遺産分割協議後の遺留分減殺請求はできる?できない?

★ お気に入りに追加

「周りに言われるままに遺産分割協議書に印鑑を押しちゃったので、遺留分減殺請求をしたい。」

遺産分割協議は、相続人全員が集まって行われることも多く、自分の兄や姉などに気後れして言いたいことが言えない状況もあるでしょう。また、配偶者の父親や母親、兄弟や姉妹に対しては、反対の意を表するのは難しいかもしれません。代襲相続をした場合などは、気圧されて賛成してしまうかもしれません。

このようにいったん合意に至ったが不満が残る遺産分割協議に対して、遺留分減殺請求権を行使することはできるのでしょうか?

1.遺産分割協議後の遺留分減殺請求はできない

結論から言えば、遺産分割協議後に遺留分減殺請求をすることはできません。

しかし、遺産分割協議を再度行うことは、条件がそろえば可能です。ただし、その場合にも注意が必要です。

遺産分割協議の後に遺留分減殺請求ができないのはなぜか、その理由を説明した後に、遺産分割協議のやり直しについて解説することにしましょう。

2.遺産分割協議後に遺留分減殺請求できない理由

遺産分割協議後に遺留分減殺請求ができない理由には、遺産分割協議、遺留分減殺請求この2つがまったく異なる役割を持つ制度だということが大きく関係しています。

2-1.遺留分制度の目的

遺留分は、一定の範囲の相続人に法律上保障された最低限の遺産の取得分であり、被相続人の遺言や贈与などによって、その相続人の最低限の遺産取得分が侵された場合に問題となります。遺留分の侵害は、被相続人による財産処分が原因となって生じ、法定相続分に従って遺産を承継する場合や遺産分割協議による場合には、発生しません。

遺留分減殺請求は、被相続人の財産処分の自由と相続人の保護という相対立する状況の調整を図るための制度です。

2-2.遺産分割協議の役割

一方、遺産分割協議では、協議に参加している相続人間の話し合いと合意により、遺産分割の方法が確定します。分割方法に対して異論や要望がある相続人は、遺産分割協議の中で自らそれを主張し、実現する機会が与えられているわけです。

従って、遺産分割協議が合意に達したということは、全相続人の要望等が反映されており、誰一人として遺産に対する権利を侵されておらず、遺留分減殺請求の必要性が認められないことになります。

3.遺産分割協議のやり直しが認められるケース

このように遺産分割協議に対しての遺留分減殺請求はできません。しかし、前述した通り、いったん合意に至った遺産分割協議のやり直しが認められる場合もあります。

それは、「相続人全員による合意解除」と遺産分割協議に対して「錯誤」を主張する場合です。

4.全相続人の合意解除による遺産分割の再協議

もし、相続人全員がいったんまとまった遺産分割協議を反故にして、もう一回遺産分割協議をしてもいいとの合意に至った場合には、遺産分割協議をやり直すことができます。

相続人全員がもう一回やり直してもいいと考える遺産分割協議を維持する必要性が全くないからです。

しかし、最初の遺産分割協議が終わった後に第三者が関係していると、話は違ってきます。

例えば、遺産分割協議で取得した不動産を自分名義に変更した相続人が、その不動産を第三者に売却し、その後遺産分割協議を合意解除した場合、その第三者は、民法545条1項により保護されることになります。

民法545条1項 解除の効果

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない

このような事態に陥いる前に、弁護士に相談する必要があります。

また、遺産分割の再協議を行う場合は、税金や登記について注意が必要です。

4-1.遺産分割の再協議で問題となる税金

相続税は、最初の遺産分割協議について課税されます。最初の遺産分割協議で所有権の移転が認められるからです。最初の遺産分割協議で所有権の移転が認められるということは、遺産分割の再協議は、譲渡や交換、贈与として所得税や贈与税の課税対象となるということです。

詳しくは、是非以下の相続税理士相談カフェの記事もご覧になってみてください。

【関連姉妹サイト】相続税理士相談Cafe「遺産分割のやり直しで贈与税・不動産取得税が発生!

4-2.遺産分割の再協議で問題となる登記

では、遺産分割の再協議を行った場合の登記申請はどうなるのでしょうか?

3つのケースが考えられます。

相続人への所有権移転登記がまだ行われていない

不動産の登記名義がまだ被相続人にある場合は、そのまま被相続人から不動産を取得した相続人に対して「相続」による所有権移転登記をすることが可能です。

遺産分割協議前に法定相続分で所有権移転登記を行った

この場合も、「遺産分割」を登記原因として被相続人から不動産を取得した相続人に対して所有権移転登記をすることができます。

最初の遺産分割協議に従って所有権移転登記を行っている

最初の遺産分割協議通りの所有権移転登記を既に行っている場合は、その所有権移転登記をいったん抹消し、改めて「遺産分割」協議を原因として所有権移転登記をしなければなりません。

この時、抹消登記と2回目の所有権移転登記に登録免許税が課されることになります。

5.遺産分割協議の錯誤無効

もう一つは「遺産分割協議に錯誤がある場合、協議分割は無効となる」という例です。

ある相続人において錯誤があった場合に、そこに重大な過失がない限り、その意思表示は無効となり、そうすると相続人全員の合意がないことになるため、遺産分割は無効になると解されています。

例えば、相手方の虚偽の説明により、遺産である預金額について誤信し、遺産の範囲について重大な錯誤があったとして無効であるとした判例があります。

錯誤無効の場合の相続税と登記

遺産分割協議が錯誤により無効と判断され、再度分割をやり直した場合は、相続税については、更正請求をすることになります。また、登記については、錯誤による更正登記を申請するか、更正登記ができない場合は、抹消登記と所有権移転登記を申請することになります。

遺産分割協議に対する錯誤主張については、以下の記事で詳しくご紹介しています。

関連記事
遺産分割協議のやり直しはできる?
遺産分割協議が終わったものの、内容を誤解していたり、やっぱり不満が残っているとき、遺産分割のやり直しはできるのでしょ…

まとめ

遺産分割協議は、このほかにも、遺産分割協議に相続人全員が参加していない場合や、相続人に意思能力がない者がいる場合、協議内容が公序良俗違反の場合などには無効事由となります。

また、詐欺や脅迫、があった場合や、未成年者の相続人に法定代理人がいなかった場合には、取り消すことができます。

しかし、いったん分割協議が整ってしまったら、それを覆すことは難しい考えておいたほうがいいでしょう。

そこで必要なのは、遺産分割協議においては、まず自分の意見をはっきりと示し、不利な遺産分割協議には同意しないことです。

もし、遺産分割協議についてお悩みであれば、弁護士に相談しましょう。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

デフォルトpr下ボタン

この記事が役に立ったらシェアしてください!