遺留分侵害額請求の手続き徹底解説!!調停から裁判まで
相手に遺留分侵害額を請求しても応じない場合は、調停や訴訟で支払いを求めることになります。「遺留分侵害額の請求調停」、…[続きを読む]
「遺留分を侵害されたから請求したいけれど、弁護士に依頼すると高額な費用がかかるんじゃ…。」そんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、遺留分侵害額請求は弁護士に依頼したほうがいい理由と、依頼した際に発生する一般的な費用相場や、遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリットについて解説いたします。
相手方が遺留分の請求をすんなり受け入れてくれるとは限りません。請求に応じてくれない場合には、交渉や調停、裁判へとステップは進み、弁護士費用も、ステップごとに追加されます(追加されない事務所もあります)。
遺留分侵害額請求の方法について、どんなステップがあるのか簡単にご紹介します。
遺留分侵害額請求は、最初のステップとして「遺贈や贈与によって自分の遺留分が侵害されており、侵害額に相当する金銭を返還してほしい」という意思を相手に伝えることから始まります。
通知方法に法的な決まりはありませんが、一般的には、配達証明付き内容証明付き郵便を作成し、郵送します。
ご自分で文面を作成し郵送することもできますが、この段階から弁護士に依頼することもできます。
意思表示を行っても応じないときには、請求相手と直接交渉します。
交渉してもなお応じなければ、裁判所に双方が赴き、調停委員を仲介して話し合う「調停」が行われます。
調停が成立すると、お互いが合意した内容について法的効力が生じます。
調停でも折り合いがつかなければ、民事訴訟によって裁判所でお互いに主張をし、和解に至らなければ最後に判決が下されます。
しかし、訴訟は時間がかかるうえ、判決内容に不服がある場合にはさらに控訴して争うことになるため、最終手段といえます。
それでは、各ステップに沿って弁護士費用の相場についてご説明しましょう。
遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する際に発生する費用は、事案の内容や依頼する法律事務所などによっても異なるため、一概にいくらとはいえません。
本記事では、一般的な相場についてご説明いたします。
最初に弁護士へ相談する際のカウンセリング料です。
相談料は30分5000円程度が相場です。
一般的に、相談は30分~1時間程度のことが多く、費用としては1時間1万円ほどでしょう。
また、「初回相談は無料」「初回30分は相談無料」など、初回無料相談を行っている法律事務所も多いので、ぜひ一度、お問い合わせいただくことをおすすめします。
遺留分請求の意非表示は、書類作成と送付という比較的単純な業務になるため、相場は1万円~2万円程度といわれています。
ただし、日弁連の旧報酬基準では、内容証明付き郵便の作成は3万円~5万円となっており、その程度の金額は覚悟しておおいたほうがいいでしょう(※)。
※日弁連の旧報酬基準:日本弁護士連合会は弁護士の報酬について一律の基準を設けていましたが、2004年に廃止しました。しかし、今でも旧報酬基準を参考に費用設定している法律事務所が多いのが実情です。
遺留分侵害額請求に、相手方がすんなり応じてくれれば、ここまでの費用だけで済ませることができます。しかし、交渉が必要になると、以下のような費用が必要になります。
着手金とは、弁護士が業務に着手したときにかかる費用です。
遺留分侵害額請求に成功しても失敗しても、結果の如何に関わらず必要な費用であり、依頼者に返還されることはありません。
10万円~30万円程度が相場ともいわれていますが、日弁連の旧報酬基準に準じて定めている事務所も多く、請求する遺留分の金額によっても上下します。
着手金を無料としている事務所もあります。
請求する遺留分の金額 | 着手金 |
---|---|
300万円以下 | 遺留分請求額×8.8%(※) |
300万円超~3000万円 | 遺留分請求額×5.5%+9.9万円 |
3000万円超~3億円 | 遺留分請求額×3.3%+75.9万円 |
3億円超~ | 遺留分請求額×2.2%+405.9万円 |
※最低10万円等、下限を設けている事務所もあり
調停に移行する際に、10万円~30万円の追加料金が発生する事務所もあります。
一方で、調停に移行しても、追加料金をとらない法律事務所も数多く存在します。
ただし、調停で何度も弁護士が出向くような場合には、日当がかかることもあります(2-4参照)。
遺留分の請求が訴訟となった場合には、10万円~30万円程度の追加料金が発生することが多くなります。
報酬金とは、弁護士が依頼内容に成功したとき、すなわち遺留分が無事に返還されたときにかかる費用です。
多くの場合、「遺留分侵害額請求によって得た利益の〇%+〇万円」と定められているので、「利益」である取得した遺留分の額に応じて変動します。
