遺産分割協議書を書き間違えた!間違えた内容別の訂正方法まとめ

遺産分割協議書は、相続手続きの際に大変重要な役割を担う書類です。
「遺産分割協議書で誤った内容が見つかったから、直したい」
「追記しなければならない内容が出てきたから、加筆したい」
そんなときは、正しい方法で遺産分割協議書を訂正する必要があります。
本記事では、書き間違えた遺産分割協議書をどのように訂正すればよいか、解説します。
目次
1.重要な箇所の訂正は遺産分割協議書を再度作成
遺産分割協議書の訂正は、もちろん可能です。しかし、通常訂正できるのは、住所や日付の誤りなどの軽微な間違いです。誤字・脱字程度であれば訂正可能と解していただければいいでしょう。
相続分の書き間違いや相続人の追加など、遺産相続にとって重大と考えられる変更に関しては、訂正ではなく遺産分割協議書をもう一度作成するようにしましょう。
1-1.遺産分割協議書に遺産の漏れがあったときは再度作成
例えば、稀に遺産分割協議書作成後、新たな遺産の存在が判明することがあります。
新たに遺産の内容を追加したいときには、訂正ではなく、「新しい遺産に限った遺産分割協議書」を新しく作成するようにしましょう。
新たに判明した遺産に限定した協議書を作ったほうが、かかる手間も混乱も少ないでしょう。
2.訂正箇所によって必要な訂正印が異なる
「相続人の情報」を書き誤った場合と、「被相続人の情報や遺産の情報」を書き誤った場合とで、必要な訂正印が異なるため、それぞれについてご説明します。
訂正の仕方は法律などで明確に定められているわけではありません。したがって、今回は一般的な訂正方法を解説します。
2-1.「相続人の情報」を訂正する場合
まず、相続人の氏名・住所・肩書きなど、相続人の情報が誤っている場合には、書き間違えた部分を二重線で消し、その周辺に正しい情報を書き、実印で訂正印を押します。
このとき押す訂正印は、訂正箇所に該当する相続人の押印のみで問題ありません。
必ず遺産分割協議書に押印した実印を用いてください。
2-3.「被相続人の情報」「遺産の情報」を訂正する場合
次に、被相続人の氏名・住所・死亡年月日や、遺産の内容(銀行の口座番号、不動産の所在地など)を誤った場合には、間違っている部分を二重線で消し、その周辺に正しい情報を書き添えた後は、相続人全員の訂正印が必要になります。
こちらも、相続人全員が、遺産分割協議書に押印した実印を用います。
ただし、相続人全員の訂正印が入手できる状況であれば、訂正するよりも作り直してしまったほうがよいことも多いでしょう。無理に訂正で済ませる必要はありません。
4.内容を訂正しても作成日まで変更しなくてよい
「遺産分割協議書の内容を訂正したら、内容が更新されたということなので、協議書の作成年月日の日付も変更しなければならないのではないか?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、遺産分割協議書の日付は「遺産分割協議日」または「最後の人が署名押印した日」です。
訂正したからといって日付まで直す必要はありません。
5.捨印による訂正も可能だが悪用に要注意
遺産分割協議書を訂正する際には訂正印が必要なことをみてきましたが、互いが遠方に済んでいる場合など、相続人の訂正印を集めるのが難しいこともあります。
そんなときは、「捨印」を利用する方法が考えられます。
捨印とは、遺産分割協議書の作成時に、後々訂正が必要になったときのことを考えて、予め相続人が欄外に押しておく実印のことです。
捨印があれば、訂正したい箇所に二重線を引き、捨印を押した箇所に「〇ページ〇行目 〇字削除〇字加入」と書くことで、有効に訂正が可能です。
ただし、便利な捨印ですが、危険性も考えておかなくてはなりません。
予め捨印を押すということは、後から協議書にどんな修正が加えられてしまう可能性があるということです。
訂正者が勝手に遺産の金額などを修正することも可能になってしまうので、むやみに捨印を押すことはおすすめできません。
遺産分割協議書についてよくある質問(FAQ)
遺産分割協議書の押印はやり直しができるの?
遺産分割協議書には、割印や契印など、必要に応じてしなければならない押印があります。
しかし、「押印したら一部かすれてしまった」「インクをつけすぎて見えなくなってしまった」という事態も発生します。
印鑑の押し直しがしたいという方は、イラストで手順を解説している「遺産分割協議書の割印・契印の押し方と訂正方法|割印は本当に必要?」をお読みください。
どうして遺産分割協議書には実印を押すの?
遺産分割協議書に実印で押印をしなければならないといった法律上の規定は、存在しません。
では、どうして遺産分割協議書には相続人の実印の押印が必要なのでしょうか?
相続税申告や相続登記、銀行口座の相続手続きなどには、実印の押印された遺産分割協議書と印鑑証明書が必要となります。
そのため、遺産分割協議書には、実印で押印すべしという運用になっているのです。
6.まとめ
一度作成した遺産分割協議書でも、後から訂正することができます。
「相続人の情報」と「被相続人や遺産に関する情報」の訂正は、「間違った箇所に二重線を引き、周辺に正しい情報を書き添えて訂正印を押す」というやり方については同一です。
一方、訂正印については、次のような違いがあります。
- 相続人の情報の訂正
該当する相続人の実印を押印 - 被相続人や遺産に関する情報
相続人全員の実印を押印
ただし、今回ご紹介した訂正方法は、あくまで間違いが軽微な場合に限ります。
その上、遺産分割協議書の訂正を繰り返すと、記載内容が見にくくなってしまいます。相続人全員の訂正印が用意できる場合には、作り直すこともご検討ください。