空き家の相続問題|誰が相続する?登記は?空き家相続の流れと注意点

被相続人の方がお亡くなりになって、遺産分割しようというとき、遺産の中に「空き家」があると、その処分にお困りの方も多いのではないでしょうか。

全国で空き家の軒数は年々増加しており、深刻な空き家問題に悩む方の数も増えてきています。

空き家を相続する場合、どんな手続きが必要なのか、相続したらどんな義務が発生するのか。
本記事では、空き家の相続についてわかりやすく説明していきます。

1.空き家は誰が相続する?

もともと空き家だった家、あるいは被相続人が亡くなったことで空き家になった家など、空き家の処分についてお困りのケースは多種多様です。

皆さんの空き家は、誰が相続しなければならないのでしょうか。

空き家の相続人は、被相続人が遺言書で誰に相続させるかを指定していればそれに従い、なければ、遺産分割協議で、相続人同士で話し合って決めます。

しかし、特に資産価値のない空き家の場合には、お互いに押し付け合うことになりやすく、当事者だけでの話し合いは難航します。

遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所の調停、それでも決まらなければ審判で空き家を相続する者を決めることになります。

審判では、空き家の相続を希望する者がいない場合、空き家を分割して相続させることは通常は不可能ですから、裁判所は空き家を任意売却又は競売して代金を分割することを命じることになります(家事事件手続法194条)。

遺産分割の協議・調停がまとまるか、審判が確定するまでの間は、空き家は法定相続分に応じた共有持分による共同相続人の共有財産となります。

では、遺産分割協議等の末に、ご自身が空き家を相続する流れになったら、具体的にはどんな義務等が発生するのでしょうか。

2.空き家を相続する場合

まずは空き家を相続する場合からご説明します。
「空き家を相続させられそうだが、したくない!」という方は、「4.空き家を相続しない場合|相続放棄」をご参照ください。

空き家を相続したら、主に以下の3つの使い道がありえます。

  • 自分で住む
  • 人に貸す
  • 人に売る

相続登記は義務化される

いずれにせよ、空き家を相続する際には、家の相続登記をしておくことをお勧めします。

2024年4月1日から相続登記は義務化され、「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に正当な理由なく登記をしなければ、10万円の過料を請求されてしまう可能性があるのです。

また、登記をしておかないと、次のような危険性があります。

登記しない危険

例:父親が死亡し、遺産は空き家一軒だけでした。
相続人は長男A、次男B、三男Cで、遺産分割によって、Aが空き家を単独で相続しましたが、登記をしないままでした。次男Bは、自分が相続したと偽って、空き家を第三者Dに売却してしまい、Dは空き家の所有権移転登記をしてしまいました。

この場合、Aは自分の法定相続分を超えた部分については、Dに対して、空き家の所有権を主張できません(民法899条の2)。

具体的には、Aはもともと空き家の共有持分3分の1を相続する法定相続分を有していたので、その部分は登記がなくててもDに権利を主張できますが、これを超えた共有持分3分の2についてはDに権利を主張できず、結局、空き家はAが3分の1、Dが3分の2の共有状態となってしまうのです。

登記をしておかないと、せっかく単独で相続した権利の一部を失ってしまう危険があるわけです。

家の相続登記(名義変更)については、以下の記事をお読みください。

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3.空き家を相続するときにチェックしたい点

3-1.相続してもしなくても、空き家の管理責任が発生

空き家の手入れを怠ると、屋根が落下したり、壁や庭木が倒れたりして、通行人に怪我をさせたり、近隣の建物に損傷を与える場合があります。

相続人である限り、相続するのか相続放棄をするのかを考えている期間(3ヶ月の熟慮期間内)でも、空き家を管理する義務があります(民法918条)。

相続放棄する前であっても、相続して自分の所有物となった場合と同様の管理責任が課せられているからです。

したがって、熟慮期間中で、まだ相続放棄する可能性があったとしても、管理の不備で他人に損害を与えてしまえば、損害賠償責任を負います。

空き家の管理は無過失責任

管理責任は、相続財産の内容を問わず課される責任ですが、空き家のような建築物には特に重い土地工作物責任(民法717条)も課されています。

熟慮期間中であっても、前述のとおり空き家は共同相続人による共同所有物となっているので、相続人は所有者としての責任も負うからです。

壊れかかっている塀を補修しなかったために、それが崩れて通行人が怪我をしたような場合には、空き家という土地に付着した工作物が通常備えるべき安全性を欠いていたと認められます(これを「瑕疵」と言います)。

