遺留分減殺請求の手続き徹底解説!!調停から裁判まで

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遺留分減殺請求をしたものの先方から物等の引渡しを拒否されるか又は対応を放置されてしまう場合が多々あります。このような場合には、裁判所において調停申立て又は訴訟提起をすることが考えられますが、どのようにしてこれらの手続きを行えばよいのでしょうか。以下で検討します。

1.遺留分減殺請求事件の調停について

1-1.調停とは何か

調停とは申立人と相手方の間に紛争がある場合に、基本的にはこれらの者の合意により紛争を解決しようとする手続きのことです遺留分減殺請求は、家事事件に分類され、家事事件手続法により規律されます。

1-2.調停前置ではない

家事事件の多くは調停を先に申し立てなければ、訴訟を提起することができない調停前置主義がとられています。しかし、遺留分については、遺留分減殺請求により既に遺贈及び贈与に対する減殺の効果は生じているため、あえて調停を前置させる意味がありません。

そのため、いきなり訴訟提起をすることも可能です。ただ、遺留分減殺請求の相手方は身内であることも多く、遺産分割と同様にまずは話し合いからすすめようとする傾向が多いようです。このようなこともあって調停申立も認められています。

1-3.調停の申立てについて

1-3-1.申立外で遺留分減殺請求をしていること

ここでは申立外で遺留分減殺請求をしていることを前提とします。申立書で遺留分減殺請求をすることも可能ですが、いつ到達するかがわからないため、時効期間が過ぎてしまうリスクもありますので、申立前に予め遺留分減殺請求を行ったほうが良いでしょう。

1-3-2.管轄

相手方の所在地を管轄する家庭裁判所に対し申し立てます(または合意により定めた管轄裁判所もありますが、合意しない場合がほとんどです)。ここでご留意いただきたいことは、相続関係の争いで認められている被相続人の最後の住所地には管轄がないということです。

1-3-3.申立書の提出

遺留分減殺請求の調停をするは、管轄権を有する家庭裁判所に対し申立書を提出します。
申立書には、申立の趣旨と申立の理由を記載します。

【申立の趣旨及び理由の具体例】

申 立 の 趣 旨

 

相手方は、申立人に対し、相手方が被相続人○○○○から贈与を受けた別紙目録記載の債券及び株券についてその時価の8分の1に相当する物を返還するとの調停を求めます。

 

申 立 の 理 由

 

1 被相続人○○○○(本籍○○府○○市○○町○丁目○番地○○号室)は、配偶者○○○、申立人、相手方の4人家族であったが、平成○年○月○日その配偶者○○○居宅死亡し、相続が開始しました。相続人は、上記3名のみです。

 

2 被相続人は、平成○年○月○日付け贈与契約書により別紙目録記載の債券・株式を相手方に贈与しました(以下「本件贈与」といいます。)。なお、これに基づき当該株式は平成○年○月○日付けで被相続人から相手方に名義変更されています。

 

3 被相続人の遺産は、別紙の目録記載の財産のみであり、他に遺産及び負債はありません。また、本件贈与の他に遺贈や生前贈与をした事実もありません。

 

4 申立人は、相手方に対し、前記贈与が申立人の遺留分を侵害するものであることから、平成○年○月○日到着の内容証明郵便により遺産の2分の1に相当する物件の返還を求めましたが、相手方は話し合いに応じようとしないので、申立ての趣旨のとおりの調停を求めます。

1-3-4.添付書類等

まず、申立書について正本と写しの計2通が必要となります。
次に、添付書類として以下の書類が必要となります。

①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(被相続人の子・代襲者で死亡者がいる場合、死亡者の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
②不動産登記事項証明書遺言書の写し
③遺言書の検認調書謄本の写し
④相続人に直系尊属がいる場合の追加添付書類:直系尊属で他に死亡している者がいる場合、死亡者の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

さらに、費用として申立費用が収入印紙1200円分、連絡用の郵便切手(裁判所にご確認ください)が必要となります。

1-4.調停の進め方について

調停申立書を裁判所に提出すると、裁判所から調停期日の調整の連絡があります。調停期日は、平日(月曜日から金曜日)の午前9時ころから午後5時までの間で開催されますが、多いのは、午前10時か午後1時半からです。

土曜日及び休日は対応してくれません。調停期日が決まると、裁判所から相手方に対し調停申立書が発送されます。その後、指定期日に裁判所に出頭します。

まずは調停委員の紹介等があり、当該調停委員に申立書について疑問点が聞かれます。なお、調停期日全般において、相手方とは顔を合わせずに進行することになります。(相手方に代理人が就いている場合には、次回期日を決めるときなど同席の可能性があります)。

1-5.調停の終了

1-5-1.調停成立

調停が進行して、相手方との間で合意に至った場合には、調停が成立したとして調停調書が作成されます。これには執行力というものがあり、調停調書の不遵守は強制執行を招きますのでご注意ください。

【調停調書】

調 停 調 書

 

1 相手方は、申立人に対し、相手方と被相続人○との間の平成○年○月○日付け贈与契約が申立人の遺留分を侵害していることを認め、申立人の遺留分減殺により、相手方は、申立人が別紙目録記載の債券及び株式のうち8分の1の共有持分を有する(以下「本件共有持分」ことを確認する。

