遺留分侵害額請求の手続き徹底解説!!調停から裁判まで
相手に遺留分侵害額を請求しても応じない場合は、調停や訴訟で支払いを求めることになります。「遺留分侵害額の請求調停」、…[続きを読む]
「遺留分侵害額請求の内容証明郵便を送ったけど、受け取り拒否された」といった話を聞くことがあります。
せっかく遺留分を請求をしても、拒否されてしまう事例があるのです。
では、遺留分侵害額請求は無視してもいいものなのでしょうか?遺留分侵害額請求を拒否された場合、どうすればいいのでしょうか?
この記事では、遺留分侵害額請求を拒否されたり無視されたりした場合の対応について解説します。
目次
そもそも、遺留分侵害額請求権は法律上認められた権利であることから(民法1042条)、遺留分侵害額請求を拒否することはできません。遺留分として定められた額を正当に請求された場合には、拒否という選択肢自体が存在しないのです。
そのため、遺留分が侵害されている場合は、裁判などで請求する必要はありません。
請求した証拠を残すために、内容証明などの書面で請求することが一般的です。
法律上拒否できないとは言っても、実際に遺留分を取り戻せなければ意味がありません。
では、実際に請求しても相手が応じてくれない場合には、どのような対処法があるのでしょうか?
内容証明郵便などによる遺留分侵害額請求に応じてくれない場合は、まず家庭裁判所に調停の申立てを行うことになります。
調停では、調停委員が間に入り話し合いを行います。この話し合いがまとまると、調停調書が作成され、これに従わない場合は強制執行もできるため、遺留分相当の金銭を取り戻すことができます。
遺留分侵害額請求の調停以降の手続については、こちらの記事で詳しく解説しています。
調停がまとまらなければ、訴訟をすることになります。
原則として、調停を経ずに訴訟をすることはできませんが(家事事件手続法244条、257条1項)、話し合いが出来ないほどこじれているようなケースでは、弁護士に相談して、調停を経ずに訴訟ができることもあります。
訴訟で遺留分を認める確定判決を得られれば、相手が支払いを拒否しても強制執行することが可能になります。
ただし、訴訟はまさに最終手段で、大変な労力と時間がかかる上、個人で行うのはとても難しいものです。訴訟までしなければならないような場合には、弁護士に相談しましょう。
ここまで、遺留分侵害額請求を拒否された場合の対処法などを見てきました。
しかし、遺留分侵害額請求権が時効によって消滅していた場合や、遺留分権利者ではなかったといった場合には、そもそもそも遺留分を請求することができません。
そこで、これらに当てはまらないかを事前に確認しておく必要があります。
遺留分には、請求できる期間があります。それが「時効」です。
次の2つのいずれかの期間が経過すると、遺留分侵害額請求権は時効によって消滅してしまいます(民法1048条)。
つまり、これら2つの時効のうちで、どちらかが経過していると、遺留分侵害額請求をしても正当に断ることができるのです。
もっとも、民法には「時効の更新(中断)」というものもあります。
時効は意外と難しい期間の計算がありますので、不安なときはぜひ一度弁護士にご相談ください。
請求者に遺留分がない場合には、遺留分侵害額請求をしてももちろん何の効果も生じません。
遺留分が認められない者としては以下のようなパターンがあります。
請求者が被相続人の兄弟姉妹である場合には、遺留分は認められません。
相続放棄をすると、はじめから相続人にならなかったものとされます。そのため、相続人が相続放棄をした場合は、もちろん遺留分も請求できません。
民法891条では、被相続人の殺害や遺言書の偽造などを企てて刑に処せられた相続人などを「相続欠格」として相続人から排除しており、5つのケースに分けて相続欠格者を定めています。
相続欠格に該当すると、当然遺留分の請求もできません。
被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたり、著しい非行があるような相続人については、被相続人が相続人から廃除するよう申し立てをすることができます(民法892条)。
この申し立てで廃除されると、相続人ではなくなります。もちろん、遺留分もありません。
寄与分を理由に、遺留分侵害額請求を拒否することはできません。
遺留分侵害額請求の対象は、遺贈と贈与です。寄与分は含まれていません。
また、寄与分を定める訴訟は家庭裁判所が管轄となり、遺留分侵害額請求の事案を管轄するのは地方裁判所です。この管轄の違いから、遺留分侵害額請求訴訟では、寄与分を抗弁とすることはできないと解されています(※1)。
寄与分を定める際には、遺留分を考慮しなければならないとする裁判例(※2)もあります。
寄与分を理由に支払いを拒否され、話し合いが上手くいかないのであれば、弁護士に相談してみましょう。
※東京高等裁判所 平成3年7月30日判決
※ 東京高等裁判所平成3年12月24日決定
遺留分侵害額請求をすると拒否されなくても、争いになる可能性は大きくなります。
遺留分の額については、前提となる相続財産の評価額を含めて合意に至るのが難しいポイントではあります。さらに、当事者同士では感情的になって交渉もままならない可能性が高くなります。
しかし、弁護士が介入すると、法律の専門家であることから、相続財産の評価から遺留分まで正確に算出し、冷静に交渉することができます。
前述した「寄与分を理由にした拒否」など、法的根拠を示しながら説明すると、納得してもらえることも多いでしょう。
交渉が決裂して、ご自分一人では太刀打ちするのが難しい調停や訴訟になったとしても、弁護士に依頼しておけば、安心です。
遺留分侵害額請求に対する弁護士費用には、内容証明郵便を作成するための手数料、事案の着手にかかる着手金、事件終了後に支払う報酬金などがあります。
着手金、報酬金は、遺留分侵害額請求の額に応じて異なります。
請求に相手が応じず、調停・訴訟に発展した場合には、さらに、請求額に応じて弁護士報酬が発生します。
遺留分侵害額請求を依頼した場合の、弁護士費用相場の詳細ついては、「遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリットと弁護士費用相場」をぜひご一読ください。
遺留分侵害額請求を拒否されたときの対処法や、遺留分侵害額請求権の時効などについて見てきました。
基本的には、自分が相続人でない場合は少数で、相手がただ無視したり拒否したりしていることが多いでしょう。
そのため、内容証明などで遺留分侵害額請求をしても相手方が応じてくれない場合には、まずは弁護士に相談し、調停など今後の方針について教えてもらいましょう。
調停の手続やサポートはもちろん、時効の判断なども行ってくれますので、不安も解消され、とても心強いです。