公正証書遺言でも後から遺留分を請求されることはある!対策法も解説

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公正証書遺言と遺留分

公正証書遺言は、3種類ある遺言書の中でも、とりわけ信頼性が高く、おすすめできる遺言書です。

そんな公正証書遺言をもってしても、遺留分は侵害できないことをご存知でしたか?

今回は公正証書遺言と遺留分の関係について解説していきます。

1.「公正証書遺言」「遺留分」とは

本題に入る前に、「公正証書遺言」「遺留分」がそれぞれどういうものなのか、簡単にご説明いたします。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、証人2人の立ち会いのもと、遺言者が公証人に遺言内容を口頭で伝え、公証人が筆録する形式の遺言書です。

遺言者と相続人が署名・押印をした後、原本は公証役場にて保管されます。

公正証書遺言の作成方法については、以下の記事をお読みください。

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遺留分とは

遺留分とは、法定相続人に対して民法で保障している、遺産の最低限の取り分のことです。

ただし、被相続人の兄弟姉妹や、相続人欠格になった相続人や廃除された相続人には遺留分は認められません。

2.公正証書遺言であっても遺留分は侵害できない

作成時に証人や公証人が関わる上に、原本を公証役場で保管してもらえるという点で、公正証書遺言は広く使われている自筆証書遺言よりも法的に信頼性が高いといわれています。

しかし、公正証書遺言であっても、遺留分は侵害できません。

たとえば被相続人に息子と娘がいる場合、「息子に全ての遺産を遺贈する」という公正証書遺言をのこしたとしても、被相続人の子どもたちには等しく遺留分が保障されていますから、娘も遺留分については相続する権利があります。

ただし、上記のような遺留分を侵害する内容の公正証書遺言であっても、公正証書遺言自体が無効になるわけではありません。

3.公正証書遺言で遺留分を侵害したらどうなる?

では、公正証書遺言で遺留分を侵害した場合には、どうなるのでしょうか。

3-1.遺留分侵害額請求をされるおそれ

公正証書遺言で遺留分を侵害した場合でも、公正証書遺言自体は有効です。
その代わり、遺留分を侵害された側の人が、「遺留分侵害額請求権」を持つことになります。

遺留分侵害額請求権とは、その名の通り、不当に侵害された遺留分に相当する金銭を請求する権利です。

そして、請求を受けるのは、遺言書をのこした被相続人ではなく「遺産を譲り受けた人」です。

あくまで請求する権利を持つだけにすぎないので、実際に請求するかどうかは遺留分を侵害された人次第ということになります(※)。
公正証書遺言の内容が遺留分を侵害するものであっても、侵害された側の人がそれを受け入れれば、遺言書の通りに遺産分割が行われます。

ただし、請求された場合には、請求を受けた側は拒否することができません。
もしも遺留分侵害額の返還に応じない場合には、調停や裁判へ発展するケースも考えられます。

このように、公正証書遺言をもってしても、遺留分をめぐるトラブルが起きることは珍しくありません。
トラブルを防ぐためには、被相続人の方が予め遺言書作成時に遺留分について検討しておくことが重要です。

※なお、遺留分侵害額請求権には時効があります(相続の発生と遺留分の侵害があった事実を本人が知ってから1年以内、知らなくても10年以内に請求しなければなりません)。

3-2.遺留分侵害額請求を受ける順序は法律で決まっている

遺留分侵害額請求を受けるのは「遺産を譲り受けた人」だとご説明いたしました。
遺産を譲り受けた人が複数いる場合、誰に請求がいくのでしょうか。

遺留分侵害額請求を受ける順序は、法律で決まっています。

遺言書で、遺贈と贈与があったとき、遺贈を受けた者を「受遺者」、贈与を受けた者を「受贈者」といいます。
そして民法上、受遺者と受贈者の両方がいる場合には、受遺者が先に遺留分侵害額を負担します(1047条1項1号)。

また、贈与についても、死因贈与を受けた人が生前贈与を受けた人よりも先に、遺留分侵害額を負担しなくてはならないとされています(東京高判平成12年3月8日)。

ちなみに、生前贈与は被相続人がご健在のうちに結ぶ贈与契約で、死因贈与は被相続人の死亡をきっかけに法的な効力を発生する贈与契約です。

遺留分侵害額の負担順序
遺贈 ⇒ 死因贈与 ⇒ 生前贈与

4.公正証書遺言による遺留分トラブルを対策するには

では、公正証書遺言による遺留分トラブルを対策するには、どうすればよいのでしょうか。

4-1.予め各々が遺留分は相続できる内容にしておく

当然ですが、各相続人の遺留分がいくらにあたるかを公正証書遺言作成の段階から計算しておき、各々が遺留分は相続できる内容にしておくことが、最も基本的で大切なことです。
そもそも遺留分侵害が発生しないことになりますから、トラブルを防止することができます。

ただし、正確な遺留分の計算が必要となりますから、ご自分の想定する遺言内容を一度弁護士に相談することをおすすめします。

参考までに、遺留分計算の仕方については以下の記事をお読みください。

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4-2.生前に遺留分放棄してもらう

まず考えられる方法として、公正証書遺言作成の前に、予め相続人に遺留分放棄をしてもらうことがあります。

遺留分放棄とは

遺留分放棄とは、相続人自身に遺留分を放棄することを生前に承諾してもらうことです。しかし、遺留分放棄する側にはメリットがないため、承諾を得るのはなかなか難しいでしょう。家庭裁判所の許可も必要です。
ただし、予め一定の財産を事前に渡すことで同意してくれる可能性もありますから、交渉次第といえます。交渉のプロである弁護士に相談してみましょう。

また、遺留分放棄は生前であれば可能ですが、公正証書遺言の内容に関わりますので、遺言作成前に放棄してもらうほうがいいでしょう。

遺留分放棄の仕方については、以下の記事をお読みください。

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4-3.遺留分侵害額請求がされるときの、請求を受ける順序を指定

最初から遺留分侵害額請求が発生することを想定しておく方法もあります。

公正証書遺言の中で、「遺留分侵害額請求がされたときに請求を受ける順序」を指定しましょう。

たとえば、複数人(A,B,C)に遺贈するとき、「遺留分侵害請求があったときには、まずAへの遺贈を遺留分侵害額請求の対象とし、不足があればBへの遺贈、さらに不足があればCへの遺贈を対象とする」という旨を定めておくことができます。
こうすることで、遺留分侵害を受けた人もA,B,Cそれぞれに少しずつ請求する必要がなくなりますし、遺言者も財産を譲り渡すときに自分の意思どおりになりやすく、トラブルを軽減することができます。

ただし、遺贈⇒贈与の順番は被相続人の意思であっても変えることができませんから、ご注意ください。

5.まとめ

今回は、公正証書遺言と遺留分の関係性についてみてきました。

公正証書遺言であっても、遺留分までは侵害できないということがお分かりいただけたでしょうか。

相続トラブルを防ぐために法的に信頼度の高い公正証書遺言を作成しても、遺留分をめぐって結局トラブルを招いてしまうおそれがあります。
そして、それらのトラブルを防止するためには、公正証書遺言の作成段階から、遺留分に配慮した文言を考えておくことが必要です。

弁護士の正確な指示を仰ぎながら作成していくのが最善の策といえるでしょう。

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