遺産分割協議後の遺留分減殺請求はできる?できない?

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「遺産分割協議書には周りに言われるままに印鑑を押しちゃった。でも納得いかないから遺留分減殺請求はできないの?」

結論から言えば、遺産分割協議後の遺留分減殺請求はかなり難しいと考えたほうがよいでしょう。

遺産分割協議というのは全相続人が合意しない限り成立しないわけですが、それが合意されたということは、遺留分の問題も含め、解決したとみなされるからです。従って、遺産分割協議が済んだあとの遺留分減殺請求が認められるケースは、例外的な場合に限られます。

以下に、遺産分割協議と遺留分の取扱いについて、説明いたします。

1.遺留分減殺請求と遺産分割

まず最初に、遺留分制度の目的と、実際に遺留分侵害が生じる態様について説明しましょう。

1-1.遺留分制度の目的

遺留分とは、一定の法定相続人(被相続人の兄弟姉妹以外の相続人)に、法律上保障された相続財産の一定割合をいいます。本来、被相続人は自己の財産を自由に処分できる立場にいるわけですから、第三者にその財産を遺贈あるいは生前贈与することも自由です。

しかし、一方で相続制度が存在している目的として、相続人の生活保障及び被相続人の遺産形成に貢献した相続人の潜在的持分の清算のためとの考え方があります。そうすると、これらの相続人の正当な利益を保護するということも考慮する必要があります。

そこで、被相続人の財産処分の自由と相続人の保護という相対立する状況の調整を図るため、遺留分制度がもうけられています。

1-2.遺留分侵害の態様

遺留分減殺請求という制度の趣旨は、被相続人が有する財産処分の権利に対して一定の制約をかけるということができます。このときにまず問題になるのが、遺留分減殺請求ができる財産の範囲はどこまでかということです。

当然ながら相続開始時の財産は含まれるとして、法律では相続開始前1年間になされた贈与、さらに遺留分権利者を害することを知ってなした贈与は1年より前でも算入される、とされています。

遺留分減殺請求の基礎となる財産については、民法1029条に定めがあり、以下の内容となっています。

「相続開始の時に有した財産」+「贈与財産」-「債務」=「遺留分減殺請求の基礎となる財産」

相続人において、自らの遺留分に対する侵害の有無がはっきりするのは、自分の相続分が判明したときです。そうすると、上記の分割前の「相続開始の時に有した財産」をどう相続人間で分割するか、という問題になります。遺言があれば、その内容による遺産分割方法をもとに、侵害の有無を確認できます。

一方、遺言がない場合には、相続人間での遺産分割協議によることとなります。なお、遺産分割協議においては、生前贈与の内容、相続財産の一覧やその評価額、各相続人の持分などが判明するため、その中で遺留分の侵害があるかの確認、あるいは遺留分侵害があっても減殺請求しないという意思表示も含めなされることになります。

1-3.遺産分割協議の申し入れと遺留分減殺請求

被相続人が残した遺言による遺産分割では不満がある場合には、遺留分減殺請求権の行使あるいは遺産分割協議の申し入れという手段がありますが、これらの関係はどう考えたらよいでしょうか。

遺留分減殺請求の行使と遺産分割協議の申し入れとでは、その要件や効果が異なるため、遺産分割協議の申し入れをしても、その中に遺留分減殺請求の意思が当然に含まれているとはできないというのが原則的な考え方です。

例えば、ある相続人において、遺留分までは要求しないが、特定の遺産をぜひ入手したい、ということも考えられるわけです。従って、遺留分減殺の意思も含めた遺産分割協議の申し入れをする際には、その点を明確にしておくべきでしょう。

なお、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された事件で、遺留分減殺請求権者である相続人が遺贈の効力を争うことなく遺産分割協議の申し入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申し入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するとした判例がありますが、これはかなり例外的なケースといえるでしょう。

もし、自らの相続分が遺留分を侵害されたものだと判明し、それを取り戻したいというときには、他の相続人に対して遺留分減殺請求の申し入れをすべきでしょう。

2.遺産分割協議後の遺留分減殺請求

遺産分割協議が済んだあとの遺留分減殺請求は、かなり難しいということを述べました。ここでは、その難しいという要因となっている遺産分割というものの法的な意義を説明します。

キーワードは「法的安定性の維持」ということになります。多数の相続人が加わって合意に達した遺産分割協議は余程の事情がない限り、維持すべきというのが、通常の司法判断となっています。その上で、遺産分割協議のやり直しが認められた例外的なケースを紹介します。

