遺産分割協議書には印鑑証明書が必要?有効期限・取得手順を解説

相続手続きには、印鑑証明書が付き物です。

被相続人の遺言書がない場合には、遺産分割協議に従って相続手続きを行います。遺言書を作成することが普及してきたとはいえ、まだまだ遺産分割協議による相続が一般的です。

そこで本記事では、印鑑証明書の有効期限や取得手順など、遺産分割協議と印鑑証明書にまつわる様々な疑問について解説します。

1.遺産分割協議書に相続人全員の印鑑証明書が必要な理由

遺産分割協議に印鑑証明書が必要な理由

遺産分割協議に相続人全員が合意すると、その証として遺産分割協議書に署名し、実印で押印します。

ではなぜ遺産分割協議書には、実印で押印するのでしょうか?実は、遺産分割協議書に実印で押印すべしとする規定は、法律上存在しません。

しかし、相続手続き全般において遺産分割協議書と印鑑証明書をセットで提出するために、遺産分割協議書には実印で押印し、印鑑証明書を添付することが必須となっているのです。

相続手続きでは、遺産分割協議に相続人全員が本人の意思で合意したことを確認するために、本人の署名が入った遺産分割協議書と印鑑証明書を添付を求めています。

2.印鑑証明書が必要とされる主な相続手続き

次に、一般的な相続手続きに必要になる印鑑証明書について解説します。

2-1.金融機関の口座や上場株式の相続手続き

相続により被相続人の口座を解約する場合や、上場株式の相続手続きは、相続のパターンにより印鑑証明書の扱いも異なります。

遺産分割協議による相続

遺産分割協議書を提出して被相続人の口座を解約する際には、相続人全員の印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議によらない相続

遺言書により銀行口座を相続した場合や、相続人が1人のみの場合には、申請者となる相続人の印鑑証明書のみを提出して手続きします。

調停や審判など家庭裁判所の手続きにより相続し、調停書や審判書がある場合にも、裁判所の書類とともに口座を相続する方の印鑑証明書のみを提出します。

2-2.不動産の相続登記

遺産に不動産が含まれていると、相続登記を行います。ちなみ2024年4月1日より相続登記は、義務化されます。まだ行っていない方は、急いだほうがいいでしょう。

遺産分割協議により不動産を相続

遺産分割協議により不動産を取得した場合には、遺産分割協議と相続人全員分の印鑑証明書を提出して相続登記を行います。

遺産分割協議によらず不動産を相続

遺言書や裁判手続きなどによって不動産を取得した場合には、遺言書や調停調書などを提出すれば、印鑑証明書は必要ありません。

2-3.相続税申告

遺産分割協議による相続

遺産分割協議により遺産を分割し、相続税申告をする際には、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議によらない相続

遺産分割協議をしていない遺言による相続、相続人1人の場合には、印鑑証明書の添付も不要となります。遺言書による相続では、遺産分割協議書の代わりに、遺言書の提出が必要となります。

2-4.生命保険金の受取

被相続人の死亡により生命保険金を受け取る際には、受取人の印鑑証明書のみが必要になります。

死亡保険金は、受取人固有の財産となるため、遺産分割協議書や遺言書の添付は不要です。

2-5.自動車の相続

被相続人が所有していた自動車は、運輸支局で名義変更手続きをします。

遺産分割協議により自動車を相続

遺産分割協議により被相続人の自動車を相続した場合には、遺産分割協議書(または遺産分割協議書成立申込書)とともに、自動車を取得した相続人のみの印鑑証明書が必要になります。

遺産分割協議によらず自動車を相続

複数の相続人が共有して相続する場合には、相続人全員の印鑑証明書が必要になります。また、相続人が1人のみの場合には、申請者となる当該相続人の印鑑証明書を添付します。

2-6.相続手続きにおける遺産分割協議書と印鑑証明書の関係

ここまでご説明した通り、遺産分割協議により遺産を相続した場合には、生命保険金の受け取りと自動車の相続を除き、相続手続きには遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要となります。

遺産分割協議による相続で必要になる印鑑証明書

遺産分割協議による相続で必要になる印鑑証明書

以下から、印鑑証明書の有効期限や取得方法、遺産分割協議書への添付の仕方を見ていきましょう。

自分で相続登記をする際の必要書類一覧です。法務局で相続登記申請するときに、どんな書類を提出しなければならないのか、ま…[続きを読む]
被相続人の死亡で銀行口座が凍結されると、葬儀費用などで資金が必要なとき困ってしまいます。この記事では、法改正で可能に…[続きを読む]
自動車の相続手続きに義務はありません。しかし、放置すると様々なデメリットが生じます。自動車の名義変更手続きの方法や遺…[続きを読む]

