遺留分減殺請求を拒否された場合どうすればいい?

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今回は、遺留分減殺請求を拒否された場合について解説します。

1.遺留分減殺請求を拒否できるのか?

遺留分減殺請求は、法的に拒否できません
というのも、遺留分減殺請求権は、意思表示をすれば法律上当然に減殺の効果を発生するものだからです。(法律的には、この種の権利のことを「形成権」と言います)

そのため、仮に遺留分が侵害されている場合、相手に対し「遺留分減殺請求権を行使する」との意思表示をすれば十分で、必ずしも裁判などで請求する必要はありません。

2.遺留分減殺請求ができない場合

とはいえ、請求者に遺留分がないなどの事情で遺留分減殺請求が無効であるという事態は想定できます。そこで、以下のような検討をしてみます。

請求者にそもそも遺留分がない場合

請求者に遺留分がない場合には、遺留分減殺請求の通知をしたところで何の効果も生じません。このような遺留分がない者からの請求は無効です。

ところで、遺留分が認められない者としては以下の類型に該当する者が認められます。

請求者が被相続人の兄弟姉妹である場合

民法1028条は「兄弟姉妹以外の相続人」は遺留分を有する旨規定しておりますので、請求人が被相続人の兄弟姉妹である場合には、遺留分は認められません。

請求者が被相続人との関係で相続欠格者である場合

民法891条は、以下の行為をした相続人を相続欠格事由に該当する者として相続人から排除しています。

すなわち、被相続人や相続人を殺害し、刑に処された場合、被相続人を騙して又は脅して遺言をさせ又は遺言の撤回させた場合、遺言を偽造、変造又は隠匿した場合には、相続人から当然に排除されます。信義誠実の原則や相続人間の公平の見地から当然の規定です。

請求者が被相続人から相続廃除された場合

民法892条は、請求者が遺留分を有する相続人である場合に、被相続人に対し虐待、重大な侮辱を加えたような場合には、被相続人は請求者を相続人から廃除するように家庭裁判所に申し立てることができると規定しております。

被相続人がこの廃除の申立を行い、家庭裁判所の審判があった場合には、請求者は相続人でなくなります。

請求者が被相続人の相続に関し相続放棄の申立てを行い、受理された場合

民法939条は、相続の放棄をした者は、その相続に関してはじめから相続人とならなかったものとみなすと規定しているため、請求者が相続放棄をした場合には、その相続については相続に関する権利を相続開始時にさかのぼって喪失するため、遺留分も認められません。

遺留分減殺請求権が時効消滅した場合

遺留分減殺請求とは永遠ではありません。有効期間があります。それが遺留分の時効です。民法1042条によると、遺留分減殺請求できる者(上記2-1の各項に該当しない者)が相続の開始かつ減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ってから1年又は相続開始の時から10年を経過したときのいずれか早い期間が経過したときは、遺留分現差請求は消滅する旨規定しています。

以上のとおり請求者が、遺留分減殺請求をおこなった時点で、上記の期間が経過していたときは、遺留分減殺請求はできません。

では、遺産分割の申し入れのみを行って遺留分減殺請求を明示的に行わなかった場合に、遺留分減殺請求権の時効が中断するのでしょうか。

判例において、遺産分割と遺留分減殺請求は、目的及び要件が異なっていることから、遺産分割の申し入れがなされると遺留分減殺請求がなされたと評価することはできないとしつつ、遺産全部の遺贈がされた場合に、遺産分割の協議を申し入れることは、当該遺贈の効力を争っていることと同視できるので、この場合には遺産分割の申し入れがなされたことにより遺留分減殺請求がなされたものとみなすことができ、時効は中断するとされています。

しかしながら、このような行使方法は更なる紛争を惹起するだけですので、遺留分減殺請求は遺産分割の申し入れとは別個に行うべきです

3.相手方が何もしない場合の対処法

再度の請求をするのは無駄

この場合、直ぐにもう一度請求をするなどと言い出す人もいますが、専門家の目からみると、法的には全くの無駄です。

というのは、上記のとおり当初の遺留分減殺請求により当然に遺留分減殺の効果は生じています。また、時効中断効についても当初の請求から6ヶ月間は暫定的な時効中断効は生じるものの(民法153条)、再度の訴訟提起等以外の請求にはそのような効果は生じません。したがって法的には全く無駄な行為を行っているに過ぎないのです。

