空き家の相続問題|相続したらどうすればいい?リスクや対処法を紹介

相続した空き家に頭を悩ませている方も多いでしょう。

放置されたままの空き家が目立つ住宅街も多くなっています。

そこで、ここでは空き家を相続したまま放置するとどのようなリスクが発生するのか、相続した空き家にはどのような対処法があるのかを解説します。

1.相続した空き家を放置するリスク

空き家を相続したまま放置していると、次のようなリスクがあります。

1-1.損害賠償請求される可能性

空き家のような建築物には、特に重い土地工作物責任(民法717条)が課されています。

例えば、壊れかかっている塀を補修しなかったために、それが崩れて通行人が怪我をすれば、空き家という土地に付着した工作物が通常備えるべき安全性を欠いていたと認められます(これを「瑕疵」と言います)。

このような、空き家の「瑕疵」を原因として他人に損害を与えたときは、空き家の占有者が損害賠償責任を負い、占有者に過失がない場合は、それがたとえ遺産分割前の損害であっても、空き家の所有者である相続人が無過失の損害賠償責任を負います。

遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるため(民法909条)、空き家を相続した相続人は、相続開始から所有者としての責任も負うことになります。

幸いに、損害賠償請求されなかったとしても、空き家がゴミの不法投棄の対象になっているのをご覧になった方は多いでしょう。老朽化して割れたガラスなどを放置すれば景観の悪化に繋がります。

さらに空き家は放火のターゲットになりやすく、不審者が徘徊して治安が悪化するなどの理由から地価が下落すれば、近隣住民からのクレームは免れず、周辺住民とのトラブルを抱えてしまう可能性は決して低くはないでしょう。

1-2.特例空き家に指定されると行政指導に従わなければならない

空き家が以下の状態に該当し、市区町村から「特例空き家」に指定されると、自治体から行政指導がなされます。

  • 倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
  • 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
  • 適切な管理が行なわれないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

この行政指導に従わなければ、50万円の過料に処せられる可能性があり、行政代執行で解体されればその費用も負担しなければなりません。

1-3.空き家に課税される固定資産税が膨れる可能性

居住していなくても、空き家の所有者であれば、市区町村から毎年1回固定資産税を請求されることになります。

住宅用地の固定資産税は、敷地面積が200㎡以下の部分について、特例措置として6分の1に減額されています。

しかし、空き家を放置したまま適切な管理を行わず、前述した「特定空」き家に指定されると、住宅敷地に対する固定資産税の軽減措置から除外されてしまい、(空家等対策の推進に関する特別措置法14条2項、地方税法349条の3の2)、結果的に固定資産税の額が6倍に膨れ上がってしまいます。

さらに、空き家が市街化区域内にあれば、都市計画税も発生します。

2.資産価値のある空き家を相続した場合の対処法

空き家に資産価値があれば、次のような対処が可能です。

2-1.空き家を売却する

空き家に資産価値があれば、売却することを検討しましょう。売却すれば維持費もかからず、管理の手間も省くことができます。

売却すると、譲渡益には譲渡所得税がかかりますが、空き家を減らすための特例措置として、税制面でも優遇措置があります。

空き家を売却する際の「3000万円の特別控除」

「被相続人が亡くなったことによって空き家になった家」を売却しようと考えている人向けに、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる特例があります。

もともと被相続人の住居だった空き家の相続で、相続した年から数えて3年目の12月31日までの間に売るなど、一定の要件を満たすときには、売却した際の譲渡所得の金額から最高で3000万円まで控除することができます(2027年12月31日までに売却した場合の特例)。

ただし、売却するには、その前に相続登記をしておく必要があります。

相続登記の義務化

現相続人が空き家の所有者として登記されていなければ、実務上売却することは不可能です。

さらに、2024年4月1日から、相続登記は義務化されており(不動産登記法第76条の2第1項)、過去に相続した不動産も登記義務化の対象となっています。

「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に正当な理由なく登記をしなければ、10万円の過料を請求されてしまう可能性もあります(同法164条)。

相続登記をするには、固定資産税評価額の0.4%の登録免許税が発生します。

しかし、相続人が相続登記をしないまま死亡した場合や、不動産が100万円以下の場合には、経過措置としての登録免許税の免除が2025年3月31日まで延長されています。詳しい解説は、以下法務局のHPでご覧いただくことができます。

【参考外部サイト】「相続登記の登録免許税の免税措置について」|法務局

2-2.空き家を賃貸する

空き家を賃貸できれば、家賃収入が入り、家の劣化のスピードも緩めることができます。

しかし、空き家を賃貸するためには、リフォーム工事やクリーニング、修繕も必要になります。管理会社に管理を任せることもできますが、依頼すると費用も発生します。さらに空き家を賃貸するにも、相続登記は必要になります。

空き家のあるエリアに需要があるかをしっかり見極めてから賃貸すべきです。

2-3.空き家を住居として利用する

持ち家があって「常時住むのは無理」という方であっても、セカンドハウスとして利用することは可能でしょう。

空き家であっても固定資産税は毎年発生します。

どうせ税金がかかるなら、リフォームして適切に管理すれば、近隣の住民からクレームが寄せられる可能性も抑えられるはずです。

3.資産価値のない空き家を相続した場合の対処法

最後に、資産価値のない空き家を相続した場合には、どうすればいいでしょう?

3-1.相続放棄する

もし、まだ相続開始から3か月以内の熟慮期間中にあり、遺産分割協議の最中であれば、相続放棄も選択肢の1つです。

空き家に資産価値がなく、積極的に相続したい相続人もいなければ、遺産分割協議でお互いに押し付け合うことになりやすく、当事者だけでの話し合いは難航します。

遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所の調停、それでも決まらなければ審判で空き家を相続する者を決めることになります。空き家を分割して相続させることは不可能で、審判では、裁判所が空き家を任意売却又は競売して代金を分割することを命じることになります(家事事件手続法194条)。

相続放棄をすると、空き家だけでなくすべての遺産を相続することができなくなります。しかし、遺産分割で他の相続人との話し合いから抜け出したいと考えている相続人には検討する価値はありでしょう。

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3-2.空き家を解体する

資産価値がなく、居住する予定もない空き家を、ただで貰ってくれる人が現れれば御の字です。昨今では、利用価値のない不動産は、地方自治体でも寄付を断ります。

空き家を相続してしまい、今更相続放棄もできないとなれば、空き家を解体してしまうしかありません。

空き家の解体費用は、1坪あたり4~6万円程度です。しかし、解体することで損害賠償請求や行政指導などのリスクを回避できれば安いものかもしれません。

まとめ

ここまで、相続した空き家のリスクや対処法について解説しました。

空き家を相続すると様々なリスクがあるため、慎重に検討する必要があります。

しかし、不動産需要があるエリアの空き家を相続すれば、売却や賃貸といった選択肢もあります。

空き家を相続してお困りの方は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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