2-1.遺産分割協議の法的意義

遺産分割とは、相続開始後に共同相続人の共有状態にある被相続人の相続財産を、各共同相続人に分配することです。具体的な遺産の分割は、相続財産の範囲の確定やその評価とともに、相続人にとっては大変関心のある事柄になります。

遺産の分割は、相続手続きの結果として、各相続人が具体的に何を、どういう形で相続取得するかが決まることになります。そうすると、相続というのは身分上の行為ではありますが、相続人間における遺産分割協議は共有状態の遺産を分割するための財産行為、即ち契約類似の行為といえます。

そうすると、遺産分割協議については、意思表示に関する民法の規定が適用されます。そのため、心裡留保(民法93条)、虚偽表示(民法94条1項)、錯誤(民法95条)、詐欺又は強迫(民法96条1項)があれば、遺産分割協議は無効ないし取消しをなし得るものとなります。

2-2.遺産分割後の遺留分減殺請求

遺産分割協議が合意に達して、遺産分割協議書が作成されたあとに、遺留分減殺請求を行うことが可能かという問題があります。

結論からいいますと、かなり難しいと考えたほうがよいでしょう。今まで述べてきたとおり、遺留分の侵害は、被相続人による財産処分が原因となって生じます。しかし、遺産分割協議というのは、協議に参加している相続人の話し合いと合意により、遺産分割の方法が確定します。もし分割方法に対して異論や要望がある相続人は、遺産分割協議の中で自らそれを主張し、実現する機会が与えられているわけです。

従って、遺産分割協議が合意に達したということは、全相続人の要望等が反映された内容になったとみなされます。判例でも「遺産分割の協議は多数の共同相続人が加わってなされるもので法的安定性が強くもとめられる」としており、合意内容の維持を求める立場をとっています。

2-3.遺産分割のやり直しが認められた例

ただ、例外的に一旦合意に達した遺産分割協議を解除して、改めて協議を行うことを認めた例もあります。

一つは、「分割協議を合意解除し、改めて分割協議することができる」というもの。

もう一つは「遺産分割協議に錯誤がある場合、協議分割は無効となる」という例です。

最初の例は、特に説明するまでもないでしょう。相続人全員が解除に合意している以上、司法判断が入る余地はほぼありません。

二つめの例では、ある相続人において錯誤があった場合に、そこに重大な過失がない限り、その意思表示は無効となり、そうすると相続人全員の合意がないことになるため、遺産分割は無効になると解されています。

例えば、相手方の虚偽の説明により、遺産である預金額について誤信し、遺産の範囲について重大な錯誤があったとして無効であるとされた判例があります。

3.まとめ

遺留分制度の趣旨は、被相続人が有する財産処分の自由に対する一定の制限ということですが、それを相続人の立場からみると、相続人の権利が強くなったということでもあります。

遺言をなす場合には、このような背景を認識した上で、円満相続を実現できるような内容となるような配慮が必要でしょう。

3-1.「家」から「個人」へという時代の変遷

今の民法ができる前の民法(旧法)時代に行われていた相続は主に「家督相続」でした。

家督相続とは、戸籍上の「家」の長としての戸主が死亡あるいは隠居したときに、その地位を受け継ぐことです。通常は長男が次の戸主として、家長の身分とその家の財産一切を引き継いできたという歴史があります。古い戸籍を見ると「戸主」という欄があり、その歴史をしのぶことができます。

しかし、このような独占相続は憲法が定める個人の尊重、男女平等という大原則に反するため、現民法では家督相続制度は廃止されています。さらに現民法では、「法定相続」、「遺留分」という仕組がとられており、相続人の法的立場を保護しています。

3-2.相続における権利意識の高まり

戦後、現在の民法が施行された結果、相続における相続人の権利意識が高まっており、権利侵害に対しては強い反発が生じることになります。また、遺産分割における審判や裁判においても、相続人の権利を守るという立場での判断がなされています。

このような時代背景を考慮すれば、遺言者は少なくとも、遺留分を考慮した遺言をなすべきでしょう。せっかく遺言をしても、権利侵害等の問題のある内容であれば、遺言者の死亡後に相続人間で争いになる可能性があります。

様々な家族関係を踏まえて遺言をなすことになりますが、遺言は法律行為であるため、法律の制約を受けます。そのため遺言や遺産分割の問題で悩んでいる場合には、素人判断をせずに、詳しい専門家に相談することをおすすめします。

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