遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリットと弁護士費用相場

「遺言によって遺留分を侵害されたから請求したいけれど、自分で行うのは不安。かといって、弁護士に依頼すると高額な費用がかかるんじゃ…。」そんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、相続にはつきものであるトラブルの中でも、遺留分侵害額請求を弁護士に依頼したほうがいい理由と、依頼した場合の一般的な費用相場について解説いたします。
遺留分侵害額請求は、2019年6月まで「遺留分減殺請求」という名称でした。
弁護士費用や必要な手続きは基本的に同じです。
目次
1.遺留分侵害額請求の方法
相手方が遺留分の請求をすんなり受け入れてくれるとは限りません。請求に応じてくれない場合には、交渉や調停、裁判へとステップは進み、弁護士費用は、ステップごとに異なります。
そこで、遺留分侵害額請求の方法について、どんなステップがあるか簡単にご紹介します。
①遺留分侵害額請求の意思表示
通常、最初のステップとして「遺贈や贈与によって自分の遺留分が侵害されており、侵害額に相当する金銭を返還してほしい」という意思を相手に伝えることから始めます。
通知の方法に法的な決まりはありませんが、一般的には、配達証明付き内容証明付き郵便を作成し、郵送します。
ご自分で文面を作成し郵送することもできますが、この段階から弁護士に依頼することもできます。
②交渉・調停
意思表示を行っても応じないときには、請求相手と直接交渉します。交渉してもなお応じなければ、裁判所に双方が赴き、調停委員を仲介して話し合う「調停」が行われます。
調停が成立すると、お互いが合意した内容について法的効力が生じます。
③訴訟(裁判)
調停でもどうしても折り合いがつかなければ、民事訴訟によって裁判所でお互いに主張をし、最後に判決がくだされます。
しかし、訴訟は時間がかかるうえ、判決内容に不服がある場合にはさらに控訴して争うことになるため、最終手段といえます。
2.遺留分侵害額請求の弁護士費用相場
それでは、各ステップに沿って弁護士費用の相場についてご説明しましょう。
遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する際に発生する費用は、事案の内容や依頼する法律事務所などによっても異なるため、一概にいくらとはいえません。
本記事では、一般的な相場についてご説明いたします。
2-1.相談・意思表示にかかる費用
相談料
最初に弁護士へ相談する際のカウンセリング料です。
相談料は30分5000円程度が相場です。
一般的に、相談には30分~1時間かかることが多く、費用としては1時間1万円くらいでしょう。
また、「初回相談は無料」「初回30分は相談無料」など、初回無料相談を行っている法律事務所も多いので、ぜひ一度、お問い合わせいただくことをおすすめします。
遺留分侵害額請求の意思表示の代行費用(代行してもらう場合)
遺留分請求の意非表示は、書類作成と送付という比較的単純な業務なので、相場は1万円~2万円程度といわれています。
ただし、日弁連の旧報酬基準では、内容証明付き郵便の作成は3万円~5万円となっており、その程度の金額は覚悟しておきましょう(※)。
※日弁連の旧報酬基準:日本弁護士連合会は弁護士の報酬について一律の基準を設けていましたが、2004年に廃止しました。しかし、今でも旧報酬基準を参考に費用設定している法律事務所が多いのが実情です。
遺留分侵害額請求に、相手方がすんなり応じてくれれば、ここまでの費用だけで済ませることができます。しかし、交渉が必要になると、以下のような費用が必要になります。
2-2.着手金
着手金とは、弁護士が業務に着手したときにかかる費用です。
したがって、着手金は、遺留分侵害額請求が成功するか失敗するか、遺留分をいくら受け取れるかの結果に関わらず必要な費用であり、依頼者に返還されることはありません。
10万円~30万円程度が相場ともいわれていますが、日弁連の旧報酬基準に準じて定めているケースも多く、請求する遺留分の金額によっても上下します。
請求する遺留分の金額 | 着手金 |
---|---|
~300万円 | 遺留分請求額×8%(※) |
300万円~3000万円 | 遺留分請求額×5%+9万円 |
3000万円~3億円 | 遺留分請求額×3%+69万円 |
3億円~ | 遺留分請求額×2%+369万円 |
※最低10万円等、下限を設けている事務所もあり
交渉の段階で依頼した事案が、調停に移行した場合
調停に移行しても、追加料金をとらない法律事務所も数多く存在します。
ただし、調停で何度も弁護士が出向くような場合には、日当がかかることもあります(2-4参照)。