以下は、一般的な目安です(日弁連の旧報酬基準より)。
取得した遺留分の金額 | 報酬金 |
---|---|
300万円以下 | 取得した遺留分額×17.6%(※) |
300万円超~3,000万円 | 取得した遺留分額×11%+19.8万円 |
3,000万円超~3億円 | 取得した遺留分額×6.6%+151.8万円 |
3億円超~ | 取得した遺留分額×4.4%+811.8万円 |
※最低20万円等、下限を設けている事務所もあり
ここまでの費用以外に、雑費や日当などが別途かかる可能性があります。
日当は常にかかるものではなく、遠方や、事務所が所在する都道府県以外の裁判所に赴く場合のみとしている事務所も多くなっています。
以下は一例です。
最後に、今回の弁護士費用の相場を見て、「やっぱり自分でやろうかな…。」と思い始めた方に向けて、費用はかかっても、遺留分侵害額請求を弁護士に依頼したほうがいい理由について解説します。
遺留分は、相続の発生および自分の遺留分が侵害されていることを知ってから1年間、知らなくても10年間以内に請求しなければ、請求権が時効により消滅してしまいます(民法1048条)。
弁護士に依頼すると、内容証明付き郵便の送付による催告や裁判による請求で、効果的に時効の完成を防ぐことができます。
一方、ご自分でどうすべきか悩んだり、先延ばしにして時効が完成してしまうと、もう二度と請求することができなくなってしまいます。
1年というのはあっという間に過ぎてしまいます。時効が完成する前に、弁護士に迅速な解決を図ってもらったほうがよいでしょう。
ご自分が一体遺留分をいくら侵害されているのか、正確な金額を把握するのはとても難しいものです。現預金を除くと、遺留分計算の前提となる遺産の価額についても同様に、正確に把握することは難しいでしょう。
弁護士に依頼すると、交渉や調停・訴訟を有利に進めるために、相続人の確認や、遺言内容、遺産内容についてまず調査を行います。相続人が個人的に行う調査とは比べものになりません。
次に、遺留分の計算はとても複雑です。もし、実際に請求すべき金額よりも少なく請求してしまったら、不利益を被るのはご自分です。
正確な遺留分の把握をするためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
遺留分侵害額請求の相手方となるのは、多くの場合親族や近しい間柄の方となり、当事者だけの話し合いでは、法律の知識が乏しいこともあり解決できないことが多々あります。
また、直接相手方と交渉することは、大きな精神的苦痛や負担を伴います。
一方、弁護士にお願いすれば、交渉や手続きをご自分ですることなく完全に任せることで、時間や手間が省け、精神的負担もぐっと減少します。
交渉で埒が明かない場合には、舞台を裁判所に移し、調停や訴訟による解決を図ることになります。調停までは、ご自分で対応できないこともありませんが、もし、相手方に弁護士が付いていたら、こちら側が一気に不利になってしまいます。また、弁護士が付いていれば、調停委員などとの間に入ってくれることもできます。
一方、訴訟に進むと、弁護士に準備から対応まですべて任せることが可能になります。
遺留分侵害額請求を依頼する際の弁護士費用の相場をまとめると、次の通りとなります。
意思表示の代行費用 | 1万円~2万円程度 |
---|---|
相談料 | 1万円~2万円程度 相談料無料の事務所もあり |
着手金 | 10万円~30万円程度 請求額に応じて設定している事務所も多い |
着手金 | 10万円~30万円程度 請求額に応じて設定している事務所も多い |
成功報酬 | 取得した遺留分額以下300万円:取得した遺留分額×176% |
取得した遺留分額300万円超~3000万円:取得した遺留分額×11%+198万円 | |
取得した遺留分額3000万円~3億円:取得した遺留分額×6.6%+1518万円 | |
取得した遺留分額3億円超:取得した遺留分額×4.4%+8118万円 | |
調停になった場合 | 追加10万円~30万円程度 発生しない事務所あり |
裁判になった場合 | 追加10万円~30万円程度 発生しない事務所あり |
裁判になった場合 | 追加10万円~30万円程度 発生しない事務所あり |
その他の費用 | 日当・出張費・事務手数料・実費(印紙代・切手代など) |
遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリットを次に挙げてみましょう。
一方で最大のデメリットは、弁護士費用です。費用対効果を考えると、遺留分侵害額請求は、弁護士に任せたほうがお得なのではないでしょうか。
遺留分侵害額請求の弁護士費用は、事務所によってピンからキリまでありますが、相場をつかんでいただくことはできたでしょうか。
実際に依頼するかどうかは、弁護士に詳しい見積もりをもらってから決めることができます。
まずは一度、お気軽に相談してみることをおすすめいたします。
争いを長期化せず、精神的負担を軽減するためにも、弁護士の力を頼ってみてはいかがでしょうか。