対応1:調停を申し立てる。

それでは、どうすれば遺留分減殺請求を認めさせることができるのでしょうか。

まずは、遺留分にかかる紛争が生じていることを理由に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に調停の申立てを行うことになります。

調停費用は1600円で、その他の申立書を相手方に送達させるための郵便切手の予納額が必要です。その他に戸籍謄本等の資料が必要です。詳しくは管轄の裁判所にご連絡ください。

調停は、基本的には話し合いです。当事者の間に調停委員が入って、なんとか話し合いで紛争を解決しようとする手続きです。

なお、ご注意いただきたい点があります。遺留分減殺請求を行ったことを証明し、遺留分減殺請求権の時効による消滅を避けるためには、調停の申立書に「遺留分の減殺請求を行う」旨の記載をするのではなく、別途、申立外で遺留分減殺請求の意思表示を内容証明郵便等で行ってから、申立書にその旨を記載すべきであります。理由は、調停の申立書は必ず、相手方に送達されるとは限らず(家事事件手続法67条1項)、その結果、送達できないまま、上記2-2の遺留分減殺請求の時効期間を経過してしまうおそれがあるからです。

旧法下では、調停の申立書は相手方に送達される取り扱いがなされていなかったのと比べると現行法の下では改善されましたが、申立書が送達されない場合がある以上は、確実を記して、申立外で通知しておくべきです

その後、調停が成立すると、調停条項が形成されます。調停条項に違反した場合、強制執行がなされることになります。

ところで、例えば、被相続人所有の不動産の遺贈の減殺を遺留分減殺請求として行ったとしましょう。実務上、その不動産が請求者の居宅等の事情がないかぎり、価額弁償(現物を返還することに代えて、減殺を受けるべき限度で、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れる)(民法1041条参照)で終わるケースがほとんどです。

調停条項の例は以下のとおりです。

【例1】

第1条 相手方は、申立人に対し、申立人の遺留分に対する価額弁償として、金○○円の支払義務あることを確認する。

 

第2条 相手方は、申立人に対し、平成○年○月○日限り第1条の金員を申立人指定の銀行口座に指定する方法により支払う。なお振込手数料は相手方の負担とする。

 

第3条 申立人は、被相続人○と相手方間の遺贈の効果を確認し、別紙物件目録記載の不動産が相手方の所有であることを確認する。

 

第4条 当事者双方はその余の請求を互いに放棄する。

 

第5条 当事者双方は、被相続人の遺産に関し、本条項に掲げる以外に何らの債権債務がないことを確認する。

調停が成立しなかった場合、地方裁判所に遺留分減殺請求に基づく遺産の引渡請求訴訟等を提訴することになります。

対応2:訴訟を提起

最後に訴訟です。調停までは法律家の助力なしでできたとしても、訴訟に至るような展開であれば、弁護士に依頼すべきです。

遺留分減殺請求訴訟の大半は価額弁償の和解で終了していることを考慮したとしても、遺留分の計算によっては、その前提となる遺産の計算を確定させるために遺産範囲の確認訴訟の提起を裁判所から求められることもあり、到底、法律知識のない人が踏み込む場ではありません。したがって、この段階に至れば、弁護士に依頼しましょう。

4.まとめ

以上のとおり遺留分減殺請求を行ったところ、相手方が拒否するというケースは、遺留分減殺請求の効果自体は生じているものの、相手方がこれに取り合わなかったケースがほとんどであると認められます。このような場合には、速やかに裁判所が関与する手続きを行うことを考えるべきです。それ以外の例えば交渉を継続するなどということは時間の無駄になるだけです。

繰り返しますが、速やかに裁判所が関与する手続きを行うことを強くお勧めします。なお、その場合には、訴訟手続などの専門的な法律知識が必要になりますので、弁護士の助力を受けることを強くお勧めします。

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