遺言の付言事項と3つの文例~家族に想いを伝える

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遺言の内容には、法的効力を持つ「法定遺言事項と、法的効力はないが書いておくと良い「付言事項の2つがあります。
法定遺言事項だけ書けば遺言書として効力を発揮しますが、付言事項も書くことで、なぜそういう遺言をしたのか、家族に想いを伝えることができます。

遺言の付言事項とは何か? また、その文例を3つ紹介します。

1.法定遺言事項と付言事項

1-1.法定遺言事項には法的効力を持つ内容が記される

まず、初めに法定遺言事項についてですが、これは、通常遺言として書く法的効力がある内容です。
具体的には「相続分の指定」「遺産分割方法の指定」など財産の処分・分配に関すること、「子の認知」「相続人の廃除」など相続人に関することがあります。これらの記載がないと、遺言書としての意味を成さなくなりますので、遺言書を作成する際には「法定遺言事項」を必ず記しておきましょう。

【参考】遺言でできること、できないこと

1-2.付言事項には謝辞や経緯が記される

付言事項は法定遺言事項以外の内容であり、具体的には「感謝の気持ち」や「遺言を書いた経緯」などを付言事項として記します。
付言事項は法的効力を伴いませんが、遺言に関する被相続人の想いを伝えることで、被相続人の意思が尊重されやすくなります。その結果、相続トラブルを回避できたり、円満な相続ができたりするケースも多くなります。

1-3.付言事項を書く位置

遺言書のサンプルを示します。まずは法定遺言事項をすべて書き、その次に付言事項を書きます。最後に、日付・住所・氏名を書き押印します。

遺言書

遺言者 相続太郎は次の通り遺言する。

1.長男相続一郎(昭和○○年△△月××日生)に下記預金を相続させる。
XX銀行 XX支店 普通口座123456

・・・

(付言事項)

病気の私のために最後まで尽くしてくれた、○○、△△に大変感謝しています。
財産は多くはないけれど、それぞれに少しづつ分けました。
どうか兄弟どうし争わずに最後まで仲良く暮らしてください。

平成28年11月30日
東京都新宿区新宿1丁目1番1号
遺言者 相続太郎 ㊞

「付言事項」と記して、その下に付言事項を書けば、そこが付言事項であると明確になります。
仮に、「付言事項」と記さなかったとしても、法的効力を持たない内容は、付言事項の扱いになります。

2.付言事項の作成ポイント

2-1.感謝の気持ちを書くようにする

付言事項を書く上で、もっとも大切なのは感謝の気持ちを伝えることです。具体的に誰に対して何を感謝しているのかを伝えます
「誰」の部分は実名を書くようにします。また、「何」の部分には思い出やエピソードを書くようにします。

2-2.遺言内容に関する経緯も書くようにする

付言事項を書く上で、遺言内容に関する経緯を書くことも大切です。どうしてそのような遺言をするに至ったのか、その想いを伝えておきます。

相続では少なからず不平不満が出ます。それが大きな相続トラブルへと発展する恐れもあるのです。通常、こうしたトラブルが起こるのを防ぐために遺言を作成するのですが、その遺言内容に不満を持つ人が現れると折角の遺言が逆効果になることもあります。そのため、なぜそのような遺言の内容に至ったのか、その経緯を書いておくことも重要です。

2-3.そのほかに書いておきたい内容は?

付言事項には「感謝の気持ち」や「遺言したい経緯」のほかに、どんな人生だったのかなどを書いても良いでしょう。
また、故人に関わることを記載しておくこともできます。具体的には、葬式に関することや、臓器提供に関すること、遺品処分に関することなどです。このような死後の処理に関わる内容を記すことで相続人への負担が減ることも多いです。

2-4.否定的な内容はあまり書かないほうが良い

家族から嫌なことをされたとか、ほとんど顔も見せなかった子どもがいる場合、愚痴や嫌味を書きたくなることもありますが、否定的な内容はあまり書かないほうが良いでしょう。なぜなら、この遺言を読むとき、遺言者本人はいないからです。本人がいない中で否定的な文章を読むと、その文章だけが独り歩きして家族の間にしこりを残すことがあります。
否定的なことを書かれた相続人が、他の誰かが自分を嫌って親にあらぬことを吹き込んだのではないかと疑って、取り返しのつかない断絶につながる可能性もあります。

もちろん、何を書いても自由なのですが、遺言書で家族がばらばらになるのは本意ではないはずですので、愚痴や嫌味など書きたいことがたくさんあったとしても、なるべく控えましょう。