3.印鑑証明書の有効期限

印鑑証明書の有効期限印鑑証明書自体には、有効期限が存在しません。しかし、上表からお分かり頂ける通り、金融機関の口座の相続手続きでは、添付する印鑑証明書に発行から3ヶ月以内や6か月以内と発行からの期間が定められている金融機関があります。事前にホームページや電話で確認しておくといいでしょう。

また、自動車や船舶の相続手続きでは、発行から3ヶ月以の印鑑証明書の添付が必要になります。

一方で、不動産の相続登記や相続税申告では、印鑑証明書に有効期限はありません。

提出する遺産分割協議書に使われている実印と同じ印鑑の印鑑証明書であれば、何年前に発行したものであっても有効です。

4.印鑑証明書の取得方法|どこで発行する?

印鑑証明書の2つの取得方法

4-1.【印鑑証明書の取得方法①】市区町村役場での取得

印鑑登録証(印鑑登録カード)、住民基本台帳カード、マイナンバーカードの3つのうち、どれか1つを持って、市区町村役場の窓口もしくは自動交付機で取得できます。

市町村役場での取得には次のいずれかを持参

  • 印鑑登録証(印鑑登録カード)
  • 住民基本台帳カード
  • マイナンバーカード

念のため、本人確認書類も持参したほうがよいでしょう。

その他、追加の書類提出を求める自治体も中にはあるかもしれません、予め自治体に確認を取っておくのが確実です。
印鑑証明書発行の手数料は自治体によっても異なりますが、個人の印鑑証明書の場合、一通300円程度が一般的です。

4-2.【印鑑証明書の取得方法②】コンビニでの取得

印鑑証明書の発行に対応しているコンビニエンスストアであれば、住民基本台帳カード、もしくはマイナンバーカードを持っていけば取得することができます。

コンビニエンスストアでの取得には次のいずれかを持参

  • 住民基本台帳カード
  • マイナンバーカード

5.遺産分割協議書と印鑑証明書についてのよくある質問(FAQ)

相続手続きに印鑑証明書は何通必要?

相続財産の種類や価額にもよりますが、印鑑証明書は最低2通必要で、できれば3通あるとよいでしょう。

相続登記・金融機関の名義変更では、コピーを原本と一緒に提出すれば原本は返却してもらえますが、相続税申告では原本を返却してもらえないためです。

相続手続きの種類 印鑑証明書 有効期限 還付制度
相続人全員 申請者のみ
預貯金・上場株式 機関ごとに異なる
相続登記(不動産) 期限なし
相続税申告 ×
生命保険金 機関ごとに異なる
自動車 発行から3ヶ月以内

原本を返却してもらうためには、印鑑証明書のコピーをとり、そのコピーに「原本に相違ありません」と記載して署名押印し、両方を提出すれば、原本は返却してもらうことができます。そのため、2通以上の原本が必要になるのです。

印鑑証明書がない場合はどうすればいい?

相続人がそもそも印鑑登録をしていなかったり、海外居住者であったりして、印鑑証明書が用意できず困っている方もいるかもしれません。

それぞれの方向けに、どう対処すればいいか補足します。

印鑑登録をしていない

印鑑登録をしておらず、そこから始めなければならない…という方は、ぜひ「遺産分割・相続手続きで必要な印鑑(実印)とは?」をお読みください。

絶対に印鑑登録する必要があるのか、実印が必要になるタイミングや、印鑑登録の手順・必要書類・費用などについて解説しています。

海外居住者で印鑑証明書がない

相続人が海外に居住する場合にも、印鑑証明のような制度が存在しないので、弊害が生じます。
この場合の対処法は、日本に住民票があるかないかによって異なります。

  • 日本に住民票がある場合は、弁護士に依頼して印鑑証明を代理取得してもらう
  • 日本に住民票がない場合は、海外の日本領事館で印鑑登録証明書を発行してもらうか、遺産分割協議書を郵送してもらい、それをもって領事館で「サイン証明書」を発行してもらう

国際相続に関しては、「国際相続の基本|被相続人が外国人のときや遺産が海外にあるときは?」の記事で詳しく解説しています。

まとめ

遺産分割協議による相続手続きをする際には、遺産分割協議書と印鑑証明書の添付は必須です。

ご自身の相続では印鑑証明書が合計何通必要になりそうか、またいつ発行のものが必要になりそうかなど、遺産の内容を身ながら予め考えておき、その分の印鑑証明書を発行しておくのがよいでしょう。

もし、印鑑登録がまだ済んでいない相続人の方がいたら、速やかに手続きをすることをおすすめします。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

この記事が役に立ったらシェアしてください!
監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
プロフィール この監修者の記事一覧