遺言書につける財産目録の書き方|パソコンで作れる簡単書式つき
民法改正で、自筆証書遺言に添付する財産目録がパソコンでも作成できるようになりました。本記事では、簡単にダウンロードし…[続きを読む]
日本公証人連合会によると、2023年に公正証書遺言を作成した件数は11万8,981件です(*1)。同年に発生した相続は159万503件であり、公正証書遺言を作成した方は全体の7%程度ということになります。
裁判所の司法統計によれば、2022年の自筆証書遺言の検認件数は20,500件(*2)で、仮に公正証書遺言と自筆証書遺言を合わせても、9%に欠ける程度と、遺言書を遺したい人が増えているとはいえ、まだまだ少ない現状がわかります。
そこで今回は、遺言に関する基礎知識から実用的な話まで幅広く遺言に関するあれこれを紹介します。
【出典】*1「令和5年の遺言公正証書の作成件数について」|日本公証人連合会
*2「令和4年司法統計年報 3家事編」 6頁「第2表 家事審判・調停事件の事件別」|裁判所
目次
「遺言」は、「ゆいごん」や「いごん」と読むことができ、意図した法的な効力を自分の死後に実現させる目的で、あらかじめ書き残しておく意思表示を指します。そのため、遺言は、法律上求められる一定の様式を満たしていなければ、無効になってしまいます。
遺言書で認められている法的な効力は、民法で厳格に決められており、遺言書に書かれた内容すべてが法的効力を有するわけではありません。
もっとも、遺言は、相続分の指定や遺産分割方法の指定など、「相続に関すること」には法的効力があるため、被相続人が、ご自分の意思に基づいた遺産の相続をしてもらえるメリットがあるだけでなく、後に遺された相続人にとっても無用な争いを最小限にできるというメリットもあります。
遺言書には、遺言者が相続人に「贈る言葉」として付言を付すことができます。
付言には、遺言者の気持ちを自由に述べることができ、遺言内容についての説明や、家族への気持ちなどを記入することができます。
ただし、付言には法的な効力はなく、あくまで遺言書の補足的役割を果たすのみです。
遺言書を作成する際に、財産目録を付す義務はありません。
しかし、現金や預金などの資産だけでなく、ローンや借入金などの債務も記載した財産目録を付すことで、相続財産を一覧で明確にすることができます。そのため、相続財産が多い場合には、財産目録が遺言の作成に役立ちます。そのうえ、財産目録はパソコンでの作成が可能なため、訂正や加筆が簡単にできます。
ただし、財産目録に記載漏れがあり、遺言書を財産目録通りに作成すると、記載漏れがあった財産について相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
財産目録を作成する際には、くれぐれも記載漏れにはご注意ください。
遺書は、死後に残される家族や友人、知人など親しい人に向けて、故人が気持ちを伝える手紙です。故人が伝えたいメッセージを書き残すもので、一般には死が迫っている人が書き残すものと言えます。
遺言書との大きな違いは、遺言書には法的効力がある一方、遺書には法的効力がありません。したがって、遺書は、内容だけでなく、録音やビデオなど形式も自由です。
前述の通り、遺言は正しい書き方で作成され、法律で定められた要件を満たしていれば、その内容は法的な効力を発揮します。
遺言の内容で法的効力が認められる主な事項として、以下のものを挙げることができます。
遺言には、法的効力があります。したがって、作成時には遺言者にも、遺言の内容とその法律効果を理解・判断するために必要な意思能力である「遺言能力」が必要になり、遺言能力のない遺言者が作成した遺言書は無効になってしまいます。
民法では、満15歳に達すれば、遺言ができるとしています(民法961条)。
成年被後見人も、遺言能力がないため、原則として遺言を遺すことはできませんが、例外的に、「事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない」としています(同法973条)。
実務上、認知症などで意思能力を欠くと推測される遺言者が作成した遺言書は、最終的に裁判所が、遺言書の内容や遺言者の遺言能力を総合的に判断し、結論を下します。
遺言には主に以下の3つの種類があります。
しかし、秘密証書遺言は、公証役場で作成しなければならないため、2人の証人を集めなければならず、作成に時間やコストがかるうえに、遺言者が自分で保管し、検認も必要といったデメリットが多く、ほとんど利用されていないのが実情です。
そこで、自筆証書遺言と公正証書遺言について解説します。
自筆証書遺言とは、全文を自書する遺言書のことです(民法968条)。
自筆証書遺言が遺言として認められるためには、以下の要件を満たしていなければなりません。
代筆も認められておらず、親族などの遺言者以外が代筆しても、その遺言書は無効になります。
また、本人の肉声であっても音声での遺言は認められていません。
自筆証書遺言は、原則として遺言者自身が保管しなければなりません。
一方、法務局での保管も認められており、この制度を利用すると、家庭裁判所での検認を省略することができます。ただし、3,900 円の手数料が発生します。
遺言者自身が保管していた遺言書を相続人が発見した場合には、家庭裁判所での検認が必要になります。
検認を経なければできない相続手続きがあり、5万円以下の過料に処せられる可能性もあります。
公正証書遺言は、証人2人以上の立ち合いの下で遺言書に書きたい内容を公証人に口述し、公証人がそれを書面を起こして作成する形式です。
公証人が作成するため、遺言書の様式から外れることで無効になるおそれがほとんどないうえに、偽造や変造のおそれもなく、さらに公証役場で保存されるため紛失のおそれもありません。したがって、3つの遺言の中でも最も確実なものです。
さらに、公正証書遺言は、遺言者が保管していた自筆証書遺言では必須になる検認の必要もありません。
公正証書遺言には、メリットが多い反面、自筆証書遺言に比べ、公証人に支払う手数料がかかります。
これ以外にも、弁護士に依頼すれば、弁護士費用も発生します。
自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリットをご自分で比較検討する必要があります。
公正証書遺言にかかる費用については、以下の記事を参考にしてください。
自筆証書遺言と公正証書遺言との特徴を比較すると、下表の通りとなります。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
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作成方法 | 遺言者がすべて自書 | 公証人が記述 |
証人 | 不要 | 2人 |
保管方法 |
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家庭裁判所の検認 |
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費用 |
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ここまで「遺言」について解説しました。
遺言書には法的な効力がありますが、法的な様式を外してしまうと、無効になってしまうおそれもあります。遺言の種類によって注意すべき点は様々です。
せっかく作成した遺言書が、ご自分の死後に無効にならないためにも、相続に強い弁護士に、一度相談することをお勧めします。