交渉や調停の段階で依頼した事案が、訴訟(裁判)に移行した場合
遺留分の請求が訴訟となった場合には、10万円~程度の追加料金が発生することが多くなります。
2-3.報酬金(成功報酬)
報酬金とは、弁護士が依頼内容に成功したとき、すなわち遺留分が無事に返還されたときにかかる費用です。
多くの場合、「遺留分侵害額請求によって得た利益の〇%+〇万円」と定められているので、「利益」である取得した遺留分の額に応じて変動します。
以下は、一般的な目安です(日弁連の旧報酬基準より)。
請求する遺留分の金額 | 報酬金 |
---|---|
~300万円 | 取得した遺留分額×16%(※) |
300万円~3000万円 | 取得した遺留分額×10%+18万円 |
3000万円~3億円 | 取得した遺留分額×6%+138万円 |
3億円~ | 取得した遺留分額×4%+738万円 |
※最低20万円等、下限を設けている事務所もあり
2-4.その他の費用
ここまでの費用以外に、雑費や日当などが別途かかる可能性があります。
日当は常にかかるものではなく、遠方や、事務所が所在する都道府県以外の裁判所に赴く場合のみとしている事務所も多くなっています。
以下は一例です。
- 交通費、郵便代、裁判印紙代:実費
- 書類取り寄せ手数料:1通につき5000円など
- 日当(調停):3万円~5万円など
- 日当(訴訟):5千円~5万円など
3.遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリット
最後に、今回の弁護士費用の相場を見て、「やっぱり自分でやろうかな…。」と思い始めた方に向けて、費用はかかっても、遺留分侵害額請求を弁護士に依頼したほうがいい理由について解説します。
3-1.遺留分侵害額請求の時効完成前に対応可能
遺留分は、相続の発生および自分の遺留分が侵害されていることを知ってから1年間、知らなくても10年間以内に請求しなければ、請求権が時効により消滅してしまいます(民法1048条)。
弁護士に依頼すると、内容証明付き郵便の送付による催告や裁判による請求で、効果的に時効の完成を防ぐことができます。
一方、ご自分でどうすべきか悩んだり、先延ばしにして時効が完成してしまうと、もう二度と請求することができなくなってしまいます。
1年というのはあっという間に過ぎてしまいます。時効が完成する前に、弁護士に迅速な解決を図ってもらったほうがよいでしょう。
3-2.返還してもらうべき正確な遺留分が計算できる
ご自分が一体いくらの遺留分を侵害されているのか、正確な金額を把握することはとても難しいものです。遺留分計算の前提となる遺産の価額についても同様に、正確に把握することは難しいでしょう。
弁護士に依頼すると、交渉や調停・訴訟を有利に進めるために、相続人の確認や、遺言内容、遺産内容についてまず調査を行います。相続人が個人的に行う調査とは比べものになりません。
次に、遺留分の計算はとても複雑です。もし、実際に請求すべき金額よりも少なく請求してしまえば、損をするのはご自分です。
正確な遺留分の把握をするためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
3-3.時間や手間・精神的負担を最小限にできる
遺留分侵害額請求の相手方となるのは、多くの場合親族や近しい間柄の方となり、当事者だけの話し合いでは、法律の知識が乏しいこともあり解決できないことが多々あります。
また、直接相手方と交渉することは、大きな精神的苦痛や負担を伴います。
一方、弁護士にお願いすれば、交渉や手続きをご自分ですることなく完全に任せることで、時間や手間が省け、精神的負担もぐっと減少します。
3-4.法的手段で調停や訴訟になっても解決に繋げることができる
交渉で埒が明かない場合には、舞台を裁判所に移し、調停や訴訟による解決を図ることになります。調停までは、ご自分で対応できないこともありませんが、もし、相手方に弁護士が付いていたら、こちら側が一気に不利になってしまいます。また、弁護士が付いていれば、調停委員などとの間に入ってくれることもできます。
一方、訴訟に進むと、弁護士に準備から対応まですべて任せることが可能になります。
争いを長期化せず、精神的負担を軽減するためにも、弁護士の力を頼ってみてはいかがでしょうか。
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4.まとめ
遺留分侵害額請求の弁護士費用は、事務所によってピンからキリまでありますが、相場をつかんでいただけたでしょうか。
実際に依頼するかどうかは、弁護士に詳しい見積もりをもらってから決めることができます。
まずは一度、お気軽にご相談してみることをおすすめいたします。