家庭裁判所は、

  • 財産分与の対象としてどのような財産があるのか
  • 夫婦がそれぞれ財産の取得や維持に対してどのような貢献をしてきたのか

などについて、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったりするなどして、和解に至ることができるように必要な助言などを行います。

調停手続きが進行すると、家庭裁判所から何度か調停案が提示されます。

調停案に当事者双方が合意すれば、調停成立となり「調停調書」が作成されます。
調停調書に記載された財産分与の内容は、強制執行をすることも可能です(判決と同様の効力を持ちます)。

一方、調停案が双方の合意に至らない場合、調停は不成立(不調)となります。

4-3.調停不成立なら財産分与請求審判

財産分与請求調停が不成立になると、自動的に審判手続きに移行します。

審判手続きは、当事者間の合意を目指す調停よりも強力な手続きで、最終的には裁判所の判断により、財産分与の内容について審判が下されることになります。

なお、財産分与の当事者は、調停を飛ばしていきなり財産分与請求審判を申し立てることもできます。
ただし、この場合は裁判所の職権で調停に戻される場合がある点に注意しましょう(家事事件手続法274条1項)。

家庭裁判所から審判がくだされると、そこから2週間で確定します。
審判の場合も、確定審判に記載された財産分与の内容は、強制執行が可能です。

4-4.審判に不服がある場合には即時抗告

家庭裁判所から下された審判の内容に不服がある場合には、審判が確定するまでの2週間以内に即時抗告を申し立てることにより、高等裁判所での審判を受けることが可能です。

申立て期間を途過しないように注意しましょう。

5.まとめ

財産分与請求権の相続は、一つ一つでさえ複雑になりがちな離婚と相続が絡み合う、非常に難しい問題です。

どのように処理したらいいかわからない、揉めてしまって問題が解決しないという場合には、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。

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