3.付言事項の文例

実際に付言事項をどのように書くのか、3つの事例を基に文例を紹介します。

①介護で尽くしてくれた長男の嫁に遺贈したい

本来であれば相続権のない長男の嫁に対して、遺贈する場合です。

長男の嫁である○○さんに私の介護をお願いさせることになり大変な負担と苦労をおかけしました。介護中の○○さんはいつも一生懸命で、最期まで笑顔で私の介護に尽くしてくれました。炊事洗濯はもちろんのこと、身の回りのお世話をしてくれたことには本当に感謝の念で胸がいっぱいです。その苦労に報いるためにも、先に記載したとおりに遺産を遺贈したいと思います。

次男や三男には言い分もあることでしょう。ですが、私は本当に○○さんには感謝しても、しきれずにいるのです。どうかこの遺言内容で兄弟皆が揉めることのないようにしてくれると私は嬉しい限りです。父の最後のわがままですが、どうかお願いします。

大変尽くしてくれた長男の嫁にどんなことに感謝しているのか具体的に伝えます。また、本来の相続人に対しても不満を抱かず理解してもらえるように依頼します。
命令するのではなく、あくまでもお願いする立場で書けば、子どもたちは納得してくれる可能性が高くなるでしょう。

②事業に貢献した次男に株式をすべて渡し後継者としたい

経営者であった被相続人が、子どものうち一人を選んで全株式を渡し後継者としたい場合です。

私は○○年から○○会社を経営してきました。そのため、家のことは妻の○○にまかせっきりで大変苦労をかけました。また、子供たちにも父らしいことができずに申し訳ないと思っています。

次男の○○は大学卒業後、すぐに○○会社の経営に参加してくれました。業績が悪化した時や資金難に陥った時に、○○が一生懸命に働いてくれたからこそ、今でも経営が続いていると心から思っています。そこで次男の○○に事業を継いでもらいたいと考え、すべての株式を相続させることにしました。

この相続に対して家族からの言い分はあることでしょう。けれども、会社のこと、従業員のことを考えると、次男の○○に相続させるべきだと判断しています。「船頭多くして船山に上る」という諺がありますが、まだまだ小さい○○会社が競争の激しい分野で経営を確実に行っていくためには、○○に株式を集中させスピード感ある判断をしていく必要があります。また、株式を持つということは単に財産を受けつぐだけでなく、会社と従業員の運命も一緒に背負うことです。

どうかこの遺言内容で家族が揉めるようなことがないようにしてください。そして今まで私が最期まで経営に携われたのは、家族みんなのおかげです。最後に本当にありがとう。

会社経営で家族に苦労をかけたことを詫びるとともに感謝の念を表します。そして、次男に事業を継がせたいことと、その理由を明確に記します。
全株式を次男に渡すということになると相続分では明らかに不公平になり不満も出やすいところですが、なぜそうする必要があるのかを本音で書いておきます。自分なりの経営哲学を書くのも良いでしょう。

③家族に負担をかけたくないので葬儀はやらず直葬にしてほしい

付言事項には相続に関する以外のことでも書くことができます。たとえば、葬儀をやらず直葬(そのまま火葬)にしてほしい場合です。

私が死んだ後の葬儀は、葬式や告別式などは行わずに直葬で済ませて下さい。

妻の○○には最期まで付き添ってくれて本当に感謝しています。また、長男の○○も定期的に見舞いに来てくれて本当に嬉しい思いでいっぱいです。

ただ、そんな大変な思いをしてくれた家族に、これ以上の大きな負担は掛けたくないと思っています。だから、なるべく穏便に静かに葬儀を済ませて欲しいのです。葬儀もごく親しい身内のみで行うようにしてくれると、私も静かに眠ることができます。

身内だけで葬儀をすることは私の強い希望です。こうした葬儀の方法だけで、決して家族皆が揉めることがないようにして下さい。私は、皆が笑顔で私を送ってくれるのを切に望んでおります。

自分の死後にどうしてほしいのか、理由とともに明確に記します。感謝の念も忘れずに書くと良いでしょう。

まとめ

遺言内容には、法的効力がある法定遺言事項と、法的効力がない付言事項があります。付言事項自体には法的効力はありませんが、遺言を記した経緯や感謝の念を伝えることで、遺言を実行してもらうには強い影響力があります。

ここでは3つの文例を紹介しましたが、あくまでもサンプルですので、これらにこだわることなく、自分なりの言葉で本音で書かれると良いでしょう。

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