相続人が行方不明のときでも遺産分割できる!3つの方法
遺産分割は、相続人全員の合意が必要です。では、共同相続人の誰かが行方不明の場合は遺産分割できないのでしょうか?本記事…[続きを読む]
遺産分割協議は、原則としてやり直すことができません。
もっとも、遺産分割協議には、やり直すことができるケースや、取り消すことができるケース、行った遺産分割協議が無効であることからやりなおさなければならないケースがあります。
この記事では、遺産分割をやり直せる場合や、やり直す場合の注意点などについて解説します。
目次
遺産分割協議は、相続人全員が合意すればやり直すことができます。
遺産分割協議が終わり、遺産分割協議書を作成した後でも、相続人全員の合意があれば遺産分割協議をやり直すことは可能です。
ただし、この場合には後述する通り、注意すべきポイントがあります。
相続人全員の合意がなくても、遺産分割協議を取り消すことができるケースもあります。重大な勘違いや、詐欺・脅迫などにより遺産分割協議に合意してしまったケースです。遺産隠しや遺産分割協議書の偽造があった場合なども同様です。
こうしたケースでは、重大な勘違いをした相続人や、詐欺・脅迫にあった相続人が、遺産分割協議の取り消しにより遺産分割協議を再度行うよう主張することができます。
ただし、重大な勘違いや詐欺に気づいたときや、脅迫から脱することができてから5年、遺産分割協議から20年経過すると取り消しを主張することができなくなってしまいます。
こうしたケースでは時効もあるため、なるべく早く弁護士に相談すべきでしょう。
次のケースでは、せっかく行った遺産分割協議が無効となり成立していないため、遺産分割協議をやり直さなければなりません。
遺産分割協議は、相続人全員で行わなければなりません。1人でも参加する相続人が欠ければ、遺産分割協議は無効となってしまうため、遺産分割協議をもう一度行う必要があります。
行方不明の相続人がいる場合には、不在者財産管理人の選任を申し立てるなど、適切に対処したうえで、遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議後に新たな相続人が現れるのは、次のようなケースが考えられます。
「死後認知」があった場合には、遺産分割協議を再度行う必要はななく、死後認知された相続人に相続分相当の金銭賠償を行えば足ります。
しかし、その他の3つのケースでは、遺産分割協議が無効になってしまうため、もう一度遺産分割協議を行わなければなりません。
遺産分割協議も法律行為であり、参加するためには意思能力が必要となります。昨今は、高齢化によりお年を召した相続人もいらっしゃいます。認知症などにより意思能力がない相続人が遺産分割協議に参加すると、その相続人の意思表示が無効になるだけでなく、遺産分割協議自体も無効になってしまいます。
相続人に意思能力が認められない場合には、成年後見制度などを利用して、適切に対処してから遺産分割協議を行わなければなりません。
片親がお亡くなりになり、その配偶者と子が共同相続人になることは多いでしょう。こうした場合に、子が未成年者の場合には、親と子が同じ相続人という立場になり利益が相反するため、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てなければなりません。
親が法定代理人として遺産分割協議に参加すると、遺産分割協議が無効になってしまい、再度遺産分割協議を行わなければなりません。
これまで遺産分割協議のやり直しについて解説してきましたが、実は遺産分割調停と遺産分割審判については、不満があってもやり直しはできません。
調停では不満があれば調停不成立となり、自動的に審判手続へ移行します。
また、審判に不満があるときは、即時抗告という手続がありますが、申し立ての時間制限がありますし、最初からやり直せるわけではありません。
遺産分割協議を取り消した場合には、遺産分割協議は最初から無かったことになります。遺産分割協議が無効の場合には、遺産分割協議は成立していないことになります。
しかし、遺産分割協議を相続人全員の合意でやり直す場合には、次のことに注意が必要です。
一度遺産分割が終了し、その遺産分割協議を基に相続人が遺産の権利を第三者に移転させた場合には、第三者の権利が保護されることになります。
例えば、遺産分割で不動産を取得した相続人が、その不動産を売却するケースです。このとき、遺産分割協議のやり直しに相続人全員が合意したとしても、第三者が一旦取得した不動産の所有権は第三者に移転したままです。
遺産分割協議のやり直しに相続人全員が合意できたとしても、第三者に対して遺産を戻せとは言えません。
先に少し述べましたが、合意で遺産分割協議をやり直すと贈与税や所得税がかかってしまうことがあります。最初の遺産分割協議で遺産分割すると、それぞれの相続人が協議に基づいて相続財産を取得することになります。そのため、やり直しの遺産分割は、相続ではなく相続人同士の贈与や譲渡とされ、贈与税・所得税がかかってしまうのです。
詳しくは下記ページで解説しています。
既に最初の遺産分割協議で相続登記を済ませてしまっている場合には、一度先の登記を抹消し、新たな遺産分割協議に基づいて登記をする必要があり、不動産取得税や登録免許税も余分に発生し発生ます。
もっとも、相続発生後にまだ登記をしていない場合には、そのまま新しい協議に基づいた相続登記をすることができます。
遺産分割協議後に新たに遺産が見つかったときはどうすればいいのでしょうか。
一般的には、新たな遺産についてのみ遺産分割協議をすることになりますが、もちろん、相続人全員の合意があれば、遺産全体について改めて遺産分割協議をすることもできます。
しかし、せっかく終わった遺産分割協議にまた参加しなければならないのは負担だと考える相続人も多いでしょう。
そのため、当初の遺産分割協議で、新たに遺産が見つかったときにどのように分けるかを例えば次のように決めておくと、新たな遺産が見つかったときも手間が省けます。
遺産分割協議をやり直す際には、遺産分割協議の取り消しでご説明した時効以外に、期間制限はありません。
したがって、遺産分割協議のやり直しに相続人全員の合意が得られれば、いつでも遺産分割協議をやり直すことができることになります。
ただし、相続放棄は3ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内と期限が定められている相続手続きがあるため、遺産分割協議のやり直しはできるだけ早急にすべきです。
これまで解説してきたように、一定の場合には遺産分割をやり直すことができます。
ただ、相続人全員の合意以外でのやり直し(取消や無効)は条件が厳しく、やり直しができるかどうかは難しい法律判断になります。
また、他の相続人が再度の遺産分割協議に応じなければ、遺産分割調停や遺産分割無効確認訴訟などの手続きに訴えるほかありません。
もし遺産分割協議に不満などがあり、やり直したいと思う場合には、ぜひ一度弁護士に相談してアドバイスをもらうことをおすすめします。