【図説】遺留分とは?遺留分の仕組みと割合を分かりやすく解説!
この記事では、遺留分について解説します。遺留分とは何か、だれにどのように認められる権利か、割合はどの程度かなどを図表…[続きを読む]
遺産相続が起こったら、相続人同士が話し合って遺産分割協議を行います。このとき、相続人の中に、遺産の形成に特別に貢献した人がいる場合、単純に法定相続分に従って遺産分割をしてしまうと、不公平になるケースがあります。
たとえば、相続人の一人が長年献身的に被相続人の看護をしたり面倒を見て支えてきた事例などもあります。このような場合、法律では、特に相続財産の維持や増加に貢献した人に「寄与分」を認めることによって、各相続人間の公平をはかっています。
そこで、遺産分割の際に問題になりがちな寄与分とそれが認められる範囲、計算方法などを解説します。
目次
寄与分とは、法定相続人の中に、相続財産の維持形成のために特に貢献した人がいる場合、その貢献度に応じて多めの遺産取得分を認める制度です。
遺産分割協議を行う際には、各法定相続人の法定相続分に応じて遺産を分けることが普通です。法律は、被相続人に近しい人を法定相続人として法定相続分による相続を認める事により、公平に遺産分割が行われるように取りはからっています。
ところが、相続人の中に、特に遺産の増加に貢献した人がいる場合にまで、一律に法定相続分に応じて遺産分割をしてしまうと、かえって不公平になる事があります。
たとえば、相続人の中に被相続人の生活の面倒を見ていた人がいたり、被相続人の借金を返済してあげた人がいたり、被相続人の事業の手伝いを長年無給で続けていた人がいたりするようなケースです。
このような場合、そのような貢献度の高い相続人に特に多めの遺産相続権を認める必要があります。そこで、民法は、「寄与分」という制度を定めています。
寄与分が認められるためには
の3つの要件が必要です。
寄与分が認められるのは、共同相続人のみです。共同相続人とは、そのケースで法定相続人になっている人のことです。
相続人以外の第三者が遺産の形成に貢献していたとしても、その人に寄与分は認められません。たとえば、配偶者と子どもが相続人になるケースにおいて、兄弟姉妹が遺産の形成に貢献していたとしても、そのことは寄与分評価の対象になりません。
ただし、法定相続人の配偶者の行為について寄与分が認められるケースはあります。
たとえば、同居の長男の妻が長年献身的に被相続人を看護していた場合などには、長男の寄与分としてその貢献度が認められることがあります。
寄与分が認められるためには、寄与行為が「特別の寄与」であることと、寄与行為と被相続人の財産の維持形成に「因果関係」があることが必要です。
具体的には、以下のような種類があります。
被相続人が事業経営をしている場合に、無給や少ない給料でその事業(家事)に従事して手伝い、被相続人の財産増加に寄与した場合です。
農業や商工業などが多いですが、医師、弁護士、公認会計士などのケースもあります。
給料をもらっていた場合には、基本的に特別の寄与とは認められません。
被相続人に金銭を出資するケースです。
例えば、妻が夫名義の住宅を購入するときに自分の独身時代の貯金を出したり、婚姻後に働いて得たお金を出したりした場合などです。
被相続人の借金返済のためにお金を出した場合もこの型の寄与になります。
ただし、会社への出資は原則として寄与分になりません。
相続人が被相続人の療養看護を行ってきたケースです。寄与者の看護により、付添い看護の費用がかからなくなり、相続財産の維持に貢献した必要があります。
持続的、専従的に療養看護にあたっていた必要があるほか、通常の身分関係から当然期待される程度の看護であれば、特別の寄与とまでは認められません。
近年、介護保険の導入によって「老親の介護」の寄与分が認められにくくなっている傾向もあります。
相続人が被相続人を扶養して財産の維持形成に貢献したケースです。
これについても、身分関係から通常期待される程度の扶養を超えている必要があります。
たとえば、夫婦や直系血族、兄弟姉妹は互いに扶養する義務があるので、通常の扶養を行ったとしても「特別の寄与」とまでは評価されません。
相続人が被相続人の財産管理をすることによって、管理費用の支払いが不要になった場合などです。
被相続人が所有する土地を売却する際、土地利用者の立ち退き交渉やその他の手続きをしたり、売却代金を増加させたりした場合もこの型の寄与分に該当します。
次に、寄与分の評価方法をご説明します。
寄与分の型ごとに、順番に見ていきましょう。
家事従事者が本来受け取るべき給付額が寄与分となります。ただし、同居している場合などには生活費がかからなくなっているので、その分を控除する必要があります。
そこで、以下のような計算式で計算できます。
寄与分額=寄与者が受け取るべき年間の給付額 × (1-生活費控除割合) ×寄与年数
基本的に出資金額が評価対象となりますが、そのままの金額とは限らず、裁量的な割合をかけ算して評価されます。出資金によって不動産を購入した場合などには、不動産評価額のうち、不動産購入費用の中で出資した金額の割合分が寄与分となります。具体的には以下の通りです。
寄与分額=相続開始時の不動産評価額×(出資金額/取得当時の不動産の金額)
不動産そのものを贈与した場合には、相続開始時の不動産額に、裁量的な割合をかけ算して判断します。
療養看護型の場合、実際に看護していたか付添介護人の費用負担をしたかによって異なります。
実際に療養看護した場合、
寄与分額=付添介護人の日当額×療養看護日数×裁量的割合
費用負担をした場合には、 費用負担をした実費が寄与分となります。
この場合も、現実に扶養をしたか、かかった扶養料を負担したかによって計算方法が異なります。
現実に引取って扶養した場合には、
寄与分額=(実際に負担した金額又は生活保護基準によって算出した金額) ×扶養期間× (1-寄与者の法定相続分割合)
となります。
扶養料を負担した場合には、
寄与分額=負担した扶養料×期間 × (1―寄与相続人の法定相続分割合)
となります。
財産管理型の場合も、ケースによって計算方法が異なります。
不動産の賃貸管理、売買契約締結などに関与した場合、
寄与分額= (管理や売却を第三者に委任した場合の報酬額) × (裁量的割合)
火災保険料、修繕費、公租公課などの実際の費用を負担した場合には、寄与分額は、現実に負担した金額となります。
次に、寄与分がある場合の遺産分割の計算方法をご説明します。
寄与分があると、全体の遺産の中から、まずは寄与分の評価額を引きます。遺産から寄与分を引いた金額のことを、「みなし相続財産」と言います。
そして、みなし相続財産を、法定相続分に応じて分配します。
このようにして、寄与度を評価することにより、各法定相続人の公平が保たれていることがわかります。
寄与分を定めるに際しては、判例上、「遺留分を考慮する必要がある」と考えられています(※)。寄与分自体に、法律上の上限などはありませんが、遺留分を無視していくらでも認められるわけではありません。
※ 東京高決平成3年12月24日判タ794号215頁
遺留分侵害額請求の対象になるのは「遺贈」や「贈与」に限られているので(民法1043条)、寄与分を対象にした遺留分侵害額請求はできません。
寄与分を考えるとき、実際にはどこまで寄与分が認められるかは、ケースバイケースです。
過去に寄与分が認められた事例と比較しながら、個別具体的に考える必要があります。
寄与分が認められるとして、どの程度の金銭的評価がされるかも、同様です。
自分の場合に寄与分が認められるか、どのくらいの評価になるのか、どう主張するのかが気になる方は、相続問題を得意とする弁護士に相談しましょう。