遺産分割協議書とは?何に使うのか?活用方法を解説
遺産分割協議書がないと、主な相続手続きはできないままとなります。この記事では「遺産分割協議書とは何か、何のために必要…[続きを読む]
遺産分割協議後は、その結果を「遺産分割協議書」にまとめます。
しかし、うまくまとまったように思えた協議も、一部の相続人からの不満により、協議書への押印を拒否されることがあります。説得しても、ことごとく無視されて困っている方がいるかもしれません。
そこで、遺産分割協議書への押印に応じないということは可能なのか、拒否されたらどうすればよいのかについて解説します。また、遺産分割協議に納得がいかない相続人向けに、遺産分割協議書に押印すべきかどうかについてもご説明します。
目次
遺産分割協議書への押印は、拒否できます。
まず、遺産分割協議書が何たるかというところから確認しましょう。
遺産分割協議書は、遺産分割協議の結果合意した内容をまとめた書類のことです。
作成が法律で義務付けられているわけではないものの、遺産の名義変更をするときなど、あらゆる場面で必要になるため、実質、必須の書類といっても過言ではありません。
遺産分割協議書を完成するには、相続人全員の署名と実印の押印が必要になります。相続手続きでは、遺産分割協議書と印鑑証明書を必要書類として提出することが多いからです。
もし、内容に不満がある場合は、各相続人は署名押印を拒否しても構いません。
署名押印を拒否することが、遺産分割に納得していませんという意思表示になるのです。
一方で、押印を拒否された他の相続人は、困ってしまいます。そこで、次項では、押印を拒否された場合の対処法についてご説明します。
押印を拒否したい方は、「3.【押印したくない人向け】一度押印すると覆すのは困難」にお進みください。
一部の相続人が協議書に印鑑を押してくれず、遺産分割が完了しない時はどうすればよいでしょうか。
たとえ相続人全員が協議に参加していても、遺産分割に同意しない相続人がいる限り、相続手続きに移行できません。
当然ですが、だからといって他の相続人が代筆するなどして遺産分割協議書を偽造すると私文書偽造罪に該当する可能性があり、遺産分割協議が無効になるおそれがあります。以下のような対応策をとりましょう。
適切な対処法は、弁護士などの専門家に依頼することです。
押印を拒否された相続人たちと、拒否している相続人の双方に弁護士を立てるのが望ましいでしょう。
遺産分割の当事者同士では、どうしても感情的になってお互いの主張をぶつけ合うことになってしまい、なかなか埒があきません。
しかし、弁護士に仲介してもらうことで、「どの点が不服で、判子を押してくれないのか」「双方の希望は、法律上、現実的かどうか」「妥協点はどこに見出せるか」について、法的知識から冷静に主張し合うことができます。
遺産分割協議の最後になって押印を拒否されてしまい、話が振り出しに戻ることに辟易としている方も多いでしょう。
最終手段だと思って、弁護士にご相談だけでもされてみることをおすすめします。
協議で解決しなければ、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになります。
いきなり審判を申し立てることも不可能でありませんが、通常、まずは調停から行われます。
調停とは、裁判官1人と弁護士や会計士など民間から選ばれた2人以上の調停委員で構成される、調停委員会の仲介による話し合いのことです。
遺産分割協議の交渉から弁護士に依頼していれば、調停に移行しても追加料金が発生しない事務所もあります。依頼する際に、確認しておくといいでしょう。
協議の内容に不満が残っている相続人は、むしろ、署名押印してはいけません。
協議書への署名押印に応じてしまった相続人の中には、「言われるがまま遺産分割協議書に捺印してしまったが、やはり取り消したい」という方もいます。
しかし、一度署名押印してしまうと、後から遺産分割のやり直しを求めることは、残念ながら難しいのです。
もし、「とりあえず押すだけ押して」などと言って求められたら、「一旦考えさせてほしい」と言って、その場は持ち帰るようにしましょう。
遺産分割協議書ではなく、「遺産分割協議証明書」が送られてくるケースもありますが、形は違えど取り扱いは同じです。
内容に同意できない場合は、署名押印は拒否すべきです。
ただし、相続には期限がある手続きもあり、いつまでも押印の拒否だけをしていればいいわけではありません。
相続財産の内容を教えてもらえずに、「これだけの遺産を渡すから遺産分割協議書に署名押印して寄こせ」と一方的に他の相続人から言われてしまうこともあるようです。
このような場合にも、ぜひ弁護士に相談してください。弁護士は、依頼人の利益を最優先に、被相続人の遺産内容明らかにして、正当な相続分を獲得するために全力を尽くします。
もし相続放棄が必要な場合には、熟慮期間の伸長が可能なケースもあります。諦めずに、弁護士に相談することをお勧めします。
遺産相続の手続きの中には期限があるものも多く、あまりのんびりはしていられません。
特に気をつけたいのが、10ヶ月の相続税申告です。
相続税の申告期限および納付期限は、相続開始を知った日(通常は、被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月以内とされています。
期限を過ぎると加算税や延滞税が課されてしまいます。
その他にも、申告期限を過ぎると、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の相続税評価額減などの特例や控除が受けられなくなってしまいます。
このような事態を防ぐため、遺産分割協議がなかなかまとまらないときは、押印を拒否している相続人に対しても納税遅滞の危険性について説明し、一旦、仮の状態で申告・納付を済ませてしまいましょう。
申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、法定相続分で計算した相続税を納税すると、その後3年以内に遺産分割を終えることで、後からでも特例を適用できるようになります。
遺産分割協議書は、押印するか、押印を拒否するか、各相続人に委ねられています。
どの相続人も、協議内容に同意できないときは、無理に押印に応じる必要はありません。
しかし、せっかく協議を重ねてきたのに、一部の相続人が断固として押印を拒否していると、他の相続人が困ってしまいます。
本記事でも触れたように、相続手続きが遅滞してしまうと、ペナルティの税金が発生したり税法上の特例が受けられなくなったりと、相続人全員に不利益が生じます。
遺産分割協議が難航しているときは、必要に応じて専門家の力を借り、納得できない相続人を取り残さいように、建設的な話し合いを進めていきましょう。