相続人の廃除を解説|廃除の方法、効果、裁判例、欠格との違い
相続人との不仲から、遺産を絶対に渡したくないと思われる方もいます。ただし、相続人には遺留分があり、一定の財産が渡るこ…[続きを読む]
「あの子には絶対に財産を渡したくない」とか、「この子にどうしてもこの財産を遺したい」など、自分の遺産についての希望は誰しも多少はあるでしょう。
しかし、遺言でただ「何も渡さない」と書いても、一定割合は遺産が渡ってしまいますし、相続人同士の争いの種にもなります。それは、相続人には「遺留分」という最低限取得が保障された取り分があるからです。
とは言え、何も方法がないわけではありません。どうしても相続人の誰かに遺産を渡したくないとき、どうすればいいかをご説明します。
目次
遺留分とは、民法が兄弟姉妹以外の相続人に取得させるとして保障した遺産の一定割合のことをいいます。
その割合は法定相続分の1/2または1/3と決められており、具体的には次のとおりです(民法1042条)。
例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合には、配偶者の相続分は1/2、子供は一人あたり1/4の相続分を持っています(民法900条)。
このときの遺留分は、配偶者1/4、子供一人あたり1/8ということになります。
そして、この遺留分を侵害するような遺言を書いてしまうと、後に相続人同士で遺留分を巡って争いになる可能性が高くなります。
例えば、何も貰えなかった子供から他の子供に対して「遺留分侵害額請求」という請求をされ、訴訟にまでなってしまうこともあります。
それでは、こうした争いを防ぎつつも、特定の相続人に遺産も遺留分も渡さない方法を見ていきましょう。
廃除とは、相続権を遺留分も含めて剥奪する制度です。
生前に家庭裁判所に対して廃除の請求をするか、遺言で廃除を定めることで、相続人を廃除できることがあります(民法892条、893条)。
ただし、それなりにハードルの高いことですので、ご自分の状況とともに弁護士に相談することをおすすめします。
これは自分で何かできるということはありませんが、欠格と言って相続人ではなくなる制度もあります。相続欠格と言います。(民法891条)。
相続欠格者は相続人ではないのですから、遺留分もありません。
相続欠格にあたるためには、次のいずれかに該当する必要があります。
該当すれば当然に相続権を失うため、遺言等で何かをする必要はありませんが、3や4に該当するなら書き残しておくといいでしょう。
シンプルに遺留分を放棄させるという方法もあります。
遺留分を放棄しても相続人ではあり続けますが、遺産を渡さないことはできるようになります。
相続後に遺留分放棄するかどうかは、被相続人には分かりませんので、やはり生前に遺留分を放棄させたいところです。
ただ、場合によっては、被相続人の立場が強く相続人が不当に遺留分を放棄させられる可能性もあるため、法律上は、相続開始前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要とされています(民法1049条1項)。
相続開始後に遺留分を放棄することは相続人が自由に決められることですので、家庭裁判所の許可は不要です。
遺留分を全く渡さない方法は、基本的にはこれまでにご紹介したものしかありませんが、少しでも遺留分を減らしておくことはできます。
あまり好ましい方法ではありませんが、理論的には有効なものです。
養子も相続人になることができますので、養子が多ければ多いほど1人あたりの相続分が減ります。
相続分が減るということは遺留分も減るということです。
例えば、子供2人が元々の相続人のとき、遺留分は1人あたり1/4です。
しかし、養子を1人取って子供が合計3人になれば、遺留分は1人あたり1/6になります。
養子を2人取れば合計4人で遺留分は1人あたり1/8とさらに減ります。
ただし、繰り返しになりますがあまり好ましい方法ではありませんし、税制上の問題もあります。
この方法を検討される場合は弁護士にご相談ください。
当然ですが、遺留分も遺産から計算されますので、遺産全体を減らしておくことで遺留分も減らすことができます。
例えば生活費を全て自分で支出することで、ある程度は遺産額を減らせるでしょう。
4-2のように財産を減らすというと、誰かに贈与してしまうという方法も当然考えられます。
しかし、贈与しても相続開始の1年以内は遺留分の計算に含まれますし(民法1044条1項前段)、相続人への贈与なら10年以内は計算に含まれます(民法1044条3項)。
また、贈与の際、双方が遺留分を侵害すると知っていた場合、1年や10年という期間の制限はありません(民法1044条1項後段)。
そのため、誰かに贈与しておいて遺留分を渡さない、というのはあまり現実的ではありません。
ここまで見てきたように、遺留分を全く渡さないというのは簡単ではありません。
遺留分を渡さない方法はいくつかありますが、法律の知識が必要になりますので、現実に実行される場合には法律の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。
相談だけで解決することもありますので、まずはご自分にあった弁護士を探してみてはいかがでしょうか。