遺産分割調停や審判の流れをわかりやすく解説!
相続が発生したら、まず故人の遺言書を確認します。遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。 …[続きを読む]
遺産分割は、まず、相続人間の話し合いから始めますが、まとまらない場合について、調停や審判が法定されています。
では、遺産分割審判が下されたものの、どうしても納得できない場合にはどのようにすればよいでしょうか。
以下で解説します。
目次
遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、調停手続内で協議を継続します。調停手続きでも協議がまとまらない場合には、家庭裁判所が審判を行います。
その審判について納得がいかない場合には、どうするかというのが今回のメインテーマです。
一般的に、遺産分割は審判までと思われがちですが、「即時抗告」という手続きによって、高等裁判所での裁判を申し立てることができます。
そこで、まずは即時抗告の手続方法と流れについてご説明します。
即時抗告はどんなときでもできるわけではありません(家事事件手続法85条1項)。
ただ、遺産分割審判については、相続人が即時抗告をすることが認められています(家事事件手続法198条1項1号)。
また、即時抗告は「抗告状」を提出して申し立てますが、この提出は審判書を受け取ってから2週間以内と定められています(家事事件手続法86条)。
家庭裁判所の即時抗告は、概ね次のような流れで進みます。
期間としては事案による差はありますが、申立てから3ヶ月~4ヶ月程度かかります。
即時抗告は、審判を行った家庭裁判所に「抗告状」を提出して申し立てます(家事事件手続法87条1項)。
ただし、間違えがちですが、宛先は高等裁判所です。
なお、手数料は1800円です(裁判所にご確認ください)。
抗告状は細かい書式は決まっていません(裁判所によっては審判申立書の書式を訂正して使うこともあります)。
抗告条には、「抗告の趣旨」と「抗告の理由」というものを書く必要があります。
正確に、説得力があるように書くのは難しいので、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
なお、ここで抗告状に「抗告の理由」を書かずに提出することもできますが、その場合は後述する「抗告理由書」の提出が必要になります。
即 時 抗 告 状
○○高等裁判所 御中 平成○年○月○日 |
抗告の管轄は、家庭裁判所を管轄する高等裁判所になるのですが(この高等裁判所を抗告裁判所といいます)、管轄違いで家庭裁判所から却下された場合を除き、通常は管轄自体が問題になることはありません。
なぜなら抗告状は、高等裁判所に対し提出するのではなく、当該審判を下した家庭裁判所に対し提出するからです。
抗告状の宛先は高等裁判所ですが、提出先は家庭裁判所なので、間違えないように注意してください。
即時抗告期間は審判の告知から2週間とされています。
遺産分割審判は審判書の形式で告知されますから、審判書が当事者に送達された日の翌日から2週間以内に、抗告状を家庭裁判所に提出する必要があります。
非常に短い時間しかありませんので、「審判書を受け取ったらすぐに行動する」という意識でいたほうがいいでしょう。
抗告の期限まで時間がなく、抗告の理由を書かずに提出する場合があります。
その場合は、抗告の理由書を作成・提出します。
審判のどの部分がどのように不満だったのか、納得できないのかを記載しましょう。
とは言え、感情的に記載しても裁判官の心証はよくなりません。
審判結果について、法的にどこがおかしいのか、それによってどのような不利益を被ることになったのか等、冷静に論理的に記載するように気をつけましょう。
抗告理由書にも提出期限があり、抗告状の提出から2週間とされています(家事事件手続規則55条1項)。
抗告理由書については、抗告状ほど期限厳守とはなっていません。2週間を過ぎても受け取ってもらえることもあります。
また、提出が遅れてしまっても、そのこと自体で抗告が却下されることはないとされています。
なお、抗告状に理由を記載していない場合は理由書の提出が必須なので注意してください。
抗告状と抗告理由書が受理されると抗告審が開催されることになります。
そこで審尋が開催されるかは抗告裁判所の裁量によります。開催されないケースがほとんどです。
ただし、抗告裁判所が審判を取り消す場合には、当事者の意見を聞く必要がありますので、審尋がなされます。
当事者は抗告審においても新たな事実主張や証拠を提出することができます。また、抗告審も審問や陳述の聴取が行われることもあります(これは抗告裁判所の裁量です)。
そして、抗告裁判所は原則として即時抗告に対し「決定」という裁判をすることになります。
具体的には、抗告裁判所が即時抗告を認容する場合には審判を取り消す内容の決定を行い、棄却する場合には棄却決定を行うことになります。
即時抗告の決定に不服がある場合にはどうすればいいのでしょうか。
高等裁判所が判例に相反する判断がある場合や、その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、最高裁判所に対し許可抗告をすることができます。
ただし、認められることは稀ですし、法律知識のない人が1人で行うのはほぼ不可能と言えるでしょう。
以上のとおり、遺産分割審判に不服がある場合の不服申立の方法について解説してきました。
まず、遺産分割協議・調停がうまくいかないと思った場合は、弁護士など専門家に相談してみましょう。
遺産分割審判から先、特に抗告手続きになると、弁護士が代理人になることを想定された制度になっていて、自分ひとりで行うのは難しいです。
仮に手続きができたとしても、高度な法律知識が必要になる抗告審を有利に展開することは非常に困難です。
ぜひ弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。