 

2 相手方は、申立人が共有持分を有するための名義変更等の手続きに協力する。

 

3 当事者全員は、本件をもって被相続人○に係る遺留分減殺請求の問題が解決したことを確認し、本件において本調停条項以外に何らの権利義務も有しないことを相互に確認する。

1-5-2.調停不成立

調停を継続したにもかかわらず、調停が成立しない場合があります。この場合には調停不成立で調停手続きが終了します。この場合は訴訟提起することになるのですが、調停が成立しなかったことを証明するため、調停調書の写しを謄写しておきましょう。

1-5-3.前提問題が未解決の場合

調停を申立てたところ、遺留分減殺の前提問題が確定していないとの指摘を受けることがあります。以下の例が典型例でありますが、裁判所から前提問題が解決していないと判断された場合には調停は一時停止し、当該前提問題が解決した後に続行されます。

1-5-3-1.遺産の範囲の確定

遺産の範囲が確定していない場合には、遺留分の計算ができません。このように遺産の範囲について争いがある場合には、遺産の範囲を確定させるために遺産確認の訴えを被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所に提起する必要があります。

1-5-3-2.相続人の確定

遺留分権者が相続人なのかについて争われることがままあります。このような場合に、相続人全員を相手とする相続人確認訴訟を提起して判決を得る必要があります

2.遺留分減殺請求訴訟

2-1.遺留分減請求訴訟について

調停が不調に終わった場合、後に残されているのは訴訟ということになります。訴訟は実際には遺留分減殺の結果生じた遺産の引渡しを請求する訴訟という形になります。

2-2.訴訟提起の方法

2-2-1.管轄

調停の場合と異なり被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所も含まれます。なお、遺留分減殺の対象が不動産である場合には不動産の所在地を管轄する裁判所も管轄裁判所になります。

なお、訴額(判決により請求する金額)が140万円以下であれば、簡易裁判所の管轄となり、これを超える場合には地方裁判所の管轄となりますが、事件の複雑さから簡易裁判所から地方裁判所に移送される場合もあるので、ほとんどが地方裁判所で審理されることになります。

2-2-2.訴訟費用等

訴訟に係る費用としては、裁判所に納入する手数料(収入印紙代)、裁判所の予納する郵便切手代及び弁護士費用です。これらについては、ご依頼する弁護士さんにご相談ください。

2-2-3.手続きの進め方

まず、訴状を裁判所に提出すると裁判所から第1回期日の日程の調整の連絡があります。当該日程の調整が終わると被告に対し訴状を送達させ、答弁書の提出を求めます。第1回期日が開催されるまでに被告から答弁書が提出されますが、「追って答弁」のように実質的な反論は次回以降となる場合もあります

そして、被告から実質的な反論がなされると、ほとんどの場合、弁論準備手続に付され、争点と主張の整理がなされます。期日を重ね、ある程度の主張が出尽くしたと裁判所が判断した時点で、大部分は和解提案がなされます。

遺留分減殺訴訟は、物の返還を求める訴訟がほとんどであすが、大部分は物の帰属は受贈者または受遺者に帰属し、これらの者が遺留分減殺請求者に対し後記の価額弁償を行うという形で解決します。

2-2-4.訴訟の終了

上記のとおり和解提案がなさますので、これを当事者双方が受託した場合には訴訟上の和解が成立し、訴訟は終了となります。

なお、訴訟上の和解には執行力があり、当該条項の不遵守は強制執行を招きますのでご留意ください。他方、和解に至らなかった場合には判決がなされます。判決の当事者への送達から2週間で判決は確定しますので、不服がある場合には、高等裁判所に対し控訴することになります。

2-3.価額弁償

遺留分減殺請求事件において価額弁償ということばは、一度はでてくる言葉ですので、個々に説明します。

まず、遺留分減殺請求が行われた結果、減殺の効果が生じると、相手方は請求者に対し、減殺された贈与または遺贈により移転して財産そのもの(不動産・動産)を返還することを要します。これを現物返還の原則といいます。

しかしながら、不動産の遺贈又は贈与がなされ、これを遺留分減殺請求により不動産が問題となる場合が典型例でありますが、相手方が現物返還しかできないということになると不動産が絶えず共有状態になってしまい、不動産の有効活用の面からすると大きな支障となるおそれがあります。

他方、遺留分減殺請求者からすると必ずしも現物を取得する必要があるとはかぎらず、むしろ金銭賠償を受けるほうが望ましい場合もあります。

そこで、民法1014条1項は受遺者又は受贈者が、返還を要する物の価額を遺留分減殺請求者に弁償する請求権を認めました。これを価額弁償といいます。

実務上は、和解協議の中で、請求が無くとも事実上の価額弁償で解決する方策がとられています。この意味は、遺留分の侵害があるが、現物の返還を認めることは弊害が大きいと裁判所が認めた結果ともいえます。

3.まとめ

以上のとおり、遺留分減殺請求事件の調停と訴訟について解説してきましたが、具体的な事件の処理は高度の法律問題を含むため、法律の専門家である弁護士の助力を受けることを、お勧めします

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