このような、空き家の「瑕疵」を原因として他人に損害を与えたときは、空き家を占有している者が損害賠償責任を負い、占有者に過失がない場合は、所有者が無過失の損害賠償責任を負います

空き家が遺産の場合、先の民法918条からも、通常は共同相続人が占有者と認定され、占有者兼所有者となるので、無過失責任を免れないことになります。

相続後は所有者として引き続き管理責任を負う

遺産分割で、空き家を相続することが確定すれば、以後は、上記の土地工作物責任を負担し続けることになります。

住むなり、貸すなりの利用法があればいいですが、ただ所有しているだけで責任が継続するのですから、空き家を相続することには慎重になるべきと言えましょう。

3-2.空き家を放置すると固定資産税が6倍に

また、長年放置して劣化が進み、空き家対策特別措置法により「特定空き家」に指定されてしまうと、住宅敷地に対する固定資産税の軽減措置から除外されます(空家等対策の推進に関する特別措置法14条2項、地方税法349条の3の2)。

通常、敷地面積が200㎡以下だと、固定資産税の支払いは6分の1で済むのですが、特定空き家に指定されてしまうと、この適用から除外され、結果的に固定資産税の額が6倍に膨れ上がってしまうのです。

ちなみに、特定空き家とは、以下のような特徴を持つ空き家だとされています(空家等対策の推進に関する特別措置法2条2項)。

  • そのまま放置すると、倒壊する等著しく危険性がある
  • そのまま放置すると、著しく衛生上有害である
  • 適切な管理が行われておらず著しく景観を損なっている
  • 周辺の生活環境を考慮すると、放置することが不適切な状態である

3-3.空き家の「3000万円の特別控除」

こちらは、「被相続人が亡くなったことによって空き家になった家」を売却しようと考えている人向けに、用意されている特例です。

もともと被相続人の住居だった空き家の相続で、相続した年から数えて3年目の12月31日までの間に売るなど、一定の要件を満たすときには、売却した際の譲渡所得の金額から最高で3000万円まで控除することができます(2023年12月31日までの特例)。

詳しくは、以下の記事をお読みください。

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以上のことをふまえて、「空き家をやっぱり相続したくない」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
また、相続人の中に空き家を相続したいと考える方が誰もいない場合、どうなるのでしょうか。

4.空き家を相続しない場合|相続放棄

空き家を相続したくない場合には、相続放棄という方法があります。
相続放棄とは、名前のとおり、遺産を受け取らない、受け取りを放棄することです。

ただし、相続放棄は一部の財産についてだけ放棄することは認められませんから、空き家を相続放棄するときには、現金などその他すべての遺産についても放棄することになります。

また、相続放棄には3ヶ月以内という熟慮期限があります。
3ヶ月というのは想像以上に短いです。相続放棄を検討している場合には、あまり悠長に考えていられないということがお分かりいただけるかと思います。

空き家を相続放棄しても管理責任は残る

相続人全員が空き家を相続放棄することも可能です。

しかし、相続放棄をしてもなお相続人に空き家の管理責任は残ります。

民法940条(相続の放棄をした者による管理)
1項 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

相続放棄によって次順位の相続人が空き家の管理を開始するか、全相続人の相続放棄によって相続する者がいなくなり裁判所が選任する「相続財産清算人」(民法952条)が空き家の管理を開始するまで責任は残るのです。

つまり、空き家を相続したいから相続する、したくないから相続しない、という単純な問題では済まないということです。

相続放棄をするならば、自分が放棄したあとに誰が管理を引き継いでくれるのかを、しっかり確認しておく必要があります。
そうしないと、相続放棄で自分の所有物とはしなかった空き家のために、損害賠償責任を負担する危険があります。

空き家の相続放棄については、以下の記事をお読みください。

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5.まとめ

深刻な空き家問題は、年々増加しています。

遺産の中に空き家があれば、相続するしないにかかわらず、適切に対処しないと、思わぬ損害を被ります。

空き家が遺産となった場合は、相続の専門家である弁護士に御相談されることをお勧めします。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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